制作中の短編映画『メリーメリーメリーカップ』に出演する 古川 照之さん 寿町出身 41歳
銀幕に残したい思い出
○…老朽化で撤去される小田原城址公園内こども遊園地の遊具「メリーカップ」を題材に、市民団体が制作を進める自主映画。俳優として出演するかたわら、裏方としても宣伝に奔走する。機材レンタル費など製作費は協賛金が頼りだが、「映画に関わることなら、すべてが楽しい」と苦をものともしない。
○…深く考えず進学した藤沢の私立高校。「理系は苦手なのに工業科。小田原を離れて友達もいないし、つまらなくて」。現状を打破しようと向かった本屋で手に取ったオーディション雑誌。友人に使い捨てカメラで写真を撮ってもらい、都内の俳優養成所に申し込んだ。結果は合格。毎週日曜にレッスンを受け、3カ月後にはテレビCMに起用されて中村雅俊さんと共演した。とんとん拍子で事が進み、「芸能一本で生きていける」。父親の反対を押し切り高校を退学、歯止めのきかぬ若さが17歳の青年を小田原から飛び出させた。生存競争の厳しい世界だが、「負けたくない一心」で駆け続けた四半世紀。アルバイトをしながら役者の道を生きる日々だが、「まあ、なんとか生活できてます」と語る横顔に充実感が漂う。
○…東日本大震災発生を機に、俳優の仕事について思い悩んだ。「気持ちの余裕があってこそ楽しめるのが映画や舞台。皆がどん底の気分の時、俳優なんて何も役に立てない」。その2年後、養成所で苦楽を共にした仲間と初めて自主映画を撮った。ゼロから作品を生み出すことを経験し、「人の思いを伝える仕事だなと実感できたんです」。
○…祖母が他界した数年前、気落ちする母を連れ出して小田原城周辺を散歩した。「観覧車もあったよね」「小さい時、あの斜面から転げ落ちたのよ」と、溢れ出す懐かしい記憶をいとも楽しげに語った母。「そういう場なんですよね、市民にとって。たくさんの思い出が詰まった憩いの場所を、映画として50年、100年と残したいんです」
|
|
|
|
|
|