インドを撮り続けている写真家 松本榮一さん 足柄上地区出身 64歳
インドほど面白いものはない
○…「鮮やかな紅葉など、日本の季節の美しさを多くの人に見てもらいたい」。来年1月にニューデリーで開かれる日印国交樹立60周年を記念した写真展に向け、このほど京都、奈良に続き大雄山最乗寺での撮影を終えた。撮影はインドの写真家で映画監督でもあるビノイ・ベール氏も一緒だった。「彼は最乗寺の烏天狗を見て、インド神話に登場するガルーダと似ていると言った。仏教の発祥はインドなので、興味深いですね」とにこやかに語る。
○…1948年、山北町生まれ。父親が駐在所勤務だった関係で中・高時代は南足柄市に住む。写真は小さい頃から好きだったという。小田原高校では写真部長も務めた。卒業後は日大芸術学部に進むものの、時代は70年安保闘争へ。「仲間との会にも入ったが、マルキシズム的な思想は芸術家肌にとって居心地が悪かったんだと思う」。生き方を模索していくうちに、「仏陀に学びたい」という想いが強くなったという。
○…21歳の時に「写真家として表現したい」と片道切符だけを持ち、仏教の聖地ブッタガヤの日本寺に見習いで入る。その頃チベットから亡命して間もない36歳のダライ・ラマ法王とも初めて出会う。以来、インドに関わって40年余りに。97年にNHKの大型企画、NHKスペシャル『ブッダ』の取材に参加するなどテレビ局との仕事も多い。写真と著述による著書も「釈尊絵伝」(学研)「アジア聖地巡礼・インドから中国へ」(世界文化社)「聞き書きダライ・ラマの言葉」(日本放送出版協会)など多数だ。
○…「インドはどれも面白い。大人のディズニーランドともいえる。西洋的には汚い、無秩序的な面もあるかもしれないが、東洋的な生から死へ、全てが移ろいゆくものだということを感じることができる」。「今後は日本とインドとの関係を築いていく橋渡しもしていきたい」。写真展には同級生の前市長や地元企業家らも駆けつける。伊東市在住。