来年2月に予定されていた、山北町を中心に行われている念仏信仰「世附の百万遍念仏」。このほど新型コロナウイルスの感染拡大防止のため中止が決まった。保存会の池谷一郎会長(69)は、記録上では600年にも及ぶ歴史の中で戦時下と三保ダム建設時を除き実施されなかった年はないといい「長年続いてきた行事が、こんな形で中止となり残念」と悔しさをにじませている。
神奈川県指定・無形民俗文化財の一つでもある「世附の百万遍念仏」は今から約600年前、現在の丹沢湖の地にあった世附地域周辺で始まったとされる。
百万遍念仏は、中央に導師を迎え、念仏を唱えながら男女が大数珠を手で回す「京都知恩寺型」が一般的。一方、同町で行われている念仏は、数珠を繰る際に男手だけで行う点や滑車を用いる点で他と異なる。歴史の中で「姫の舞」など4曲から成る獅子舞や、「ニ上りの舞」など狂言3曲から成る「遊び神楽」を取り入れたり、檀家の各戸を回って邪気を払うなどする「浄め祓いの舞(悪魔祓い)」も加わり、全国的にも珍しい内容になっている。
地域の安全祈願
先祖の霊を慰め、地域の安全を祈願することなどが主な目的。雨ごいの一環でもあるという。
もともとは世附地区にあった能安寺道場で行われていたが、1974年の三保ダムの建設に伴い、一時中断。77年に山北町向原に新たに寺が移設されて以降は、かつての住民に声をかけるなどしてメンバーを集め、行事が続けられていた。
池谷会長は「先人の伝統・文化の継承のみならず、住む場所がばらばらになった住民が顔を合わせられる貴重な機会」とし「1日も早くコロナが収束し、神事を再開できれば」と願っていた。
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