工業製品の窒化処理を手掛ける株式会社極東窒化研究所(秦野市三屋42/武田康秀取締役社長)が、一般消費者向け商品「chicca mesh」(チッカメッシュ)を開発した。自社の工業技術を活かして対企業依存の体質から脱却し、新たなビジネスモデルを構築するとともに独自ブランド創出を目指していく。
極東窒化研究所は、60年以上窒化処理を専門に行う企業。1957年に小田原市で創業し、80年に今の場所に移転した。
窒化処理とは、鋼の表面を硬く仕上げる手法。耐摩耗性・耐疲労性・耐腐食(錆)性・耐熱性を向上させ金属寿命を伸ばすもので、同社の技術はショベルカーのエンジン回り等に施されている。
ぶつかった壁と一つの気づき
かねてより自社のオリジナルブランドを作りたいと考えていた武田社長。きっかけは、綾瀬市の株式会社ナウ産業が開発した「Tetsu Nabe」の窒化処理を請け負ったことだった。
社長就任を機に、一般向け商品の開発に着手。自身が料理好きなこと、錆びにくく油馴染みが良い窒化処理は調理器具との相性もいいことから最初はフライパンに挑戦したが、早くも2つの壁にぶつかった。
一つは窒化処理という言葉の馴染みのなさ。工業用の高い技術は使えば良さが伝わるが、一般的でないため言葉で伝えるのは困難を極めた。もう一つは既存の他社製品。窒化処理のフライパンは技術そのものより、ブランドで購入されていることがわかったという。
そこで目を付けたのが、以前窒化処理を手掛けたことがあるアウトドア用の焼き網だった。使い捨てに等しい網を錆びにくくして熱変形を防ぎ、焦げ落としなど手入れも簡単にすることで長く愛着を持って使えるのではと考えた。
デザインにもこだわり、網に刻印されたロゴはデザイナーに依頼。窒化後の色味も試行錯誤した。また、近隣企業の技術で作りたいと自社で賄えない部分は飛び込みで営業し、思いを同じくする協力者を増やした。
ブランド確立と地域活性目指し
完成品をクラウドファンディングサイト「Makuake」に出したところ「こんな商品を待っていた」など初日から好反応で、目標500万円に対し昨年11月25日からの開始約1カ月で437万円に。小田原市のキャンプギア専門店や市内キャンプ場の滝沢園でも好評で、仕事に広がりも出ているという。
今後については現在、販売用ウェブサイトを構築している。「これを足掛かりに自社ブランドを確立し、いずれ気軽に立ち寄れるショップを作りたい。企業間連携だけでなく、キャンパーが秦野を周遊することで地域活性に役立てば嬉しいですよね」と展望を語った。
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