記者が見た、聞いた、感じた、を伝える あっとほーむデスク 5月6日0:00更新
耳目、怒り、琴線。共通する、後ろに続く言葉は―「触れる」です。4年前、長唄奏者の杵屋響泉さんを取材したとき、最後に手を握らせてもらいました。99歳とは思えぬ、柔らかで温かな手。今も記憶に残ります。
今週紹介した足柄刺繍の上田菊明さんは、よく手入れされた庭の木々を説明しながら門の外まで見送ってくれた別れ際、「握手をしましょう」と言いました。冷え症のためこの時期でもひんやりする手を、申し訳なく差し出しました。短い取材の時間で、その人の人生の一端に触れさせてもらう。記事にするときには温度のある言葉で伝えたいと、毎週奮闘しています。 (ゆ)