治水神・禹王研究会誌の編集長として郷土の歴史を研究する 関口 康弘さん 南足柄市塚原在住 59歳
来し方知り、行く末巡る
◯…県立秦野曽屋高校で日本史を教えている。南足柄市塚原の自宅から電車と徒歩で1時間以上かけていた通勤時間を、この春40分まで短縮した。「史料を読む時間を捻出したい」と、電車から車通勤に変えた。短縮した往復40分の時間をその時間に振り替えたというが「あまり変わらなかったかな?いや、そんなことない。細切れの時間が増えた。かな?」とジェスチャーが増す。学校の若手教諭が昨年、校内に日本史研究会を立ち上げた。殊の外そのことを喜んでいる。
◯…「来し方を知り、行く末を巡り考える。これが歴史の醍醐味」。子どもの頃から習わしや言い伝えが好きで、昔からの暮らしが受け継がれる地域ともごく自然にかかわってきた。中学時代、郷土史の第一人者、本多秀雄さんから聴いた話が人生の転機になった。「富士山噴火を機に、当時の人々が酒匂川の流れを変えた」。川の流れを必死の思いで変えた地域の郷土史、とりわけ近世史には思い入れが強く「いつか一冊の本にまとめたい」という。
○…1957(昭和32)年、塚原生まれ。岡本小から岡中、山北高校を経て日大へ進学した。文理学部で史学を専攻し人生の伴侶も得た。24歳で結婚した奥さんは今でいう歴史系女子の”レキジョ”で「古文書を読むのが得意」だそう。共通の趣味をもち歴史を巡る旅も重ねてきた。「読めない文書(もんじょ)があればすぐによく読んでもう。2人で1人前です」と笑みがこぼれる。
○…「好きな人物は?」という、おあつらえ向きの質問には少々悩んだあと「伊藤博文」と柔らかに受け答えた。南足柄市の市史編さんに携わった縁から治水神・禹王研究会と出会い、会誌の編集長を担うようになった。「昭和を境に日本人の漢文教養が薄れた。それでも大口堤や岩流瀬堤など地域信仰は続いている。禹王や300年前の富士山噴火も地域の歴史として伝えていく必要がある」。