伊勢原版【11月21日(金)号】
先導師と宿の女性を描いた「雨降///あふり酒界先導師」のラベルデザイン。「一合一会」をコンセプトに、山登りになぞらえて毎年デザインを変え、10合目までを想定して、先導師たちの山登りの様子をユニークに表現する。

吉川醸造 「神水」と「はるみ」で新作 大山阿夫利神社で枡酒提供

 伊勢原市神戸の吉川醸造株式会社(合頭義理代表取締役)は、大山阿夫利神社の神水と地元伊勢原産の米「はるみ」を用いて醸造した新商品「雨降///あふり酒界先導師」を発売した。この酒は、紅葉シーズンに合わせ、大山阿夫利神社下社内にある「石尊」で枡酒での提供が始まった。

 この日本酒は、酒造りの神である酒解神(さかとけのかみ)を祀る大山阿夫利神社の神水を、酒造りの核となる「酒母」として初めて使用している。この神水は、大山の豊富な水の一つであり、二重の滝から湧き出している水が取水場所となっている。

 原料米には伊勢原産の食米「はるみ」を100%使用し、精米歩合50%の純米大吟醸として仕上げられた。合頭代表は「醸造法には、江戸時代の生酛(きもと)よりも古い、室町時代に発明された製法「水酛(みずもと)」仕込みを採用。これは、大山と縁の深い太田道灌が活躍した時代と同じ時期であり、歴史に思いを馳せながら酒を楽しんでもらえれば」と話す。

文化伝える「先導師」

 この酒は、10年間にわたるシリーズの2年目にあたる。名称には「先導師(せんどうし)」という言葉が使われている。先導師とは、江戸時代に御師(おし)と呼ばれ、宿坊を営み、大山へ参詣する人々の世話や寺社への取次ぎを行った宗教的な山案内の人々を指す。明治時代に先導師と改称され、阿夫利神社の神職として、大山詣りの隆盛を今日まで支えてきた。

 大山先導師会旅館組合の内海博文組合長は、先導師という言葉が一般には知られていない現状を踏まえ、この酒を通じて大山にこのような歴史的なものが残っていることを広められると考え、協力を決めた。この酒を味わうことで、「大山の歴史というものを物語を感じながら味わっていただける」とコメント。

 また、大山阿夫利神社の権禰宜である目黒久仁彦さんも、同神社の神様が酒と非常にゆかりのある醸造の神様であること、そして大山にもともとお酒の文化があったことに言及。先導師という大山文化の中核を担う人々の文化を知ってもらう機会になるとして、協力を表明している。目黒さんは、日本酒離れという話もある中で、「今まで日本酒に触れてこなかった人たちにもこの日本の誇る日本酒の文化というものを知ってもらうきっかけになれば」との思いを語り、「神水」(神様の水)を使ったお酒で皆に幸せになって欲しいとの期待を寄せた。

 「雨降///あふり酒界先導師」は、神社の石尊で枡酒として提供されているほか、720ミリリットル瓶が税込2480円、一升瓶が税込4500円で吉川醸造の売店でも販売している。
(左から)関戸昌邦県商工会連合会会長、岩田氏、井戸川氏、平田副知事、瀧本氏、高橋宏昌伊勢原市商工会会長

県優良産業人 伊勢原から3人が受賞 地域商工業の振興に寄与

 第43回神奈川県優良産業人表彰(商工会)が10月29日に発表され、伊勢原市商工会(高橋宏昌会長)からお食事・喫茶 山ゆりの瀧本麗子さん、有限会社井戸川工務店の井戸川秀治さん、有限会社岩田モータースの岩田雅之さんの3人が受賞した。

 この表彰は県と神奈川県商工会連合会との共催。商工業の振興を図るため、県内で企業を経営する事業主や企業に勤務する従業員のうち、地域商工業の振興に寄与し、特に優れた人を優良産業人として表彰するもの。

 表彰を受けられるのは原則として年齢50歳以上で、同一事業の経営または同一企業の業務に通算して10年以上携わり、業務の拡大や経営の合理化、事業の発展、生産性の向上、業務の合理化などを通じて、商工業の振興や職務上顕著な功績があった人が対象となる。今年度は県内の16商工会から31人が受賞した。

 11月5日に横浜市内のホテルで表彰式が行われ、平田良徳副知事から表彰状が贈られた。

 山ゆり店主の瀧本さんは「一人ひとりのお客様に満足と感動を与えること」をモットーに心のこもったおもてなしを貫く。また積極的に大山の魅力発信に尽力。いち早く英語・中国語のメニューを取り入れ、多くの外国人観光客の来店を促した。瀧本さんは「素晴らしい賞を頂き、大変光栄なこと、これからも地域貢献できるよう努力していきたい」と話す。

 井戸川工務店代表取締役の井戸川さん。「建物に関するお客様の理想を追求する」をモットーに懇切丁寧な営業を貫いてきた。また理想の家が実現できる工務店として有名になり、広告宣伝費削減や営業の業務時間短縮などにより事業を好循環化させた。「選んでいただきありがたい。お客様の理想を叶えられるよう、これからも精進していきたい」と語る。

 岩田モータースの取締役を務める岩田さん。作業効率を重視する大手や他店との差別化のため顧客との関係性強化に努める。モットーである「速く・綺麗・丁寧で正確なサービスの提供」を大切にし、顧客数・売上高ともに前年度比100%以上を維持。事業の持続的発展に貢献している。「これからも丁寧で正確なサービスを提供していきたい」と語った。

伊勢原南公民館で12月6日(土)にクリスマスツリーを作る工作教室を開く 押味 孝志さん 東大竹在住 64歳

作る楽しさを次世代へ

 ○…「こどもたちに電子回路や、ものづくりへの興味を持ってもらうきっかけになれば」。LEDを使って光る卓上クリスマスツリーを作る工作教室を初開催する。小学生でも簡単に作れるように、それぞれのパーツを準備、当日組み合わせるだけにした。「回路を切り替えると光り方や色が変わるようになっている。関心を示した子どもたちには、光る仕組みなど分かりやすく説明したい」とほほ笑む。

 ○…新潟県出身。小学生の頃にテレビの裏側を見て、複雑な配線に「こうやってテレビ画面に絵が映るのか、と興味を持ったことを覚えている」。手先が器用でものづくりにも関心があったことから大学も工学部へ進学。卒業後アンリツに入社、厚木の工場で通信用測定器の開発などに従事してきた。

 ○…50代後半から第二の人生を好きなことに費やそうと決め、61歳で退職。かねてから好きだったDIYや畑仕事を楽しんでいたところ、地元自治会から声を掛けられ役員を務める。昨年子ども会でクリスマスツリー工作教室を企画すると40人近くが参加するほど大盛況だった。「これまでほとんど周りの人と接点が持てなかったが徐々に知り合いが増えてきた。自分のできる事で地域に貢献できるのはうれしい。時間はあるので手間な事も苦にはならない」。

 ○…我が子に机やベッドを作るほどのDIYの腕前。ほかにも畑で野菜を栽培、なぜ種から野菜や実がなるのか、進化への興味が尽きない。「次はミカンを育てようと思っている」と楽しそう。公民館前の畑も借り、ジャガイモなどを植え、子ども会で収穫や調理する催しを開催する。「子どもたちは地域の宝。大事にしないと」と目を細める。もうすぐ4人目の孫が誕生する。

参加募集 再就職をめざす女性に 12月5日 無料セミナー

 女性のための再就職セミナーが12月5日(金)、伊勢原シティプラザで開催される。午前10時30分から11時30分。参加無料。対象は再就職を検討している女性で定員は申し込み順20人。主催はNPO法人地域福祉を考える会子育て広場きらきら、伊勢原市、市商工会が共催。講師はハローワーク平塚相談員。

 「結婚や出産で一度離職したが復職を考えている」「再就職に漠然とした不安がある」など再就職活動に知っておくと便利なことが学べる。申し込みは同会【電話】0463・95・6665(平日午前9時〜午後4時)へ。
卓上クリスマスツリーの見本

伊勢原南公民館 クリスマスツリーを作る LEDで工作教室

 伊勢原南公民館(東大竹854)で12月6日(土)、LEDを使って光る卓上クリスマスツリーを作る工作教室が開催される。時間は午後2時から4時まで。対象は小学生(4年生以下は保護者同伴)で定員は申し込み順15人。参加費は800円(材料費)。講師は押味孝志さん(64・人物風土記で紹介)。

 教室では、回路を切り替えることで、LEDの光の色が変わったり、点滅の速度が変わったりする卓上型のクリスマスツリーを作る。

 事前に押味さんがツリーの土台(段ボール)や、光の元になる回路、ツリーを飾るモールやヒイラギの飾りなどを準備してくれるため、当日は持参するものはなく、パーツを組み合わせるだけで小学生でも簡単に作れるようになっている。

 小さい頃から電子回路に興味があり、ジャンク品をばらしたりして遊んでいたという押味さんは、「子どもたちが電子回路や、ものづくりに興味をもってもらえれば。工作教室がそのきっかけになればうれしい」と話している。申し込みは11月28日(金)までに同館窓口に直接、または【電話】で。

 問い合わせは伊勢原南公民館【電話】0463・92・1210へ。

10月19日〜11月8日 街頭犯罪の発生状況 伊勢原警察署

▽自転車盗4件/駐輪場に無施錠、施錠駐輪中の自転車が盗まれた(八幡台・桜台・伊勢原)▽部品ねらい4件/駐車場に駐車中の車両からタイヤバルブ、駐輪中のオートバイからナンバープレート等、自宅駐輪場のタイヤが盗まれた(串橋・桜台・白根)▽非侵入窃盗2件/駐輪場のオートバイからヘルメット、花壇に植えていた木が盗まれた(東大竹・大住台)▽空き巣2件/室内が物色された(高森・三ノ宮)▽オートバイ盗/駐輪場から施錠したオートバイが盗まれた(桜台)▽侵入窃盗/室内を物色された(高森台)▽万引き2件/店内から商品が盗まれた(桜台)▽さい銭ねらい/さい銭箱の鍵が壊され現金を盗まれた(下落合)
市長表敬する安倍さん(右)

安倍正弘さん 生涯スポーツ功労者に 萩原市長に受賞を報告

 「生涯スポーツ功労者」として文部科学大臣に表彰された安倍正弘さんが11月13日、萩原鉄也伊勢原市長を表敬訪問した。

 これは地域または職場におけるスポーツの健全な普及や発展に貢献し、地域におけるスポーツの振興に顕著な成果をあげた個人や団体を文部科学大臣が表彰するもの。

 今年度は生涯スポーツ功労者153人(男性111人・女性42人)、生涯スポーツ優良団体100団体が受賞した。

 1958年からはじまった生涯スポーツ功労者表彰。地域や職域で引き続いて10年以上スポーツの普及奨励のための企画、または指導に特に尽力した人で、おおむね40歳以上、現在もスポーツを熱心に指導していることなどが表彰の理由になっている。

 安倍さんは、20年以上にわたって市スポーツ少年団の副本部長や参与職を歴任、その後、約10年にわたって県スポーツ協会理事や県スポーツ少年団本部長を兼任した。

 市スポーツ少年団は、来年で40周年。2021年度には生涯スポーツ優良団体表彰を受賞している。安倍さんは「今回はこのような賞をいただいたが、個人の力でもらったものではない。皆さんの支えのおかげで長く続けることができた。ボランティアを続けていく中で、たまたま代表をやってきたから私が受賞になった」と話した。

地域スポーツの振興に貢献

 安倍さんは、1993年〜2016年度伊勢原市スポーツ少年団副本部長、2017年度〜現在同参与を務める。2016年度〜現在は神奈川県スポーツ協会理事兼神奈川県スポーツ少年団本部長を務める。
実際の教習コースで自動車を走行させて自転車の正しい乗り方を学んだ

大山小学校 児童の自転車事故防止へ 伊勢原自動車学校を走行

 伊勢原市立大山小学校(櫻井英明校長)の4年生から6年生の児童が11月10日、市内西富岡の伊勢原自動車学校で自転車安全教室を実施した。

 児童の交通安全を目的に、同自動車学校の協力のもと、毎年実施している同校。この日は伊勢原警察署の警察官による「自転車の交通ルール」に関する講習を受けた後、実際に自動車教習コースに出て、「トラックの内輪差」「一時停止」や「二段階右折」など、座学で学んだ交通ルールを意識しながら自転車でコースを周回した。

 参加者の中には自転車に乗り慣れていない児童もいて、「こわい、どうしたら良いの」などと苦戦する様子も見られ、櫻井校長は「自転車に乗ったことがない児童もいる中で、交通ルールを知るには良い機会になったのでは」と話した。
前回寄贈された食品の一部

中栄信用金庫 フードドライブ受付中 各支店で12月30日まで

 地域の子どもたちを取り巻く課題解決に向けた「子どもの未来応援プロジェクト」に取り組んでいる中栄信用金庫(本店・秦野市元町/北村圭一理事長)。現在、12月30日(火)まで同金庫の各支店で「フードドライブ」を実施中。家庭や企業で眠っている食品や防災備蓄品などの寄付を受け付けている。提供できる食品は【1】常温で保存できる【2】開封されていない【3】賞味期限が明示され残り2カ月以上あるもの。

 寄贈された食品は同金庫からフードバンクかながわを通して、子ども食堂などに届けられる。

 同金庫が前回(2025年7月1日から8月29日までの2カ月間)実施したフードドライブでは、1859点、600・62kgに及ぶ食品が集まった。同金庫では「今回も地域の子どもたちのためにご協力いただければありがたいです」と話している。

 フードドライブに関する問い合わせは中栄信用金庫業務部【電話】0463・81・1852へ。
雑草を刈り取る協会員

伊勢原市建設業協会 草刈りボランティア 会員30社70人が参加

 一般社団法人伊勢原市建設業協会(杉山進会長)は11月13日、市道などの草刈りボランティア活動を実施した。

 この活動は、同協会が市民生活の環境改善を目的に、社会貢献活動の一環として毎年実施している。

 この日は、協会会員30社から70人が参加した。市内16カ所でグループに分かれ、道路区域内をはじめ、住宅街の土手や作業が難しい急傾斜地などで作業を行った。

 参加者らは草刈り用の機械を使い、丁寧に雑草を刈り取り、作業は午前8時から午後3時頃まで行われた。処分した草は、パッカー車延べ14台分、計9740kgに上った。
法被姿でイベントを案内する本部スタッフら

伊勢原5商店会 初の連携 「ぶらりはしご酒」楽しむ

 伊勢原市で飲食店巡りイベントが「ぶらりはしご酒」としてリニューアルし、11月11日・12日の2日間開催された。伊勢原市商店会連合会が主催し、駅周辺5商店会が初めて連携した。

 参加者は、5エリアの飲食店を巡り、各店が提供する「はしご酒」限定の美味しい一品と好みのドリンクを満喫。普段行かない店にも気軽に立ち寄れる機会となり、伊勢原の食の多様性とまちのにぎわいを再認識する2日間となった。
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会場となる伊勢原市休日歯科診療所

無料で口腔がん検診 秦野伊勢原歯科医師会

 秦野伊勢原歯科医師会(井上泰会長)は12月11日(木)、口腔がん無料検診を実施する。会場は伊勢原シティプラザ4階の伊勢原市休日歯科診療所。時間は午後1時30分〜。

 検診は同会会員ならびに東海大学病院口腔外科の専門医が行う。対象は市内在住で口内炎などの症状がある人。希望者は、はがきに住所、氏名(ふりがな)、年齢、性別、電話番号を記入し、〒257―0051秦野市今川町1の3秦野伊勢原歯科医師会事務局まで郵送する。11月28日(金)必着。定員は20人。申込み多数の場合は抽選となる。結果は、後日郵送で通知される。

 問い合わせは同会事務局【電話】0463・83・3117へ。
大山寺の紅葉(写真は過去)

大山紅葉をライトアップ 11月30日まで

 大山観光振興会は、秋の恒例イベント「大山紅葉ライトアップ」を、今年も11月21日(金)から30日(日)の期間で開催する。会場となる大山寺と大山阿夫利神社下社では、暗闇に浮かび上がる鮮やかな紅葉と、きらめく夜景が織りなす幻想的な世界が堪能できる。ライトアップは日没から午後7時まで実施。土日・祝日は午後8時まで延長する。

 また、紅葉ライトアップに合わせ、期間中は大山ケーブルカーは「夜景運転」を実施する。乗客はケーブルカーの車窓から、夜景とライトに彩られた木々を同時に楽しめる。

呉服の江戸屋 きものでお出かけ会

 呉服の江戸屋(大神宮通り商店会)が10月19日、「きものでお出かけ会」を開催した=写真。

 この日は、きもの愛好家8人と裏千家正教授の岩田宗美さん宅の茶室で開かれた茶事に参加。参加者は薄茶、濃茶のお点前をいただたあと、茶懐石で秋を満喫していた。

【寄稿】心を一つに! みんなでつなぐ元町の伝統 二宮町町制施行90周年記念の神輿パレードで「元町・富士見が丘」に密着 タウンニュース市民ライター「相模国神社祭礼・添田悟郎」

 現在の二宮町は、江戸時代に「一色村」・「中里村」・「二ノ宮村」・「山西村」・「川勾村」の5つの村に分かれていたものが、明治22年(1889年)4月に合併して「吾妻村」となり、昭和10年(1935年)11月3日に「二宮町」と改められたものである。二宮町では町制が施行されてから10年ごとに記念行事が行われ、今年はちょうど90周年にあたる。私は7月19日と20日に行われた元町(富士見が丘一丁目・二丁目・三丁目と松根を含む)に鎮座する八坂神社の祭礼を取材させていただいた関係で、11月3日の二宮町町制施行90周年記念で行われた神輿パレードにおいて、元町と富士見が丘に密着取材を依頼した。

「相模国神社祭礼」は神奈川県内(旧相模国)の神社の祭礼を中心に紹介するウェブサイトで、神社祭礼の活性化を主な目的とし、文献調査と実際の祭礼の取材を行っている。

復活! 明治5年(1872年)再興の周助神輿

 本来、元町では町制施行記念の神輿パレードに八坂神社神輿を出していたが、90周年では山西から譲り受けた素木神輿(塗りのない神輿)を担ぐことになった。この神輿は山西の宮大工であった周助(しゅうすけ)によって建造され、昭和60年(1985年)頃まで山西の八坂神社の祭礼で担がれていたもので、今回のパレードのために修復された。今までは鳳凰(大鳥)にある刻印から明治4年(1871年)に建造されたと考えられていたが、今回の修復で明治5年(1872年)に杉崎周助政康によって再興された墨書が発見され、再興の意味が既存の神輿を修復したのか、あるいは新規で建造し直したものかは定かでないが、いずれにしても歴史的に価値のある神輿である。

 山西ではこの周助神輿の老朽化に伴い新しく神輿を建造したことから、周助神輿はしばらくの間眠っていたが、山西からこの神輿を廃棄するという話が出たことから、「元町神輿保存会(元神会)」が同会の神輿として譲り受けた。周助神輿は傷みが激しかったため、茅ヶ崎市にある神輿提灯工房の「神輿康」で、元の状態をできるだけ残す方向で必要最小限の修復を行い、今回の神輿パレードで復活する運びとなった。

 パレードに参加する神輿は、中里の明星神社神輿、通り三町の八坂神社神輿、山西の八坂神社神輿、飛龍会神輿(川勾神社)を加えた計5基で、他の4基の神輿が塗りやきらびやかな飾り金物で鮮やかに化粧されている中、歴史の重みをまとった重厚感のある元町の周助神輿は、十分すぎるほどの存在感で神輿パレードに花を添えたのである。

我らの祭りを! 元町の八坂神社祭礼

 元町には山西から譲り受けた元神会所有の周助神輿の他に、元町に鎮座する八坂神社の宮神輿であるもう一基の周助神輿を所有しているが、この神輿には壮絶な歴史がある。

 かつての二ノ宮村は現在の通り三町である「上町」・「中町」・「下町」と、今回取材をした「元町(入会/入合)」の四部落で構成され、通り三町の地区内(二宮下向浜86番地)に鎮座していた八坂神社(現在は社地が消滅)の祭礼では、この神社で所有していた1基の神輿を四部落が時間を決めて順番に担いでいた。しかしながら、祭りの日程や巡行経路などを巡って部落間での争いが絶えず、四部落での渡御はとかく紛争に終わり、円満な祭典執行は悩みの種であった。そこで、元町は川勾神社に懇願へ回り、明治3年(1870年)に元町へ新たに八坂神社と、杉崎周助政康の父である政貴によって建造された神輿が祀られ、これにより、元町単独としての祭礼が執り行われるようになったのである。

 これで紛争の問題は解決されたと思われたが、元町と通り三町の祭礼日が同じであったため、以降も紛争が絶えることはなかった。明治40年(1907年)の祭礼では通り三町と元町の神輿が現在の中南信用金庫の辺りで遭遇し、大喧嘩の末に通り三町の神輿が田んぼの中に落とされたという言い伝えも残されている。このような状況から、元町と通り三町の区長や宮世話人が話し合い、明治43年(1910年)に元町の祭礼日をずらすことで、ようやくこの紛争に終止符が打たれたのである。もちろん、現在は通り三町と元町は良好な関係が築かれており、神輿パレードでは双方の神輿が共に二宮駅からラディアンを練り歩く。

 元町に囃子の響きを! 大山囃子の伝承者 守泉長次

 元町には祭り囃子(ばやし)を演奏する団体として「元町北祭囃子保存会(以下、元北)」と「元町南囃子連(以下、元南)」、そして「富士見が丘二丁目祭囃子保存会(以下、富士見二)」の3つの囃子連があり、3団体共に90周年の神輿パレードに参加した。元北は元町の八坂神社の祭礼と同様にトラックの移動屋台で、元南は手押し型の簡易的な移動屋台で参加し、二宮町の他の囃子団体である「中里祭囃子保存会」、「中町囃子保存会」、「釜野太鼓連」、「川勾祭囃子保存会」の4基の屋台と共に神輿行列に加わった。また、富士見二は「梅沢はやし保存会」と共に居囃子(出発・到着地点のみ)での参加となり、神輿パレードでは合計8つの囃子団体が二宮町の伝統芸能を披露した。次に、元町の祭り囃子の歴史について紹介する。

 元北は昭和54年(1979年)に、富士見二は昭和60年(1985年)に発足し、共に中里祭囃子保存会から大山囃子を伝承している。なお、元南の囃子がいつ頃から始まったか記録は無いが、3団体の中では最も歴史が古いと言われ、元北および富士見二とは曲調が若干違うだけで、同じ大山囃子系統に分類される。

 この様に元町の囃子は比較的近年に誕生しているが、この立役者の一人が守泉長次氏である。守泉氏は中里の生まれで、「中里祭囃子」が昭和50年(1975年)に二宮町の重要無形民俗文化財に指定された時の中心的なメンバーであり、二宮町の大山囃子を語る上では欠かせない重要な人物である。この守泉氏の住まいが元町北にあった関係で、元町北祭囃子保存会の初代会長を5年務め、その後は相談役も務めた。守泉氏は中里祭囃子保存会の一員として元北だけでなく、富士見二にも大山囃子を伝承した。また、元町南は途中で笛の伝承が途絶えてしまったため、近年に中里の笛を習っている。

 中里に伝わる祭り囃子は江戸時代の文化文政期(1804年〜1830年)の頃に、現在の平塚市金目から伝承されたという言い伝えがあり、二宮町の大山囃子の源流となる囃子である。守泉氏は地元の二宮町以外にも平塚市の須賀などに大山囃子を伝承し、特に篠笛の名手であったため、笛の伝承にも大きく貢献している。奇しくもこの記事を執筆している伊勢原市民の私は、中里祭囃子が重要無形民俗文化財に登録された年に生まれ、更に今から約30年前に守泉氏から笛を習っており、二宮町は私にとって非常に思い入れの強い地である。残念ながら、守泉氏は平成13年(2001年)に他界しているが、守泉氏が元町に残した祭り囃子は今でも大切に受け継がれ、特に近年の元町の祭り囃子の盛り上がりには目を見張るものがある。

取材を終えて

 今回の取材を通じて、二宮町では各地区に鎮座している神社の祭礼のほか、毎年10月に開催される町内の囃子団体などが集結する「二宮町民俗芸能のつどい」、そして10年毎に開催される神輿パレードなど、地元の伝統行事および伝統芸能の継承に力を注いでいる町であることを改めて感じた。また、元町の八坂神社の祭礼は、先人達の並々ならぬ苦労と努力によって作り上げられてきたものであり、現在では、この史実を知る方は非常に少ないと思われるが、元町地区の皆様の祭礼に対する熱意からは、先人達から受け継がれてきた祭りへの強い思いが伝わって来るのである。

 近年の少子高齢化や祭礼に対する価値観の変化から、祭礼の運営は非常に厳しい状況にあり、元町地区も決して例外ではない。しかしながら、元町では多くの住民の献身的な協力により、現在でも非常に盛大な祭礼を継続しており、特に、富士見が丘二丁目祭囃子保存会と元町北祭囃子保存会においては、この逆境を跳ねのけるかのような発展ぶりが見られ、祭礼の活性化にとって非常にお手本になる取り組みを行っている。

 最後に、二宮町にお住まいで、神輿や祭り囃子、神社や町内会の運営など、興味がある方がいれば是非、地元の関係団体にお声がけを頂き、地域の活性化の為に協力して頂けますと幸いです。きっとどの団体も温かく迎えてくれると思います。

 今後もこの素晴らしい二宮町の伝統行事および伝統芸能が、後世に末永く引き継がれて行くことを祈願致します。

タウンニュース市民ライターとは

 「タウンニュース市民ライター」とは、(株)タウンニュースが認定する、地域の市民ライターです。市民の視点で地域の魅力を再発見し、情報を発信してもらいます。