福泉観音堂の300年祭で福泉念仏を指導した 矢後 良一さん 南足柄市福泉在住 83歳
「寄り合い」にひと役
○…地域福祉会の会長を務めていた時に出会い、復活させた「福泉念仏講」を6月下旬に行われた福泉観音堂の300年祭で披露した。「念仏講は昔の人たちが考えた地域コミュニティーのひとつのあり方。その考え方は地域福祉の原点でもある。途絶えそうだった地域の文化をもう一度、住民の人たちに知ってもらうことができたかな」と、大きなイベントを終えて胸をなでおろす。
○…1985年まで勤めた国鉄では御殿場駅の駅長も務めた。自治会の役員を任されるようになった。2000年には地域福祉会の会長に就き、目を付けたのが地域に伝わる「お念仏」だった。念仏講が盛んだった時代を知る古老から地元に伝わる念仏を習い、各地の念仏講について学び、文献をひも解いて歴史や風習を調べた。そうして地域の住民に呼びかけ、月に一度の念仏講を復活させ10年以上がたつ。
○…内山で生まれ育ち、35歳で福泉に居を構え、現在は奥さんと長男の3人で暮らす。子どもの頃、近所に住むジャズグループのバンドマスターに憧れた。時間を見つけては練習を見学し、見よう見まねでギターやアコーディオンなどの楽器を覚えた。趣味が高じて、作曲も手がける”歌の先生”として、市内で歌謡教室も主宰するようになった。市が実施する健康事業では指導者を引き受け、開いた教室は8カ所。指導で接した市民は300人を超える。
○…念仏講の集まりは「唱楽(しょうがく)クラブ」に姿を変え今も続けている。「月に一度、薬師堂の掃除をして念仏を唱え、一緒にお茶を飲む。念仏講をきっかけに地域の高齢者が寄り合うことに意味がある」「コミュニケーションを取ることで声掛けや見守りにもつながる」。300年祭をきっかけに地域の人に”土地の文化”として再認識された念仏講。「お念仏の継承にもひと役買えたかな。せっかくだから続いてくれるといいね」と笑顔で語った。