2021年度の神奈川の名工に選ばれた 小林 好之さん 東雄技研(株)勤務 58歳
向上心を持ち自分に厳しく
○…吉報は仕事中に飛び込んできた。「選ばれるとは思っていなかったので、知らせを聞いた時は驚きました。私を推薦してくれた会社に感謝します」と恐縮する。2021年度の「神奈川の名工(神奈川県卓越技能者)」に選ばれた。
○…FRP(繊維強化プラスチック)の製品設計・製作を専門にする東雄技研(株)(南足柄市)製造部成形2課の主任。この道37年のベテラン。事業の一つでもある形が異なるバスタブは、手積み積層(HLU)成形法で製造される。一層一層を職人の手でガラス繊維と樹脂を重ねていくので、非常に高度な管理技術を必要とする。経験とマニュアルでは示しきれないコツが高品質の製品を作り続けるカギとなっている。「効率の良い動きと繊細な手捌きがとても重要なんです」と見せる動きに無駄はない。
○…出身は静岡県。幼い頃母親を亡くし、祖父母の家で育った。「贅沢な暮らしではなかったけど温かい家庭だった」。中学3年になり、進路について悩んだ時、「祖父母や親戚は高校進学を進めてくれたが、負担をかけたくない気持ちが強かった」と、左官業を営む父親のもとで働いた。「道具のこてを使い、塗りの基礎を学んだ。今の私があるのはこの経験が大きい」と振り返る。
○…「旅番組でバスタブが映ると気になる」と苦笑い。言葉は聞き取りやすく丁寧。4人の孫の話になると終始表情は緩む。穏やかな性格かと思いきや「現場では厳しくなる」と。社員も周知の事実だが、品質への責任を自覚すればこそ。後進の育成指導にも力を入れており、これまでに23人が1級技能士を取得した。「製品にミスがあってはならない。妥協せず良い製品を作り続ける気持ちを持つ」とさらなる技術向上を目指す。