港南区・栄区版【1月1日(水)号】
栄区小菅ケ谷の巳待塔

2025巳年 「蛇」祀る石造、小菅ケ谷に 道標としても機能か

 読者の皆様は「巳待塔(みまちとう)」という石造を知っているだろうか。蛇を祀ると伝えられているこの石造は日本各地に置かれている。本紙では2025年が巳年なのにちなみ、栄区の小菅ケ谷にある巳待塔について調べた。

 巳待塔とは水の神の使いである蛇を祀る石造。住民は「巳待講」という集団を形成して、そこで五穀豊穣などを祈ったと伝えられている。

 小菅ケ谷に置かれているものには「明和元年」(1764年)と記されており、その時期に作られたと推測される。また「右 かまくら道」「左 ぐみやうじ道」と刻まれていることから、鎌倉や弘明寺に向かう際の道標になっていたことがうかがえる。

かつて区境に置かれる

 より詳しく知るために港南歴史協議会へ話を聞いたところ、石造が現在と違う場所に置かれていたことが分かった。同会のメンバーは「この巳待塔が港南区・栄区内で唯一だと思う」と話す。経済地図社が発刊した『港南区・明細地図 46年度版』にある地図では、港南区と栄区(当時は戸塚区)の区境となる地点に「巳待供養塔」との記述がある。同会から提供された地図と照らし合わせると、そこは小山台小学校の近く、野庭町と小山台の境界付近にあたる。現在の巳待塔近くに住む男性に移動時期を尋ねると、「40から50年ほど前に宅地開発が進む中、町内会長だった父が移動させた」と明かした。

 周辺地域の開発によって移動された巳待塔。現在は小菅ケ谷の住宅地にひっそりと佇む。

取材に答える山中市長

人にやさしいまち、横浜へ 山中市長が新年の抱負

 本紙では新年を迎えるにあたり、山中竹春横浜市長に2025年の抱負を聞いた。山中市長は、子育て支援や防災・減災対策、防犯対策などの取組を積極的に進める姿勢をみせるとともに、市民の声を大切に「人にやさしいまち」の実現に向け力を尽くす考えを示した。質問に書面と対話で答えた。

「子育てしやすさ」実感を

 ――市長就任時より、子育て支援に力点を置いてきました。

 「一昨年は子どもの医療費を無料化し、長年市民の皆様から望まれていた中学校での全員給食の導入を決定しました。全員給食は2026年4月の開始に向けた準備が着実に進んでおり、小学生の保護者向け試食会のアンケートでも75%の方に『良い印象を持った』と回答いただいています。

 昨年は、出産や妊婦健診に係る費用への市独自の助成を新たにスタートさせました。出産費用については、国の出産育児一時金50万円に加えて最大9万円を市独自で助成することで、市内公的病院での出産に係る基礎的費用を100%カバーできるようになりました。妊婦健診の助成額は5万円を上乗せし、政令市トップの水準となりました。46万人もの子ども(中学生以下)が暮らす『日本最大の子育て支援都市』として、皆様が安心して子育てをしていただけるよう取り組んでいます」

 ――子育て支援では公式アプリのリリースや保育の負担減、いわゆる「小1の壁」対策等にも取り組んでいます。

 「10月にリリースした全国初の総合的な子育て支援アプリ『パマトコ』は、現在5万人以上の方にご利用いただいています。例えば出産費用助成の申請は、ほぼすべての方が『パマトコ』から申請されています。また、アプリには母子手帳機能や予防接種のスケジュール管理、イベント情報のプッシュ通知など、さまざまな機能を搭載しています。ユーザーの皆様のお声を聞きながら、これからもどんどん進化させていきます。また、保育園に持参するおむつなどの準備や持ち帰りの負担を減らす『にもつ軽がる保育園』も、導入する施設が広がっています。さらに、『小1の壁』の代表例である夏休み中のお弁当づくりの負担を軽減するため、すべての学童等での昼食提供をモデル実施し、95%以上の保護者から『ゆとりを感じた』との満足の声をいただきました」

市民目線の地震防災戦略

 ――防災・減災対策は、横浜市にとって喫緊の課題です。

 「能登半島地震など大きな災害の経験を、横浜でもいつ起きてもおかしくない大規模地震への備えに生かすため、地震防災戦略を刷新し、災害対策を大幅に強化します。

 【1】市民や地域の"発災前からの備え"の強化【2】誰もが安心して避難生活を送ることができる仕組みの構築【3】救援活動や緊急物資輸送の要となる横浜市初の広域防災拠点の整備【4】上下水道の耐震化や緊急輸送路の整備などを加速化する災害に強いまちづくり――の4つの柱に沿って徹底的に『市民目線』に立った取組を進め、市民の皆様の命と暮らしを守るための災害対策を進めていきます」

 ――地域の防犯対策も急務です。

 「地域での平穏な暮らしを守るためには、行政と地域の皆様が連携して取り組むことが必要です。

 地域からいただいたLED防犯灯の設置要望について、当初予定を拡充し、設置基準を満たすものは全て年度内に整備するなど、スピーディーに対応します。

 また、市内すべての不審者情報をGoogleマップで確認できる市独自の『こども安全・安心マップ』の活用や、学校と家庭との連絡アプリ『すぐーる』を活用した適切なSNS利用の情報発信など、ハード・ソフトの両面から地域防犯の取組を強化します」

市民・企業の行動変容促す

 ――脱炭素社会の実現に向けた取組みについてお聞きします。

 「気候変動を食い止め、環境にやさしい循環型の社会にしていくためには、市民の皆様の行動変容が鍵になります。横浜市は、市民の皆様の身近なアクションを後押しし、環境にやさしい社会につながっていることを実感していただけるような取組を進めています。

 プラスチック資源のリサイクルを拡大するため、昨年10月に先行9区でごみの分別ルールを変更しました。今年4月からは、全18区で新たな分別ルールがスタートします。

 他にも、消費期限が近くなったパンをお得な値段で販売するロッカーを設置して食品ロスを減らす取組や、ご家庭で揚げ物などに使った油(廃食油)を回収し、飛行機の燃料に生まれ変わらせる取組も進めています。

 昨年12月には、『地球1個分で暮らそう STYLE100』プロジェクトを始動し、地球にやさしい新しい暮らしを市民や企業の皆様と一緒に発信していく取組がスタートしました。

 市内企業の99・6%を占める中小企業の皆様の行動変容につなげるため、『脱炭素取組宣言』制度を昨年6月に創設し、環境に配慮した経営、脱炭素経営に取り組む中小企業の皆様のチャレンジを、積極的に後押ししていきます」

「環共」 テーマの国際博覧会

 ――旧上瀬谷通信施設で開かれるGREEN×EXPO 2027まで、いよいよあと2年です。

 「『GREEN×EXPO 2027』は、環境と共生し、皆様と共につくる『環共』がテーマの世界で初めての国際博覧会です。

 会場では、まず、皆様を圧倒的な花と緑でお迎えします。脱炭素技術を体験したり生物多様性への理解を深めたりできるエリアをはじめ、農と食が近い暮らしの体験や、子どもたちが自然の大切さを楽しみながら学べるエリアなど、国内外のあらゆる世代の皆様にお楽しみいただける場所となるよう、着実に準備を進めています。

 今後、各エリアの出展内容など、会場計画についてタイムリーに市民の皆様にお伝えし、開催への期待感を高めていきたいと考えています」

 ――会場周辺交通への影響について、対策は。

 「会場および周辺の整備は、地元の皆様の生活に影響がでないことを大前提に、多くの皆様が安全・円滑に来場できる環境を整えていきます。会場周辺の道路整備や主要ルートの交通円滑化をはじめ、環境にやさしいシャトルバスの導入など環境に配慮した対策を関係者と連携して進めています」

 ――2025年度予算編成の方向性を聞かせてください。

 「地震防災戦略を刷新し災害対策を大幅に強化するとともに、子育てしやすさを実感できる更なる取組の推進、医療・福祉の充実などあらゆる世代の暮らしを支えてまいります。

 また、地域交通の拡充に本格的に着手するほか、公園や学校のトイレの洋式化、学校体育館の空調整備など、市民の皆様からの改善要望が多かった身近な環境の整備を大幅に加速させます」

再選出馬、明言せず

 ――今夏の市長選について再選出馬の考えは。

 「市民の皆様から託された任期の中で、成果をしっかりとお返ししていくことに全力を尽くしていきます」

 ――市民へのメッセージをお願いします。

 「地域に足を運ぶといろいろなお声をいただき、その一つ一つがとても大切なものです。今年も、市民の皆様の『声』を第一に、人にやさしく、誰もが安心してくらせるまちの実現に向けて、力を尽くしてまいります」
就任4年目を振り返る栗原区長

港南区長インタビュー 「協働による地域づくり」へ デジタル区役所の成果も

 2025年の年頭にあたり、本紙では港南区の栗原敏也区長にインタビューを実施した。就任4年目の取り組みを振り返ったほか、区政運営などについて語った。

 ――就任4年目となりました。区長が掲げる『協働による地域づくり』の手ごたえなどお聞かせください。

 「昨年は1月の能登半島地震、8月の南海トラフ地震臨時情報の発表等により、災害への備えの必要性が強く意識される一年となりました。

 港南区には、地域の方々が運営する地域防災拠点が31カ所あり、さらに災害対応を協働により進めていくため、横浜商工会議所南部支部からご提案いただき、12月に『災害時協力事業所登録制度』を開始しました。この制度は、大災害等発生時に区内事業者の持つ事業特性や保有資格・技術を活かし、復旧、復興の実現に向けて地域に貢献していただくものです。これは事業者と地域のつがなりがより強固なものとなる、まさに『協働による地域づくり』を推進する重要な取組だと考えています。

 このような安全・安心に関わる取組に加え、今年度も各地域では『通学路の見守り』や『公園愛護会活動』、『川のクリーンアップ』等の活動が精力的に行われ、夏には、数多くの夏祭りや盆踊りが開催され、『絆』を深めることができました。

 港南区民の方々は『自分たちでできることは自分たちで』という考えのもと、地域で暮らす様々な人や団体、企業が協力し合っています。私たち区役所も、協働のパートナーとして『明るく元気ひまわりこうなん』を目指して、引き続き皆さまと一緒に歩んでいきたいと思っています」

子育て施策も推進

 ――今年度の区運営方針の進捗状況は如何でしょうか。

 「今年度は、昨年度の施策に『子育てにやさしいまちづくり』を加えた5つの柱で進めてまいりました。それぞれの柱に沿って、ご説明いたします。

 『安全・安心のまちづくり』として、83(ハチサン)太郎を活用した交通安全啓発や防犯啓発を数多く開催したほか、ハチの巣の駆除の手順を分かりやすくお伝えするため、駆除方法の動画を公開し、より安全な駆除作業ができるようになりました。

 『子育てにやさしいまちづくり』として、妊婦や保護者がより手軽に子育てに関する情報を入手できるよう、『港南区子育てサイトここなび』による情報発信を行ったほか、デジタル区役所モデル区として取り組んできた成果のひとつとして、来庁前にWEB上で、手続きが必要な窓口の事前発券ができるサービスを開始し、区民の皆様の待ち時間短縮・混雑緩和につなげることができました。また、あいにくの雨の中で開催されたこうなん子どもゆめワールドでしたが、約1万人という多くの方にご来場いただき子どもたちの笑顔が会場に溢れました。

 『見守り・支えあいのまちづくり』として、障害から生じる様々な行動を知ってもらうため、啓発動画『あたたかく見守ってください』を作成し、障がい理解の啓発に取り組んだほか、自治会町内会におけるICT活用推進を図るため、区民活動支援センターとの協働によりICT活用講座を開催しました。

 『誰もが元気で健やかに暮らせるまちづくり』として、港南区における文化活動の機運醸成につなげるため、小さいお子様とその親世代が気軽に文化・芸術に触れられるミニコンサートを、区役所1階区民ホールを活用して実施しました。

 『住み続けたいまちづくり』として、10月1日から港南区で開始された、プラスチック製品と容器包装をプラスチック資源としてまとめて収集するごみの出し方変更について啓発を実施したほか、2027年開催のGREEN×EXPO 2027に向けた機運醸成の取組として、1000日前イベントなどの啓発に取り組みました」

 ――港南区の重点課題や今後の取り組みについてお聞かせください。

 「中期計画の最終年度となる2025年度は、基本戦略の実現に向けて、区民の皆様に『子育てにやさしいまち』を実感していただけるよう、子どもを中心とした取組を充実させます。

 『区役所に子どもと休憩できるような場所が欲しい』という区民の皆様からのご意見をもとに、区役所1階区民ホールを初めとした区庁舎空間を活用し、お子様とご一緒に来庁された方にも居心地の良い場所づくりに取り組みます。

 また、GREEN×EXPO 2027の開催に向けて、多くの区民の皆様に会場に訪れていただけるよう、地域団体等との協働により機運醸成に取り組みます。

 そして、2025年3月には、港南台地域に地域子育て支援拠点のサテライト施設が開設予定となっています。この施設は、就学前のお子様とその保護者が遊び、交流できるスペースの提供、子育て相談や情報の提供などを行う子育て支援の拠点となっておりますので、区民の皆さま、どうぞお気軽にお越しください」

 ――港南区民ヘ新年のメッセージをお願いします。

 「これからも、区民の皆さまと一緒に『協働による地域づくり』を進め、未来を担う子ども達がいつまでも住み続けたいと思える『愛あふれる ♥ふるさと港南』を目指してまいります。本年も、どうぞよろしくお願いいたします」

区政を語る松永区長

栄区長インタビュー 40年へ、「住みたい」街作る 園芸博機運醸成にも注力

 2025年の年頭にあたり、本紙では栄区の松永朋美区長にインタビューを実施した。就任1年目の取り組みを振り返ったほか、区政運営などについて語った。

 ――就任1年目を振り返り、率直な感想をお願いします。

 「昨年4月に栄区に着任し、区民の皆様と同じように毎日豊かな緑と自然に癒されながら過ごしております。

 着任以降、7つの連合自治会町内会で意見交換を行ったほか、敬老の集いを始めとした地域の行事や、各委嘱委員・シニアクラブ・文化協会など様々な団体の活動の場にお伺いし、皆様には温かく迎えていただきました。また、多くの区民の皆様や栄区で活動されている皆様と直接お話する機会をいただきました。地域、学校、施設、企業など幅広い方々とのつながりを大切にしながら区政運営を進めることができたのは、皆様のご協力あってのことと、感謝申し上げます。

 地域の活動を拝見するなかで、栄区に関係する、広い意味での区民の皆様が栄区を大切に思い、人と人とのつながりから生まれる活力が地域を支えていることを実感し、多くのことを学ばせていただいた、そんな1年でした」

 ――今年度の区政運営方針の進捗状況は如何でしょうか。

 「2024年度の区政運営方針は、昨年度に引続き『未来を育む 暮らしつづけたいまち さかえ〜人がつながり地域がつながる〜』を基本目標にしています。

 出産・子育てを応援する取組として、子育て情報を集約したウェブページを整備し、横浜市子育て応援サイト『パマトコ』と連携して、子育て世帯への情報発信を強化します。また、今年度初めて、妊娠後期から産後4カ月の妊産婦の皆様が交流する『ハピママサロン』を計9回開催し、ご好評をいただいています。

 ご高齢の方が住み慣れた地域で安心して便利に暮らせるよう、スマートフォンなどのICT活用をサポートする人材の養成講座や大学生等ボランティアが活躍するスマホ教室・スマホ相談会を開催し、世代間交流もできました。

 居住促進の取組として、『住みたい、住み続けたい』と感じていただけるよう、横浜駅の交通広告を活用し、栄区の住環境の魅力を1月中旬にPRします。また、空家を未然に防止する取組として、専門家によるセミナーと個別相談会を8月と12月に開催しました。

 そして、『GREEN×EXPO2027』の機運醸成の取組として、本郷台駅前広場の植栽帯の再整備やデジタルサイネージの設置など、環境整備にも力を入れています。さらに区庁舎本館1階では、栄区の花『キク』、木『サクラ』『カツラ』を使ったオブジェや、柏陽高校美術部の生徒の皆さんが区民まつりの来場者の皆様と一緒に制作した素敵な黒板アートを展示しています。区役所にお越しの際には、是非ご覧ください。

 安全・安心の取組として、区内20カ所全ての地域防災拠点において、災害時の迅速な開設及び円滑な運営を支援するための『ファーストミッションボックス(開設支援キット)』を1月中に配備する予定です。また、専門家の知見も取り入れた福祉避難所の開設運営訓練も行います」

 ――栄区の重点課題や今後の取り組みについてお聞かせください。

 「栄区は、来年(2026年)区制40周年を迎え、翌年には『GREEN×EXPO 2027』が開催されます。2つの大きな節目を契機に、さらに栄区の魅力を高めたいと考えています。

 一方で、栄区は、全国的な課題でもある高齢化にも直面しており、引き続き『子育てしたいまち』を実感できるよう、関係部署とも連携して子育て支援策に取り組むとともに、地域の皆様の活動を応援し、栄区全体の魅力を引き出していきたいと考えています。

 その上で、緑豊かな自然と利便性の調和する栄区の住環境の魅力を発信し、『栄区に住みたい、住み続けたい』『栄区で子育てしてみたい』と区民の皆様をはじめ多くの方々に感じていただけるよう、居住促進の取組にも力を入れていきます」

 ――栄区民へのメッセージをお願いします。

 「栄区にとって、皆様が地域を愛し、活発に活動されていることが何よりの財産です。その活動が皆様の生活を豊かにし、地域全体を支えています。栄区としては、そうした皆様の活動を誇りに思い、新たな担い手が増え、地域活動の輪が広がるよう活動を応援していきたいと思います。

 これからも地域の皆様のお声を聴き、区政に反映していきます。そして地域行事や活動を通じて、さらに多くの皆様と直接お会いし、お話しを聴かせていただけることを心より楽しみにしています。ぜひ率直なお声をお寄せいただき、一緒になって栄区を盛り上げていきましょう。

 本年も栄区政にご支援、ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。皆様のご健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます」

建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を昨年、受賞した建築家 山本 理顕さん 神奈川区在住 79歳

建築でコミュニティ豊かに

 ○…「公と私の境をなくした建築空間が、コミュニティを豊かにしている」と評価され昨年、プリツカー賞を受賞した。「『言ってもらいたい』と思っていたこと。受賞そのものより、その評価が嬉しい」。人は一人では生きられないからこそ、人を巻き込み、人と人が関わりあう建築を提案し続ける。「だから、波風が起きることも多いんだけど」といたずらな笑みを見せる。

 ○…4歳の時に亡くなったエンジニアの父の素晴らしさを母から聞いて育った幼少期。「その影響か、技術者への漠然とした憧れはあった」と振り返る。青年期は南区三春台の関東学院中学高校で過ごした。記憶に残るのは、当時の学校にあった木造平屋の礼拝堂や建築家・モーガンが設計した旧本館。そのユニークな構造や迫力に、「今も強く印象に残っている」と話す。湧いてくる興味を育て、建築の道を志した。

 ○…東京藝大大学院修了後は、東大生産技術研究所の原広司研究室の研究生に。世界各地に赴き、集落の調査を行った。数ある住居を見る中で、共通して「プライバシーとパブリックの間の空間」=『閾(しきい)』が存在することに気づいた。「かつて日本の住居や店舗に当たり前に見られた空間だが、現代社会では失われつつある」と危惧する。

 ○…横浜駅西口から徒歩圏内の自宅がある反町を、「田舎感がすごい」と評する。その言葉から、自身のコミュニティに対する愛情が滲む。神奈川県内の横須賀美術館や子安小学校のほか、世界中で著名な施設や住居を手がけてきた。建築作品を通して一貫して提示し続けているのは、「コミュニティの在り方」だ。「専門家はみんな哲学者。思想をもってやるべき」

2月に全館リニューアルオープンする横浜美術館の館長を務める 蔵屋 美香さん 西区在勤

全市民が楽しめる空間に

 ○…生まれも育ちも千葉県千葉市。幼いころから「絵が上手」と周囲に褒められ、ずっと絵や漫画を描いていた。高校時代は美術部に所属し、東京の女子美術大学洋画(油絵)専攻に進むが「漫画家になりたい」という思いが強く、全力で取り組めなかった。卒業後はパッケージデザイナーとして外資系企業に就職するも会社が日本から撤退。アルバイト生活を経て一念発起し、千葉大学大学院に進学する。

 ○…大学院では芸術学を専攻。初めて批評を書いた時に「私はこれが得意なんだ」とすぐに自らの武器に気付いた。修士課程修了後、28歳で東京国立近代美術館に採用され、作品への独特の視点を生かし、名物キュレーターとして多くの企画展を開催したほか、13年にはヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展で特別表彰を受賞するなど、国内外に知られる存在に。「やれることはやり切った」と思った頃、横浜美術館前館長の逢坂恵理子氏から誘いを受けて、20年4月、館長に就いた。

 ○…横浜美術館は「開館以来、実施された企画展の8割には来ていた」と振り返る。就任以降、「横浜市民は美術館で『学ぶ』より『楽しむ』生き方をしている人が多い」と分析。「一人ひとりのニーズが、より具体的に分かるようになった」と話し、エレベーター新設や授乳室の増設、調乳器の導入など、子育て世代も障害がある人も気軽に楽しめる空間づくりを心掛けた。

 ○…読書、音楽、映画などの趣味はすべて仕事に結び付けてしまうが、8年前に始めたヨガは別。「普通はしない体勢をするから余計なことは考えられない。だから頭がスッキリして生活全体をリセットできる」。スッキリした頭で市民を喜ばせるアイデアを次々と生み出していく。

高座での歌助さん=本人提供

新春取材 桂歌助さん 落語家40年、横浜と共に 港南区笹下在住

 今年、落語家生活40年を迎える港南区笹下在住の桂歌助さん。横浜出身の落語家、故・桂歌丸さんの弟子だ。師匠から受け継いだ古典落語を売りに1999年に真打昇進。寄席、独演会に落語教室の講師と幅広く文化振興に努める。

在学中に入門

 新潟県十日町市の生まれ。教員を志し大学進学のため上京した。ところが、「面白い話ができれば将来授業の役に立つだろう」と寄席に通ううち、落語の世界に惹かれていく。気付けば落語家志望になり、在学中に歌丸さんの門を叩いた。

 それまでは新小岩(東京都葛飾区)に住んでいたため、通い弟子となるべく歌丸さん宅近くの南区高砂町に転居。初めて横浜で暮らすことになる。「当時は黒い漆喰の家など、遊郭の面影が残っていました」と懐かしそうに語った。

 歌丸さんからは「ほめる人は敵と思え、叱る人を味方と思え」と厳しく指導を受けた。また、落語の世界をイメージするために江戸の街並みや文化などが分かる岡本綺堂の時代小説「半七捕物帳」を勧められたのも思い出だ。

 その後、27歳で二ツ目に昇進。同時に港南台へ移り住んだ。そこから、一時期を除き、港南区に住み続けている。

 南台小学校のPTA会長や少年補導員、横浜港南ライオンズクラブなど、地域活動にも積極的に参加。「外国人観光客も少なく、静かで住むにはよい地域」と気に入っているという。

地域史を探求

 落語家であれば歴史探求も仕事の一つ。「港南区は武蔵と相模の国境が区内にある珍しい場所」と解説する。歌助さんによると、国名は雨が流れる場所によって決まったのだという。「武蔵は江戸湾(東京湾)に、相模は相模湾に流れる地域。大岡川が江戸湾に流れるのに対し、平戸永谷川は柏尾川から、相模湾へと向かう。港南区は両国にまたがる」と嬉々として語る。

 また、秋に宿場に関するイベントに参加する予定で、戸塚にも関心を示す。1999年に東海道を歩いたことをきっかけに宿場に興味を持ち、歌川広重の浮世絵「東海道五十三次 戸塚」から落語「戸塚宿」を創作した。「吉田大橋(戸塚区)が描かれ、『左りかまくら道』の道標が見える。栄区を通り鎌倉へ続く道だ。描かれている女性は駆け込み寺の北鎌倉・東慶寺を目指しているのではないかと想像した」と熱弁。しばらく演じてないというが「今年は機会があれば」と意気込んだ。

 最後になぞかけを披露してもらった。「巳年」とかけて、「ポテト」と解く。その心は「じゃがいいもん(蛇が良いもん)」。

感謝状を持つ園児

聖佳・野庭聖佳幼稚園 海外活動に寄付金 日本赤十字社から感謝状

 日本赤十字社神奈川県支部にて12月24日、「NHK海外たすけあい」募金受領式が行われ、聖佳幼稚園(横須賀市)と野庭聖佳幼稚園に対して感謝状が贈られた。

 学校法人信栄学園(石塚薫子理事長)が運営する両園は、「NHK海外たすけあい」事業へ、32万円を寄付。この事業はNHKと日本赤十字社の共催で1983年から行われているキャンペーンで、令和5年度は全国で約9億円を集めた。

 受領式当日は幼稚園の職員と園児、保護者が参加し、寄付金の受領と支部長感謝状の贈呈が行われた。

 1994年から募金活動を継続している両園。企画に賛同した家庭からの寄付金などを取りまとめ、今年は聖佳幼稚園が17万円、野庭聖佳幼稚園が15万円を集めた。寄付金は難民に対する支援など、主に日本赤十字社の海外活動に充てられる。

 同法人の石塚理事長は

「毎年行っている募金活動が園児たちにとって他者のことを考える機会になってほしい。今後も継続したい」と話した。

出陣式の参加者

栄警察署 「年末年始、犯罪に注意」

 神奈川県警が定める「年末年始特別警戒」が12月15日から1月3日であるのに合わせ栄警察署は12月13日、本郷台駅前広場で「年末年始特別警戒出陣式」を行った。

 同署に加え、栄区役所、栄防犯協会、栄防犯指導員連絡協議会、警親会栄支部が参加。参加者を前に大窪太郎署長は「今年は犯罪が増加傾向にある。また、闇バイトによる凶悪事件が注目を集めたことから、区民の不安は高まっている。年末年始を安全に暮らせるようにしなければならない」と話した。

 また、続いて登壇した松永朋美区長は「顔の見える関係が犯罪抑止の一歩になると思う。防犯意識を一層高める」とした。その後、栄防犯指導員の高野泰正さんによる安全宣言、連合自治会、町内会会長への「安全のぼり旗」の贈呈、通行人への啓発物配布などが行われた。

 県警は年末年始特別警戒に合わせ、WEBサイト上で特に特殊詐欺、子どもと女性に対する犯罪、住宅への侵入犯罪、店舗への侵入犯罪への警戒を促している。

 特殊詐欺に対しては「留守番電話に設定する」、子どもと女性に対する犯罪では「明るく人通りの多い道を利用する」、住宅への侵入犯罪は「インターホンやドアスコープで来訪者を確認する」、店舗への侵入犯罪には「必ず来店客の顔を見て接客する」などを防犯のポイントとして挙げ、被害に遭わない対策を促している。

矢島会長(左)と川上局長

西松本町内会×ジェイコム 地域安全協定に調印 防犯カメラ設置に協力

 港南区の西松本町内会(矢島一紀会長)と株式会社ジェイコム湘南・神奈川 南横浜局(川上芳徳局長)は12月15日、同町内会館(港南1の15の22)で「地域安全に関する協定」の締結式が行われ、協定書に調印した。

 協定は、同社の一戸建て向け防犯カメラのサービスを手頃な価格で町内会会員に提供し、地域の防犯力を高めていくことが目的。同社は既に戸塚区の町内会などと協定を結んでいるが、港南区の自治会町内会との個別調印は初めて。

 同社の防犯カメラは、暗視や録画の機能、スピーカーが搭載されており、映像を見ながら声をかけることも可能。町内会館にも設置予定で、今後は町内会員への回覧板や各世帯への説明で情報発信し、安心・安全な地域づくりを進める。

 矢島会長は「自分のことは自分で守る事。事故を事前に防ぐことにつながれば」と期待を込めた。同社の川上局長は「地域密着を掲げる会社として、今回を機に貢献していきたい」と話した。調印を見守った港南警察署担当者は「防犯カメラを設置するのは犯罪抑止につながる良い取り組み」と語った。

DJパフォーマンス中のMAKIDAIさん(=LDH JAPAN提供)

新春特別インタビュー EXILE結成時の一員「決めたら、ブレずに進む」 栄区 西本郷小卒 MAKIDAIさん

 MAKIDAIさんは西本郷小学校を卒業後に中学1年生までを西本郷中学校、2年生からは川崎市の宮前平中学校で過ごした。小学生の時は父親がコーチを務める笠間ジャガーズで野球に打ち込み、自身を「活発な子どもだった」と振り返る。

 ダンスを始めたのは中学生の時。きっかけはダンスグループのZOOが出演していたオーディション番組だった。そこで同い年の少年が踊る姿を見て感銘を受けたという。

踊る喜びに触れる

 その後、野球部に所属しながらも独学でダンスを学び始めた。「当時は情報の少ないジャンルだった。ステップやスタイルを調べ、吸収するのが楽しかった」と微笑む。中学3年の学内イベントで初めて人前でダンスを披露。

 当時のことをこう語る。「他の出し物は時代的なこともあり、バンド演奏が多くて、ダンスは新鮮だったと思う。皆が驚いているの見て、改めて魅力に気づいた。自分の中で『これだ!』と思った瞬間であり、この時の衝動と経験が自分の核になっている」

 高校入学後は、ZOOのメンバーで現在はEXILEをはじめ多くのグループが所属する「LDH JAPAN」の代表取締役会長のHIROが講師を務めていたダンススクールに所属。本格的に始めた。

ダンサー目指し渡米

 「これまで途中で道を変えたくなっても、最後までやりきるようにしてきた」と、自身のこだわりを明かす。

 高校生の時、ダンスを学ぶために渡米する仲間を見て、海外での挑戦を考えたことも。しかし「行きたいとは思ったけど、プロという形が自分の中でまだ漠然としている」と考え、日本でダンスを続けながら進学。

 大学は3年生へ進級する進級条件を満たしたうえで両親を説得し、中退後にニューヨークへ。語学学校に通いながら、テクニックを磨いた。「理解してくれた、両親には感謝している」と背筋を伸ばし、「『進級できないから渡米する』という状況にしたくなかった。一度決めたら、やり切る」を徹底してきた信条を示す。

無償の愛が思い出

 栄区での思い出は、中学校野球部での経験。1年生の時、川崎市への転居が決まり、それを監督へ伝えたところ、練習がいきなり厳しくなったように感じた。MAKIDAIさんは戸惑いながらも、食らいついた。そんな日々が続き、迎えた引越しの日。練習終了後に監督に呼び止められ、「これでどこに行っても大丈夫だね」と優しく声をかけられた。これに対して「『頑張った経験が次につながる』という姿勢で向き合ってくれた。無償の愛を感じた」と監督の思いに触れた際の心境を吐露する。

 2015年、大晦日にEXILEのパフォーマーを勇退。所属するクリエイティブ・ユニット「PKCZ®」の活動を本格化していった。LDHグループのダンススクールでは後進の育成にも注力。「ダンスと音楽、どちらも子どもたちに楽しんでもらいたい」と微笑む。

 「これからもダンスをする全ての子どもたちの未来に向けて、自分の経験を生かしていきたい」と熱く抱負を語った。

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