「世界らん展日本大賞2015」のフラワーデザイン審査部門で、最優秀賞を受賞した 椿 尚美さん 南足柄市狩野在住 35歳
咲かす、笑顔の花
〇…人より早く経験した、肉親との別れ。多趣味な母が好きだったものの一つに触れたいと興味を持ったのが、花の世界に進んだきっかけだ。祖母と母が並んで庭を眺めている光景は、胸にしまわれた大切な思い出。中学から習いはじめたアレンジメントの腕前を小田原城北工高のデザイン科で磨き、花に携わり10年目での快挙を成し遂げた。
○…花屋の命題は「いかにお客様に喜んでもらえるか。千差万別の好みに合わせ、求めているものを提供できるかどうかだと思う」。常は人生のうれしい時、悲しい時に添う花を提供する側。自身がもらって一番うれしかったのは「バレリーナ」という名のオレンジ色のチューリップ。高校卒業のお祝いに「生ものだから」と言われ、ケーキが食べられると勘違いし、フォーク片手に訪ねた相手から贈られた30本ほどの花束が、今も変わらず一番好きな花だ。
〇…幼少期は、5歳年上の兄についてまわる活発な少女だった。”カワイイ”より”カッコイイ”が好き、女の子らしいピンク色は「今でも着ない」ときっぱり。一定の調子で話す様子を、勤務先の社長は「低温動物」と表現する。だが、「これでとれなかったら、もうだめだと思って」いた2度目の挑戦で手にした今回の栄誉。受賞の知らせを受け、「いつもと違うところから声が出ていたのがわかった」というほど、珍しく興奮した。
〇…喜びの涙を流すほど、悲しみを癒すほど、人の気持ちに影響を与える花に携わる仕事を誇りに思う。「花を触っている時がとにかく楽しいし、もっと仕事がしたい」と、貪欲さを隠さない。何より大切にするのは、自身の「目」。「色彩をきちんと認識できなくなったら終わりだから」と、真っ直ぐな眼差しで話す。社長をはじめとするスタッフや家族、顧客まで含む自分に関わってくれた人への感謝を忘れない。仕事が終われば家族が待つ家へ急ぎ夕飯を作る、日常の先に揺るがぬ意志がある。
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