湯河原や熱海の街角で大道芸を披露している 佐竹 公輝さん 湯河原町土肥在住 21歳
引き寄せる 町の磁石男
〇…洗濯物が揺れる自宅アパートが特訓の場。取り出した水晶玉を、ふわりと空中に浮かせて見せる。このトリックは何だ?観る側に考える暇を与えず、今度は独楽を空中へ。両手には芸の修行で進化したのか、何とも細長い指。道具についた無数のカスリ傷が特訓の日々を物語る。バランス芸の練習中に頭から倒れたり、高額な水晶玉を割ってしまった事も。「本番の失敗もあります。それをネタにいかに笑いを取るか」。端正な表情の中にちらりと覗く芸人魂。今月24日に湯河原駅近くで開かれる「明店街・ぶらん市」への出演は今回で2度目。磁石のように視線をさらいそうだ。
〇…湯河原小・中学校、足柄高校を経て東海大学海洋学部へ。時折実習船に乗りながら水産業を学んでいる。高倍率の水族館スタッフを夢見て入学したが、魚を解剖したり生態を学んだりと魚尽くしの日々を送るうちに、水産業界を目指すようになった。今の研究対象はガラス瓶に詰めたプランクトン。一見すると地味だが「実に色んな種類がいます。ベールのような膜でエサを包み込んだり、触覚のような毛でエサを引っ張って食べる姿もいい」と、ペットを愛でるよう。
〇…「今は大道芸人なんですが、元々マジシャンだったんですよ」。21歳にして経歴が濃い。人を楽しませる醍醐味を高校生で知り、市販のマジック用品で教室を沸かせた。2年前に静岡で見た大道芸に感動しその場で道具を衝動買い。憧れの芸人たちから長所を少しずつ学びとり、路上公演を重ねて自分流を形作った。今では単なる芸の連発でなく、ユーモアをてんこ盛りにした「ショータイム」。芸を見せるうちにお客さんが一人増え、二人増え大喝采に…なるはずが人が寄り付かない日も。「こっちに寄ってくださ〜い、遠巻きの人を説得して披露して、やっと見せてくれた笑顔が忘れられません」。ポップな衣装の胸の奥に、消えない灯がゆらめいている。
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