2月中旬、卒園を控えた園児たちが楽しみにしていた人形劇が開かれた。今回で42回目を迎えた恒例行事には、主催者の変わらぬ思いが込められている。
毎年、小田原市と南足柄市の幼稚園・保育園に通う年長園児を招待し、夢の世界へ誘う人形劇。主催は小田原二世会。企業の後継者や二世経営者の異業種交流を目的に活動する同会が「未来を担う子どもに夢や感動を」と思いをつないでいるメイン事業だ。
今年は2市49園の園児が参加し、『オズの魔法使い』の世界にトリップ。コミカルな動き、ステージ脇から登場する演出…物語にあわせ手拍子や歓声をあげ、皆が夢中になった。園では事前に絵本を読み聞かせ、会から配布されるパンフレットの塗り絵を楽しむなど、この日を心待ちにしている施設が多い。保育士にきくと「年長児だけが招かれる特別な場所。子どもたちは何年も前から『いつか自分たちの番がきたら』と楽しみにしている」と教えてくれた。
幼・保の枠を越え共に楽しめること
創立10周年を記念し「子どもたちのために何かできないか」と企画されたのがはじまりだ。今でこそ「幼保一元化」の流れもあるが、当時は幼稚園・保育園間の交流も少ない時代。「地域の子どもたちが一カ所に集まって楽しかったという思い出が一つあっても良いんじゃないか」と、全年長児を対象とすることを決めた。当時、周年記念実行委員長を務めた井上久嘉さん(77)は歓声があがる初舞台を見守り「やってよかったな」と胸をなでおろしたという。5年目過ぎに中止の声もあがったが、会員で協賛を募り、なんとか存続させた。「あの危機を乗り越えたからこそ今も続けられるのだろう」と井上さん。自身の3人の子も劇を見て育ち、来年は孫も観覧する。「自分が関わったものが孫の世代にまでつながることはうれしいな」。
スポンサー集めに苦慮それでもつなぐ思い
プロの劇団を呼ぶのには1回で100万円以上。ほかにも会場費や印刷代等、ほとんどを地元企業・団体からの協賛金でまかなう。近年は協賛金も目減りし、会員が経営者としてのネットワークを駆使して各自で新たな賛同者を開拓するなどして、開催にこぎ着けている。観劇経験のある会員の譲原英司さん(38)は「運営する側になり、こんなに大変だったのかと知った」。だからこそ「今年も皆様のご理解、支援があったからこそ開催できた」と鈴木敏雄会長(47)ら現役会員はそろって感謝を口にする。「大人になった時、昔こんな人形劇見たよねって話題に上がればうれしい」(鈴木会長)。子どもたちに夢を…その思いがある限り、これからも思い出は共有され続けていくだろう。