真鶴町 「忘れたくない、伝えたい」 役場職員が被災地に捧ぐレクイエム
真鶴町役場の職員が震災被災者に捧げるレクイエムを歌い続けている。収納対策課で働く矢部文治さん(46)は、昨年秋に被災地の窓口業務支援のため石巻市に派遣された。この時に現地の小学校を訪れ、津波と火災の傷痕に衝撃を受けたという。下駄箱には卒塔婆が置かれ、花や菓子が供えられていた。「家に帰れば私の子どもは元気で暮らして、当たり前のように夏休みやクリスマスを過ごしている。でも津波で亡くなった子は、そうではないんです。このギャップに戸惑った。被災地の悲しみや悔しさを何とかこっちに伝えたかった」。ギターを片手にメロディーを作りCDにして仲間に配ると、いつのまにか義援金が集まった。曲名は「ごめんね」詩は子を失った親に寄り添うように連なる。―「瓦礫の中に君の 色鉛筆が転がる ママが書いた自慢の名札も 泥にまみれる」「本当にさびしいけど まっててね いままで君がくれた 素敵な笑顔を ずっと ずっと ずっと ずっと忘れないから 本当に 本当に 本当にごめんね」―被災地の人が聴いたら辛い記憶を思い出してしまうのでは。応援歌の方がいいのではないか。葛藤しながらも矢部さんは歌い続けている。