40年前、南足柄に学童保育をもたらした 小泉 美奈子さん 南足柄市塚原在住 74歳
学童保育の母
○…洞川の右岸、塚原の住宅街に「南足柄市学童保育発祥の地」がある。小学生の保護者が学童保育を営む民設民営の「南足柄スタイル」ともいえる児童福祉の原形をつくった。今年4月、40年続いた保護者による学童保育事業が行政に移管され、公設公営の学童保育がスタートする。これを前に「市内初の学童事業所を立ち上げた放課後児童健全育成事業の先駆者」として市から表彰を受けた。
○…「働く自分が好き」74歳になった今も飲食チェーン店で週5日勤務し、高校生と同じ仕事を楽しむ。二十代前半で寿退社することが定石だった時代に結婚、出産し、3人の子を育てながら夫婦共働きの生活を送った。長男の就学前に、放課後に子どもを預けられる人がいないことに気がつき近所を奔走したが「無ければ作ろう」と学童保育の開設を思い立った。
○…男社会の風土が色濃い企業で女性活躍の道を切り拓くため、労働組合の活動に取り組むようになった。同僚労働者の権利保護と待遇改善を訴え、不遇の人事も味わったがその都度「試練は修行」と割り切り、克服してきた。学童設置から10年ほど経った45歳で退職し、調理師の免許を取り、懐石料理を学ぶと、夫に背中を押され自宅を改修。割烹料理店を開いた。
○…仕事をしながら自ら保育士を探し、岡本小と岩原小に通う児童4人の受け入れで始まったマイホーム学童はやがて借家に移り、次第に各地へと広がっていった。いわば「学童保育の母」として今回、市から表彰を受けたが、その来し方よりも今は次なる目標として「子ども食堂を立ち上げたい」という。今も昔も病院とは無縁だが、小さな声で「年は取るわね」と続けた。同居する孫3人のうち小学生の2人がいま学童を利用している。店は息子夫婦が継いだ。