河川敷に花畑を増やす活動を続ける「菜の花会」代表 深澤昌光さん 湯河原町土肥在住 66歳
仲間と耕す まちの四季彩
○…広大な田んぼの間に流れる小川。水草の浮く清流にミミズのついた竹棒を沈めるとウナギが食らいつく―そんな田園風景もマンションや住宅地となり、あぜ道は桜木公園やサンサン通りになった。河川敷にはペットボトルや捨てられた自転車。かつての光景を取り戻すのは無理だとしても、できる事はある。4年前、夫婦で河川敷を清掃し耕し始めると、ほどなく湯河原小時代の同級生が加わり、それを見た近隣の老人ホームの住人がジョウロを手に駆け付けてくれた。今では20人ほどに増えた仲間が鍬を振るっている。
○…「幼少の頃、家があまりに忙しく、私は配膳台に紐で結ばれていたそうです」。現在87歳の母は、家業の深澤旅館の創業者。5年後にこうする、10年後は…と詳細な目標を掲げ、その積み重ねで小さな旅館を別館を擁するほどの規模へと育て上げた。気配りの鉄人で、従業員数人が100人以上の宿泊客をもてなす光景を今も覚えている。
○…湯河原中学校を卒業後、日大三島高を経て日大理工学部へ。県職員になってからは土木一直線でひたすら「現場」を歩いた。台風で河川や港湾に被害が出ればすぐ現場。図面を起こして修復を手配する。ある日上司から湘南の小さな河口の護岸の高さを尋ねられて、答えにつまった。あまりの悔しさに土日返上で県内の現場を歩き頭に叩き込んだという。真鶴港や琴ヶ浜遊歩道の整備もそんな思い出のひとつ。今は孫とのお散歩コースだ。
○…春には菜の花畑、夏にはヒマワリ畑、秋にはコスモス畑と、会の活動で千歳川が観光名所になりつつある。「この活動を通じて町に愛着をもってもらえたら。それがおもてなしの心につながるかもしれない」。灼熱の下で水をやり鍬を振るう苦労もあるが、多く語らない。目標はオフシーズンの幕山梅林を黄色い菜の花で彩ること。できない理由のかわりに「できる」理由を常に考えている。
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