かながわ みんなのSDGs

かながわSDGsパートナーとは

神奈川県では、企業・団体等における SDGsの取組拡大を目的に「かながわSDGsパートナー」制度を立ち上げ、これまで多くの企業や団体等にパートナーになっていただいています。
また、パートナー間の異業種交流やマッチング等を行い、 SDGsの推進に向けた新たなビジネスを創出する場として、かながわSDGsパートナーミーティングを開催しています。

かながわ みんなのSDGsとは

SDGsの取組を進めている又はこれから取り組もうという企業・団体等に対しヒントとなるような取組を「かながわSDGsパートナー」から募集し、「見える化」する制度です。令和4年度から始まったこの制度では、ご応募いただいた中で特にみんなの参考になる取組を表彰しており、3回目となる令和6年度は41の企業・団体等から56事例が集まり、パートナー6社を表彰しました。また、令和6年度からは新たに「みんなのSDGs連携賞」を設け、2者以上のかながわSDGsパートナーが連携して実施した取組についても表彰しています。令和7年度も9月16日から取組を募集しました。
詳細はこちら

表彰の種類

自社・自団体の取組
  1. ①みんなのSDGs賞
    取り組みやすい事例をパートナーや企業・団体等による投票にて選定します。
  2. ②神奈川県中小企業診断協会賞
    神奈川県中小企業診断協会が、中小企業診断士の知見から社会課題への貢献度を評価し選定します。
パートナー2者以上の連携の取組
  1. ③みんなのSDGs連携賞
    2名以上のパートナー同士が連携して実施した取組を有識者等による審査会で評価し、選定します。

【募集する取組】

①② : かながわSDGsパートナーが行うSDGsに向けた取組のうち、次の視点に一つでも該当する取組を募集します。

  • ぴぴっとくる
    直感的に良いと感じ、共感できる内容である
  • 実施効果
    効果が明確であり、行動変容につながる内容である
  • 取り組みやすさ
    取組の内容がわかりやすく、他の企業・団体等でも実践しやすい内容である
  • 費用・労力
    多大な資金、人材を要さずとも実現可能な取組である
  • 継続性
    自社の本業を通じた取組で企業価値(人材確保、ブランド力等)を高めている

③ : 2者以上のかながわSDGsパートナーが連携して実施する(した)取組のうち、連携ロゴマークの審査を通過した事例を募集します。

※連携ロゴマークの詳細はこちら

令和7年度の募集について

令和7年度もみんなのヒントとなる取組を募集します。
ご応募いただいた取組は全て県ホームページで公表し、中でも特に他者の参考となる取組は、令和8年2月のテクニカルショウヨコハマ内での表彰やリーフレット等で広く発信します。

【募集期間】

令和7年9月16日(火)~令和7年11月15日(土)

※募集は11月15日で終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました!

【対象者】

かながわSDGsパートナー
※パートナーは随時募集しており、パートナー登録申込みと同時に、かながわ みんなのSDGsにもお申し込みいただけます。

みんなのSDGs連携賞のみ : 2者以上のパートナー同士で連携した取組を実施した企業・団体等

【応募方法】

次の応募フォームより応募申請書の提出をお願いします。

※自社・自団体の取組の応募はこちらから

※パートナー2者以上の連携の取組の応募はこちらから

※かながわSDGsパートナーの登録はこちらからお申し込みください。

【応募用紙】

かながわ みんなのSDGs募集要項 PDF

応募申請書(自社・自団体の取組) PowerPoint

応募申請書(パートナー2者以上の連携の取組) PowerPoint

記載例 PDF

令和6年度 かながわ みんなのSDGs
受賞パートナー取材記事

神奈川の海岸線435kmを歩いてごみ拾い
顕在化した課題と今後の対応策
自分たちが暮らす神奈川県の海岸のごみはどんな状況なのか―。
海洋プラスチックごみ問題の啓発活動を行っているNPO法人海の森・山の森事務局が2020年4月から始めたのが、令和6年度「みんなのSDGs賞」を受賞した「プラごみバスターズ事業」です。神奈川県の海岸線を毎月1回、一筆書きのように歩いてごみを拾い、プラごみ分布の実態を調べました。最西端の湯河原から最東端の多摩川河口まで、海岸線の距離は435km。活動は全60回、4年9カ月におよび、回収したごみの総重量は3tを超えました。集めたごみのデータを分析していくと、効率的に神奈川県の海岸を美化するためのヒントが見えてきました。
「海の素晴らしさだけでなく、海の現実も知らせなければ
代表の豊田直之さんは、国内外の海を撮影するプロの水中カメラマンです。20年ほど前、海を漂うレジ袋が目につくようになり、一部の国ですでに問題視されていた海洋プラごみが、日本の海でも増えつつあることを実感したと言います。水中カメラマンとして「海の素晴らしさだけでなく、こうした現実も多くの人に知らせなければ」と、海の様々な姿を記録した写真スライドショーに合わせて音楽家が生演奏する「ビジュアルコンサート」を開催。好評を博し、個人での運営が難しい規模になったことから2012年に法人を設立しました。その後、次第に世の中が海洋プラスチック汚染やマイクロプラスチック問題に注目するように。活動も脚光を浴びました。
インタビューに答える豊田直之代表
インタビューに答える豊田直之代表
海岸のごみ拾いならコロナ禍でもやれる!
そんな中、新型コロナウィルスが流行します。活動をやめる団体もありましたが、メンバーで話し合い「自分たちでやれるだけのことをやろう」と決めました。そこで出たアイデアが海岸の美化活動です。「考えてみたら神奈川の海岸のことは、よく行く一部しか知らないんです。それなら全部歩いて見てみようかって……」。
翌朝、湯河原を出発。“3匹のおっさん”と称した60代のメンバー3人による「プラごみバスターズ」の活動がスタートしました。ごみを拾いながら海岸を歩くといっても地形は様々。
砂浜だけでなく港湾、ロープにぶら下がって進むような険しい岩場もあります。
だからこそ安全管理を徹底。仕事や磯釣り経験で培った的確な気象予測で活動日を決め、津波警報などに備えて避難ルートも調べました。下見をし、毎回複数の終点候補地を用意していましたが、駅からも遠くバス便もわずかな地域もあり、頭を悩ませたことも。三浦半島では、潮が満ちると道がなくなる箇所も多く、時間との闘いになることも少なくありませんでした。
険しい岩場が続いた真鶴半島
険しい岩場が続いた真鶴半島
集めたごみの7割が岩場や磯場に集中していた
集めたごみの7割が岩場や磯場に集中していた
ごみの量が多い半島部を重点的に清掃することが美化への近道
こうして集めたごみの累計3t50㎏のうち2tがプラごみで、三浦市と横須賀市のごみが全体の65%を占めていることも分かりました。海岸線の距離が長いことを考慮してもその量は多く、東京湾と相模湾に浮遊するごみが、潮の流れや風の影響で突き出た半島部に引っかかると考えることができました。豊田さんは「この結果からいくと三浦と横須賀、次に多かった真鶴付近のごみを集中的にみんなで拾えば、あっという間に神奈川の海をきれいにできるはず」と話します。
横須賀・久里浜付近。活動に参加する仲間も増えた
横須賀・久里浜付近。活動に参加する仲間も増えた
最も量が多かった三浦・雨崎
最も量が多かった三浦・雨崎
一方、横浜・川崎の港湾エリアでは、船から荷物を積み込むために待機している大型車両のドライバーが飲食物のごみや、し尿をペットボトルに入れて投棄している状況を目の当たりに。「都内のふ頭のようにトイレや広い駐車場を備えたコンビニもないため、道路の中央分離帯の手入れされていない植栽部分がごみ捨て場になっていました。風が吹けばごみは海へ飛んでしまいます」。事務局では早速、実験的に植栽をなくすことや、待機するドライバーが求める設備を整えることなどを横浜市へ提案したと言います。
横浜に入るとこれまでの天然海浜から景色も一変
横浜に入るとこれまでの天然海浜から景色も一変
さらに今回、15市町を歩いて気付いた大きな問題は、自治体によってごみの分別方法が異なることです。市境を越えた瞬間に「もえるごみ」が「もえないごみ」として扱わなければならなくなり、袋を入れ替える必要が生じました。「焼却場のこともあるのですぐに実現するのは難しいかもしれませんが、神奈川県にはぜひ『全国で初めてごみの分別基準を統一します』と宣言してもらいたい」と豊田さん。
終着点の多摩川河口までのごみ拾いを笑顔で終えたメンバー
終着点の多摩川河口までのごみ拾いを笑顔で終えたメンバー
素晴らしい景観を楽しみながら一緒にごみ拾いを
活動中、景観の素晴らしい場所が多くあったそうで、今後は景観を楽しみながら親子でごみの多かったエリアを美化する企画をしたいと豊田さんらは思い描いています。
また、岩場の奥などに入り込んだマイクロプラスチックを人の手で回収する作業には限界を感じたと言い、体内にプラスチックを分解するバクテリアを持つとされる「フナムシ」に着目。研究者を訪ねて話を聞き、いずれ海岸美化に活用することを考えて自宅で飼育もしているそうです。
法人ではほかにも学校での出前授業などを行っています。社会全体のプラごみへの意識はまだ低いと豊田さんは憂いていますが、「子どもたちが危機感を持って取り組んでいる姿を見ると、この子たちの未来を奪うことできないと感じます。これからも一緒にやりましょうと呼びかけていきたいです」と話していました。
団体概要
  • NPO法人海の森・山の森
  • 設 立 2012年
  • 所在地 横浜市
事業内容
神奈川県の海・山・川・森といった豊かな自然を次世代につなげるべく、写真・音楽・映像・語りを組み合わせた表現活動、地域に根差した清掃・調査・体験の場づくりなどを通じ、自然と人のつながりを実感できるさまざまな活動を実施。
ケアする人をケアしたい
カフェスタイルで悩みを語り合う
「ケアラー」とは、家族や近親者たちの介護、看護、療育などを無償で行う人のこと。なかでも、育児と介護を掛け持ちで行う「ダブルケアラー」、仕事と介護を両立する「ビジネスケアラー」、病気の家族の世話や家事などを18歳未満の子どもが日常的に行う「ヤングケアラー」が近年増加し、社会問題となっています。令和6年度「みんなのSDGs賞」を受賞した一般社団法人MilkyWayは、ケアする人をケアする取り組み「ケアラー支援」を行っている団体です。
「介護を受けていることを近所に知られたくない」と嫌がる当事者、「施設ではなく住み慣れた自宅で面倒をみてあげて」と主張する遠方の家族――。「本人たちは悪気なく発した言葉でも、それがケアラーを追い詰め、社会から孤立させてしまうことがあるのです」と話すのは、同法人代表理事の小林貴喜さん。自らの状況を周囲に話すこともできず、勉強や遊びなど自分の時間を犠牲にして家事をする子ども、働き盛りにも関わらず親の介護のために仕事を辞める人が世間には多くいるのだそうです。
これに追い打ちをかけるのが、団塊の世代が全員75歳以上となり、社会に大きな影響を及ぼすとされる「2025年問題」。近いうちに福祉の分野でも人手不足が深刻化し、社会保障費の増加などケアラーの負担がさらに大きくなることが予想されます。こうした状況を危惧した小林さんは、「ケアする人をケアする仕組みの構築を急がなければならない」と、2023年7月に有志とMilkyWayを立ち上げました。その後、チャリティバザーなどで活動資金を集め、翌年には市民活動団体として拠点のある小田原市に登録。さらに、「同じ思いをもった人たちが活動を続けやすくするためには、形づくりが必要」として、2025年1月に法人化しました。
気軽な雰囲気のなかでケアラーの悩みを語り合う
ケアラーズカフェLuanaの様子
ケアラーズカフェLuanaの様子
MilkyWayの主な活動は、月に一度開催する「ケアラーズカフェLuana」。Luanaとは、「仲間と楽しむ」「くつろぐ」という意味のハワイ語で、カフェに集うケアラーたちはお茶やお菓子を楽しみながら、他人に相談できなかった悩みや苦労をリラックスした雰囲気のなかで語り合います。参加者は50~70代が中心。介護や福祉は周囲から閉ざされた一面もあり、ケアに携わる人たちの精神的な負担も大きいことから、同じような境遇にある人と話をして本音や弱音、愚痴を言い合う機会も大切なのだそうです。
カフェに参加するMilkyWayのスタッフは、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士など、医療や介護の専門家が多く、小林さんも看護師です。ただ、カフェではケアラーもスタッフも対等な立場。「相談は公的機関が担うもの」として、「皆で一緒に考える」というスタンスを大切にしています。「自分と似た悩みをもっていたり、苦労している人たちと話すと心が整理され、不安も少し解消されるものです」と小林さん。
ヤングケアラーをテーマにした映画「猫と私と、もう1人のネコ」の上映会の打ち合わせ後。中央は監督の祝大輔氏
ヤングケアラーをテーマにした映画「猫と私と、もう1人のネコ」の上映会の打ち合わせ後。中央は監督の祝大輔氏
ケアラー支援に賛同するソプラノ歌手の増田望美さんによるチャリティーコンサート
ケアラー支援に賛同するソプラノ歌手の増田望美さんによるチャリティーコンサート
このほか、ヤングケアラーをテーマにした映画上映会や講演会、チャリティーコンサートの開催、広報誌を作成して公共機関や病院に配架するなど、ケアラー支援を周知するために積極的に活動しています。
ヤングケアラーなどケアラーに関する知識を深めることを目的に開催した講演会
ヤングケアラーなどケアラーに関する知識を深めることを目的に開催した講演会
理想は誰もがお互いにケアしあえる社会
実は、小林さん本人もヤングケアラーだった過去があります。「小中学生の頃、父は精神疾患を患っていました。母はパートの仕事を3つ掛け持ちしていたので、私はひんぱんに病院に付き添わなければなりませんでした」。周囲から投げかけられる「お父さんも好きで病気になったわけじゃないよね」という言葉。その度に心の逃げ場がなくなり、部活動も友人と遊ぶこともあきらめざるを得ませんでした。看護科のある高校に進学したのも、「奨学金をもらえる学校だったから、家計の負担にならないように」というのが理由。小林さんは自身の体験に重ね、「子どもだから、自分の置かれた境遇に疑問をもつことなく過ごしているケースも多い」と、ヤングケアラーの難しい状況を語ります。
カフェの参加者はのべ98人におよび、「苦労しているのは自分だけじゃないと励まされた」「心の整理がついた」という感想が聞かれるなど好評です。今後について、「人は生きている限り、ケアする側にもケアされる側にもなりうる。だからこそ、誰もがお互いにケアしあえる関係が当たり前になることが理想です」と小林さん。また、理事で行政書士の神名部耕二さんは、「私たちの活動を長く続けていくために、後継者を育てなければならない。ただ、将来的にはケアラーを支援する社会制度が必要だと思います」と話してくれました。
理事の神名部耕二さん
理事の神名部耕二さん
代表理事の小林貴喜さん
代表理事の小林貴喜さん
団体概要
  • 一般社団法人MilkyWay
  • 設 立 2025年
  • 所在地 小田原市
事業内容
福祉等の知識や経験をもつメンバーにより、あらゆるケアをする人をケアする「ケアラー支援」に取り組んでいる。主な事業は、ケアラー同士が交流し悩みを共有する機会の創出を目的とした「ケアラーズカフェLuana」や、講演会の開催等。
「6年で社長になろう!」を打ち出し
水道屋さんに若者を呼び込む
小池設備は1972年に創業、「まちの水道屋さん」として学校などの公共施設や病院、マンション、一般住宅などの水回りや空調工事、道路の水道管の敷設や改修などの事業を展開してきました。
小池社長は、若い世代に水道工事業の魅力を伝え、新たな担い手となってもらえる活動をすることで、安全・安心な水が得られるインフラを守っていこうとしています。
前身もいえるMDGs(国際ミレニアム宣言)が2000年に掲げられたときから関心をもち、SDGsの17の目標が設定されたことで、会社の価値観を個人の活動に落とし込む有用なツールとして中小企業でも活用できると考えたそうです。
「最短6年で社長になろう!」という独立支援で若者を建設業に呼び込む活動が認められ、神奈川県中小企業診断士会賞を受賞しました。
職業として選んでもらうには、まずは水道屋さんの活動を知ってもらうこと
小池重憲 代表取締役
小池重憲 代表取締役
建設業のなかでも水道屋さんが進路として選ばれない理由のひとつに、存在が知られていないことがあると、小池重憲社長は言います。そこで、まずは水道屋さんを知ってもらおうと始めたのが、学校での出前授業です。相模原の近隣の小中学校をはじめ、SDGsに関心の高い横浜、最近は横須賀などにも出かけています。
子どもたちの前で水道屋さんがどのような仕事をしているかを話したうえで、学校の施設を見せて体験を与えます。トイレの天井を覗いてどのように水道管が張り巡らされ、水がどこからどこに流れていくのかを見せると、子どもたちはびっくりして興味を持つようになるといいます。水道管での椅子づくりなど、楽しんでもらいながら水道屋さんの仕事を紹介しています。
水道屋さんを知ってもらおうと小中学校で出前授業を行っている
水道屋さんを知ってもらおうと小中学校で出前授業を行っている
これからのインフラは独立のチャンスが大きい世界
あわせて、全国の若者を呼び込み、社長になってもらって地域の水道屋さんとして活動してもらおうという「独立支援」を始めました。主に全国に20校ほどある高校の設備科を行脚して、採用活動をしています。これまで関連する学科も含めて延べ200校は回ったといいます。
ただ水道屋さんをするだけならわざわざ神奈川に来る理由としては弱いので、「うちで働いて水道屋の社長になってみませんか」と提案し、6年で社長として独立できる制度を打ち出しました。
高齢化が進むなか、跡継ぎに悩む地方の水道屋さんも少なくありません。そうした水道屋さんに入って後継者となったり、会社を買い取って跡を継ぐのもひとつの道です。
まちの水道屋さんが廃業してなくなると地域全体が困ります。採用した若者がいずれ地元に戻って社長になればその地域の水道屋さんの維持につながり、協力しあえる同業者のネットワークもできます。
宮城、新潟、熊本、鹿児島などからこれまで10名ほどを受け入れ、社長として独立する者も出てきました。約30名の社員のうちほぼ4分の1が20代。
いずれ社長になりたい、というモチベーションの高い若者が入ってくることは、他の社員にも刺激になります。
人材が定着しないといわれる建設業界ですが、ここ数年の離職率は3%程度。
「最短6年」という期間を打ち出していることで、その間は頑張ってみようという意識づけにつながっているようです。
神奈川で一緒に働き、全国へ。若者の独立支援をサポート
神奈川で一緒に働き、全国へ。若者の独立支援をサポート
顧客目線での相談を受けやすい 女性の活躍にも期待
女性にも積極的に建設業界に来てほしいと小池社長は訴えます。
「当社にも女性の職人がいますが、仕事ぶりは男性とそれほど変わらないし、家を建てるとき現場に女性がいると、女性のお客さんも水回りの相談がしやすいようです」
これまでは高卒と中途中心の採用でしたが、これからは大卒の採用も視野に入れています。
「起業したいといういまの若い子たちはITの世界に進むけれど、みんな行くから競争が激しい。それに比べてインフラはDX化も進んでいないぶん、競合も少ないブルーオーシャンです」
高卒の新入社員だけでなく、この春も他業界から2人、30代を中途採用しました。八潮の道路陥没事故をきっかけに、インフラに興味を持ったのが入社のきっかけだったといいます。
小池設備での経験を経て自立した人が地元に戻り、社長になって地域に根を張る点になる。その点をつなぐ線のような存在になりたいと、小池社長は将来への展望を語ります。
団体概要
  • 株式会社小池設備
  • 設 立 1973年
  • 所在地 相模原市南区
事業内容
給排水・衛生設備・換気・空調設備工事、送配水管敷設・下水管布設工事、水回りのリフォーム
授業で使用した書道紙が回収され
再び書道紙として生まれ変わる
主に書道家の有志で構成される一般社団法人エコ再生紙振興会が取り組んでいるのは、学校の授業などで使用した書道用紙(反古紙ほごし)を回収し、「未来箋」と称した再生紙にして再び子どもたちへ還元する「書道紙リサイクルプロジェクト」です。これまでに資源化した書道紙は120t以上。活動の背景には、「環境社会に適応した書道文化を未来につなげたい」という書道家たちの“書道愛”がありました。同会の設立や活動において中心的な役割を担う事務局長の池田光希さんにお話を伺いました。
廃棄するしかなかった書道反古紙―。「再生はできないか?」
設立の経緯や活動について語る池田光希事務局長
設立の経緯や活動について語る池田光希事務局長
一般社団法人エコ再生紙振興会は、SDGsという言葉が生まれるよりも早い、2011年に設立されました。きっかけの一つは、池田さんが開いていた書道教室に通う女の子の一言だったそうです。「練習した紙に私が朱墨で花丸を書いてあげたら『もったいなくて捨てられない』って言うんです。捨ててもいいよとも言いづらくて」と池田さん。当時教室は200人を超える大所帯で、可燃ごみとして廃棄する反古紙の量にも頭を悩ませていました。そこで考えたのが、反古紙をごみとして捨てるのではなく、再生する仕組みづくりです。
しかし、書道紙に染み込んだ墨は溶解して落としきることができないため、その扱いはほとんどの古紙工場で“禁忌品きんきひん”。全国を探し回ってようやく、運搬や原料化、そして製品化に協力してくれる企業が見つかりました。工場での試験を重ね、墨を落とすのではなく、薄める独自の技術で完成したのが灰色のエコ書道紙「未来箋」です。池田さんは「世の中はごみの削減に取り組んでいるのに、書道は活発になるほどごみが出てしまうのです。書道のことは書道家がなんとかしなければと思いました」と話します。この思いに賛同した書道家約10人が集まり、活動が始まりました。
全国に広がった学校でのリサイクル活動。環境教育の教材にも
書道教室や団体などからも反古紙を回収していますが、「子どもたちの手から、そして子どもたちの手へ…」というコンセプトを掲げ、特に力を入れているのが、書写や書道の授業でたくさんの書道紙を使用する小中学校と協働する活動です。反古紙を子どもたちの手で集めてもらい、それらを回収して「未来箋」として再生、子どもたちへ還元して授業で使用するサイクルを構築しました。
現在参加校は北海道から九州まで150校以上あり、神奈川県内では西部地域1市8町で全小学校がこの取り組みに参加するまでになっています。「小学校の書道では準備や片づけの時間もあるので、1回の授業で書くのは5枚程度。年20時間授業があれば廃棄される反古紙は1人あたり100枚、約300gになります(書初め用紙は除く)。書道の授業が始まる3年生から6年生の全児童数分の反古紙がこれまでごみとして排出されていましたが、私たちの活動によって教材によみがえり、ごみ処分費の削減にもつながっているのです」と池田さんの言葉にも熱がこもります。
使用済みの書道紙を集める児童
使用済みの書道紙を集める児童
活動に参加することで子どもたちの意識も変わったと、環境教育の面でも評価されています。「ゆるく寛容にやっている」という中で、唯一定めるルールは「集める反古紙は丸めないこと」。その理由は、丸めるとかさばって工場へ一度に運搬できる量が減り、車で何往復もしなければならず環境に負荷をかけてしまうことに加え、工場の床に散乱することを防ぐため。これを子どもたちに伝え、理解した上で協力してくれるのだそうです。「当初はグレーの書道紙を受け入れてもらえるか、子どもたちが集めてくれるかと心配でしたが、今は灰色の紙を意識してくれていて、集め方も変わってきました。参加してくれる学校をはじめ、各自治体の協力に感謝しています」と池田さんは話します。
子どもたちが使う「未来箋」、紙質の向上に書道団体が協力
学校で使用する一般的な市販の半紙は、薄口で破れやすい欠点があります。一方、未来箋は児童が集めた半紙だけでなく、活動に参画する11の書道団体が回収した高級な書道用紙を混ぜて仕上げられています。そのため、色こそ薄いグレーですが、厚口のしっとりした紙質で使い心地も好評です。「筆を持つ子どもと大人の合作に、未来箋の魅力を感じてもらいたい」と池田さんは微笑みます。
再生パルプ工場・株式会社國光横須賀事業所(横浜市金沢区)で圧縮梱包された約14tの書道反古紙。半紙を丸めずに回収されたことが分かる
再生パルプ工場・株式会社國光横須賀事業所(横浜市金沢区)で圧縮梱包された約14tの書道反古紙。半紙を丸めずに回収されたことが分かる
「SDGsって、誠実に、寛容に、愛をもって生きることだと思う」
未来箋を販売して活動の原資にしてはいるものの、活動が年間200日にもおよぶ池田さんの人件費すら捻出できず、あくまでも書道のためのボランティア。回収した膨大な反古紙を、自宅の敷地に一時保管するなど自己犠牲を伴うこともあると言います。しかし、「世のため、書のため、子どものために」という思いとは裏腹に、書道紙の販売をする“業者”として扱われてしまう悩みもあるのだそう。「収益ありきではなく、教育補助協力者という奉仕の立場でいたいです」と池田さんは話します。
活動を始めた当初はSDGsという言葉がなかったこともあり、実は未だにSDGsを実践している実感はないのだとか。「例えば豆腐の容器はプラごみになりますが、シェアが大きいため、メーカーがそれを全て回収するのは大変です。でも書道界の規模なら不可能ではありません。社会的責任として書道家が半紙をごみにせず再生している姿は、他の業界でもモデルとして役に立つはずです。SDGsとは、誠実に、寛容に、業界への愛を持って生きることじゃないかな」。
現在、全国から毎月500㎏ほどの反古紙が集まりますが、未来箋への再生率はその内の5分の1程度。「まだまだ普及は足りていません。いろいろな困難はありますが、伸びしろ、すなわち未来もある。それを楽しみながらやっていこうと思います」と池田さん。書道はユネスコ無形文化遺産に申請されましたが、「書道離れが進んでいると感じますが、当会は書道の活性化を図ることが最大の目標。書道紙のリサイクルは大変地味な活動ですが、環境保護の観点でも重要な役割があると信じ、普及に努めたいと思います」と話していました。
団体概要
  • 一般社団法人エコ再生紙振興会
  • 設 立 2011年
  • 所在地 横浜市
事業内容
学校などの授業で使用した書道紙を回収してリサイクルし、「未来箋」として再び子ども達へ還元するプロジェクトに取り組んでいる。活動は全国に広がっており、毎年約8t以上のごみ削減につながっている。プロジェクトは小中学校の教科書にも掲載されている。
地元の自慢や未来に残したいものを描き
壁紙の端材をアート作品に再生
神奈川県内のSDGs推進を目的に、活動に取り組む企業や団体などを県が登録する制度「かながわSDGsパートナー」。ともにこのパートナー企業で、全国25都府県で放課後児童クラブを運営する株式会社明日葉と壁紙の企画・製造を行う株式会社デコリアは、それぞれの強みをマッチングさせた取り組みが評価され、令和6年度「連携賞」を受賞しました。
左からデコリアの小島社長、久保寺さん、明日葉の澤田部長、中村さん
左からデコリアの小島社長、久保寺さん、明日葉の澤田部長、中村さん
壁紙の端材が大きなキャンバスに
両社の出会いは2023年。かながわSDGsパートナーの異業種交流などを目的に毎月開催される「かながわSDGsパートナーミーティング」がきっかけでした。「ともに小田原市のSDGsパートナーにも登録されていることを知って意気投合し、一緒に何かできないかという話になって」とデコリアの小島健司社長。小田原市で開催が予定されていたSDGsの普及啓発に向けたイベント参加を目標に掲げ、準備に取り掛かりました。
打ち合わせを重ね、実施が決定した取り組みは「黒板壁紙端材を使った『SDGsアート』制作」。壁に貼ると黒板のように描けるデコリアの壁紙の端材に、明日葉が運営する放課後児童クラブの児童たちが絵を描くというものです。
壁紙の製造過程で発生してしまう端材の量は、一カ月間で20tほど。一部は猫用トイレのチップとして再利用しているものの、やむを得ず廃棄処分せざるを得ないこともあります。そこで、1枚あたり幅92㎝×長さ200cmほどの端材を大きなキャンバスに見立てることで、「子どもたちに伸び伸びと描く体験をさせてあげられるのではないか」と話がまとまり、初年度となる2023年度は小田原市内に25カ所ある放課後児童クラブを対象に実施することが決まりました。
これに先立って、デコリアの社屋がある学区の小学校で出張授業を開催。デコリアが取り組む活動を通じてSDGsについて説明しました。講師を務めたデコリアの久保寺健二さんは、「子ども達は授業で学んでいることもあり、SDGsの理解度がとても高くて驚かされた。子ども達と接することで自分自身の視野も広がり、良い経験になりました」と感想を話してくれました。
小学校で実施したSDGsの出張授業
小学校で実施したSDGsの出張授業
自分の住む地域の魅力を実感する機会に
描く作品のテーマは全クラブ共通で、「未来につなげたい!私たちの魅力ある小田原」。夏休みを利用し、約1800人の児童が各クラブで制作に励みました。まず取り組んだのは、描く絵の内容を決めるためのブレインストーミング。自分たちの住む地域の魅力や特色などを、思い思いに付箋紙に書き込みました。お祭り、神社仏閣、商業施設、出身の有名人……。明日葉運営管理部の澤田栄一部長はアイデアがあふれ出す様子を目の当たりにし、「子ども達は地域を意識する機会になったのではないか。郷土愛を醸成させるためにも、活動を継続することが大切だと感じました」と話します。
付箋紙に書くことで話すのが苦手な子も参加しやすい
付箋紙に書くことで話すのが苦手な子も参加しやすい
ブレインストーミングでは、自分の住む地域の自慢があふれ出した
ブレインストーミングでは、自分の住む地域の自慢があふれ出した
こうして集まったアイデアを元に描かれた作品は、小田原市で開催されたSDGsイベントの会場や市内の施設に展示。「同じテーマで描いたからこそ作品の違いがはっきり表れた」と小島社長が言うように、漁港、農産物、生息するサル、ラーメン店、商業施設など各地域の特徴が色鮮やかに描かれ、観る人を楽しませました。
壁紙の端材に色鮮やかに描かれたSDGsアート作品
壁紙の端材に色鮮やかに描かれたSDGsアート作品
小田原市のSDGsイベント会場で紹介された作品
小田原市のSDGsイベント会場で紹介された作品
翌年には、新たに南足柄市、山北町、湯河原町、大磯町、静岡県長泉町を対象地域に加え、明日葉が運営する44カ所の放課後児童クラブで実施。各市町の1校ずつで出前授業も行いました。また、Web会議ツールを使用した発表会も開催し、2市4町の代表クラブが出席。それぞれ「自分の地域に残したいもの」をテーマに描いた作品を解説し、お互いの地域について学びあいました。
Web会議ツールを通じて行われた作品発表会
Web会議ツールを通じて行われた作品発表会
SDGsは経済的価値と社会的価値のバランスが大切
「企業にとってのSDGsの取り組みは、経済的価値と社会的価値のバランスがとれてこそ継続できるもの。今回の活動は、社員のワークエンゲージメントの向上や人材の確保にもつながり良い取り組みでした」と振り返る小島社長。澤田部長も「放課後児童クラブを運営する事業は、地域の方よりも地域について詳しくなければならない。SDGsアート制作に携わることで子ども達から地域を知る機会になり、異業種の人と連携することで新しい発想が芽生えることも学びました」と達成感を口にします。廃棄される端材をキャンバスとして再利用すること、自分の住む地域の自慢を描くことを通じたシビックプライドの醸成。SDGsの目標である「つくる責任、つかう責任」「住みつづけられるまちづくり」を実践する企画は、参加した児童だけではなく、両社にとっても価値あるものになったようです。
国立印刷局で開催されたイベントに出展し、来場者が壁紙に描いた「さくらのこくばんアート」
国立印刷局で開催されたイベントに出展し、来場者が壁紙に描いた「さくらのこくばんアート」
今年4月、「かながわみんなのSDGs」の表彰式をきっかけに交流が始まった国立印刷局から声掛けがあり、地域に向けて開催された観桜会でSDGsアートのブースを出店。ピンク色の壁紙の端材に、「10年後の自分に」をテーマに来場者に描いてもらう「さくらのこくばんアート」を設置しました。「放課後児童クラブと同様、子どもたちは大きなキャンバスに描くことが楽しかったようです。『10年後にも家族とまた桜を観にきたい』と書き込んだ人もあり、私たちも嬉しく感じました」と明日葉の中村朱音さん。今後も取り組みが拡大していくことが期待されます。
団体概要
  • 株式会社明日葉
  • 設 立 1992年
  • 所在地 東京都港区
  • 株式会社デコリア
  • 設 立 2002年
  • 所在地 神奈川県小田原市
事業内容
学童・児童館等の子育て支援施設およびその他公共施設の運営(明日葉)
建物用内装材の企画・製造・販売(デコリア)
廃物品をキーホルダーに再生
異業種がタッグで伝えるアップサイクル
プラスチックリサイクルの普及に取り組む株式会社湘南貿易と、工業用ミシン糸を製造する大貫繊維株式会社。両社の事業を掛け合わせて生まれた「アップサイクル体験」が、令和6年度「連携賞」を受賞しました。
楽しみながら学ぶリサイクル
海外産業機械の総合輸入代理店である湘南貿易。取り扱う製品のひとつにプラスチックリサイクル装置があることがきっかけとなり、約18年前に「エコロジー事業部」を社内に発足させました。廃プラスチックのリサイクルを普及させるべく、オーストラリアを主とした海外メーカーの技術やリサイクルの動向を伝えることに加え、小学校の授業やイベント等で子ども達にリサイクルの意義を伝えています。
アップサイクルインジェクション装置でペットボトルのキャップを加工
アップサイクルインジェクション装置でペットボトルのキャップを加工
その方法が、湘南貿易が所有するリサイクル装置を自分で操作するワークショップ。ペットボトルのキャップを溶かしたものを金型に流し込んでキーホルダーなどのグッズを作成するもので、子ども達が楽しみながらリサイクルの工程を学べると好評です。
廃物品100%で作るキーホルダー
そんな湘南貿易と大貫繊維との出会いは、2024年に開催された県主催のかながわSDGsパートナーミーティング。大貫繊維では自治体から回収したペットボトルを材料にミシン糸を製造しているほか、ミシン糸の製造過程で発生する余りの糸「残糸」を靴紐などに再活用していることを知り、共に環境に配慮した事業に取り組んでいる点で双方の理念が合致してSDGsの達成に向けて連携することが決まったのです。
左から●●●●、●●●●、●●●●、●●●●、●●●●
「テクニカルショウヨコハマ2025」内で行われた表彰式の様子。左から大貫繊維の大貫雅文代表取締役社長、関根奈緒美さん、湘南貿易の土井菜穂子さん、庄司真唯さん、橋本則夫代表取締役
両社で検討を重ねた結果、湘南貿易が実施しているキーホルダーづくりに、大貫繊維の残糸を再活用した紐を取り入れることになりました。湘南貿易エコロジー事業部の土井菜緒子さんは、「これまでキーホルダーのストラップにはボールチェーンを使っていましたが、この部分を残糸をアップサイクルしたエコな紐にすることで、プラスチックと糸の両方でリサイクルについて学ぶことができると考えたのです」と、その背景について教えてくれました。
実体験を通じて学ぶアップサイクル
これまで、両社のタッグにより実現したワークショップを2回実施しました。ワークショップでは、まず参加者に取り組みの意味について説明。本来は廃棄処分されるような不要なものでも、新しい価値を加えて再生する「アップサイクル」について解説します。その後、湘南貿易が所有する「マニュアルインジェクション装置」を自ら操作してもらい、回収したペットボトルキャップを細かく粉砕したものを材料として、パッカー車などの形に加工。さらに、大貫繊維が所有する「製紐機」を使い、残糸でストラップ部分となる紐を作るのです。この2つを組み合わせてキーホルダーが完成すると、「アップサイクルって、こういうことだったんだね」「これからは、ペットボトルのキャップは捨てない」という感想が聞かれるなど、子ども達が実体験を通じてリサイクルに対する理解を深めた様子が伺えます。このことが、両社にとっての励みになるのだそうです。
「海洋問題など、世間でプラスチックは悪者のイメージがありますが、適切にリサイクルすれば再活用はたくさんあります」と土井さん。より多くの人へ伝えるためにも、今後はワークショップの機会を増やすとともに、「ほかにも同様の取り組みをしている企業があれば、連携も広げていきたいですね」と話してくれました。
製紐機で残糸をキーホルダーの紐に再生
製紐機で残糸をキーホルダーの紐に再生
団体概要
  • 株式会社湘南貿易
  • 設 立 1997年
  • 所在地 神奈川県横浜市
  • 大貫繊維株式会社
  • 設 立 1949年
  • 所在地 神奈川県愛甲郡愛川町
事業内容
柔包材関連機械などの輸入事業(湘南貿易)
工業用ミシン糸などの製造・販売(大貫繊維)

令和5年度 かながわ みんなのSDGs
受賞パートナー

障がい者による自主活動のエコキャップ活動から
アップサイクル製品「エコマグネット」が誕生
「認定特定非営利活動法人 小田原なぎさ会(以下、なぎさ会と記載)」は、障がいのある方が誇りある社会の一員として自立した生活を送ることを支援する活動を行っています。そして、なぎさ会の施設利用者(障がい者)が製作する「エコマグネット」は、令和5年度の「かながわみんなのSDGs賞」を受賞しました。
使用済みペットボトルキャップをそのまま活用して作られるエコマグネットが生まれるまでの紆余曲折を小田原なぎさ会理事長の乾恒雄さんに伺いました。
エコキャップ活動を始めたのは通所者のため
なぎさ会は、2015年から施設利用者の自主活動としてエコキャップ活動を始めました。きっかけは、産業カウンセラーの資格を持つ乾さんが、施設に通う障がい者の方の悩み相談を受けていたとき、とてもネガティブな感情を持つ相談者が多いことに気づいたからです。このような感情になるのは彼らに成功体験の機会が少なく、達成感を味わった経験が少ないからではないかと考え、始めたのがエコキャップ活動でした。
乾恒雄理事長
乾恒雄理事長
エコキャップ活動とは、ペットボトルキャップを集めて破砕などの工程を経て、リサイクルに貢献するSDGs活動です。
「ペットボトルキャップは形があるでしょ。100個、1000個と集まると活動した成果が物理的に見える。これだけ溜まったよ、とか。もうこの部屋いっぱいになって、廊下にあふれているよ、とか。具体的にイメージできるように活動成果を施設利用者へ伝えます。それがちょっとした達成感につながる可能性があるんじゃないかなと思って始めました」
このエコキャップ活動は、なぎさ会における施設利用者の唯一の自主活動として継続的に取り組まれています。活動に賛同する輪はなぎさ会の外にも広がり、キャップの収集等で地域の方々にも支えられています。結果、2015年からこれまでに128万個を超える収集量を達成しました。
ペットボトルのキャップと一口に言っても、リサイクル企業での扱いでは、いくつかのグレートがあることをご存じでしょうか。集まったキャップの中には、材質の違うものや、時にはアルミのキャップや金属が入っていることがあります。違う材質のものや混入物を仕分けるなど、ひと手間をかけることで、その価値が上がるようです。ある時、この話を利用者にしたところ、「それだったら一級品だけでやろう」と、自発的に週1回、キャップを選別しているそうです。その丁寧な分別から、なぎさ会で集めたキャップのグレードは最高レベルとしてリサイクルされています。
集めたペットボトルキャップ
集めたペットボトルキャップ
コロナ禍から生まれた自主製品のエコマグネット
エコキャップ活動は、通所する障がい者の成功体験として、大きな成果をあげていました。そんな中、2020年に世界規模のコロナ禍が起こります。政府が緊急事態宣言を発する中、なぎさ会は、大きな葛藤がありながらも活動を継続することを決めます。利用者の居場所を確保し、せっかく形成されてきた彼らの生活リズムを変えないようにしたい、という利用者ファーストの想いからでした。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、それまで来ていた企業等からの受託作業が激減します。受託作業の一つはタオル折り。タオルを所定の形に折ってビニール袋に入れる作業です。しかしコロナで観光業界がダメージを受け、委託が全くなくなりました。他にも広告チラシ折り等の委託もゼロになります。他者に依存する受託作業の弱さを思い知ったそうです。
この緊急事態に乾さんが考えたのは、成果を上げていたエコキャップ活動で手元に大量にあったペットボトルキャップとホワイトボードに貼っていたマグネットを活用して自主製品を作ることでした。「一瞬のひらめきでしたね」と乾さんは言います。そして誕生したのが「エコマグネット」です。
エコマグネット作りの指導にあたる乾さん
エコマグネット作りの指導にあたる乾さん
「エコキャップ活動がなければ、発想としてエコマグネットは生まれていなかったと思います。それに、コロナ禍がなければ自主製品を生み出す必要もなかったでしょう。危機が来たからこそ、逆にエコマグネットが生まれたのだと思います」
こうしてコロナ禍真っ只中の2020年7月に誕生したエコマグネットは、2020年の製作数は数百個でした。それが2023年12月には累計で7300個と大きく増えていきます。障がい福祉の普及啓発活動での販売とともに学校や企業、団体からのまとまった数のオーダーが支えてくれているそうです。
一般市場への販売を視野に
一定の成果を上げたエコマグネット製作ですが、今後の展開として考えているのは、一般市場への販売です。これまでは障がい福祉のイベント会場等での販売が主でした。障がい福祉の普及啓発が目的です。しかし、現在は北条五代キャラクターシリーズや小田原市の観光PRキャラクター「梅丸」など、一般向けの製品もあります。これらを地元の観光地などで販売することを目指しています。
北条五代キャラクターシリーズ
北条五代キャラクターシリーズ
ただ乾さんの目的は販売促進だけではありません。どの活動も障がい福祉の普及とその持続可能が最初にあります。乾さんは「エコキャップ活動も障がい者がポジティブになってくれる可能性があると思ってやってきました。エコマグネットも、自分たちの作業を確保するところから始めたものです」と振り返ります。利用者の自信につなげたいと考えた活動やコロナ禍で必要に迫られ始めたことが、結果として「リサイクルやアップサイクル製品になっていました」と微笑みます。
乾さんは、「SDGsで大事なことは、人々の意識を変えること。意識を変えないと行動が変わらない。行動が変わればSDGsや共生社会は実現していくと思いますよ」と目を細めました。
団体概要
  • 認定特定非営利活動法人 小田原なぎさ会
  • 設 立 2006年
  • 所在地 小田原市
事業内容
障がいを抱えている人々の自立支援に取組んでいる。主な事業は、施設設置・運営事業、普及・啓発事業、関係先との連携事業。2015年、エコキャップ活動開始。2020年には初めての自主製品「エコマグネット」を創出し製作開始。
クラフトビールの副産物を利用し
アップサイクルに寄与する紙製品を開発
クラフトビールを製造するときに副産物として出るモルト粕を紙の原料として利用したクラフトビールペーパー事業を展開しているのが、株式会社kitafukuです。モルト粕を紙として再利用しアップサイクルする取組みは、令和5年度「かながわみんなのSDGs」賞を受賞しました。
社名の由来は、kitafukuを夫婦で経営する福岡県出身の松坂匠記さんと北海道出身の良美さんが、それぞれの地元から1字をとったもの。もともとシステムエンジニアだった2人が、地元も大切にしながら、いま住んでいる横浜の地域課題を解決することをビジョンとして掲げ、IoTデバイスの開発、地域コミュニティの立ち上げなどを通じて貢献する事業を模索してきました。
フードロスへの着目から新素材開発
そこで行き当たったのが、神奈川県内に多く存在するクラフトビールのブルワリーが、ビールを製造するときに発生するモルト粕の使い道に困っていることでした。
「フードロスの廃棄という問題に着目して横浜ビールさんの直営レストランにヒアリングしたとき、ビール1回の仕込みで200キロのモルト粕が出て、廃棄に困っている話を聞いたのがクラフトビールペーパーの開発のきっかけです」と匠記さんは振り返ります。
代表の松坂匠記さん
代表の松坂匠記さん
モルト粕
モルト粕
特に近くに農地の少ない横浜では、モルト粕を堆肥として利用するのも難しく、焼却処分している例が多かったそうです。
匠記さんは、紙に米を混ぜるという研究を手がけていた前職の同僚がいたことから、紙にモルト粕を混ぜて紙として利用することを思い立ち、一緒に事業ができないか、と持ち掛けました。紙の製造開発・卸事業を手掛ける株式会社ペーパルとの共同で開発をスタート。
モルト粕は栄養価が高く発酵しやすいため乾燥させるのに苦労したり、印刷時に印刷機の中にモルト粕が落ちないかという印刷所の懸念に対応したり、試行錯誤を重ねて6%という配合率を導き出し、2021年6月23日から販売を開始しました。
クラフトビールペーパーはところどころにモルト粕の粒が見受けられ、独特の風合いをもっています。
「NUMBER NINE BREWERYさんにメニュー表やコースターなどで使ってもらえたのがありがたかったですね。摘果される青みかんでIPAのクラフトビールをつくるなど、アップサイクルに積極的で、ギフトボックスも一緒にやりましょうと、使い方の提案を受けて商品のラインナップが増えていきました」(匠記さん)
クラフトビールのブルワリーは横のつながりが強く、クラフトビールペーパーもブルワリーからの口コミで広がっていったそうです。30~40社ほどのブルワリーとのお付き合いができ、うち8社からモルト粕の回収実績があります。
また、これまでかかわってきた地域コミュニティのつながりも、ビジネスの展開へ繋がってきました。
良品計画横浜事業部と横浜ビールとの共同で開発した、クラフトビールペーパーをパッケージに使った地域限定のレトルト食品「ハマクロカレー」は、初期ロットが2日で売り切れるほど好評でした。
用途を広げれば需要も増える
モルト粕を集めるのには苦労はない状況のようですが、紙をつくってもそれが利用されないことにはSDGsは達成できません。
栄養価の高いモルト粕を食材として利用することは可能です。ただし、量的には微々たるもの。量を消費できるものにはならず、採算のとれる形にするのは難しいようです。
良美さんは「モルトを引き取ってほしいという声はたくさんありますが、すべて紙にするととんでもない量になります。クラフトビールペーパー以外の利用法も考えていきたい」と課題をあげます。「たとえばリユースカップのような別のアップサイクル製品にして使ってもらうなど。そうした様々な活用方法が選べるマッチングプラットフォームをつくりたい」と思案します。
広報を担う良美さん
広報を担う良美さん
クラフトビールペーパーに込めた思いを知ってもらい、需要喚起につなげたいということから、子ども向けSDGs普及イベントなどでも活用されています。
クラフトビールペーパーでファイルケースを作成し、子どもに絵を描いてもらうワークショップなども好評で、ビールを飲めない年齢層の関心も高いようです。
パッケージ等に使用されるクラフトビールペーパー
パッケージ等に使用されるクラフトビールペーパー
子どもに人気のワークショップ
子どもに人気のワークショップ
世界中からもその動きは注目されています。すでに19か国からの問合せがあり、フィンランドの製紙会社と組んでの事業化のほか、オランダ、ドイツへの進出も計画しているといいます。国内でもそれぞれの地元である北海道と福岡のブルワリーとそれぞれの地域の製紙会社や印刷会社をマッチングさせての展開などを進めています。
「なかなか採算にはのらないようですが、食材としてのモルト粕を研究する人たちもいらっしゃいます。それだけではたいした量でなくとも、SDGsでよく言われる、1人の100歩より100人の1歩、みんなで足し算をして解決できればいい。その解決策のひとつとしてクラフトビールペーパーがお役に立てればよいと思っています」(匠記さん)
名刺にも利用できる
名刺にも利用できる
会社概要
  • 株式会社kitafuku
  • 設 立 2019年
  • 所在地 横浜市西区
事業内容
IoTデバイス製作/クラフトビールのモルト粕を活用した再生紙事業/コミュニティ「きたふくプロジェクト」運営/SES(システムエンジニアリングサービス)
心臓リハビリテーション
目指すのは回復とその先にある「社会貢献の心」
前身から100年以上の歴史を持ち、総合病院として市民の健康を長らく支えてきた横須賀市立うわまち病院。利用者と地域に寄り添う姿勢を貫く同院では、より広域的・長期的な視点からSDGsに対する取り組みも積極的に行っています。心臓病患者に向けたハイキングプログラムもその一環です。患者やその家族、医師、看護師などが参加して、心身の健康を促すとともに、ゴール地点では清掃活動も実施。斬新な手法で心臓リハビリテーションの効果を向上させるとともに地域貢献も同時に行う取り組みが評価され、令和5年度「かながわみんなのSDGs賞」を県内の医療機関で初めて受賞しました。
「心臓リハビリテーションハイキング」と名付けられたこの取り組み。「患者と担当職員」だけではなく、患者家族、医師、看護師、理学療法士、管理栄養士、事務職員、院長など多職種のスタッフが参加するのが特徴です。同行する職員が多いため安全にハイキングを行うことができるほか、患者や家族が普段の体調や食事方法について、それぞれの専門家に尋ねることができるのが利点です。これまでヴェルニー公園やくりはま花の国といった市内の観光名所などをコースに取り込み、参加者が楽しめることを第一に行程を考案してきました。
心臓リハビリテーションハイキングの様子
心臓リハビリテーションハイキングの様子
ハイキングを「楽しみ」普段のリハビリをより主体的に
廃棄物を出すとき、事業者には「排出事業者責任」が課されています。
前身の国立横須賀病院から横須賀市が委譲を受け、市立病院として再スタートを切った2002年から院長を務める沼田裕一医師。専門は循環器内科(冠動脈の血管内治療)で、心臓病の治療・リハビリについて長年一線で取り組んできました。
その中で感じていたのが、患者のリハビリに対するモチベーション維持の難しさ。心臓病患者の行うリハビリテーションは単純な動作を繰り返すものが多く、いくら治療に必要な取り組みとはいえ、患者の主体性が徐々に削がれてしまうことに課題意識を持っていました。
そこで2004年から取り入れたのが「心臓リハビリテーションハイキング」。約20年、毎年春と秋の2回の頻度で行われ、各回30~40人ほどが参加しています。心臓への負荷が少なく、楽しみながら運動を行うことができるので、参加者からは「患者同士の交流が嬉しい」「みんなとなら長距離も歩き続けられる」と好評とのことです。しかし、沼田院長は「ハイキング自体がリハビリとして大きな効果を持つわけではない」と話します。これはどういうことでしょうか?
多くの人にとって散歩やウォーキングは、日常的に楽しめる簡易なアクティビティですが、心臓病患者にとっては決して楽な運動ではありません。イベント開始前には問診や血圧測定などのメディカルチェックを行い、当日運動できる体調であるかを確認しています。よって、ハイキングに参加するには日々のリハビリにきちんと取り組み、長時間の歩行が行えるまでの状態に体の機能を向上させる必要があるのです。この取り組みの真の意図はそこにあり、お楽しみ行事であるリハビリテーションハイキングを定期的に開催することで、患者が普段行うリハビリを継続させ、早期の社会復帰を促しています。
ハイキングの意図を説明する沼田院長
ハイキングの意図を説明する沼田院長
心臓リハビリテーションハイキングでは、ゴール地点の公園・広場の清掃活動にも取り組んでいます。これは、SDGsの「住み続けられる街づくりを」の観点からも大変重要な試みですが、発案には沼田院長の「回復し、社会に貢献するまでがリハビリテーション」という信念が大きく影響しました。
Rehabilitationが「社会復帰」、「名誉回復」などと訳されるように、同院の心臓リハビリテーションの最終的な目標は、病状の回復だけではなく、患者が無事社会に復帰し、名誉を回復して、"復権”を果たすことに定めています。心臓病の克服で救われた命。残りの時間を自分のためだけでなく、人や社会のためにどのように活用するかという視点を持つことが院長の望む”元”患者の姿です。
「同じ苦しみ」だからこそ出来る支援
患者同士や元患者が交流し、生きる活力を見出す「心臓病と闘う会」は院長らを中心に2016年設立。累計会員数は267人を数えます。先述のハイキングのほかリハビリテーションゴルフや講演会なども実施している活発なコミュニティです。
復権には「地域活動に励む」「ボランティア活動に参加する」など様々な例が挙げられますが、より身近な復権として院長が挙げるのは「同じ病気を抱える人のために自分が役立ちたいと思うこと」。心臓病を克服した後も、自分も経験したからこそ分かる苦しみに寄り添うことで、患者にとっては大きな力になるそうです。
病院スタッフやハイキング参加者らが行う清掃活動
病院スタッフやハイキング参加者らが行う清掃活動
17のゴールすべてに取り組む
同院では心臓リハビリテーションのほか、SDGsに定められた17のゴールすべてに医療ならではの観点から取り組んでいます。患者に外国人の多い横須賀の特徴を踏まえ、英語や中国語など8か国語に対応した電話医療通訳メディフォンの導入や、子育てしながら働く職員に向けた院内保育所、子どもの看護休暇の整備など、各部署や委員会が主体となって目標達成を目指しています。(取り組みの詳細はこちら
2025年春には現在の病院機能を移転し「横須賀市立総合医療センター」として、新たなスタートを切ることが決まっている同院。「回復のその先」までを見据えた心臓リハビリテーションの理念と、SDGsへの積極的な取り組みはそのまま引き継がれていきます。
移転建替え後の外観イメージ
移転建替え後の外観イメージ
病院概要
  • 横須賀市立うわまち病院(管理運営:公益社団法人地域医療振興協会)
  • 設 立 2002年
  • 所在地 横須賀市
事業内容
前身から100年以上の歴史を持つ市立病院。三浦半島の東部、紺碧の大洋に接する横須賀市の中央に立地。救命救急センター・地域医療支援病院として、市民が安心して暮らすことのできる高度な医療を提供している。市内で移転建替えを予定しており、2025年3月1日に「横須賀市立総合医療センター」となる予定。
食品廃棄物を電気と肥料にリサイクル
排出事業者に電気と肥料でできた農作物を還元
メタン発酵技術によるバイオガス発電プラントの建設や廃棄物処理技術を持つJFEエンジニアリンググループと、食品廃棄物を自ら資源循環し、再生利用に取り組むJR東日本グループが共同で設立した「株式会社Jバイオフードリサイクル(以下、Jバイオ)」は、食品廃棄物から電気と肥料を創り出し、その電気と、肥料でできた農作物を排出事業者に還元する『ダブルリサイクルループ』を実現しています。外食産業や食品卸業、食品小売業などからでる食品廃棄物の再生利用実施率は、食品製造業に比べると低く、その多くは焼却処分を余儀なくされていました。
容器包装プラ等の異物が混在する食品廃棄物でも受け入れ可能に
課題となったのは「異物混入」。スーパー、コンビニ、レストラン等から出る食品廃棄物は、容器や楊枝、箸などの異物が多く混入し、分別の手間がかかるため、飼料化・肥料化には不向きとされてきました。Jバイオでは、親会社が長年培った廃棄物管理・処理やプラント建設のノウハウを生かし、受け入れた食品廃棄物を破砕、混入物を適切に除去できる仕組みを確立。更に、メタン発酵処理の操業ノウハウを蓄積したことにより、多くの食品廃棄物をメタン発酵し、バイオガスを生み出すことが可能になりました。生成したバイオガスはガスエンジン発電設備で電力に転換され、JFEエンジニアリングのグループ会社である小売電気事業者を通じて、食品廃棄物を出した食品工場や飲食店、小売店などに還元されます。廃棄物の電力転換分だけ電気料金の割引還元が受けられる「創電割®」というサービスを展開したことで、食品廃棄物から電気へリサイクルし、排出事業者に再び還元する「電力リサイクルループ」の仕組みが確立されました。
左から 富士シティオ 販売部次長 坂本さん/富士シティオ 生鮮部青果課課長 松岡さん/やさいの秋葉 代表 秋葉さん/Jバイオフードリサイクル 管理室室長 大場さん
左から 富士シティオ 販売部次長 坂本さん/富士シティオ 生鮮部青果課課長 松岡さん/やさいの秋葉 代表 秋葉さん/Jバイオフードリサイクル 管理室室長 大場さん
「創電割®」を導入した富士シティオ株式会社(神奈川県横浜市、代表取締役社長:川本大作)が神奈川県を中心に展開するスーパーマーケット「Fuji」。店舗等で排出された食品廃棄物をメタン発酵により電力に変換し、横浜市内を中心とした「Fuji」等19店舗に供給しています(電力リサイクルループ)。今後、Jバイオが生産する発酵残渣肥料を使用している藤沢市内の農家「やさいの秋葉」とも連携し、生産した農作物を店舗で取り扱い農業リサイクルループにも取り組む予定です。この取り組みが実現すると、スーパーマーケット「Fuji」を中心とする神奈川県初のダブルリサイクルループが完成します。
「大量の食品廃棄物をそのまま受け入れ処理できるようになったことが、安定した再生エネルギーの供給という意味合いでも大きなポイントとなりました。今では1日に約80tの固形廃棄物を受け入れています」(大場さん)
Jバイオの出資会社であるJR東日本グループでは、エキナカ・駅ビル等から排出される食品廃棄物を再生可能エネルギーとしてリサイクルできる仕組みを構築し、同グループ内における食品リサイクル率向上に大きく貢献する結果となりました。Jバイオでは、現在、一般家庭の約5,700世帯分の電気使用量にあたる年間最大1,700kWhの再生可能エネルギーを創出しています。
メタン発酵を行う発酵槽。微生物の働きにより有機物を分解し、バイオガスを発生させる。
メタン発酵を行う発酵槽。微生物の働きにより有機物を分解し、バイオガスを発生させる。
発酵残渣にも着目「余すことなく再利用」へ
食品廃棄物をメタン発酵させる際、発酵槽には発酵残渣が残ります。Jバイオでは当初、この「発酵残渣」を焼却処理していたそうですが、これを肥料として活用するプロジェクトが始動。2022年には肥料登録を実現しました。処理の過程で「液肥(はまのしずく)」と「固形肥料(はまのみのり)」に分けられた肥料は、提携農家などに提供され、トウモロコシや水稲などの肥料として役立てられています。この肥料を使用してできた農作物を、再び排出事業者に還元する仕組み=「農業リサイクルループ」が確立できたことで、食品廃棄物を電気と肥料としてリサイクル・循環させる「ダブルリサイクルループ」が完成しました。
発酵残渣は処理設備によって脱水ろ液と脱水汚泥などにわけられる。
発酵残渣は処理設備によって脱水ろ液と脱水汚泥などにわけられる。
化学肥料を使用したトウモロコシ(左)と「固形肥料(はまのみのり)」と化学肥料を組み合わせて使用したトウモロコシ(右)。農家は、はまのみのりを併用することで化学肥料の使用量を減らせるメリットもあるという。
化学肥料を使用したトウモロコシ(左)と「固形肥料(はまのみのり)」と化学肥料を組み合わせて使用したトウモロコシ(右)。農家は、はまのみのりを併用することで化学肥料の使用量を減らせるメリットもあるという。
「農業リサイクルループは、『農家が排出事業者の店舗に農作物を販売する』、『農家が農作物を納入している店舗とJバイオが食品廃棄物の処分委託契約を締結する』など、新たな経済効果も生み出しています」(大場さん)
Jバイオでは、この取り組みを促進させていくため、今後も協力農家の開拓などに力を入れていくそうです。食品廃棄物のリサイクルを通じて、様々な事業者がメリットを感じられる仕組みづくりを確立していくことで、更なる環境負荷低減、循環型社会の実現をめざしています。
『ダブルリサイクルループ』について説明する大場裕子室長
『ダブルリサイクルループ』について説明する大場裕子室長
会社概要
  • 株式会社Jバイオフードリサイクル
  • 設 立 2016年
  • 所在地 神奈川県横浜市鶴見区
事業内容
食品リサイクル・バイオガス発電事業
マニフェスト電子化推進で
資源循環型社会の実現をサポート
「複雑な産業廃棄物の管理を誰でも簡単に!」をテーマとした取り組みで、かながわみんなのSDGs「神奈川県中小企業診断協会賞を受賞したのが、横浜市中区のリンクイノベーションズ株式会社です。
産業廃棄物処理業に長く携わった経験をもとに、産業廃棄物処理に関するシステムの開発を進める会社としてスタートし、あわせて産業廃棄物を専門とした環境経営コンサルティング業も手がけています。後藤泰子代表取締役をはじめ、女性が多く活躍している職場です。
求められるペーパーレスへの対応
産業廃棄物を出すとき、事業者には「排出事業者責任」が課されています。
産業廃棄物を排出するときには、法律に基づき決められた手順で適正に処理しなければなりません。その処理で求められるのが「産業廃棄物管理票」(マニフェスト)です。従来の紙のマニフェストは、裏がカーボンの複写式になっており、廃棄物を排出するときは廃棄物と一緒に収集運搬業者に渡します。作成したマニフェストの1枚目は作成者が保管し、廃棄を任された業者が処理の段階で1枚ずつはがしていって、すべての処理が終われば最後のE票が作成者のもとに戻ってきて、適正に最終処分まで行われたことが証明されます。また、マニフェストは5年間の保管義務があります。
ところが、紙の場合は現場で紛失したり、悪質な業者による不法投棄目的で内容を書き換えるなどという問題がありました。
また、ペーパーレスの流れのなかで、昨今はマニフェストの「電子化」が推奨されるようになりました。
画面に従えば法令遵守に
リンクイノベーションズが開発した『電子マニフェスト先生』は、マニフェストの登録・管理・集計をクラウド内で完結させるシステムで、煩雑だったり正確性が担保されなかったりといった紙マニフェストの問題点を解決する画期的なソリューションです。
『誰でも手軽に使えるような設計がされているのが特徴です。トップ画面には「産業廃棄物」「建設産業廃棄物」「一般廃棄物」といったボタンが並んでいます。処理する廃棄物を選択し、画面の指示に従って入力していくと、何をどの処理業者がどのように処理していくのか、流れに沿って登録ができる形になっています。
必須事項はセルをピンクの色付きで表示して記入漏れを防ぎます。導入後は、まず初めに契約書の内容を登録します。入力時に契約書の内容も登録する必要があるので、異なる処理をしようとすると先に進めないようになっており、指示に従えば法律を遵守したマニフェストが作成できます。
運搬業者や処理業者の登録許可番号や許可期限なども登録するため、委託先の許可期限が切れそうなときはアラートで表示するなど、適正処理に欠かせないチェックができるのも特色です。
「産業廃棄物が難しいのは、種類が20種あって、それがどれに該当するのか判断をすることがとてもむずかしい。たとえばタイヤって“ゴムくず”として廃棄するんじゃないかと考えてしまうんですけど、合成ゴムなので廃プラスチック類に該当するんです。ほかの産業廃棄物では行政によって何に該当するのか見解が違うこともあります。廃棄の流れも複雑で、積替保管があったり、経由地があったりと、そうしたものをどうわかりやすく表示するかは特に苦労したところです」(執行役員システム事業部部長・小出花帆さん)
マニフェスト先生のシステムについて説明する小出さん
マニフェスト先生のシステムについて説明する小出さん
可視化でリサイクルへの関心を高める
2019年から開発を開始、2022年の発売から、導入企業はおよそ100社を超えるようになりました。
マニフェストの紛失や報告の抜けがなくなった、リサイクル量の自動集計ができるのが役立ったなど、導入先からも高評価を受けています。
マニフェストの電子化は現場の効率化に寄与するとともに、流れが可視化されると、自社が出した廃棄物がどのくらいリサイクルされるのかとか、どうすれば削減できるのかとか、興味をもって考えてもらえるようになります。そのことが資源循環型社会の形成や環境保護につながるといいます。
自治体や業界の古い体質の企業では「まだ紙でいいじゃない」と電子化に難色を示すところもまだまだあるようです。
一方で、大阪府のように、電子マニフェストを必須とするような自治体も出てきています。
「行政でも進んでいるとこととそうでないところがありますが、一度導入すると、人事異動などの際、引継ぎ業務も簡単になります。今後も多くの方々に電子マニフェスト管理や、環境管理にお役に立てる様、私たちもがんばって電子マニフェスト先生を普及していかなければいけないと思っています」(後藤代表)
インタビューに答える後藤代表
インタビューに答える後藤代表
会社概要
  • リンクイノベーションズ株式会社
  • 設 立 2023年
  • 所在地 神奈川県横浜市中区
事業内容
産業廃棄物コンサルティング/コンピューター及びこれらに関するシステム/ソフトウェアの開発、制作、販売、賃貸、導入指導、保守 等

令和4年度 かながわ みんなのSDGs
受賞パートナー

海岸フィールドワーク&「海ごみ」を考えるワークショップ
取り組み概要
「海のごみ」はどこから運ばれてくるのか、綺麗な砂浜の中はどのような「ごみ」が含まれているのか、海岸フィールドワークを通して現場で学びの機会を創出しています。
さらに、仕事と暮らしの2つの観点から「海ごみ」を考えるゲーム体験を行います。
目で見た事実から行動に繋げる体験型ワークショップで実践力を身に付けて、行動の変化を促す活動に取り組みました。
受賞者からのコメント
神奈川県の象徴的な存在として「海」があります。海洋環境保全の視点から海洋プラスチックごみ問題に取り組む必要性を感じ、気づきや学びの機会へゲーミフィケーションを取り入れ、体験を通じて楽しみながら問題意識を持ってもらうアプローチが特徴で、参加者から「自分が行動することで周りを巻き込みたい」という理解を深めることに繋がります。
このような「体験」を通じて、参加者が主体的に考え、行動に結びつけることを目指しています。
該当するSDGs目標
産業廃棄物管理のDXにより廃棄したゴミの
約90%をリサイクル実現
取り組み概要
ショッピングモール内のテナント会議で、「企業の体重計」で取得した店舗ごとのゴミの排出量を報告し、排出量削減の施策を検討・実施しました。
これにより、今までリサイクルをせずに廃棄していたゴミの数量を把握することが可能となり、改善策を実施することで、廃棄したゴミの約90%をリサイクルすることが実現しました。
受賞者からのコメント
「アナログな産業廃棄物業界をITの力で変革する」ことを理念に掲げ事業を推進しています。
ごみ箱の下に体重計を敷くだけで、ごみ量数値やリサイクル率の算出などが行える「企業の体重計」を活用し、目標と実績を数値として容易に把握できるようになり、今まで見えなかった部分を数値として「見える化」することで、担当者の廃棄物削減意識が高まり行動変容のきっかけとなりました。
社会的課題の解決と事業を両立し、「CSV経営」を目指して今後とも取り組みを続けていきたいと思っています。
該当するSDGs目標
「食」を通じた地域社会への貢献と
フードロス削減、環境保護推進
取り組み概要
「食べることの大切さと向き合う」を理念に掲げ、業務拡大を進める中で販売時にキムチを入れる容器削減、食品ロスの削減、地域連携などの課題に対して向き合いました。
容器の削減では、プラスチック容器の使用を年間85%削減達成することに成功し、廃棄野菜を動物園で飼育する動物たちの餌として活用する食品ロスの取り組み、障がい者支援施設や就労支援センターと連携した地域産業の活性化、持続可能な共創社会の展開につながりました。
受賞者からのコメント
神奈川県川崎市で「あごが落ちるほど旨いキムチ」を販売する「おつけもの慶」は、店舗販売、催事、EC等での販売を行っています。
使い捨て容器の削減、食品ロスの削減、障がい者支援施設との連携、地元学校との共同商品開発など、日々の業務を通じてSDGs活動に取り組んできました。
今回、受賞に選ばれたきっかけでもある「容器の見直し」については、プラ容器、PP袋など使い捨て包材を、再生可能な植物原料由来の素材へ転換し、使い捨てプラスチックを85%削減することができました。
今後は神奈川県や川崎市の地域と一体となりながら事業を継続・発展させ、川崎の名産、そして神奈川の名産として「おつけもの慶のキムチ」を広めていきたいと考えています。
該当するSDGs目標
Web検索は「ECOSIA」(エコシア)を使おう!
~世界で一番簡単な植樹・エコ活動~
取り組み概要
日頃パソコンやスマホで使用しているWeb検索エンジンを「ECOSIA」に変更する取り組みを社内展開しています。
「ECOSIA」は収益源である広告収入の80%を非営利団体WWF(世界自然保護基金)に寄付しており、約45回Web検索するごとに1本の木が植えられるとされています。
日常業務で利用する「Web検索」が自然保護へ寄与し、SDGsを身近に感じながら全員が取り組める活動になります。
受賞者からのコメント
株式会社日本コンピュータコンサルタントは国連が提唱する「持続可能な2030年までの開発目標」の達成を全社員の共通課題として捉えています。
全社員がSDGsを意識して取り組める施策として「ECOCIA」をWeb検索エンジンとして活用しています。
変化が激しい時代の中で、その波を乗り越えるために全社員が共通の目標を持ち、この取り組みによって、モチベーションが向上し組織全体の一体感が醸成されています。
みんなが協力し、お互いをサポートすることで、持続可能な社会の実現に向けて貢献する企業となるようにSDGs活動を推進していきます。
該当するSDGs目標
レモンを捨てるところなく使い切る
取り組み概要
弊社で運営する飲食店「bb.q オリーブチキンカフェ 元住吉店」で、生絞りレモネードを提供するために毎日30~80個のレモンの皮を廃棄していました。
廃棄するレモンの皮がもったいないと悩んでいる中、ベンチャー企業の持つ技術「100%食品廃棄物から作る新素材」と出会い、MURONEが持つ金属加工技術を基に作成した金型との合わせ技で取り組み始めました。
一ヶ月ほどで、レモンの皮を平板に加工することに成功し、その後お猪口などに加工することができ、食品廃棄物を減らすことができました。
受賞者からのコメント
弊社は、鋳鉄製品の高精度加工を中心に行っている、創業54年目の企業です。
現在を第二創業期として捉え、次なる飛躍のために個性豊かなアイデアと技術力を出し合い、新しい取り組みを創出しています。
SDGsへの取り組みも、飲食店を始めたことがきっかけで、食品廃棄物の課題を弊社の技術で解決することができました。
弊社は、ものづくりを通じて「最高の一歩」を提供するために、今後も様々な課題解決にチャレンジして行くとともに、SDGsへ取り組みます。そして、社会に提供できる価値を最大化していきます。

テクスチャーの異なるレモンお猪口

レモンと金属の風合いを
マッチングさせた試作品

該当するSDGs目標
化学物質を使用しない清掃作業
取り組み概要
ショッピングモールをはじめとする商業施設や病院など、大勢の人々が利用する施設を中心に清掃や設備・警備といった総合管理を行い、「快適に・安全に・衛生的に保つビルメンテナンス業」を手掛けています。
日常清掃作業に洗剤を極力使用せず、自社で購入した生成装置によって作ったナノバブルを充填させたアルカリ電解水を用いて、「化学物質の排出量を減らす清掃業務」に取り組んでいます。
受賞者からのコメント
弊社は総合ビルメンテナンスを手掛ける企業として、業務で使用する洗剤の代わりとなるナノウォーターを自社で生成し、その利用を推進しています。洗剤使用量を削減することができるので、環境負荷の低減とともに、コスト削減にもつなげてきました。
導入当初から使用方法を継続的に指導し、ナノウォーターの効果を体感してもうことによって使用量を徐々に増やして、現在20L容器で年間1500缶を使用しています。これは、当社で一般的に使用していた高稀釈タイプの化学洗剤20L容器換算で約200缶に相当します。また、化学物質の残留がないためすすぎが不要となり、従業員の生産性向上や作業負担の軽減にもつながっています。
今後も事業を通じSDGs活動に取り組み、社会課題解決を事業成長につなげていきたいと考えています。
該当するSDGs目標
建設業における女性活躍と技術の伝承
取り組み概要
建物を適切に修繕し、「たてものを育む」ことを目指すために、従業員の女性の活躍機会を広げ、技術の伝承を強化することが重要です。
県庁の素晴らしい施策である「神奈川なでしこブランドの2年連続認定」や「現在、神奈川県唯一の防水の職業訓練校認定」をいただきました。
これにより、性別や年齢に関係なく、多様な働きや学びの場を創設することができ、働きがいも大幅に向上することで従業員だけでなく、お客様の満足度にも繋がりました。
受賞者からのコメント
建設業界はこれまで男性中心の社会でありましたが、人不足といった問題もあり、女性活躍に目を向け、技術の伝承が行える仕組みを構築しました。
結果として、女性ならではの細かい配慮がサービス向上につながり、新たな雇用創出にもつながっています。
今後も「たてものを育む」ことを目指し、従業員、地域、お客様といった「ステークホルダーを育む」活動を推進していきます。
該当するSDGs目標