小田原城址公園内にある市立図書館が3月31日、図書館職員が見守る中、60年の歴史に幕を下ろした。閉館を迎えるにあたり、さまざまな催しが企画されていたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止となった。副館長の野村和弘さんは「館内に入っていただくことも、利用者や協力者の方々にあいさつもできず、非常に残念です」と苦しい胸の内を話した。
同館は小田原市矢作出身の事業家、星崎定五郎氏の寄付により1959年に完成、開館した。児童向けの施設も併設された図書館として市民から愛されており、児童文化行事も活発に行われてきた。野村さんも小学生のころ、夏休みの児童事業に参加し、船を作ったり顕微鏡でプランクトンを調べたという。館長の古矢智子さんは高校時代、地域の児童に人形劇を披露した経験を振り返り「子どもたちの笑顔は忘れません」と懐かしむ。「児童文化の発信拠点を、新しくできる小田原駅東口図書館につなげていきたい」と話した。
現在、利用者の思い出を綴った閉館記念誌を、県内の各図書館で閲覧できるように準備を進めている。また、感染症の収束後に改めてイベント計画する予定だ。