「一人でも多くの患者の生命を救うとともに、人を幸せにするための力になれるような仕事に携わっていきたい」
1月13日に行われた小田原市成人式で、新成人を代表して登壇した大学生の小瀬村達也さん。家族を襲った難病を機に、身をもって感じた命の尊さや人の絆、その経験があったからこそ定めた将来の抱負を語った。
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中学2年だった6月のこと。激しい腹痛を訴える母・真弓さんの体に腫瘍が見つかった。検査の結果、悪性ではなかったが20cmもの大きさ。発症頻度が100万人に2人程度の難病「腹腔内デスモイド」と診断された。
早速受けた手術では、大腸を半分、小腸を3分の1切除。途中で肺梗塞を起こし、一時は命も危ぶまれた。それでもすべてを取り除くことはできず、その希少性ゆえに確立した治療法もなく、解消されずじまいに終わった不安。藁にもすがる思いで病について調べた末、「少しでも小さくなるなら」と抗がん剤治療を受けることが決まった。
副作用に苦しみながらも、「『病魔には負けない』と弱音を吐かなかった」という真弓さん。そんな姿を目にし、「僕が弟と妹の面倒をみなければ」と受験勉強の合間を縫って台所にも立った。
中3の男子。料理の経験はなかったが、母を手伝った記憶をたどり、時には親戚に電話で調理法を教わりながら、なんとか夕食を準備する日々だった。そんな一家を近所も気にかけ、「おかずを差し入れてくれたり、声をかけてくれたり。多くの人に支えられて生きていることを実感することができた」と今も感謝を忘れることはない。
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「治療法や医療設備が普及していないために病院に受け入れてもらえなかったり、医師の人手不足から迅速に適切な治療を受けられないこともある」。現在では真弓さんは元気を取り戻したというが、母の闘病を通じて知った実情が医療機器メーカーへの就職を志すきっかけとなった。「すべての病院に最新の医療設備を整えて、どこにいても処置を受けられる日本にしたいんです」