六本木ヒルズ内の森美術館で9月17日(祝・月)まで開催中の「建築の日本展」。未来に継承すべき日本建築の技術や精神を紹介する企画だ。これに出品した宮大工の芹澤毅さん、建築士の野口直人さん、同美術館デザイン・コンサルティング担当マネージャーの前田尚武さんに加藤憲一市長を加えた鼎談(ていだん)が清閑亭で7月末に行われ、製作にまつわる裏話や木造建築への思いなどが語られた。
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広島平和記念資料館などを手掛け、「世界のタンゲ」として国内外に名を知らしめた建築家の丹下健三(1913〜2005)。建築界におけるカリスマの自邸を復元する模型製作の依頼が昨年、宮大工の芹澤毅さんが理事長を務める「おだわら名工舎」のもとに舞い込んだ。
「実は丹下さんのことを知らなかった」。芹澤さんはそう打ち明けるが、その自邸について調べれば調べるほど大きな感銘を受けたという。「畳の一部に設けた板敷きは、日本古来の生活スタイルに洋式を取り入れることを意識したのではないか」
建築物の随所に感じたのは、過去を見つめ、未来を見据えた仕事。それは、小田原の木や匠に関わる職人が参加する名工舎が、次世代に技術を継承する精神に通じるものだった。「伝統を守るとは、古いものをただ残すだけでなく、時代にあわせて変化しながら続けること。我々がやってきたことは、世界のタンゲと同じだった」
製作期間は約3カ月。木材から職人まで、オール小田原で取り組んだ意味も大きかった。「木にまつわる小田原の技やモノが結集すれば、これだけのものが作れる。この復元模型は、小田原のもつポテンシャル(潜在力)の高さを示す証だと思う」。前田さんも、「誰が、どのような作り方をしたのかまで考えを巡らせることで、作品の魅力も増す。模型を通じて大工の技も見てほしい」と見どころを語った。
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同展は各日午前10時〜午後10時(火曜日のみ〜5時)。入館料は一般1800円など。