バイオリニスト式町水晶さん 感謝と敬意 音色に込めて パラ閉会式で演奏

文化

掲載号:2021年9月25日号

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閉会式当日、本番用の衣裳を着た式町さん(家族提供)
閉会式当日、本番用の衣裳を着た式町さん(家族提供)

 小田原市中村原在住で、脳性まひのバイオリニスト・式町水晶(みずき)さん(24)が9月5日、国立競技場で行われた東京パラリンピックの閉会式に出演し、演奏を披露した。8月には聖火イベントにも参加した式町さんは「大会に携わったすべての人への感謝を込めて弾いた。演奏できて、とても幸せです」と喜びを語った。

 13日間にわたるパラリンピックを盛大に締めくくった閉会式。世界中から視線が注がれる大舞台の当日、式町さんは体が震えるような緊張感と戦っていた。会場に入ると「スタッフの方々が皆本当に親切で励ましてくれた。こんなに温かい現場なのかと感動しました」。緊張は次第に、演奏に全力を出し切る勇気に変わっていった。

 式の前半はリフターと呼ばれる装置に立ち、ハーネスを装着して高所からバイオリンを演奏する手順。きらびやかな衣装を身にまとい、演奏を間近にした式町さんの目に映ったのは、会場に集まった選手たちが優しく手を振ってくれている姿だった。「パラリンピックは競技大会なので、選手は誰もが1番を目指して競うもの。でも戦いが終わり、閉会式では各国の選手が互いに絆を深め合い、称え合っていた」。その姿に胸を打たれ「選手たちに心からの尊敬の気持ちを込めて演奏しようと決意した。本番では演奏中が不思議と一番リラックスできた」と語る。

 後半では真っ白な衣装に着替え、会場の中央に登場。ピアニストやボーカリストらと並んで『What a Wonderful World』を披露した。「これは世界中に平和を伝える曲。僕も演奏者の一人であることがうれしかった」

 出演を終えた式町さんを会場で迎えたのは、働きながら息子を支え続ける母・啓子さん。母の姿に緊張から解放された式町さんは「怖かったよ。でも演奏できて本当に良かった」と、母と抱き合って喜び合ったという。「皆が見ている前でしたが」。照れ臭そうにはにかんだ。

限界まで頑張りたい

 出演依頼が来たのは7月末だった。「うれしかったけれどあまりのことに驚き、最初は現実感が湧かなかった」と式町さん。閉会式まで1カ月半ほどしかない中、多忙なスケジュールでの練習が始まり、何度もリハーサルを繰り返した。健康管理のため食事制限も徹底。本番当日は2カ月前と比べ、体重が7kgも落ちていたという。

 8月中には、都内での聖火イベントにも参加した式町さん。「僕の生きている時代に、日本でパラリンピックがもう一度開かれることはないかも。今回参加できたことを、とても名誉に思います。これからも自分の限界まで演奏家として頑張りたい」
 

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