足柄上地域の食生活や産業に貢献してきた「水車」を見直す動きがある。自然エネルギー活用の先駆けともいえる水車を見ることができるのは、自治体が管理するもので開成町に3台、山北町に1台あり、その用途は観賞用となった。水車の変遷を取材した。
足柄上地域の市史・町史で水車について触れている項目は少ない。南足柄市郷土資料館が1996年に発行した調査報告書「南足柄の水車」では、市域に少なくとも246台以上の水車があったとしている。また大井町郷土史研究会が2000年に刊行した会誌「於保為」の第20号でも、町内に62台の水車があったとの調査結果を掲載している。
同会の調査メンバーのひとり小林富幸さん(83)によれば、足柄上地域の水車は古いもので江戸時代からあったという。個人管理のものと、複数の世帯が共同で管理するものがあり、輪番で利用することから「番車」と呼ばれた。精米や精麦のほか、一部の地域ではきざみ煙草の製造や杉の葉を製粉した線香づくりなども行われていた。1898年に葉煙草専売法が施行されると、きざみ煙草を扱っていた水車も精米に切り替わり、昭和20年代に電動の精米機が普及すると水車は活躍の場を失い、次第にその数を減らしていった。
見直される水力
大井町で最後の水車は山田地区にあった。江戸後期に作られたものと言われ、5、6戸で共用していたが戦後に利用者が減り、町会議員を務めた故内田耕作氏が個人で管理していた。
1983年に町の文化財指定を受け、翌年に大井小学校を改築した際の廃材を使って改修されたが、93年に耕作氏が亡くなって以降はほとんど稼働しなくなり、老朽化や維持管理の難しさから2007年に指定が解除された。耕作氏の長男、数馬さん(60)は「元々は煙草を刻んでいたと聞いている。子どもの頃には近所の人と輪番で精米に使っていた記憶がある」と語る。
大井町郷土史研究会では、このほど開成町で行われた郷土史研究6団体の合同展示会で00年の水車調査を初展示した。小林さんは「自然の力を活用する水車は、現代の水力発電の元祖。先人の知恵を後世に伝えていければ」と話す。
足柄上地域では、13年から県が農業用水を使った小水力発電の実証実験を実施。開成町でも今年度中にあじさい公園内に小水力発電設備の設置を予定するなど水力が見直されている。
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