鎌倉版【4月25日(金)号】
「御難おむすび」を持つ、(左から)澤渡さん、平井住職、サンディ・ダビラ大使、増山さん

鎌倉エシカルラボ 「御難おむすび」限定販売 安国論寺由縁の味

 フェアトレード(立場の弱い生産者の労働環境等に配慮された商品取引)を推進する組織「鎌倉エシカルラボ」が、安国論寺(大町、平井智親住職)とミツハシライス(本社/横浜市)と協業し、同寺に伝わる「御難(ごなん)おむすび」を復刻させた。5月のフェアトレード月間に合わせ、1カ月間の期間限定で同寺などで販売される。

 同団体は、2年前の2023年5月に設立し、フェアトレードの普及・啓発を図る活動を行ってきた。昨年8月には、地元メーカーらがコラボし、途上国支援と鎌倉のPRを兼ねた商品「鎌倉焙煎珈琲 フェアトレードかまくらブレンド」を発売。今回は、それに続く第2弾で、地域の歴史や文化を次世代に継承するとともに、フェアトレードを通じて持続可能な社会の実現を目指す。

ニカラグア産白ごま使用

 「御難おむすび」は、日蓮聖人が松葉ヶ谷の草庵(現在の安国論寺)で焼き討ちされ、難を逃れた際、助けられた白猿に振る舞われた食べ物が起源になったとされる。

 販売に向け、具材に青しそ、紅生姜、歯ごたえのある梅、白ごまを使用し、現代風にアレンジ。白ごまはフェアトレード認証を受けたニカラグア産で、生産者の生活水準の向上に貢献する。米は、ミツハシライスが厳選した国産米を使用し、パッケージは、鎌倉市在住のデザイナー・澤渡俊仁さんと絵本作家の増山理人さんが手がけた。

 4月15日には、平井住職と澤渡さん、増山さんが駐日ニカラグア共和国大使館を訪問し、サンディ・アナベル・ダビラ・サンドバル駐日特命全権大使と会談。おむすびを試食した大使は、「おいしい」と笑顔に。その後、生産量の減少などニカラグアの厳しい現状などの話があり、そのような状況下で、御難おむすびが「大きな希望になる」と述べた。

 平井住職は「安国論寺由縁の郷土めしです。多くの方に味わっていただきたい」と話した。

御成祭のポスターを手にする廣瀬さん(左)と藤田さん

「御成」もっと知って 5月4日にイベント

 鎌倉市在住の若者が企画したイベント「御成祭」が5月4日(日)、御成町駐車場(御成町10の33・鎌倉駅徒歩1分)で初開催される。主催する「株式会社鎌倉匠人(しょうにん)」のCEO廣瀬一彦さん(=人物風土記で紹介)をはじめスタッフは20代中心。「御成町の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい」と意気込む。

 鎌倉で生まれ育った廣瀬さんと、鎌倉にほれ込んで移住した藤田隼也さんが昨年12月に設立した鎌倉匠人は、体験イベント付き民泊事業など、これまでにない独自の観光コンテンツを提供するために誕生した。

 都内にある経営コンサルタント会社の同僚だった2人は、他の観光都市と比べて鎌倉市の宿泊客比率が低く、平均消費額も少ないことに着目した。独自調査を行い、「京都は29%、横浜も11%が宿泊しているのに鎌倉は5%ほど。日帰り観光でも消費額が少ない傾向がある」と分析。

 一方で藤田さんは、「これは観光産業の伸びしろがあるということ」と前向きにとらえ、「魅力あるコンテンツを生み出して宿泊者数や消費額が伸びれば、まちのためになる」と展望を語る。

 さらに調査を進めると、県外からの来訪者の70%が「御成の名前を知らない」と回答。幼少の頃から過ごす御成町の知名度が低いことから、廣瀬さんは「特色ある魅力的なお店や、美味しい食事もある。有名観光スポットだけじゃない魅力をもっと知ってもらいたい」とイベント開催を決めた。

 当日のメイン会場である同駐車場では、飲食や物販、体験型ワークショップなど25店が参加。廣瀬さんと藤田さんが自ら食べて体験した「地元市民として自信を持ってお勧めできるもの」を厳選し、各店に参加を直談判した。

 さらに、オーバーツーリズム対策を視野に、イベント専用のまち歩きアプリを開発。謎解きイベントのルートは誰もが知るようなスポットや大通りなど混雑する場所を避け、ゆったりと鎌倉散策を楽しみながらクイズに挑戦する。正解者には提携店で利用できるクーポンを進呈し、メイン会場に密集せず広く市内に分散を図る。

 イベントの開催時間は午前10時から午後4時まで。公式インスタグラムで最新情報を発信。まち歩きアプリは、App Store(「御成祭」で検索)からダウンロードできる。

地域イベント「御成祭」を主催する 廣瀬 一彦さん 小町在住

郷土愛と誇り力に変えて

 ○…経営コンサルティングの仕事を経験し、生まれ育った鎌倉を改めて見渡した時、湧いてきた感情は「もったいない」だった。海があり山がある。古の武家や神社仏閣、文化人の足跡が至る所にある。なのに他の観光地に比べ宿泊客や消費額が低い現実。「何かできないか」。郷土愛は、若い心に火をつけた。

 ○…オーバーツーリズムが叫ばれて久しい。しかし、「『混んでいるから来ないで』ではなく、受け入れる工夫を考えたい」。思いついたのは、目玉となるイベントと地域への回遊性。「御成祭」では、自信を持って紹介できる飲食や体験ブースの出店者を厳選してスカウト。謎解きイベントはあえて有名スポットを外した地元民ならではのルートを設定することで、動線を分散して課題を解消する。「上手く機能してくれたら、今後のイベントのモデルケースにもなるはず」

 ○…御成を中心に江戸時代から続く地主の13代目。若い頃から家業を意識し、大学やコンサルタント業で経営を学んだ。当主を継ぎ、人生の岐路にあわせて(株)鎌倉匠人を立ち上げた。御成祭は会社のお披露目を兼ねた打ち上げ花火。今後は民泊事業やまち歩きコンテンツ開発などを視野に入れる。「ただ泊まるのではなく、体験イベントなどを絡ませた付加価値の高い民泊を模索中。観光消費額が少ないというのはむしろチャンス」。まちの課題に鋭く切り込む。

 ○…イベントが目の前に迫り深夜まで会議が続く。社会人になってから知ったサウナの快感がマイブームだが、しばらくはお預け。「今は何よりもワクワクが勝ちますよ」と、瞳は一層輝く。鎌倉の魅力は「ゆとりと優雅さ、そして住む人たちの鎌倉愛」。柔和な笑みに、代々受け継ぐ当主の矜持が滲む。

秘仏を公開 覚園寺 予約制で6月から

 覚園寺(二階堂421)で6月から2026年1月まで、秘仏「後醍醐天皇像」を事前予約制で特別開帳する。

 同寺の愛染明王像が修繕のため、1年ほど不在となることに合わせて行われるもの。後醍醐天皇は、覚園寺を勅願所「金剛宝殿」と名付け、庇護し、同寺本堂・薬師堂を再建した足利尊氏とも縁が深い。開帳される秘仏は高村光雲作。愛染明王像と同じく金剛杵と金剛鈴を持っているという。

 特別開帳は、6月からの毎週日・月曜日午後1時40分から愛染堂内で。撮影不可。各日定員32人で、高校生以上1人2千円、こども1人1500円(通常拝観料含む)。申し込みは、5月から覚園寺ホームページで。

編集室からお知らせ

 鎌倉編集室は5月1日(木)から7日(水)まで休業期間となります。情報提供等は当社ホームページ専用フォーム(お問い合わせ)へお寄せ下さい。

訂正

 4月11日号に掲載しました「鎌倉のとっておき第181回」の連載企画内で、「子規と漱石は郷里が同じ松山」と記載がありましたが、夏目漱石の出身地は東京都でした。訂正しお詫び申し上げます。

江ノ電鎌倉駅の西口改札 3〜5日に優先入場実験

 鎌倉市は5月3日(土・祝)〜6日(月・祝)の3日間、ゴールデンウィークにより混雑が予想される江ノ電鎌倉駅西口改札で、沿線住民を構内へ優先入場させる社会実験を行う。

 期間中の正午から午後4時まで、駅構外まで乗車待ちの行列が発生した場合でも、市が事前に発行する「江ノ電沿線住民等証明書」を鎌倉駅西口改札で提示することで、列に並ばずに駅構内へ入場することができる。

 駅構外まで行列が発生していない場合は、通常通り入場する。昨年は1400人以上が証明書を発行したが行列ができず、優先入場実施には至らなかった。

あすまで申請受付

 優先入場の対象は、江ノ電沿線(鎌倉駅〜腰越駅)に在住・在勤・在学する約3万6000人。証明書は、きょう25日(金)午前9時〜午後1時に市役所4階で、1時〜8時に江ノ電鎌倉駅で、あす26日(土)午前9時〜午後5時に市役所1階で発行される。運転免許証や学生証など身分証明書が必要。

 23年、24年に発行された証明書も利用可能。

 (問)市都市計画課【電話】0467・23・3000

昭和100年記念講演会 17日開催

 鎌倉ペンクラブと早見芸術学園共催の講演会「昭和の『開国』と『開いた社会』」が5月17日に同学園鎌倉本校(小町)で開催される。

 和辻哲郎の『鎖国』、丸山眞男の『開国』を読み解く。講師は東京大学の苅部直教授。午後2時開演。1500円。先着80人。申し込みはウェブフォームから。

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小泉淳作《雲龍図》(建長寺天井画) 小下図 1997年 紙本墨画淡彩 神奈川県立近代美術館蔵

雲龍図下図など日本画を展示中 近代美術館 葉山で

 神奈川県立近代美術館 葉山(葉山町一色2208の1)で、「日本画コレクション再発見と片岡球子『蔦屋重三郎の浮世絵師たち』」が開催中。

 建長寺天井画の『雲龍図』(小下図)や初公開の日本画などを6月29日(日)まで公開。月曜休館。一般1200円。(問)【電話】046・875・2800

横浜楽友協会吹奏楽団 鎌倉芸術館で定期演奏会 読者プレゼントも

 今年で発足50周年を迎える横浜楽友協会吹奏楽団が5月11日(日)、鎌倉芸術館で「第46回定期演奏会」を開催する。午後1時15分開場、2時開演。同団の首席客演指揮者・小田野宏之さんの指揮でベートーヴェン、サン=サーンスなどが作曲した3曲を演奏する。

 今回、小田野さん親子の初共演が実現。小田野さんの娘で、ウィーン市立音楽芸術大学のピアノ科を最優秀の成績で修了したピアニストの小田野直子さんが、ラヴェルの『ピアノ協奏曲 ト長調』を独奏する。チケットは1000円(当日券有り)。申込は記事内の二次元コードなどから。問い合わせは、同協会事務局【携帯電話】080・2120・3210(平日午後7時〜9時、土・日・祝日午前9時〜午後9時)。

40人を無料招待

 この演奏会の招待券を、本紙読者20組40人にプレゼント。氏名・年齢・住所・電話番号・紙面の感想をメールに明記し、midori@townnews.co.jpに送信して応募を。4月29日(火)必着。当選者の発表は招待券の発送をもって代える。

シンフォニエッタが定演 5日 鎌倉芸術館で

 かまくらシンフォニエッタの第24回定期演奏会が5月5日(月・祝)、鎌倉芸術館小ホールで開催される。

 バレエ音楽『プロメテウスの創造物』序曲などを披露する。指揮は阿部真也さん、バイオリン独奏は遠藤香奈子さん。午後2時開演。開演15分前からプレトークも。大人1500円(芸術館窓口で販売中)。当日券は1時から。

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食料・日用品を無料配布 毎月第4土曜

 物価高騰などの影響を受ける市民を対象に、食料パックや生活用品を無料で配布する「鎌倉スマイルフードプロジェクト」が今年度も4月26日(土)から始まる。鎌倉市と一般社団法人ふらっとカフェ鎌倉の協働事業。

 配布会が行われるのは、4月26日(土)が鎌倉市福祉センター2階第1・2会議室。5月24日(土)は大船支所1階ロビー。時間は共に正午から午後1時。対象は、原則鎌倉市内在住の人。事前申し込みは不要。米などの主食や副菜等、生活用品を配布する(数に限りあり)。配布会は9月まで行われ、5・6・9月は「こころと身体に関する相談」を受け付ける。食料品などの寄付も随時受け付けている。詳しくは市生活福祉課【電話】0467・61・3958へ。

芝生広場で太極拳 5月3日に無料教室

 鎌倉中央公園(山崎1667)で5月3日(土)、太極拳教室が開催される。午前10時から11時30分。会場は同公園芝生広場。参加費無料。

 鎌倉市太極拳協会所属の公認指導員が講師を務め、新緑の空気を吸いながらゆったりと体を動かす。参加は小学1年生以上なら誰でも可(3年生以下は保護者同伴)。

 服装は、動きやすい服と運動靴(サンダル・草履は不可)。当日少雨の場合は管理棟エントランスで開催。荒天中止。申し込み不要で当日直接会場へ。詳しくは鎌倉市公園協会【電話】0467・45・2750へ。

 

宝戒寺

鎌倉のとっておき 〈第182回〉 ありがとう宝戒寺

 私の鎌倉のとっておき、それは宝戒寺さんです。なぜなら、宝戒寺さんにお参りして、待ち望んでいた子宝に恵まれた忘れられない場所だからです。

 鎌倉の子宝のご利益がある場所と言えば、多くの方は大巧寺さんを思い浮かべられると思います。私も鎌倉検定の勉強をするまでは、宝戒寺さんと言えばシロハギ、最近では鎌倉殿の13人の北条義時の屋敷跡のイメージでした。しかし、勉強を通して、ご本尊は子育経読地蔵大菩薩様という、子育てに功徳のあるお地蔵様であり、脇には大聖歓喜天様という夫婦和合・子宝に功徳がある仏像も祀られていることがわかりました。

 これを鎌倉検定の勉強をして知ったのも何かの縁、子宝祈願するなら宝戒寺さんではないか、そう思うと呼ばれているような気がして自然と足が向きました。ある晩秋の朝のことです。その日はあたたかい鎌倉日よりで、ゆっくりとお参りしました。ここは北条氏鎮魂の"慰霊"の地でなく、子宝という"誕生"の地なのだと思うと、印象ががらりと変わったことをよく覚えています。すると、不思議なことにその翌週に新たな生命ができたことを知り、本当に驚きました。そして、娘が無事に誕生し、元気に育っています。きっとこれは鎌倉検定の縁と、宝戒寺さんに恵んでいただいたご利益だと思っています。

 いつか大きくなった娘と訪れ、このことを聞かせたいと思っています。

 谷村 健