新名学園旭丘高校相撲部が、8月15日に青森県で行われた「第68回全国高校相撲十和田大会」で団体戦3位に入賞。野地嵩良主将(3年)、ムンクジャルガルさん、奥知久さん(共に2年)で挑み、神奈川県勢として同大会初のメダルを獲得した。
* *
関東や全国常連となった同校だが、全国大会団体戦のメダルは、IH個人準優勝の「絶対的存在」がいた昨年でも手にできずにいた。まして今年はそのエースもいない。「今までは先輩についていくだけで良かった。でも自分は引っ張っていけるタイプじゃなくて…」。重圧を背負ったキャプテンは、目標だった団体出場を果たせず、個人戦でも敗れたIH以降「もう頑張れなくなっていた」。旭丘の一員として戦う最後の大会・十和田まで3週間を切った頃、このままでは迷惑をかけるかもしれない―。悩んだ末に岸田光弘監督に「メンバーから外してください」と涙ながらに直訴した。
だが監督から返ってきた言葉は「それは違う」だった。「お前がいるからチームがまわる、皆安心して戦えるんだ」。そして、後輩が「先輩に最後いい思い出をつくろう」と陰ながら声を掛け合っていることも知った。「燃えない訳がない」。充実の夏合宿を経て自信を取り戻した野地主将は「一勝がより重い」(岸田監督)3人制の先鋒として、土俵にあがった。
「大会全体の流れも左右する。絶対勝つ」と気迫ある相撲で勢いをつけると、チームは予選を全勝で突破。決勝Tに入っても白星を重ね、準々決勝では高校相撲界東の横綱・埼玉栄高も撃破した。続く海洋高(新潟)に1対2と惜敗するも「あと少しこのチームで相撲がしたい」一心で戦い抜き、銅メダルを掴みとった。
* *
主将に就いた当初は「皆どこか淡々としていてた」。言葉の壁もあり、意思疎通が思うようにいかず口喧嘩も度々起こった。「目線をあわせていけば良いのでは」と、自分なりのキャプテンシーで対話を重ねるうちに芽生えた信頼と絆。今大会、勝つ度に「こっちを見てガッツポーズしてくれる。それだけでジーンとくるものがあった」。
「どんな状況でも声を出し、背中を叩き、体を温めてくれた。かっこいいキャプテンです」と奥さんが言えば、「今度は負けない相撲で自分が引っ張りたい」と前を向くムンクさん。岸田監督も「一秒も無駄にせず、全員が日々積み重ねてきた。チームとしての成長はこのチームが一番あった」と称える。「同じ歩幅で進み、チームになれたと思う」。穏やかに笑う心優しきキャプテンの首には、歴代チームが成し得なかったメダルが輝いている。