矢倉沢地域おこし委員会の委員長として地域おこしに取り組む 植田 勇次さん 南足柄市矢倉沢在住 70歳
あふれる地元愛
○…「自分一人の力ではとてもできない。住民が持つおもてなしの心とボランティア精神が活動を支えている」。矢倉沢地区の活性化のため、6年前から自然や史跡を生かした地域おこし活動に取り組んでいる。委員会を中心に地域で催す「ざる菊まつり」には、昨年1万2千人が訪れた。
○…静岡県牧之原市の港町出身。小・中学校は海沿いにあり、時に海や砂浜が運動場や遊び場代わりになった。「岩場で牡蠣をとったり、漁船の陸揚げを手伝ったりと海の思い出は数えきれない。漁師になった友人も多い」。自身は東京に出て叔父が経営する町工場に勤め、後に高精度歯車の切削工具を製造する川崎市の企業に転職した。会社が山北町に移転したことを機に、28歳で矢倉沢に一軒家を建てた。社内で出会った奥さんと結婚し、一男一女に恵まれた。
○…「矢倉沢には社内から10軒が移り住んだ。気さくに野菜をわけてくれたり、地元の人たちが温かく受け入れてくれたことが嬉しかった」。少しでも恩返しをしようとPTAや自治会の活動に積極的に参加し、後に自治会長も務めた。地域おこしと鳥獣害対策に取り組む委員会を立ち上げたのもこの頃。ボランティアを募って設置した防護柵や箱罠の効果で、作物の猪被害もほとんどなくなった。今後は特産品づくりや後継者育成に力を入れる。「地域活性にゴールはない。幸い地域にはやる気のある40・50代がいて、都市部からの協力者も少しずつ増えている。地域を盛り上げて矢倉沢のファンを増やしたい」
○…定年後に「社会貢献をしたい」と障害者福祉施設に勤めた。「地域おこしと社会福祉が定年後の両輪。やりたいことができて幸せ。周囲の人と理解ある女房に感謝している。直接は言わないけれど」と照れ笑いを浮かべた。携帯電話の待ち受けは3人の孫。「もう少し大きくなったら矢倉岳に連れて行って、すばらしい景色を見せてあげたい」
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