▽「子育てがとてもしやすくて自然もたくさんある。いいところをもっとPRしてほしい」。松田町の町議選でトップ当選した平野候補の陣営にいた30代女性の言葉だ。政令市から嫁ぎ、幼小2人の子を育てながら初めて選挙運動に参加したという。新人候補が桁違いの過去最多得票で議会へ送られた背景には、こうした子育て世代の女性票が大きく動いた可能性もある。過去最低の投票率と過去最多得票、さらに大舘氏を除く現職全員が得票を減らしたことなど、今回は特筆すべき点が多い選挙だった。
▽驚くことに、松田町には過去の町長・議員選挙の記録がほとんど残されていない。地元選挙の結果調べが行政資料として引き継がれていないのだ。今年春の統一地方選挙を通じても感じていたが、松田町に限らず足柄上地域の自治体に同じことが言える。これから政治を志す人にとって過去の記録は、有効な資料になる。これを残さないのは行政の怠慢だといえる。
▽数少ない資料から紐解くと昭和50年の松田町議選では投票率「92・58%」の記録がある。そこから40年間、投票率は常に過去最低を更新している。都市部と比べればまだ高い方だが危惧すべき傾向だといえる。
▽他の事例からも投票率は、行政と議会によるところが大きい。投票率の低下は有権者の関心の薄れであり、警鐘だと理解することもできる。慢性的に続く低投票率の要因について、行政、議会ともに調査、研究しそれぞれの立場から打開策を講じるべきではないか。
▽松田町議会の平均年齢は改選で65歳となる。4年前の平均は63歳だったことから高齢化が進んだことになる。年齢だけを唱えるのはナンセンスだが、20代から30代、40代の町民が立候補しやすい環境作りに着手することも新たな課題としたい。役場OBの2人が新たに議員になり、現新あわせて3人、定数の4分の1となった。これも注視する必要がある。トップ当選の平野さんには有権者の11%の票が集まり、全国でいえば九州全土から票が集まった比率と等しい。その平野さんをはじめとする新たな議員が、どのような議員活動で4年間の任期に臨むのか、議会運営とあわせて今後に注目したい。