緊急事態宣言とまん延防止等重点措置による酒類提供の自粛要請により、対象地域外の県西地域でも酒類の販売が低迷している。製造元の酒造、小売業・卸業を営む酒店、酒類を提供する飲食店、それぞれの現状を取材した。
県内にある酒造13社のうち、5社が集中する足柄上郡。主要な市場は東京や横浜、川崎などの都市部であることから、4月から続く酒類提供の自粛要請は売上低迷に追い打ちをかけた。
純米酒「松みどり」を造る松田町の中沢酒造株式会社は、自粛対象地域の酒店への出荷量が6割を占めている。11代目の鍵和田亮さんは「注文が大幅に減った。飲食店がお酒を提供できない中、どうやって商売をしたらよいのか」と頭を悩ませる。箱根も大きな市場だが、宿泊客の減少で回復の見通しが立たない。昨年5月にオンラインショップを開設し、全国へ直販の販路を広げたが、飲食店でのマイナスを補うまでには程遠い。4月〜5月の売り上げは前年の約4割に留まっている。
小田原小売酒販組合・酒販協同組合の瀬戸淳一理事長は、「在庫があまり減っていない。早く新型コロナが収束しないと前に進めない」と肩を落とす。小田原市本町の酒小売店では、特に連休明けから客足が減少。「コロナ禍前の一昨年と比べて売り上げは半分以下。ただし昨年に比べれば回復はしている」という。インターネットを通じた日本酒やワインなどの地酒の注文は、わずかに増えており「地元の人に地元の良い酒を知ってほしい。地酒を応援してきたい」と話している。
飲食店で応援企画も
時間短縮営業や宴会需要の落ち込みにより、飲食店でも酒類の仕入れ量が戻らない。そんななか、客に地酒の消費を促す動きもある。小田原市栄町の彩酒亭 洞では、酒店を通して地酒を正規の価格で購入。客には「原価同等」の一合500円で提供している。店主の二見洋一さんは「商売ができるのは関係業者のお陰。営業時間短縮の協力金をいただいている分、飲食店として業者にもお金が回る仕組みをつくりたい」と、応援企画を継続していく予定だ。
別の飲食店では、売り上げも仕入れ量もコロナ禍前の1割程度と低迷が続いており、「今は家賃と従業員の給料を支払うことに必死」と嘆く声もある。