志を抱きひたむきに
○…東日本大震災を契機に2011年4月、理学療法士によるボランティアチーム「PSVT」を立ち上げた。「理学療法士としてできる支援」を掲げ、福島や宮城、岩手の避難所や仮設住宅へ訪問を続けて3年。被災者へのリハビリ指導や情報提供などに尽力してきた。「入れ歯や杖が津波で流され、生活に困っている人たちもいた。少しでも力になりたかった」。穏やかな表情や口調からは覚悟と信念がにじみ出る。
○…福岡県出身。20歳過ぎで交通事故に遭い車椅子生活を余儀なくされた。リハビリは1年以上続いたが、元の生活を送れるまで理学療法士が見守り続けてくれ、完治した。感謝と憧れを抱き一念発起。それまで勤めていたオートバイの整備の仕事を辞め、近くの病院に「何でもやるから働かせてほしい」と頼み込んだ。昼間は病院に勤務し、夜間は専門学校に通う多忙な生活。「病院ではボイラーや車の整備や修理などもやった。不規則で大変だった」と当時を振り返る。4年後、国家試験を見事突破し、鶴巻温泉病院に就職。現在は東海大学前駅そばの「あべ整形外科」で働く。
○…趣味は登山道をランニングする競技「トレイルラン」。震災後、「体力がないと人を支えられない」と心身を鍛えるために始め、時には100Km以上のレースに出場する。2012年5月のレースでは、富士山麓の風景を眺めながら、震災と向き合った1年間を思い返し涙した。「出会った人々の顔が浮かび、生かされていることへの感謝でいっぱいになった」という。
○…現在は被災地支援のほか、県内での防災や減災にも力を注ぐ。昨年からは県の災害対策委員会や市の要援護者支援検討委員会に参加し、災害時の避難所の運営方法の提案や、医療研修の企画に携わる。「微力でも無力ではないと信じてやってきた。今後は行政や他団体とも連携を強め活動していきたい」。人々の健康と安全への想いはゆるぎない。