箱根・湯河原・真鶴版
公開:2015年11月20日
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虫メガネを使って彫ったのかと言いたくなる精巧な目鼻、素材は木なのに、ふんわりとした柔らかさも伝わってくる衣裳。思わず見入ってしまう彫像を作り続ける80歳が吉浜にいた。
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「売り物になるかって?とんでもない、私はまだまだですよ」。加藤寿さんが木彫を始めたのは中学での授業がきっかけだった。手先が器用だったのか、作った「まねきねこ」の出来栄えは、先生が「皆のお手本にしよう」と持ち去るほどだった。学生時代やサラリーマン時代は忙しさで彫刻刀を握れなかったが、70歳にして再び挑戦。平塚の彫刻教室に通うようになった。これまで彫った像は13作品以上。ヒノキや楠、カツラなど様々な素材を扱い、作業部屋には爽やかな香りが漂っている。彫刻刀は業者に特注するなど道具選びにもこだわってきた。今では地元湯河原の美術展や、平塚、東京上野などの展示にも出品するまでに。これまでは能役者や仏像などが多かったが、今挑戦しているのは外国人の像だ。目鼻の形が全く違う難しさもあるが、カリカリ、カリカリと刃は止まらない。