伊勢原版【11月7日(金)号】

子育て支援センター 利用者が前年度比1.7倍 紙おむつは約9割が申請

 伊勢原市はこのほど、開所から半年経過した子育て支援センター(こどもみらいプラザ2階)の利用状況と、おむつ等支給事業の実績を公表した。同センターの利用者は、延べ人数で前年度比1・7倍になった。

 伊勢原市が新たな子育て支援拠点として4月1日から供用を開始した「こどもみらいプラザ」。2階部分に交流スペースとして設置した子育て支援センター「クルリンにじっこひろば」は未就学児とその保護者が対象。子育ての知識と経験が豊富な子育てアドバイザーが常駐し、妊娠中から子育て中の人の不安や悩みに耳を傾け、適切なアドバイスやサポートを行っている。

 同センターには9月末までに3千959組が利用。述べ人数では8千834人が利用した。平均利用者は前年度の1・7倍増になり、特に8月は夏まつりイベントなどの効果もあり2・2倍(前年度比)増になった。市こどもみらい課の担当者は「建物がきれいになり、明るくなったことに加え、広さは2倍に。さらにこども用トイレや授乳室など来場しやすい環境が整ったことが大きいのでは」と分析する。また市内在住の利用者に加え、市外からの来場者も増加傾向にあり「利用者増は喜ばしいが、対応の不備が起きないよう人員の配置の検討も必要になるのでは」と話す。

 また子育て世帯の経済的負担軽減などのため、今年4月からスタートした「子育て家庭紙おむつ等支給事業」。紙おむつやおしりふきなど乳児1人あたり月額4500円までを市が負担するというもの。9月末までに対象者287人に対し、87・1%の250人が申請。うちLINE申請は84・8%だった。担当者は「助産師らによる対象家庭の個別訪問など、ていねいなPR活動の効果ではないか。今後も継続していく」と話した。

はしご酒イベント再始動 伊勢原駅周辺31店舗

 伊勢原市の人気はしご酒イベントがリニューアルし、新たな企画「ぶらりはしご酒」として再始動する。11月11日(火)と12日(水)の2日間にわたり、伊勢原市内の飲食店店主が腕を振るう美味しい一品と、好みのドリンクを片手に家族や仲間とにぎやかに「はしご酒」を楽しめる。

 「ぶらりはしご酒」は、伊勢原市商店会連合会が主催となり、伊勢原駅周辺の片町商店会、大神宮通り商店会、本町商店会、駅前中央商店会、大原町商和会の5つの商店会が協力し、地元飲食店31店が参加し実施される。

 チケットは1枚につき、おつまみ1品とドリンク1杯が提供される。1シート3枚つづりで、前売り・事前予約チケットが3800円、当日チケットは4000円だ。前売りチケットは伊勢原市商工会(シティプラザ2階)と駅ナカクルリンハウス(伊勢原観光案内所)で販売される。事前予約はウェブから受け付け中だ。当日チケットは伊勢原駅北口と片町商店会(山田電気前)で販売。参加店舗でも購入可能だ。当日チケットを購入すると、特典として吉川醸造から提供された日本酒の試飲ボトルがプレゼントされる(数量限定・伊勢原駅北口と片町商店会山田電気前で引き換え)。

多彩なグルメを提供

 イベントには和食、洋食、中華、バーなど多彩な店舗が参加。例えば美酒美菜 天-ten-」では旬のお刺身または鉄板ハンバーグ、「熟成肉&クラフトビールMEZASE-BAL」では、メザバルステーキなどが1ドリンクと共に提供される。一部店舗は11日のみ、または12日のみの場合もある。参加店舗の店頭には「ぶらりはしご酒」ののぼりが目印として掲出される。

 パンフレットには、はしご酒メニューや営業時間、席数などが紹介されているほか、車椅子での利用が可能な店舗や、店内・店外での喫煙が可能な店舗にはそれぞれマークで案内がある。また、伊勢原市商店会連合会のインスタグラム「いせはらあんない掲示板」では、出店店舗のショート動画を作成。お店の雰囲気や調理の様子、店主らが登場し、お店の魅力を紹介している。

 今回、企画に携わった伊勢原市商工会の樋口眞央さん=人物風土記で紹介=は、「5つの商店会エリアをぜひ制覇ください。地元飲食店に足を運ぶきっかけになれば」と参加を呼び掛けている。

 問い合わせは、同事務局【電話】0463・95・3233へ。

伊勢原市商工会経営支援担当職員としてさまざまなプロジェクトを手掛ける 樋口 眞央さん 東大竹在住 33歳

人と店をつなぐ仕掛け人

 ○…「いせはらハロウィン」や新企画の「ぶらりはしご酒」、「プレミアム商品券」など、伊勢原市商店会連合会のプロジェクトを裏方として支える。「毎年同じことをやる、ではつまらない」と常に変化を求め、攻めの姿勢を崩さない。特に「はしご酒」ではこれまでのイメージを刷新。自ら撮影に同行し、PR動画のSNS発信にも初挑戦。店の”人柄”を伝えることで、「入りづらい個店のハードルを下げたい」と熱い思いを語る。

 ○…情熱の原点は商店街。親族が商店を営んでいたこともあり、「小さい頃から伊勢原市の商店街の皆さんに育てられてきたようなもの。遊び場でした」。大学でプロスポーツのマネジメントを学び、ベルマーレなどの企画も経験。消防士を目指したが縁がなく、たまたま目にした商工会に新卒で入会した。青年部の担当時代には大山こまによるこま回し世界記録に挑戦。「英語での書類手続きや翻訳の手配など、見えない部分が本当に大変で…」。事務局の困難を乗り越え、達成した経験は今も忘れられない。

 ○…都内への出向を経て伊勢原に戻った現在は、商工会の本分である「個社支援」にも注力。「国の補助金は、どう申請していいか分からない事業者がほとんど。無事に申請が通り、お店が良い方向に変化した時。『ありがとう』と言われると、本当にやってよかったなと思います」。

 ○…毎朝5時からジムで鍛え、中学時代に始めたバスケットボールを今も続ける。大型バイクやスキューバのライセンスも持ち、趣味はグルメ目当ての一人旅。酒は飲めないが、旅先のバーで現地の人と交流し、得たエッセンスを仕事に活かす。「起こること全てに意味がある」と生まれ育った街を全力で盛り上げ続けている。

活動や作品を発表 シルバーフェスタにぎわう

 伊勢原市シルバー人材センターによる「第4回シルバーフェスタ」が11月3日、伊勢原シティプラザで開かれ、約300人が来場した。

 この日は、会員の活動発表や請け負っている仕事の紹介に加え、手芸や木工など会員による作品の販売もあり、シルバーだけでなくさまざまな世代が足を運び会場はにぎわいを見せていた。

 また、今回初の試みとして伊勢原市立図書館とのコラボレーションも実現した。リサイクル本の配布や絵本の読み聞かせ、ラッピングカーとの記念撮影会などもあり、本を通じたふれあいも楽しんでいた。

 来場者は「素敵な作品が多く関心しました」「パソコンなど興味ある分野の話がきけてよかった」と話していた。

俳優・森次晃嗣さんに聞く 「ウルトラセブンは分身」 シニアに熱いメッセージ

 ウルトラマンシリーズは来年、放送開始から60周年の節目を迎える。数ある名作の中でも誉れ高いのが「ウルトラセブン」だ。主役のモロボシ・ダンを演じた俳優、森次晃嗣さん(82)=藤沢市在住=に、当時の思い出や年齢を重ねても元気に過ごす秘訣を聞いた。

 --「セブン」撮影当時の思い出は。

 「高校卒業と同時に、文字通りかばん一つで北海道から上京し、ジャズ喫茶などで住み込みで働いた。オーディションを勝ち抜いてモロボシ・ダン役を射止めたのは24歳の時。撮影には毎日始発で藤沢の自宅を出て、成城学園前のスタジオまで通った。40度の熱があっても撮影したことも。過酷なスケジュールで、よく1年やれたと思う。特に心に残っているのは、海底人が人間の海底開発に抗議して攻撃してくる『ノンマルトの使者』。実はもともと地球に住んでいたのは海底人の方で、ダンも地球人がしたことに苦悩する。ウルトラセブンは戦争もテーマに置く、社会派ドラマだった。怪獣もエレキングやキングジョーなど魅力があったから、人気があるんじゃないかな」

 --ウルトラセブン=モロボシ・ダンは、森次さんにとってどのような存在ですか。

 「もはや分身と言える存在だと思う。色んな役を演じてきたけれど、やっぱりモロボシ・ダンなんだ」

 --他のウルトラマン役を演じた俳優とも交流があるとか。

 「昨年、同じ藤沢に住む、つるの剛士さん(ウルトラマンダイナ役)から『今日暇ですか』と電話があってね。彼の自宅に行ったら高野八誠さん(『ウルトラマンガイア』ウルトラマンアグル=藤宮博也役)とか若いウルトラマンも何人かいて。お酒を飲んで、話をして、元気をもらったよ」

 --「セブン」の後も、時代劇から現代劇までさまざまな役を演じてきました。長く活躍できた秘訣は。

 「60代に入ってからは、若くはないけれどおじいちゃんでもない、難しい役どころが多くなった。でも挑戦することを大事にしていたので、もらった役は全力で取り組んできた。70代に入り、流石に体力の衰えを感じるようになって、海までの散歩を日課にしていた。振り返ると好きなことをやってこられたと思う。でも、まだまだファンのみんなに元気な所を見せていかないとね」

 --現在は藤沢で飲食店「ジョリー・シャポー」を経営されています。

 「以前は店でシャンソンを歌ったりもしていた。今はほとんど娘に任せているけれど、今も年に数回はファンミーティングを開いている。ファンの皆さんが、こんなに長くセブンを大切に思ってくれてありがたい」

 --ファンからサインを求められた際、色紙には必ず「正義」「勇気」「希望」と書くとか。

 「正義を貫くには勇気がいる。勇気があれば希望が生まれる。この言葉を生涯大事にしている」

 --最後に読者にメッセージをお願いします。

 「いつ何が起きるか分からないからね。若い人に力をもらって、一緒に楽しくいきいきと生きていきましょう」
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11月11日(火)、12日(水)開催!伊勢原駅周辺で「ぶらりはしご酒」5つの商店会エリアでグルメを堪能しよう
11月11日(火)、12日(水)開催!伊勢原駅周辺で「ぶらりはしご酒」5つの商店会エリアでグルメを堪能しよう
伊勢原市で飲食店の味を満喫できる恒例のはしご酒イベントがリニューアルを経て、「ぶらりはしご酒」として2025年11月11日(火)・12日(水)の2日間、開催され... (続きを読む)
講演会のチラシ

11月16日こども講演会 「いじめが終わる方程式」  東海大学前駅のCOCOLEAで

 「みんなの中にも『いじめ』の種が!?」をテーマに「いじめが終わる方程式 子ども講演会」が11月16日(日)、みんなの学びガーデンCOCOLEA(東海大学前駅徒歩7分)で開催される。主催は「未来の子ども達プロジェクト神奈川」。

 小学4〜6年生までの児童とその保護者を対象にした、新しい形のいじめ予防教育プログラム。寸劇や「いのち」に関するお話、ゲームなどを通して、誰もが心の中に持つ可能性のある「いじめの種」を発芽させないためのヒントを、楽しみながら学ぶ。

 開催時間は、午後1時から3時15分まで。参加費1組1000円(保険代含む)で定員は10組。(問)【電話】090・9853・1361入山さん。

※次回は2月11日を予定
剣を使ったポーズを決める橋詰さん(手前)と橋本さん(中央)と井上さん

脳梗塞3度、寝たきりから復帰 仲間の支えで太極拳楽しむ 橋詰建昭さん

 高部屋公民館で活動する「太極拳を楽しむ会」。ここで練習に励む上粕屋在住の橋詰建昭さん(87)は、仲間たちにとって「希望の象徴」だ。

 この会は、約17年前、橋詰さんが中心となり始まった。60代半ばだった2004年に脳梗塞を患った橋詰さんは、リハビリのため友人の勧めで伊勢原の武道館に通い始めた。そこで太極拳に出会い、「動きがゆっくりだから俺にもできそうかな」と思ったのがきっかけだった。しかし、週1回の練習では「重心が定まっていないとできない」難しさがあり、なかなか覚えられない。そこで自主練習の会を発足させたのが始まりだ。

 順調に活動は続いたが、橋詰さんに再び試練が訪れる。2020年に2回目、21年に3回目となる脳梗塞を発症。3回目は、症状が重くないと感じ1日様子を見た翌日、病院に連絡すると即入院となった。さらにその1年後、ベッドから起き上がる際に転倒して腰を圧迫骨折し、一時は寝たきりに近い状態となった。妻のハマ子さんや仲間たちも「もう復活はできそうもない」と思うほどの状態だったという。

 しかし、橋詰さん自身は「太極拳を続けたい」という強い意志を持ち続け、仲間たちもその思いに応えた。メンバーの一人、橋本秀男さん(76)は、リーダーを引き継ぎ、会の存続を決意。井上昭芳さん(77)ら仲間たちは、橋詰さんの自宅を訪れ、励まし続けた。ハマ子さんは「仲間が来てくれるとうれしそうな顔をしてた」と当時を振り返る。

 橋詰さんは、仲間たちの支えを力にリハビリに励み、約1年前、ついに杖をつきながらも練習に復帰した。最初は座って見ているだけだったが、徐々に動けるようになり、今では、剣を使った太極拳もこなすまでに回復した。

 「仲間と交流できる場があるのは、すごく幸せだ」と橋詰さん。仲間たちは「頑張ればなんとかなるという見本を目の前で見ている。いい事例だ」と語る。病を乗り越えた橋詰さんの姿が、メンバーを勇気づけている。

「おいも掘れたよ」 ベルガーデン保育園 園児が収穫体験

 伊勢原市東大竹の社会福祉法人光が丘福祉会ベルガーデン保育園の園児46人が10月24日、同園が農家から借り受けている専用菜園でサツマイモの収穫を体験した。

 同園では、日ごろから食育の大切さを子どもたちに伝えようと活動している。収穫されたのは、今年5月に園児自らが植え付けを行った土佐紅金時など。園児たちは、保育士やサポート保護者らと一緒に土の中から掘り起こす作業を楽しんでいた。収穫したサツマイモは給食などでも提供されるという。

「楽天会」市内最大級の親睦団体 笑顔溢れる収穫祭例会

 市内最大級の親睦団体、楽天会(芳賀武会長)が10月25日、収穫祭例会を和膳照國で開催した。

 同会では毎年、会員の石田太一郎さんの協力で「楽天米」を栽培。この日は楽天米が炊き込みご飯として振舞われほか、お土産として手渡された。

 芳賀会長は石田さんに感謝を伝えたほか、『人生で一番の財宝は健康に勝るものはなし』という言葉を引用し、健康寿命の延伸に触れ「これからも感謝と絆、思いやりを忘れず一層努力を重ねていく」とあいさつ。大山阿夫利神社の新穀感謝祭に米を奉納することも語った。また金原亭小馬生さんが落語を披露し、会場を笑いの渦に巻き込んでいた。
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入野太鼓保存会の畠中親子(緑半纏)と平塚博市博物館の祭りばやし研究会のメンバー

【寄稿】平塚市の「入野ばやし」を後世につなげ タウンニュース市民ライター「相模国神社祭礼・添田悟郎」

 〜入野の八坂神社に伝承される貴重な祭り囃子〜

 平塚市入野(いの)の八坂神社に伝わる「入野ばやし」は入野にしか伝わっていない珍しい祭り囃子(ばやし)で、祭礼時の巡行中に演奏されない曲は特に“間物(まもの)”と呼ばれ、演奏される機会は非常に少ない。平塚市を含め近隣に伝わる祭り囃子の殆どが、1曲あるいは2曲程度しか伝承されていないが、入野ばやしは9種類という多くの曲をキザミなどでつなぐ構成となっていて、非常に難易度の高い祭り囃子である。昔から「入野は太鼓が上手い」と言われ、かつての入野は近隣の地区にも太鼓を教えていたほどで、その技術の高さは現在でもなお健在である。今回は、「入野ばやし」をテーマとした。「相模国神社祭礼」は神奈川県内(旧相模国)の神社の祭礼を中心に紹介するウェブサイトで、伊勢原市在住のわたくし添田悟郎が運営している。神社祭礼の活性化を主な目的とし、文献調査と実際の祭礼の取材を行っている。

 平塚市博物館のサークルの一つである「祭りばやし研究会」では、2022年からこの入野ばやしの習得に取り組んでいて、ようやく一通り演奏ができるようになったことから、今年10月11日に行われた同会の定例会に初めて「入野太鼓保存会」の中心的な2人の伝承者である、畠中直人(はたなかなおと)さんと畠中皓暉(こうき)さんの親子に来ていただき、交流会を開催する運びとなった。

入野ばやしに失われた笛を

 平塚市内で伝承されている祭り囃子では、田村の八坂神社に伝承されている「田村ばやし」と、四之宮の前鳥神社に伝承されている「前鳥囃子(さきとりばやし)」の2つが平塚市の重要文化財に指定されている。しかしながら、入野ばやしの太鼓は非常に上手いが、残念ながら笛が無いために重要文化財には認められなかったという話は以前から聞いていた。

 私は同系統の祭り囃子の笛の伝承者の一人として、この貴重な入野ばやしに失われた笛を取り戻したいという思いから、2018年ごろから入野ばやしの太鼓の譜面化と笛の編曲・作曲に取り組んだ。残念ながらかつて入野で吹かれていた笛の音源は残されていなかったため、私が約30年前に二宮町の故・守泉長次氏から習ってきた大山囃子の笛を基本に編曲し、入野にしかない「大間昇殿」などの曲は自分で作曲を行った。初めて入野の太鼓に合わせて笛を吹かせて頂いたのは、2019年4月に行われた入野の八坂神社の例大祭の時で、翌年の平塚市中央公民館で行われた「第44回 ひらつか民俗芸能まつり」では、入野太鼓保存会のメンバーとして笛を演奏させて頂いた。

高難度の太鼓に四苦八苦

 入野ばやしに念願の笛を入れることはできたが、当時、感じていたことは入野でしか伝承されていない入野ばやしの伝承者が少ないということである。平塚市の重要文化財として登録されている田村ばやしと前鳥囃子は広く認識されているが、肩書の何もない入野ばやしが今後消滅する可能性が頭によぎったのである。そこで、私が指導を担当させて頂いている平塚市博物館の「祭りばやし研究会」で、入野ばやしを練習曲とすることで伝承が継続される可能性が高まるのではという考えから、平塚市博物館館長の浜野達也さんと、祭りばやし研究会のサークル担当である学芸員の福田麻友子さんに相談し、祭りばやし研究会で入野ばやしを練習することが決まった。

 それまで祭りばやし研究会では簡易的な入野ばやしを練習する機会はあったが、完全な入野ばやし全曲を会員に習得してもらうには正確で分かり易い譜面の準備が不可欠であった。幸いにも入野ばやしの太鼓の譜面は笛を編曲・作曲する際に既に作成していたので、更に畠中直人さんからアドバイスを頂き、会員に配布できる状態に完成させた。しかしながら、会員の殆どが地元の太鼓連に所属しない未経験者であっため、実際に練習を始めると入野ばやしの難易度の高さから習得には困難を極めた。会員の皆さんの中にはかなりのストレスを感じた方もいたと思われるが、地道に、できる曲を少しずつ増やして行った。私が手ごたえを感じ始めたのは今年に入ってからである。祭りばやし研究会で毎月1回の定例会以外に、練習日が毎月1回設定されていて、私は仕事の関係で出席したことは無いが、どうやらそこでかなり積極的に練習をしているようで、会員の方々の努力によりレベルが急激に上がって来たのを実感した。今年の夏ごろには入野ばやしの全ての曲が何とか演奏できるようになり、入野の畠中親子に当会との交流会を打診したのである。

畠中親子の圧巻の演奏

 交流会では最初に祭りばやし研究会が入野ばやしを演奏し、畠中親子に感想を頂いた。本家を前にして流石に緊張したようで、いつも通りの演奏ができなかったが、何とか最後までやりきることができ、畠中親子からは「失敗しても最後まで演奏を続けることが大事」というお言葉を頂いた。続いて、入野太鼓保存会の畠中親子が太鼓を、私が笛を演奏して研究会の会員に入野ばやしを聴いてもらい、曲の合間で質疑応答を取るかたちで進行した。ありがたいことに、畠中親子には入野の祭礼で実際に使用している締太鼓を持参して頂き、平塚市特有の甲高い音を実際に体感することができた。最初の屋台囃子の演奏を終えて会員に感想を伺ったが、間近で聴く圧巻の演奏に会員は只々言葉を失い、なかなか意見が出てこなかったことが印象的であった。その後は畠中直人さんの分かり易い解説に会員の緊張が徐々にほぐれたのか、曲が進むにつれて質問が多く出るようになった。最後に畠中親子と研究会の会員との合同演奏が行われ、定例会終了後も畠中親子に直接話を伺う会員もいるなど、非常に充実した時間を共有することができた。

交流会を終えて

 私がこの交流会の中で一番印象に残ったことは畠中皓暉さんが祭りばやし研究会の演奏に対する感想で述べた、「もう少し強弱を付けて演奏した方がいいですよ」というコメントで、確かに畠中親子の太鼓に合わせて笛を演奏していた私でも、その強弱は十分に感じられる程で、会員の方々もその違いに納得していた様子であった。皓暉さんはまだ高校3年生だが、私が同じ年でこのコメントが出せたかという問いには全く自信がなく、彼の能力の高さと入野ばやしに対する強い熱意を感じたのであった。

 交流会を終えた会員からは「同じ曲を演奏しているのに全くの別物」とか、「バチがまるで別の生き物の様に動いている」など、多くのコメントが寄せられ、今後の会員のモチベーション向上につながったことに対し、畠中親子には心から感謝したい。また、近年の少子高齢化に伴い祭り囃子に携わる人口が減少し、多くの太鼓連および囃子連が継続に不安を抱えていると思われるので、今後も祭り囃子の活性化の為に尽力していきたい。

 タウンニュース市民ライターとは

 「タウンニュース市民ライター」とは、(株)タウンニュースが認定する、地域の市民ライターです。市民の視点で地域の魅力を再発見し、情報を発信してもらいます。