募金うちわの絵を描いたイラストレーター 三木 葉苗さん 湯河原町土肥在住
強い人間なんていない
○…売上の一部が被災地への義援金になる「募金うちわ」が湯河原の書店で発売されている。書店の店長が商品化したもので、そのイラストを依頼された。描くきっかけになったのは、仙台に住む知人の被災。「誰もが泣きたい気持ちをこらえて生きている」と知らされ、自然に湧いてきたものを筆先に託した。うちわのデザインという事も忘れて描いたのは一人の子ども。涙をこらえているのか、それとも泣きはらした後なのか。「最初は被災地の知人が強い人に見えた。地震や原発事故に萎縮する自分と対照的だった。でもこの世にとりわけ強い人間はいないと思う。誰もが打ちのめされながら、生きる意志だけで自分を支えているのでは」。
○…真鶴中学校のころ、国語の試験の解答用紙の裏に、先生が赤ペンで次のように書き連ねてよこした。「あなたは絶対作家になる」「国語の天才」「自分の言葉を磨きなさい」―専業主婦になった今も変わらないが、とにかく当時から国語は得意で読書好き。大江健三郎の著作を座右の書にして読み返した。言葉に携わる仕事を意識するようになり、小田原高校卒業後は日本児童教育専門学校に入学、絵本創作の道へ。東京都内でグループ展覧会を開き、企業のイメージキャラ製作などの仕事も舞い込んだ。イラスト作家としての軌跡は今でもホームページで見る事ができる。
○…人生で最も自分に影響を与えた人物は「妹」。妹は自閉症で言葉を使えない。食事や着替えの順序などに独特のリズムがあり、家族はそれに歩調を合わせながら暮らしてきた。障がいの向こうにある妹の心に近づくために。「妹の世話をしながら、注意深く表情を見ることにこだわっています。人の心って読み解くものではなく、意外と表面にありますよ」。作品群に共通するのは言葉を超えた無垢な表情と、頬の温もり。心に寄り添うくり返しが一人のイラストレーターを磨いているのかもしれない。
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