例年以上の速さで「完全燃焼」 宮城野青年会の手で大文字輝く
箱根の夏を象徴する大文字が16日に点火された。大の字が輝く30分間のために2ヵ月前から準備に奔走していたのが、地元の宮城野青年会(磯一輝会長)。毎週のように標高924mの明星ヶ岳に登り、竹を刈った。本番は青年会OBも含む関係者など約80人が配置につき約350本の竹の束を横幅107mの巨大文字を点描するように並べていった。束を燃えやすくするため新聞紙をねじ込み、油をかける。眼下の夜景では無数の観客が今か今かと点火を待ち構えていた。緊張がピークに達した点火5分前、束を立てる杭の一部に揺らぎが見つかり、闇の中で打ち直しが始まる。メガホンを手に現場を指揮していた小泉万喜さん(27)と小林充法さん(25)からは次第に言葉が消えた。ベテランやOBに指示を出すと逆に「声が小せえ」と怒号が返ってきた。合図の打ち上げ花火が目の前で花開き、竹の束がザーッという音とともにまぶしい光に包まれた。
大文字の起源は大正10年に強羅を訪れる観光客のために住民たちが始めたとされる盆の送り火。今年は晴れ間に恵まれたせいか「燃え方が例年にない勢い」(小泉さん)。白い煙はオレンジ色に染まり山肌をかけのぼる。男たちは息も止まりそうな熱気の中を動きながら口々に叫んだ。「綺麗だ」「おれの夏が終わった」。