鎌倉版【8月8日(金)号】
一級技能士の証明を持つ月野さんと妻の千恵子さん

夫婦で一級技能士に 「鎌倉はんこ」の月野さん

 市内御成町の「鎌倉はんこ」の店主・月野允裕(みつひろ)さん(46)と妻の千恵子さん(41)が、国家検定資格「印章彫刻(木口彫刻作業)」の最上位となる一級技能検定に夫婦そろって合格した。夫婦で一級を保持しているのは全国でも10組以下。2人は「より学びを深め、研鑽していく」と話している。

 一級技能検定の受検資格は、7年以上の実務経験または二級合格後2年以上の実務経験が必須で、培われた確かな技術と知識が求められる。

 試験は3年に1度しか開催されず、今年1月に横浜市内の会場で行われた試験には、県内から月野さん夫婦のみが一級を受検。全国では一級・二級合わせて約110人が腕を競い合った。

秘訣は莫大な練習量

 特に難易度が高いとされる実技は、試験時間5時間30分で直径18ミリの柘(つげ)材の中に16文字を完全手彫りしていく。文字の太さはわずか0・2ミリほどと極細で、使用する印刀の研ぎ方にも職人の技量が凝縮される。

 実は、3年前にも一級に挑んでいた月野夫妻。残念ながら不合格だったが、「次は絶対に受かろう」と固く誓い、並々ならぬ努力を重ねてきた。日中の仕事に加えて、講習会への参加、早朝や深夜にも練習時間を設け、一人あたり50本もの柘材を彫り込み続けたという。月野夫妻は「一生を共にする印鑑。しっかりとした技術で作り、責任をもってお渡ししている。全国的に技能士の減少などがあるので、啓蒙活動にも力をいれたい」と話した。

開放された議場に避難する観光客ら(市提供)

5660人避難、新たな課題も 車で輸送など緊急措置

 7月30日に起きたカムチャツカ半島付近での地震による津波警報発表を受け、避難者や帰宅困難者の受け入れをした鎌倉市の対応を改めて振り返る。市によれば、最大で5660人が避難。庁舎や議場の開放のほか、避難者への熱中症対策、鉄道やバスの運休に伴う帰宅困難者のピストン輸送など、緊急的な措置もあり、課題も浮き彫りとなった。

 市は、午前9時40分の警報発表を受けて、災害対策本部を設置。30分後には、1回目の会議を開き、職員がいる津波浸水想定区域外の公共施設での避難者の受け入れを開始。市役所や議会棟のロビー、議場も開放し、水や食料品の配布などを実施。暑さ対策、熱中症対策も行った。

 開放した施設では、一部、備蓄品が配備されていない場所もあったという。備蓄品は、地震の避難者を想定して量を決めており、一部施設では帰宅困難者の分も用意はしているものの、保管スペースの問題や使用期限があるため、「100%カバーすることは難しい」のが現実だ。水に関しては、今回のように地震被害がない場合は、浄水器や井戸水も使えるという。

避難者が滞留

 鉄道やバスが運休となったことで、観光客が移動できなくなり、避難で訪れた市役所、議会棟に滞留したことも課題となった。

 浸水の恐れがない湘南モノレールが通常通り運行していたこともあり、市では緊急措置として、午後2時から市が保有するマイクロバス、ワゴン車、軽自動車を使い、市職員が帰宅困難者約1500人を湘南深沢駅までピストン輸送した。

 市総合防災課によれば、避難指示がいつまで続くか分からない状態だったこともあり、まずは帰宅困難者に移動してもらおうと考えたという。「交通関係の課題は、一自治体が単独で解消できる問題ではないので、今後、交通機関と協力や対応について協議を進めたい」とする。

 また、大船駅などではタクシー待ちの長蛇の列ができた。午後6時には帰宅困難者の一時滞在施設として、市役所講堂や大船支所、鎌倉芸術館が開放された。

外国語の情報不足

 避難者で多かったのが外国人観光客だ。外国語でのアナウンスが十分ではなく、伝達方法に課題があったと市は捉える。

 鎌倉市観光協会では、SNSを使い、英語や中国語などで防災情報の発信を行った。

 また市では、23年3月から沿岸部に英語を並記した津波避難の案内表示を設置。今年度中に30カ所まで拡大予定となっている。

神奈川県社会保険労務士会藤沢支部長に就任した 古田 雪美さん 藤沢市在住 53歳

働き手、陰で支える味方

 ○…政府主導の「働き方改革」が叫ばれるようになって久しい。多様な雇用形態の導入やワークライフバランスの重視など労働環境が目まぐるしく変化する今、ニーズが高まっているのが社会保険労務士だ。人事・労務管理全般の問題を指摘し、改善策をアドバイス、企業の発展に寄与する。藤沢、茅ヶ崎、鎌倉、寒川3市1町の社労士約300人が名を連ねる藤沢支部の舵を取る。「半世紀の歴史がある支部。先人が築いた伝統を守りつつ、時代に沿った提案をしていきたい」

 ○…横浜市栄区で生まれ育った。就職氷河期で、面接官から「結婚したら辞めるの」と質問されたことも。大学卒業後は生保などの営業職に携わった。仕事に不満はなかったが、「私の人生このままでいいのか」という漠然とした疑念が渦巻いた。「何か武器になる資格がほしい」と宅建を取得。その後、たまたま書店で社労士について知った。結婚、出産を経て、子育てしながらようやく手にした国家資格。その頃から約20年働く広瀬事務所の代表からは、全幅の信頼を寄せられるほどの存在になった。

 ○…かつて書類代行がメインだった業務も現在は経営コンサルなど、より専門的に企業運営を陰で支える。行政から委託を受け、労働相談会も開く。子育て中の母親や高齢者など対象はさまざま。「正解はない。でも相談者が何を求めているのか、気持ちを汲む必要がある」。一人一人の声に真摯に耳を傾け、常に味方であり続ける。

 ○…趣味は推し活。韓国の男性アイドルグループ「SHINee」のライブに行くのが息抜きだ。2人の娘から最新情報もゲットする。「法律や制度、手続きは変わる。仕事もプライベートもアップデートが肝心」といい、柔和に笑った。

春から記録更新が続く丸橋さん

深沢中・丸橋さん初の全国 男子共通110mハードル

 市立深沢中学校の丸橋謙輝さん(3年)が、8月17日から沖縄県で行われる「第52回全日本中学校陸上競技選手権大会」の男子共通110mハードルに出場する。7月6日に横浜市の三ツ沢公園陸上競技場で行われた「第38回神奈川県中学校選抜陸上競技大会」で、全国大会の標準記録14秒70をクリアする14秒64を記録し、初の切符を手にした。

 小学生の頃はラグビーで鍛えた丸橋さん。「走るのが好き」で中学校では陸上部へ。最初は短距離から始めたが、体育の授業でハードルの楽しさを知り、2年の夏から本格的に競技に取り組んだ。ただ走るだけでなく、跳躍がタイムに影響するハードル。「空中動作が上手くできるかどうかが大切。追求しがいがある」と奥深さを語る。

 何度も走り、理想のフォームを体に覚え込ませる練習が実を結び、「春からグングンタイムが伸びてきた」と顧問の齋田啓佑さん。選抜大会前の自己ベストは14秒90だったが、大会の予選で14秒75と更新。さらに決勝で14秒64と再び更新し4位に入賞した。

 大舞台を前に、「抜き足のスピードとスタートの改善」と課題は見えている。「決勝まで残って入賞したい」と練習にも熱が入る。見守る齋田さんも「次々とベストを更新しているので、全国大会でもいい記録を出してくれるのでは」と期待を寄せる。

記者の仕事を体験

 大船高校1年の柳澤じゅんなさんが7月24日、25日、タウンニュース藤沢支社でのインターンシップに参加した。

 鎌倉編集室・藤沢編集室の記者と同行し、構図を考えながら写真を撮影したり、記事を作成したり、記者の仕事に挑戦した=写真。

 今号の「落語題材に子ども新聞」の記事では、柳澤さんが撮影した写真を掲載している。

切り立った岩肌と深い緑に囲まれ歩く大仏切通

小径で夏の時間旅行 日本遺産「大仏切通」

 身を包むように響く蝉の合唱と、風に揺れる枝のざわめき。時折交じる鳥のさえずりを聞きながら、切り立つ岩肌を眺めて歩く「大仏切通」。かつて難攻不落とうたわれた鎌倉へと通じる古道の風景を今に伝える国指定史跡でもある。

 夏は猛暑が当たり前となって久しいが、木々に囲まれた大仏切通に吹き抜ける風は、汗ばんで火照った肌に心地よい。

 決して歩きやすいとは言えない岩の佇む山の小径を進むと、街の喧噪は届かない秘境。歴史に思いを馳せて道の先を眺めると、曲がった先から甲冑武者が姿を現すような幻想を抱く時間旅行のひとときだ。

 歴史ある鎌倉ならではの史跡を、夏の散策に歩いてみては。

 なお、大仏切通の周辺には駐車場がないため、訪問は徒歩か公共交通機関の利用を。JR鎌倉駅東口からバスで「火の見下」バス停下車徒歩3分。詳しくは「大仏切通」で検索を。

子どもたちに仕事の説明をする松尾市長(右)

小学生が市長室を見学 津波警報で途中中止に

 鎌倉市は、市長室や庁舎内を見学し、未来の鎌倉について考え、思いを発表する小学生向けのワークショップ「こどもみらいミーティング@市役所」を7月30日に開催。市内の小学4〜6年生約20人が参加した。

 これまで夏休み期間に実施していた「一日市長体験」に代わるもの。

 当日は、松尾崇市長、千田勝一郎副市長、高橋洋平教育長の3チームに分かれ、庁舎内を見学。松尾市長とともに市長室に入室した子どもたちからは、「本がたくさんある」「パソコンで管理できてすごい」などの感想があがった。

 その後、ロシアのカムチャツカ半島付近で発生した地震の影響で津波警報が発表されたため、ワークショップは中止になり、子どもたちは保護者と避難した。

過去の夜間開園(提供)

真夏の夜の植物園 大船フラワーセンター

 岡本の大船フラワーセンターで8月16日(土)、17日(日)、23日(土)、24日(日)の4日間、「真夏の夜の植物園」が開催される。

 各開催日は、通常午後5時の閉園時間が午後8時30分(最終入園は7時45分)まで延長され、夜に咲くレッドフレアやツキミソウのほか、夜に香るイランイラン、マツリカなど、いつもとは違う夜の植物を楽しむことができる。

 また、園内グリーンハウスにある文字をつなげて一つの言葉を作るワードラリーや、鎌倉ビール、B級グルメを味わえるナイトカフェ(8時15分閉店)も。入園料は20歳以上400円、学生と20歳未満200円、高校生と65歳以上150円、中学生以下無料。開園は午前9時。詳しくは同園【電話】0467・46・2188へ。

鎌倉検定は11月30日開催 申し込み受け付け中

 鎌倉商工会議所は、11月30日(日)に開催する「第19回鎌倉観光文化検定試験」の申し込みを受け付けている。

 鎌倉に関する歴史や文化、観光、自然、暮らしなど多分野にわたって知識の深さを認定する鎌倉検定。1級・2級・3級に分かれ、鎌倉女子大学大船キャンパスで午後1時30分から。

 受験料は1級7千円、2級6千円、3級5千円(3級のみ大学生・短大生・専門学校生3千円、高校生以下2500円)。申し込み方法は、鎌倉検定ホームページや配布中の専用申込書、商工会議所窓口で。9月22日(月)締切。また、検定に向けた対策講習会やガイダンスを実施。詳細は同会ホームページで確認を。(問)商工会議所【電話】0467・23・2561

 前回は県内外から719人が受験し、合格率は3級72・1%、2級64・3%、1級8・9%。最年少合格者は13歳(2級)、最高齢は88歳(3級)だった。

「皿屋敷」をベースにした落語に聞き入る子どもたち

落語題材に子ども新聞 小中学生が記者体験

 玉縄青少年会館主催の「夏休みバイリンガル新聞づくりワークショップ」が7月25日・26日、同館で開催された。

 小中学生が記者となって取材や体験を行い、日本語と英語を並記した「バイリンガル新聞」を作成するというもの。今年は7人が参加し、湘南エリアの情報を外国人向けに英語でまとめたフリーペーパー「The Shonan Post(湘南ポスト)」のメンバーのサポートのもと、体験した。

 今回の取材テーマは「落語」。近隣の学童の子どもたちも集まり、アマチュア落語家の怪談話の「皿屋敷」を題材にした落語を日本語と英語で聞いた。その後、子ども記者は落語の起源や扇子、手ぬぐいでの仕草などの話も取材し、それぞれ記事を仕上げていった。新聞は、完成し次第、湘南ポストのウェブサイトで公開予定。

昨年の展示の様子=鎌倉市役所提供

原爆と人間展 8月5日〜12日

 JR鎌倉駅地下道ギャラリー東側で8月5日(火)から12日(火)まで、原爆の恐ろしさと平和の尊さを伝える「原爆と人間展」が開催される。

 県内被爆者の手記や絵画などが並ぶ同展。主催する鎌倉市被爆者の会の網崎万喜男さんは、「二度と世界で戦争が起きぬよう、その恐ろしさを伝え続けていかなければいけない」と話している。

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書き損じはがき募集 世界の教育支援のため

 NPO法人鎌倉ユネスコ協会では、世界の教育支援のため、書き損じはがき等を随時募集中。

 はがきは郵便局で切手に交換し、世界寺子屋運動のために日本ユネスコ協会連盟へ寄託する。昨年は市民らから約45万円分が集まった。

 募集しているのは、書き損じはがき、未使用の切手、プリペイドカード、外国のコインなど。ベルマークも回収中。はがき等は封筒に入れ、〒247―0075鎌倉市関谷387の13鎌倉ユネスコ協会書き損じはがき担当の小倉さんへ送付を。(問)同協会【携帯電話】080・6602・9498

鎌倉編集室より 熱中小学生の情報募集

 タウンニュース鎌倉編集室では、9月末に発行する小学生向け新聞「こどもタウンニュース」で何かに熱中している小学生の記事を掲載します。

 対象は、鎌倉市在住の小学生。スポーツや楽器演奏で好成績を修めている子、生き物が好きで知識が豊富な子、伝統芸能に挑戦している子、勉強好きで高レベルの検定試験に合格した子など、ジャンルは問いません。応募者の中から何人かを取材予定です。締切は8月22日(金)です。

 情報提供は、鎌倉編集室【電話】0466・55・4777、kamakura@townnews.co.jpへ。

源平池の蓮

鎌倉のとっておき 第186回 かまくら花めぐり鶴岡八幡宮

 年間1000万人以上が訪れる鶴岡八幡宮。1063年に源頼義が源氏の守護神として京都・石清水(いわしみず)八幡宮を由比若宮(ゆいわかみや)(材木座)に勧請した後、1180年源頼朝が現在の地へ遷座した。鎌倉期以降も武門の神として、徳川家康など時の為政者から篤く崇拝されてきた。

 勇ましい武士の寄る辺だが、四季折々の花が楽しめる名所でもあり、盛夏の頃には源平池一面で紅白の蓮が光り輝く。

 暑さが和らぐ秋は彼岸花。ぼたん庭園裏の土手などで一斉に花開く。そして紅葉(こうよう)。源平池周辺や柳原神池(やなぎはらしんち)の紅葉や銀杏(いちょう)が境内を錦に染めていく。

 年が明けて初春の頃は梅。社務所前やぼたん庭園前などで白梅がほころぶ。また、ぼたん庭園内では霜よけ藁で囲われた冬牡丹(ふゆぼたん)が赤や薄紫色などの花を咲かせてくれる。

 春が進むと、大石段右や旗上(はたあげ)弁財天社の河津桜が濃桃色の花を付ける。そして染井吉野。段葛の約180本の桜並木が、約450mに及ぶさくら色のアーチへと変わる。若宮前などの枝ぶりのよい木々にも、数多の花々が咲き揃う中、大石段左下の静桜(しずかざくら)も薄紅色に花開く。ほどなく、白幡神社前の八重の実朝桜(さねともざくら)もほころび始める。

 初夏には藤。源氏池周辺や旗上弁財天社で、薄紫や白の花房を伸ばし、甘い香りを放ち始める。また段葛や平家池周辺では真紅や白などの躑躅(つつじ)が咲き乱れ、境内を彩る。

 季節を問わず、人々に愛される鶴岡八幡宮。中世鎌倉を今に伝える、世界に誇る八幡様である。

石塚 裕之