戸田派武甲流薙刀術の21代宗家を襲名した 建入 久代さん 中町在住
絶やさぬ息遣いが此処に
○…シン、と静まり返った道場に響く気合の入った声。型を決める時は息を飲む。「相手に突かれるわずかな一瞬のスキを与えないのが古武術」。日本最古といわれる薙刀(なぎなた)術「戸田派武甲流薙刀術」を守り、後世へ。「2代宗家・北条氏邦から400年経ってようやく、小田原に還ってきました」。薙刀を下ろすと途端に柔らかい表情が広がった。
○…20代宗家の急逝を受け、「まさか自分が襲名するとは思ってもみなかった」。先代の「流儀を絶やさぬように記録に残すこと」という遺志を継ぐことに迷いはなかった。本来、口伝で継承する武術だが、稽古の内容も技の発する声も全てを20冊以上のノートに書き記した。「日本人が日本の武術を守ることは当然のこと」と覚悟を決めた。
○…静岡県三島生まれ。大学では考古学を専攻するが、「全く興味を持てなくて」と笑う。卒業後に渡仏し、一流のシェフが通うル・コルドン・ブルー料理学校を首席で卒業。好きなことにはとことん熱中する元来の性格で、料理教室も主宰する。育児も一段落し、合気道を習うようになったある日、道場で薙刀の稽古を目にした。「なんて素晴らしいんだろう」。言葉にならない感動そのまま、門を叩いた。
○…21代宗家の襲名にあたって、改めて古文書を読み勉強する日々が続いた。「頭を抱えていると大学の友人が、助けてくれるのよね」。歴史の謎を解いてくれるのは大学時代の仲間たちだ。「たくさんの人に知ってもらい、仲間を増やしてもらえたら」。450年以上の歴史を持つ流派を受け継ぐ責任は重い。それでも「迷ったときは改めて飛乱(合薙刀の一本目)に立ち戻る」。たすき掛け一つ、歩き方、息遣いにも作法がある。「次代に正しく伝えたい」。その一心で真剣に稽古を重ねる。
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