「私たち、サッカーがやりたいんです」。2人のサッカー少女の直談判から1年半。今春、晴れて高体連加盟チームとなった相洋高校女子サッカー同好会が9月12日、ついに公式戦デビューを果たした。県高校女子サッカー選手権1回戦で、慶應藤沢と対戦。0対1と惜敗したが、全員で70分間を戦い抜いた。
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始まりは2019年の入学式。小林映里佳さんと望月永久さんは、相洋男子サッカー部OBで事務の永岡博成さんと対面していた。女子サッカーができる環境は県西の高校には少なく「続けていける環境を自分たちで作ろう」と相談に訪れたのだ。メンバーや顧問探し、練習場所の確保など問題は山積で「ボールを蹴ることはできても、サッカーはできない」。永岡さんは「難しいよ」と諭したが「それでもいい」という2人の熱意に打たれ”ボール蹴り”に付き合うことになった。
本気でサッカーに打ち込み、チームを作ろうとしている―初め冗談に捉えていた周囲は、2人が汗を流す姿を見て徐々に変わり始めた。「かっこいいね」と自ら声をかけ入部した石綿舞さん、相洋サッカーの礎を築いた市川秀樹教員に口説かれた木村桃花さんらが加わり、永岡さんを監督としして6月に愛好会設立にこぎつけた。
途中、経験者と初心者の温度差に悩み、去っていくメンバーもいたという。だが残る選手で練習に励む傍ら、地域の女子中学生が練習する場に交ざっては「サッカー続けられるよ」と道を示し続けた。こうした活動と共に校内に応援する空気が溢れると、1年生が加入した今春に12人体制となり、同好会に昇格した。
チームの歩みは男子サッカー部のOBにも伝えられ、支援の輪が広まった。ボールや用具倉庫、公式戦に出るためのユニフォームも、すべてOBからの寄付で新調したものだ。アウェイ用は平成初期に男子が使用し、部室に眠っていたものをリメイク=写真。時代を感じさせる襟付きで「受け継ぎ、うれしい」と一様に笑みを見せた。
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ホイッスルの瞬間、皆ピッチに倒れこんだ。足がつり、肉離れを起こし…それでも全員で走り切った。今春仲間入りした瀧にいなさんは「一人だけできなくて、ここに居てもいいのかなと思う時もあった」とこぼすも、終盤に出場機会を得て全力疾走を見せた。けがで他競技を引退、新天地に飛び込んだ芦川仁菜さんは「負けたことにも意味があると思った。もっとプレーを磨きたい」と前を向く。試合には敗れたが、全員で踏み出した確かな一歩。「課題はありすぎる。全部ですね」と小林主将は苦笑いしつつも「来年選手権で1つでも多く勝ちたい」。目標はクリアだ。
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