八王子版【10月9日(木)号】
報道陣に公開された、国内私立大学で最速というAIスパコン「青嵐」

スパコンで地域課題解決 東京工科大と市が協定

 片倉町にある東京工科大学は10月2日、「AI・DX技術を活用した連携に関する協定」を八王子市と締結した。高齢化や人手不足といった地域課題を解決することを目的としており、同大が新たに導入した、全国の私立大学では処理能力が最速というAIスーパーコンピューター「青嵐(SEIRAN)」が活用される見込みだ。

 青嵐は、米国に本社を置く半導体メーカー「NVIDIA(エヌビディア)」社製の最新のGPU(画像処理装置)で構成されている。その計算処理能力は、家庭用ゲーム機PS4のGPUの50万倍に換算。高精度・広範囲のシミュレーションが可能となり、幅広い分野での活用が期待されている。青嵐の名は、桑都として栄えた八王子で、桑の葉が青々と茂る時期に吹く力強い風のことを「青嵐」と呼ぶことや、同大のシンボルカラーが青色であることなどから名付けられた。

官学連携を強調

 10月2日には、同大で締結式・青嵐見学会を実施。同大は、青嵐を主に学生に使用してもらい、AI人材育成に向けた教育や研究分野に役立てる計画を発表。八王子市とは、高齢化や人手不足が進む地域農業におけるスマート農業実証実験の実施や、自動運転バス実証実験を通した交通インフラの維持など7つの地域課題の解決を目指す締結書を交わした。

 同大を運営する学校法人片柳学園の千葉茂理事長は締結式で、「時代を切り開くエンジニアを養成してきた我が校にとって、今回の新たなチャレンジには心を弾ませている」とあいさつ。

 同大学の香川豊学長は、「青嵐の導入によって、高性能を味わってもらいたい。きっと今までと違う世界が拓ける。八王子市ともいろいろ連携ができるのでは」と展望を語った。

 八王子市の初宿和夫市長は、「青嵐、計算、行政の課題、が組み合わさることで何が生み出されるのか。それをどのように市民サービスとして示すか。まずは大学側が教育に使用し、そして市側も活用させてもらいたい」と同大へ謝意と今後の将来性について期待を寄せた。

同大内に設置

 同大内に9月中旬に設置された青嵐の全長は、高さ約2m、横幅約5m、奥行き約1・2m。エヌビディアのGPUが96基搭載されていて、1秒間に90京回(90兆の1万倍)計算する性能がある。

 同大学AIテクノロジーセンターICT部門の生野壮一郎部門長によると、まだ本格稼働はしていないが、11月中をめどに、まずは教員から使用していく予定だという。

記者会見で頭を下げる初宿市長

八王子市 職員97人が通勤手当不正 市長が陳謝 月内処分へ

 八王子市の職員97人が通勤手当を不正受給していた問題を巡り、初宿和夫市長は9月30日の記者会見で陳謝し、10月中をめどに不正受給額の確定と職員の懲戒処分を実施するとした。その後は弁護士など第三者による問題の検証を行って再発防止につなげる考えを示し、「不正の温床を根絶したい」と述べた。

5年以上の常習も

 市職員による通勤手当の不正受給は、市役所までの通勤に電車やバスなどの公共交通機関を利用すると届け出て交通費を受け取っておきながら、実際には徒歩で通勤するなどの事例がある。

 市の説明では、昨年9月に他自治体で発覚した通勤手当の不正受給問題を受けて、公共交通機関を利用している職員1111人を対象に同年10月から実態調査を実施。市に届け出た内容と通勤実態が異なっていた166人に聞き取りを行ったところ、届出通りに定期券を購入していなかったり、ICカードに正しい利用履歴が残っていなかったケースが97人から確認された。不正受給期間は個人により異なり、1カ月もいれば、5年半ほど前から行っていた職員もいたという。

 このため市は昨年12月、97人に対し支給済みの通勤手当計1671万658円を一旦全額返納させた上で、12月から今年1月にかけて正しい届出に基づいた通勤手当をあらためて支給していた。

 この件は今年9月の新聞報道で明るみに出たが、市は30日の記者会見で「隠ぺいなどの意図はなく、対象者の確定に向けた調査を継続し、不正受給額の精査や懲戒処分に向けた準備をしている段階だった」と公表が遅れた理由を弁明した。

再発防止に意識改革も

 会見の冒頭で初宿市長は「市民の信頼を損なう事態となりましたことを、心よりおわび申し上げます」と頭を下げた。問題発覚から会見までの期間に市役所には延べ102件の苦情や問い合わせが寄せられたという。

 今後の対応として、不正受給額の確定と不正を行った職員に対する厳正な処分を10月中をめどに実施する考えを表明。再発防止策として、年度初めに行う所属長と職員との面談時に定期券やICカードの履歴などの確認を義務付けることや、各手当や旅費などの支給に関するルールの厳格化、全職員を対象にした公務員倫理研修の継続的な実施による職員の意識改革などに取り組むことを掲げた。

 またランダムに抽出した主査級(係長相当)の職員から今回の件に関して初宿市長が意見を求めた際、職員のモラルの低さや内部のチェック機能不全、出張時の復命書の形骸化などの問題点が指摘されたことから、「市役所の中だけで対策を講じるには限界があり、第三者による検証の必要性を感じた。市役所の伝統や慣行にはびこる不正の温床にメスを入れていただきたい」と語った。(10月1日起稿)

JA八王子パッションフルーツ生産組合の組合長を務める 浜中 俊夫さん 犬目町在住 52歳

「一度は生で味わって」

 ○…テニスボールくらいの実を割ると、南国の太陽のように鮮やかな黄色の果肉が顔を出す。とろりとした果肉の中にはたくさんの種が入っており、「種ごと食べるのが美味しいんですよ」と朗らかに微笑む。12年前、このパッションフルーツを八王子の名産品にしようと、JA八王子の下部組織として発足したのがこの組合だ。春先に組合長に就任。自身を含めた十数件の農家が毎年丹精込めて栽培している。

 ○…4代続く農園「浜中園」の代表。「末っ子長男」で、幼少期から農園を手伝い、いずれは家業を継ぐことを意識していた。高校卒業後は、「さまざまな仕事を転々としていた」と冗談めかす。農園を継いだのは24歳のとき。祖父の代は野菜を中心に育てていたが、時代の変化に伴い父親の代は植木が中心に。「その時々で需要が変わるからね」。その時流を読む難しさに、生涯向き合う覚悟を決めた。

 ○…今夏の猛暑の影響は著しく、「本来なら必要のない」水やり作業に追われた。主力として育てている野菜はもとより、パッションフルーツは「昨年の6割くらい」の落ち込みに。だが、近隣農家の先輩や同じ生産組合の仲間と協力し、育て方やノウハウを共有するのが農家としての習わし。さっそく今夏を乗り切った仲間に話を聞き、来年のリベンジを誓う。

 ○…キャンディや学校給食のヨーグルトソース…。甘酸っぱさが良いアクセントになる、と加工品としての人気が高いパッションフルーツ。入口として、加工品の存在は「とても大切」としながらも、目指すは食卓に「生」で登場する機会が増えること。「この美味しさ、一度は生で味わってほしい」。この南国果実の魅力をこれからも広めていきたいと、いきいきと語った。

事務事業評価のダッシュボード制作に取り組んだ岡さん(左)と阿部田さん

市の事業 集約し可視化 職員がダッシュボード制作

 市は2025年度の事務事業評価結果(2024年度事業実施分)を、職員がビジネスインテリジェンス(BI)ツールを活用して自作したダッシュボードで公表した。

 事務事業評価は、市が実施するさまざまな事務事業について目標達成状況や費用対効果などを評価して、事業の継続や見直し、廃止などの方針を決定するための制度。これまでは評価結果をPDFにしてホームページ上で公表していたが、市民によりわかりやすく評価結果を示すため、さまざまな情報やデータを集約して一つの画面内で可視化できるダッシュボードで公表することにしたという。

 これにより、基本計画と事務事業の紐づきがわかりやすくなり、部署単位の評価結果を抽出して表示するなどの検索機能も充実した。ダッシュボードを構築した市経営改革課の阿部田直樹さんと岡あゆみさんは「市民の皆様が市が行っている事業について知るためのわかりやすく、透明性の高い手段として活用していただければ」と話している。事務事業評価の公表先(https://www.city.hachioji.tokyo.jp/shisei/001/004/004/002/p035956.html)
リニューアルした八王子観光ガイドブック

観光ガイドブック 5年ぶり全面刷新 5万部発行

 (公社)八王子観光コンベンション協会が10月6日、八王子観光ガイドブック『いこうよ八王子・高尾山』を5年ぶりに全面リニューアルし、5万部を発行した。JR八王子駅北口にある総合案内所など市内各所や市外でも順次配布される。

 新ガイドブックは従来のA5判からA4判へ拡大したオールカラー、24ページで構成。判型を大きくしたことで情報量と写真の充実を図った。特に本文は日本語と英語が併記され、訪日外国人にもわかりやすい内容になっている。

 表紙には同協会が運営するInstagram【公式】いこうよ高尾山(@go_to_takaosan)で開催した「インスタフォトキャンペーン」の応募作品を掲載し、八王子の魅力である「近くて、楽しい」を表現した。内容面では、高尾山や市街地などを中心に、飲食店や土産店、体験施設などの協会会員の店舗紹介ページを新設。また特集企画として、ファミリー・ペット連れ向けのページも作成した。「夕やけ小やけふれあいの里」や「長池公園」などが紹介されている。問い合わせは同協会【電話】042・649・2827。

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秋の味覚で賑わう「街道市」
10月18日(土)、19日(日) 西放射線ユーロード
秋の味覚で賑わう「街道市」
今年も八王子の秋を彩る「第23回八王子メッセ街道市」が10月18日(土)・19日(日)の2日間、JR八王子駅前から中町エリアまでの西放射線ユーロードで開催される... (続きを読む)
立川戦で華麗にシュートを決めるサリバン選手

トレインズ、立川に2連勝 開幕から4連勝の勢い

 プロバスケ男子B3・東京八王子ビートレインズは10月4・5日、アウェーで立川ダイスと対戦し、89―82、90―73と2連勝、開幕から4連勝を飾った。

 「八王子だけには/立川だけには 負けたくねぇ!!」のキャッチフレーズのもと、アリーナ立川立飛で今季1回目の多摩ダービーとして行われた第2節。初日は18―20の2点ビハインドで第1クォーターを終えると第2クォーターでドノバン・クレイ選手のフリースローで同点に追いつき、そのまま2Pシュートで逆転。副キャプテンのタレン・サリバン選手のシュートも立て続けに決まり、チームで点を積み上げ、そのまま勝利をつかみ取った。

 亀崎光博ヘッドコーチは勝因について「今週準備してきたことを選手がコート上で120%遂行してくれた」と話し、「僕たちはディフェンスのチーム。ディフェンスから流れをつかめるようにやっていきたい」と今後の意気込みを語った。

 次戦はアウェーで10月10・11日、湘南ユナイテッドBCと対戦。ホーム戦は18・19日、エスフォルタ(狭間町)のサブアリーナで山口パッツファイブと対戦する。クラブでは、「39000プロジェクトFINAL」と題し、無料の招待席を用意している。詳細・申込みはホームページへ。

第10回八王子キャラ総選挙 1位のキャラを紹介

 タウンニュース八王子編集室が今夏実施した「第10回八王子キャラ総選挙」。9月4日に結果が発表され、「いのしっし〜」と「ふるーみん」が同率1位になりました。それぞれに1位の感想などを聞いてみましょう。

いのしっし〜(株式会社環境管理センター)

◆1位、おめでとう〜!

投票してくれた方々、ありがとうございますのっし〜! 応援してくれたみんなのおかげで、見事1位に! うれしすぎて会社で社員さんにいっぱい自慢しちゃったぶ〜☆

◆いのしっし〜について教えて

ぼくは5歳のイノシシの男の子。明るく元気でちょっと空回りするかもですが、環境のことならなんでも聞いてほしいのっし〜! チャームポイントはぷっくりしたおへそ。会ったときは優しく触ってね♪ ぼくはいつも(株)環境管理センター(ECC)っていう会社にいるよ〜! 環境のことを調べて、みんなが安心して暮らせるように手助けしているところのっし〜☆ 水や空気、土、音、においなどを「はかって」、よくなる方法を考えているよ。環境のプロフェッショナルがたくさんいて、ぼくも日々いろんなことを学んでいるんだ〜! 夢は「お芋100個で作るケーキ」をみんなで分け合って食べること☆ 環境も人も笑顔になれる未来を目指してがんばるのっし〜! これからも八王子を元気に、環境も守って、みんなと笑顔いっぱいで過ごすのっし〜! 応援よろしくのっし〜!!

ふるーみん(JA八王子パッションフルーツ生産組合)

◆同じく1位、おめでとう!

皆さま、応援していただきありがとうございました!

◆ふるーみんについて教えて

ふるーみんを生み出したのは、JA八王子パッションフルーツ生産組合という、「パッションフルーツが八王子の名産品になるよう頑張って育てている」団体です。2013年に組合ができたのと同時に誕生したのが、「みんなのフルーツ」をもじった「ふるーみん」なんですよ♪

ふるーみんは美容や頭の花のお手入れが趣味の、おしゃれな女の子。おっとりしたマイペースな性格で、女の子の"きれい"を手助けすることが特技なんです。

ふるーみんはパッションフルーツの出荷箱や加工品のパッケージのほか、販売イベントのポスターなどにも登場します♪ ふるーみんがPRするパッションフルーツをぜひ食べてみてください!

※ふるーみんは残念ながらしゃべれないので、ふるーみんをつくったJA八王子の人たちに聞いてみました。

本紙・新連載 「松姫」の生涯を追う 市内在住 前野博さん

 本紙は「連載小説・松姫 夕映えの記―八王子とともに―」と題した連載を、今週10月9日号からスタートする。

 2年前に追分町の出版社「揺籃社」から出版された同名小説。著者は、市内在住で西放射線通り商店街振興組合元理事長の前野博さんだ。

 武田信玄の息女・松姫(信松尼)が、武田家滅亡の悲運に見舞われ、甲斐の国から八王子へと小さな姫君たちを連れて逃れる波乱に満ちた人生を紡ぐ。隠遁生活の苦しみのなかにありながら、養蚕・機織りの技術教授に力を注ぐさまも含め、「松姫小説の決定版」ともいえる長編小説だ。

 連載は不定期。問い合わせは同社【電話】042・620・2615

自著『休息する技術』を手にする菅原院長

「効率のよい」休息とは 菅原医師が著書を出版

 万町にある菅原脳神経外科クリニックの菅原道仁院長が今夏、16冊目となる著書を出版した。

 タイトルは、『働きすぎで休むのが下手な人のための休息する技術』。同氏は脳神経外科医の立場から、休息を脳科学的なアプローチで解説。疲労タイプ別の回復法を実践することで、脳のパフォーマンスを最大化し、元気な毎日を送るためのノウハウを紹介する。

 菅原院長は、「脳のパフォーマンスを上げるためには、(疲れを回復させるのに)ただ寝るだけでは非効率です」と話した上で、「『正しい休息の仕方』は学校では教えてくれません。働き世代の方など頑張りすぎて倒れてしまう前に、ぜひ読んでみてほしい」と呼びかける。

 2015年に同クリニックを開院した菅原院長。独立以前は大和田町にある北原国際病院に15年間勤めた。

設立9周年イベント 「めだか」のあやめ会

 めだかの飼育・販売などを介して就労支援を行っている株式会社あやめ会が10月11日(土)・12日(日)・13日(月・祝)、イベントを催す。

 同社の9周年を記念したもので、会場はめだか販売店(子安町1の2の6の5階)・めだかやドットコムレコード(子安町4の6の1Phiビル1階A号室)の2店舗同時開催。めだかすくいやめだかの特価販売等。

 (問)めだか販売店【電話】042・649・4410。各日11時〜18時(ドットコムレコードは17時)。

五日市憲法と千葉卓三郎 川口分館で講座

 生涯学習センター川口分館(川口町3838)主催の市民自由講座「川口学 五日市憲法と千葉卓三郎」が、10月19日(日)に同館視聴覚室で開かれる。午後5時から6時30分まで。八王子市川口郷土史研究会が協力。

 千葉卓三郎は日本国憲法の先駆けと評される五日市憲法草案の起草者で、川口地域ゆかりの人物。今回の講座では千葉卓三郎の思いや行動、繰り広げられた自由民権運動について、ジャーナリストの岡村繫雄さんを講師に招き学ぶ。

 参加費200円。定員60人。申し込みは同館に電話(【電話】042・654・8450)、またはメール(kouza-kawaguchi@city.hachioji.tokyo.jp)で。同館窓口でも受け付けている。申し込み時に講座名「五日市憲法」、氏名(ふりがな)、年齢、住所、電話番号を伝える。

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日本語基礎教え方学ぶ

 八王子国際協会が10月26日(日)から全3回で「日本語ボランティア養成講座(基礎)」を開催する。東京日本語ボランティア・ネットワーク講師や同協会委員長が登壇し、テーマに沿って実践的なヒントを伝授する。

 日程は10月26日、11月2日、9日(いずれも日曜日)の午後2時から4時20分まで。会場は八王子スクエアビル学園都市センター12階第5セミナー室。受講料は3000円。定員は25人(応募多数の場合は抽選)。対象は日本語ボランティア活動を始めたい人や始めたばかりの人。

 受講希望者はメールの件名に「日本語ボランティア」と明記し本文に▽住所▽氏名(ふりがな)▽電話番号▽メールアドレスを記入し八王子国際協会【メール】event@hia855.comへ送信。10月18日(土)必着。問い合わせは同協会【電話】042・642・7091。

自然のメッセージ感じて 「丹青会」が写真展

 市内で活動するフォトクラブ「丹青会」が10月1日から写真展をギャラリーヤスタケ(八幡町12の11)で開催中。31日(金)まで。観覧無料。期間中は午前11時から午後4時まで(土日は休み)。

 今回のテーマは「自然からのメッセージ」。北海道美瑛町や山形県小国町、長野県上高地、ハワイのオワフ島などで撮影された作品22点が並ぶ。

 丹青会は写真愛好家らが集い長年活動してきたが、コロナ禍や高齢化でメンバーが減少。自由で気ままな写真クラブとして今年4月から再スタートし、現在は10人で活動中。プロ写真家の前田晃さんを講師に迎え指導を仰いでいる。

 代表の清水宣彦さんは「偶数月の第3土曜日午後1時から例会を行っています。ご興味がある方はご連絡ください」と話している。問い合わせはヤスタケ【電話】042・626・8114へ。

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―連載小説・松姫 夕映えの記― 第1回 作者/前野 博

序 章

 天正十八年(一五九〇)六月、鍛冶屋栄吉の女房お梅と娘おキミが八王子城城下の横山口木戸前に立っていた。北条氏本城がある小田原へ通じるおだわら道は、この木戸から横山宿に入り城下の道を横切ることになる。八王子城の中宿大手門から発した城下の道は八日宿、横山宿、八幡宿を通り抜け、今は空となった滝山城に通じていた。その城下の中間にある横山宿を横切りおだわら道は南へと向かう。

 今日は久しぶりに雨が上がり青空が広がっていた。野山の緑は一段と濃く、草いきれが生暖かく漂っていた。二人がそこに立ってから四半刻になるだろうか、お梅が何度となくおキミの汗を拭いていた。

 「おーい、まだ待っているのか? 遅いな!」

 木戸番の兵士の一人が一時持ち場を離れ、また戻って来た。兵士といっても八日宿で一膳飯屋をやっていた男でお梅も良く知っていた。

 北条征伐のために豊臣秀吉が京都を出発したのが三月初め、四月に小田原に到着し二十万の大軍で小田原城を囲んでいた。北条氏は城下の町と農村を城の中に取り込んだ総構えの巨大な城郭を造り、豊臣軍に対し籠城戦で全面対決していた。一方、豊臣軍の別動隊北国軍が碓氷峠を越え関東平野に侵攻して来ていた。北国軍は上州の北条の支城を攻略し終え、武蔵国に侵入、今現在半分以上の支城を制圧していた。北国軍は関東の西部を攻め立て小田原まで進撃して行く。関東東部は小田原包囲軍から徳川軍等の別動隊が出撃し制圧を進めていた。

 八王子城城主・北条氏照は精鋭部隊を引き連れ、北条の本城小田原城を守るために出陣していて八王子城にはいない。八王子城を守るのは、士気の高い家臣達と徴用された農民、城下の町民合わせた三千人であった。農民、町民の家族は敵の襲来に備えて城内に避難する者も多くなっていた。

〈続〉

◇このコーナーでは、揺籃社(追分町)から出版された前野博著「松姫 夕映えの記」を不定期連載しています。