3月18日に初の「しのくぼ菜の花・桜祭」を開催する養蜂家 小出晧治(こうじ)さん 75歳
ミツバチは環境のバロメーター
○…ミツバチの蜜源植物であるアカシアの群生地の近くを求め、昭和55年頃に大井町篠窪へ。「自然豊かな中山間地で養蜂するのに適地だと、一目で気に入りました」。富士見塚の近くで名峰富士が望め、少し登れば相模湾や伊豆半島まで一望できた。蔓や雑草がはびこっていた荒廃地を借り受け、ミツバチの栄養となる菜の花を植えようと、週末に訪れてはツルハシとスコップで、時には自ら機械なども動かして開墾していった。開始して30数余年。開拓した土地は20,000平方メートルにも及び、早春には菜の花が一面を埋め尽くす。花が満開になる頃には、植樹した春めき桜100本も開花し華やかさを増し、まさに桃源郷の趣きになる。
○…「地域の方のご協力をいただいて今年初めて菜の花・桜祭を開催します。豚汁や餅つき、手打ちそばなど10店舗ぐらいが出ます。さっきも打ち合わせにお見えでしたよ」とにこやかに語る。この地の魅力に惚れ込み、額に汗して耕した広大な農園。多くの人たちに、花が咲き蝶やミツバチが飛ぶ山里の良さを体感してほしいと目が輝く。
○…生まれは新潟県妙高市。「小学生の頃に兄が養蜂をやっていて、大人になったらミツバチを飼いたいと心に温めていたのです」。その想いが40代になって甦ってきた。独学で養蜂の知識を身に付け、今では巣箱も23箱。同業の人が聞きにくるほどの実力者に。「ミツバチは自然環境のバロメーターといわれます。働き蜂は花盛りに蜜を採取し、たった3週間で命を終える。社会性昆虫の群れは人間社会の営みにも似ており、多くのことを学ぶことができ、生きるパワーをくれます」
○…週末養蜂家の平日の顔は、川崎や都内で数社を経営する従業員約800人のビルメンテナンス会社のオーナー。今年、農業法人も取得した。「農園で農作物の摘み取りやミツバチの採蜜など、住民開放祭を今後も継続してやっていきたい」と夢は大きく広がる。