江戸から明治にかけて人々に愛された音楽の息吹を人々に伝えようと奔走する若者が、秦野にいる。女流清元最年少の浄瑠璃演奏家「清元延寿鏡(きよもと のぶじゅきょう)」として活動する浦田友里さん(27)=秦野市東田原在住。箏曲、清楽(しんがく)、清元節(きよもとぶし)、端唄(はうた)、哥澤節(うたざわぶし)といった伝統音楽の演奏家が一堂に会すというこれまでにないコンサート「江戸東京音楽物語」を3月31日(日)、秦野市文化会館小ホールで初めて開催する。
「初めて邦楽に触れる人に興味を持ってもらうため、エンターテインメント性にこだわる」という点で、このコンサートは一般的な演奏会と大きく異なる。既成の枠にとらわれず、曲の間に紙芝居や落語のような語りで解説を入れ、公演を一つの舞台作品として楽しんでもらう事を目指している。
浄瑠璃のほか、箏曲と、三味線音楽”哥澤節”の演奏家でもある浦田さん。今回の公演を思いついたのは、伝統音楽が「今の形のまま保存されるべきもの」と認識されていることに危機感を覚えているからだ。「歴史の中で弾圧や戦争などから立ち上がり平成まで続いてきたのは、それぞれの時代の流行を取り入れてきたから。庶民に愛されてきた楽しいものだということをより多くの方に知ってほしいんです」
自らの思いとコンセプトを伝統音楽の演奏家たちに説明し、協力を求めた。浦田さんに幼少期から箏を指導してきた杉山裕子さん=横浜市在住=は話を聞き、二つ返事で了承したという。「一般的に難しく取っ付きにくいと思われがち。(浦田さんは奏者として)未熟な面もあるが、若い人が発信することで、広い方に見て頂きやすくなる」と期待を寄せる。
初めての人が「面白い!」と感じるように
企画・構成は浦田さんが自ら担当。江戸時代の古典から始まり、明治終わりに西洋の技法を取り入れて作曲された箏曲「水の変態」で終幕する。時代を追いながら、人々に愛されてきた音楽の姿を伝えていくのがねらいだ。敷居を下げたいと、ポスターは江戸娘に扮した自らの写真を使い、敢えてポップに仕上げた。
初めて聴く人のため比較的新しい曲ばかりを集めたり、紙芝居で解説を入れたりすることに対しては「本当に良い演奏だったら誰にでも伝わる。修業が足りないのでは」という声もある。浦田さん自身、「自分は上手なわけでも研究者でもないのに」と葛藤することもあるというが、「それでも初めての方にも楽しんでもらいたい。これを入り口に、いずれ、本来の形の伝統音楽を知ってほしい」と前を向く。
公演は午後2時から。一般1500円、学生1000円。問い合わせは浦田さん【携帯電話】090・8317・5395へ。チケットは文化会館で販売中。
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