竹灯りのコンテストで2年連続最優秀作品に選ばれた 木村 弘一さん 湯河原町土肥在住 43歳
父譲りの職人魂、竹に灯す
○…この秋も湯河原の千歳川に立ち並んだ幻想的な竹灯り。そのデザイン投票で2年連続最優秀作品に選ばれた。多くの作品がドリルの穴で点描するのに対し「他とは違うものを」と、手にしたのは電動ノコギリ。透かし彫りのようにイルカや人魚を「線」で彫りぬき、運営関係者をうならせた。連覇したのに、顔に満足感はない。うつむき加減に「投票会場で色々な声を聞けて良かった。誰かに喜んでもらえたら。たとえ不評でも次への意欲が湧きます」
○…湯河原小・中学校を卒業し、沼津の高校に進学。ウェイトリフティングでインターハイに出場したスポーツ少年だった。祖父や父が木工職人だったこともあり大工になったが、季節や天候などで仕事量が大幅に変わるため、流通業界に進路変更した。今は13トンのトラックを駆り、埼玉〜神戸を往復する日々。運転席にはテレビ画面やビデオデッキ、食料などが備え付けられ、夜は座席裏に横たわる。四六時中ハンドルを握るようになったものの、胸中の職人気質は消えていなかった。「実は絵も描くんです」と数枚の紙を取り出した。搬入出の待機中に車内で描いたという鉛筆画は一見するとモノクロ写真だ。
○…長旅から帰宅した休日にはスイッチが入る。これまでやっさまつりの花車(第一分団)の彫刻や、ベンチから小さな箸箱、石鹸彫刻まで大小のリクエストに応えてきた。手の込んだ技を教えてくれたのは、父・安行さん。道具の研ぎ方に始まり、木材の置き方ひとつまで「それじゃ木がダメになる」と手厳しかった。昨年のコンテストの優勝作(鳳凰と龍)を見た時は、言葉少ないながらもほめてくれたという。”師匠”は今年4月に他界、今年は作品搬入前に仏壇に線香をあげて念じた。「見ててくれよ」。自宅には祖父と父から受け継いだ古い木工作業場があり、形見のカンナや加工機械はまだまだ現役。漂う木の香りが職人を励ましている。
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