真鶴町岩・兒子神社花山車の「大将」を務めた 朝倉甚さん 真鶴町在住 32歳
どんなに重くても涼しい顔
○…先月岩の兒子神社の例大祭で「花山車」を担いだ。地域めぐり鮮やかな花飾りを、傘を回すようにクルクル回す。しかしその芯は古民家の梁を思わせる極太柱。肩から下すと「ドシン」と地面が割れそう。取材でどうしても重さが聞きたくなる。関係者は「80キロ?」「いや90キロ以上」と様々だが量った事はないらしい。「それでいい」。というのが大将の持論。「雨が降って水を吸えば重くなるし、担ぐ度に重みは違う」。そうは言っても若者を束ねる「大将」のプレッシャーは半端ではない。毎晩仕事の後、柱に重りを載せて鍛えていた。ポップな色のシャツから、血管浮き立つ筋肉がちらりと覗く。
○…真鶴町岩出身。父は石材ダンプの運転手で、小学校から帰ると助手席によじ登った。背の高い運転席のパノラマは迫力満点。そのまま採石場の急こう配を揺られて下るのだ。父の隣が好きで遊ぶ暇はなかったという。真鶴中学校に入るとサッカーに没頭。山北高校では陸上、と学校生活はスポーツ三昧。3千m障害でインターハイに出場し、箱根駅伝にあこがれて大学にも入ったが、その夢は断念。父のダンプを修理していた整備工場に就職した。早く仕事を任せてもらうため、昼は働き夜は勉強。睡魔と闘いながらの長距離走の末、念願の自動車整備士資格を手に入れた。
○…自身の最大の転機を聞いてみると、神妙な声で「結婚ですね。お酒も家で飲むようになったし回数が減った。落ち着いたのかなぁ」。とは言いつつも筋肉が刺激を求めているのか。この前は熱海、今度は小田原へと、休日は神輿のために家を留守にする。「子どもも祭りが大好きでね、花山車の練習もじっと見てます。将来ですか?やるなと言ってもやるでしょ」。花山車を回した時の写真を見ると、顔は真っ赤。汗をにじませ口元だけ笑顔。子どもたちの目線を感じていたのか「軽い」と言わんばかりの涼しい表情だった。
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