四季折々の花々が目を楽しませてくれる小田原城址公園。花とお城の共演は、いまや観光資源でもある。毎年6月に青や紫色の花を咲かせるハナショウブもそのうちの一つ。梅雨の時季に訪れる人を魅了するこの花は、小田原城花育成ボランティアによって1年かけて手入れされている。
同ボランティアは、2013年に園内の草木の手入れを行うことを目的として市民の有志が結成。毎月第2・4週の週末に活動している。手入れするのは、主に本丸東堀に位置する花菖蒲園に咲くハナショウブ。3年前に地植えからポットでの育成に切り替えた園内のハナショウブは約1万鉢。咲き終わった6月下旬から7月下旬のわずか1カ月の間に株分けする。膨大な数の鉢を移し替えるのは重労働だが、そうすることで次の年の生育や花付きが良くなる。
このほかに東堀周辺の軽作業を中心に、年間を通じて草むしりやアジサイの剪定、挿し木などを行う。登録するメンバーは現在約30人。小田原城総合管理事務所のもと、毎年春にメンバーらと年間スケジュールを立て、定期的に意見交換を重ねるほか、メンバーが通いやすい日程に調整したり、年に一度近隣の菖蒲園の見学も行う。専門家の指導も仰ぎ、「多くの人に見てもらえる菖蒲園」を目指し、試行錯誤を重ねている。
初心者でも大丈夫「土遊びの感覚で」
ボランティアのメンバーは草花の育成に関して未経験者が大半。定年退職後に草花を触る機会になればと応募する人も多い。応募は年間を通じて受け付けており、毎回参加できる人もいれば都合によって不定期な人も様々。管理事務所の二見典克さんは、「外に出て動くことで健康増進にもつながる。土遊びの感覚で楽しめる」という。
ボランティアには交通費の支給などは無く、年々高齢化も進んでいるため人員不足も課題だ。「少しでも関心を持ってもらおう」とメンバーらは作業中に活動の趣旨を記した看板を立ててPR。二見さんも「城址公園の花の維持はボランティアの力で成り立っていると知ってほしい」とサポートしている。
雨天時は中止になる活動に、残念がるメンバーも多い。夏は炎天下のもとで作業することもある。それでも汗を流した末に咲き誇る花を目にする喜びはひとしお。ハナショウブが花をつけるのは、1年のうちわずか2週間といわれている。それでも仲間と共に手塩にかけた花が咲く日が待ちきれない。