気合を入れる野太い声が響く小田原高校野球部のグラウンドで、束ねた髪の毛をなびかせて白球を追う女子部員がいる。内野手の北原めぐみさん(3年)と外野手の堀田小桃里(ことり)さん(1年)だ。
野球好きな両親のもとで育った北原さんは、中学に入学すると迷わず野球部の門を叩いた。女子部員はチームで唯一。男子ばかりの環境に抵抗はありながらも、「それ以上に野球をやりたい気持ちが強かった」。
高校でも監督の誘いを受け、紅一点として入部。高野連の規定で女子は公式戦に出場できないことを知りながらも、「野球ができれば」とその道を選んだ。
練習メニューは男子と同じ。必死に耐え抜いても試合には出られず、「何のため?」と葛藤を抱く時期があったのも事実だ。だが、そんな時は失敗をカバーしあうチームメートの存在に救われた。
堀田さんが小学4年で始めた野球を高校で続ける決意をしたのは、受験前に学校見学で訪れた際に目にした北原さんの姿。当時は「高校ではマネージャーかな」と考えていたが、出会いを機に「一緒にやりたい」と目標を定め、受験勉強に励んだ。
北原さんはまもなく始まる高校生活最後の大会で、記録員としてベンチ入りする。「1年間、この夏のためにやってきた。プレーはできなくても、声をだして貢献したい」