多摩区・麻生区版【5月23日(金)号】
作品展のチラシを持つ(左から)洞さん、小泉さん、宮原さん

福祉事業従事者有志 作品を見せて元気に 高齢者の芸術展 麻生区で

 自分の制作したアート作品を他人に披露することで、高齢者が楽しみや自己肯定感を持つことにつなげ、元気になってもらおうと、麻生区で介護や看護、福祉サービス事業に携わる有志がこのほど、芸術作品展を初めて企画した。「あさお芸術作品展」と銘打ち、5月30日(金)から6月1日(日)まで、麻生市民館1階の麻生市民ギャラリーで開催する。

 企画したのは、ケアマネジャーで合同会社樹樹代表の小泉悦子さん(麻生区多摩美在住)と、社会福祉士で高石地域包括支援センター職員の宮原龍太さん、川崎市生活支援コーディネーターでセントケア看護小規模ゆりがおかに所属する洞(ほら)綾子さんの3人。

 今年1月頃、小泉さんがある男性の介護支援に携わった。男性は小品盆栽を趣味としていたが人に見せる機会がなく、手入れも滞りがちになり、やがては枯れていってしまうと嘆いた。こうした思いを抱える高齢者が他にもいると考えた小泉さんは、地域で展示の場を設けることを発案。同センターの宮原さんに相談した。同センターでは1月から利用者の作品を飾る取り組みを始めていたこともあり、小泉さんの提案を快諾。生活支援コーディネーターとして地域の高齢者とふれあうことの多い洞さんにも、宮原さんが声をかけた。

 3人で作品を募ると、油絵や水彩画、アクセサリー、小品盆栽、写真、刺繍、折り紙など30点超が集まった。作者は60代から90代の20人。「人に見せることで自分の存在意義を確認したり楽しみを復活させたりしてもらえたら」と小泉さん。宮原さんは「作品を持ってくる皆さんの顔がうれしそうで。やりがいにつながっていると感じる」、洞さんは「自分の作品が展示されていると、外出するきっかけにもなる」と期待を込める。

 あさお芸術作品展は、午前10時から午後4時(最終日は3時)まで。入場無料。詳細・問い合わせは高石地域包括支援センター【電話】044・959・6020。

菅中学校に設置されたキーボックス(写真右)

市立小中学校など 施設貸出に新システム 利便性向上や負担軽減へ

 川崎市は4月1日から、市立小・中・特別支援学校167校で、新たな予約システムと無人のキーボックスを連動させた「川崎市学校施設利用システム」の運用を開始した。市は利用者の利便性向上や学校職員の負担軽減などに期待を寄せる。特別教室などを含めた施設の予約システムや、位置情報を確認できるキーホルダーを導入するのは、全国の自治体で初めて。

 これまで学校施設の鍵は、職員が利用者に直接受け渡しをしていた。学校の受付時間外に貸出対応をするケースもあるなど、紛失リスクの高さや、教職員の負担が懸念されていたという。

 市は、これを改善し、施設を使いやすくするための取り組みとして、同システムの運用を開始。学校施設開放を実施している市内167校の通用門付近にキーボックスを設置した。

 利用者間で日程などを調整した上で、オンラインで各自が申請。予約が確定すると、キーボックスを開けるための暗証番号が送られてくる。この番号を利用日にボックスに打ち込むことで箱が開き、中に入っている鍵が受け取れる。このシステムを用いて、体育館に限らず、校庭や武道場、特別教室(特別活動室や音楽室など)の予約ができるのは、全国の自治体で初めてだという。

 先行で実証実験を行った結果、市民にとっての利便性向上に加え、書類記入や管理、集計、報告作業、利用者からの問い合わせがなくなったことによる教職員の負担軽減の成果が見られた。運用から1カ月ほど経った菅中学校(多摩区)でも、その効果を実感しているという。同校の山本新教頭は「教職員の負担軽減は如実に感じている。働き方改革の面から見てもありがたい」と話す。

 鍵には、管理者が位置情報を確認できる機能が搭載されたキーホルダーが付けられた。これも全国の自治体で初めての試みで、市教育委員会の担当者は「何時に誰が施設を開け、どこに鍵があるのかを全て管理できるため、強い安心を感じている」と力を込める。

 加えて、今までは利用統計などを書類で管理していたが、今回、オンライン管理が可能になり、大幅な紙資源の削減にもつながったという。市担当者は「今後、開放されていない特別教室などのうち、市民利用に対応可能な場所を順次開放し、さらなる学校施設の有効活用を進めていきたい」と展望を語った。

相互協力を

 川崎市では1964年度から、学校施設を市民に開放している。校庭や体育館と比べ、特別教室などの利用頻度が低いことから、施設の有効活用を図るため、22年に市民アンケートを実施した。

 この結果などを踏まえ、24年2月に「学校施設の更なる有効活用に向けた実施方針」を策定。【1】もっと使ってもらう、【2】使いやすくする、【3】みんなで使う、の3つを基本コンセプトに掲げた。

 今回、オンラインシステムの導入により、利用方法の簡易化などが図られたが今後も引き続き、地域内での「顔の見える関係構築」には注力する構えだ。市担当者は「日程などを調整する上で、利用者同士が譲り合いながら運営してもらうのが基本的な考え。相互協力のもと学校施設を活用してほしい」と話した。

(一社)多摩区ソーシャルデザインセンター(SDC)の学生代表に今春就任した 阿部 菜月さん 中原区在住 21歳

学生と地域、一緒に前へ

 ○…地域活動の中間支援組織・多摩SDC。高校生や大学生約30人を取りまとめる。大学入学前から関わってきた。「活動ができることは幸せなこと。地域と学生が一緒になって、まちがよりよくなるようにしていきたい」と笑う。4月に行われた第5回「登戸・たまがわマルシェ」を初めて取り仕切った。「今まで先輩方にたくさん経験を積ませてもらった」と振り返りつつ感謝の言葉を口にする。学生代表となり「今度は私が後輩たちに挑戦してもらえる場を」と意気込む。

 ○…小学校教諭になることが夢。多摩高校3年生のとき「子ども食堂」に参加したのがSDCを知ったきっかけだ。東海大入学後、本格的に活動に関わり、宿題を一緒に行ったり、工作や水遊びなどで子どもが自由に遊べる場を作ったりしてきた。「子どもと関われる貴重な機会。一緒に成長していけたら」。そんな気持ちが強い。

 ○…大学では教育や保育を学んでいる。専門性も生かしながら、地域の子どもと接している。SDCなどで関わった子どもの顔が授業でも浮かぶ。さまざまな活動で忙しいが時間を見つけて、教員採用試験の勉強にも力を入れる。「一緒に子どもたちと成長していける先生に」。夢をまっすぐな目で話す。

 ○…趣味は一人旅。その土地のグルメや景色を楽しむ。自分が行きたい場所に自由に行けるのが醍醐味だという。居心地の良い場所を聞けば「私はやっぱり、多摩SDCかな」。多摩区役所1階という立地を生かして、区民に気軽に立ち寄ってもらうために、話し合いを重ねている。学生生活も残り1年を切った。「卒業後もSDCの活動が続いていくように。代表として、みんなのやりたいという気持ちを支えたい」と思いを語る。

川崎市長選 10月26日投開票に

 川崎市選挙管理委員会は5月12日、任期満了に伴う川崎市長選挙を、10月12日(日)告示、26日(日)投開票の日程で行うことを決定し、同日発表した。

 福田紀彦市長は今年11月18日に任期満了を迎える。2021年10月31日に行われた前回の市長選は、衆議院議員総選挙と同日選となった。前回の投票率は57・66%で、前回比5・36ポイント増だった。なお、区別では多摩区が57・80%、麻生区が63・20%だった。

 川崎市の選挙人名簿登録者数は3月3日現在で127万1896人。

コンサートで健康に 新百合ヶ丘総合病院で

 新百合ヶ丘総合病院音楽部による演奏会が6月7日(土)、同院3階STRホールで開催される。午後2時開演(1時30分開場)。

 同院の職員などで構成されている音楽部。演奏会は定期的に開催され、17回目。今回は、アメリカ音楽特集として『ウエストサイドストーリーセレクション』などを披露する。担当者は「優雅な音楽でリラックスした気分を味わってほしい」と思いを語る。

 14日(土)には、同ホールで「音楽療法士と粋な男声カルテットコンサート」を行う。午後0時30分から1時30分。麻生区を拠点に活動する男声カルテット「グルービー・グランパーズ」らが出演する。コンサート終了後、午後2時から、「股関節の痛みと治療法」と題した健康講座を実施。

 どちらも入場料無料で予約不要。入場の際はマスクの着用を。問い合わせは同院【電話】044・322・9991。

ライブを行う山川さん(中央)

山川こうたろうさん 地元長尾に感動届ける 会館で2回目のライブ

 多摩区長尾に住むシンガーソングライターの山川こうたろうさん(61)が5月17日、長尾会館でライブを行った。

 地元の長尾でのライブは2回目。長年の音楽仲間である河野智行さん(パーカッション)、村上通さん(キーボード)、竹内章人さん(バイオリン)、居相毅さん(ハーモニカ)と共に約1時間のステージを盛り上げた。新曲の『私のヒーローズ』を初めて披露したほか『路上のステージ』『歩(AYUMI)』などを歌い上げた。来場者は「あっという間の1時間。素晴らしい歌声。歌詞が心に響いた」と話した。山川さんは「雨の中、たくさんの人が来てくれた。100%の歌を届けられた。今後も音楽で地元を盛り上げたい」と述べた。

パステルアートで交流 6月23日 川崎授産学園

 麻生区の障害者支援施設・川崎授産学園が主催する「ふれあいパステルアート」が6月23日(月)、同施設で開催される。午後1時45分から3時。

 障害のある人と交流しながら、アートを楽しむ体験教室。定員は先着8人。参加費、材料費無料。申込みは件名に「パステルアート教室申込」、本文に氏名、ふりがな、住所、電話番号を記載の上、【メール】entry@seiwa-gakuen.jp、【FAX】044・954・6463。問い合わせは同施設【電話】044・954・5011。

「Liproll」ボーカルのTOSHIさん

リリオスでJポップ 6月14日 音楽イベント

 しんゆり交流空間リリオス(麻生区万福寺)で6月14日(土)、「リリオスJ─pop live!〜音楽の広場へようこそ〜」と題したイベントが開催される。一般財団法人川崎新都心街づくり財団が主催。午後3時30分開演(3時開場)。

 出演するのは、1980年代からのJポップを歌う「川崎ナムナムCat」と、「Liproll」。もともと、向ヶ丘遊園駅前にあったコミュニティースペース「白いハコ」でライブ活動をしていた2組だ。

 今回は同施設が、既に演奏家として経験豊富な人を応援するために実施している取り組み「セカンドステップ」を活用して行われる。

 入場料はワンドリンク含む1千円。小学生まで入場無料(ドリンク代別途)。事前申込み制で定員35人。予約・問い合わせは同施設【電話】044・281・5036。

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星空に親しむ発表会 6月1日 科学館で

 かわさき宙と緑の科学館で6月1日(日)、プラネタリウム番組の発表会が行われる。入場無料。午後4時10分開演(4時開場)。投影は約40分間。

 かわさきプラネタリウム同好会(間渕秀和会長)が主催し、15回目を数える。今回は「特徴的な星の並び『アステリズム』を見よう」と題して、夏の大三角形などの星空を紹介していく。

 2時30分からプラネタリウム近くで整理券を配布。(問)間渕会長【携帯電話】090・2678・2712

麻生区で子育て支援 はくさん児家センが主催

 はくさん児童家庭支援センター(麻生区)が主催する講座「シリーズ・親オヤ!?」が6月10日(火)、麻生区役所1階保健ホールで開催される。

 発達が気になる幼児や小学生の保護者・支援者が対象。「小学校生活で困ったら〜入学前の準備と入学後の支援」をテーマに市総合教育センターの里恵子氏が講義。定員は20人程度。申込みは6月6日(金)午後6時まで。

 また11日(水)には、白山愛児園地域交流スペースで「親子のための防災講座」が行われる。就学前の子どもと保護者のための子育てスペース「ママン」の中で行われる。飲み物、おむつは持参を。

 どちらも参加無料で、午前10時から正午。問い合わせ・申込みは同センター【電話】044・712・4073。

映画の1コマ=芦澤さん提供

『あさお誕生物語』上映 柿生郷土史料館セミナー

 柿生郷土史料館(麻生区上麻生)のセミナー「麻生区の今昔を辿る記念映画 上映と撮影秘話」が6月7日(土)、柿生中学校武道場で開催される。午後1時から2時30分。

 昨年、市制100周年記念事業の一環として、麻生区役所と日本映画大学が協働して制作した『あさお誕生物語〜語り継ぎたい60年のあゆみ〜』を上映。制作を担当した同大の芦澤浩明さんを講師に招き、撮影時の裏側などを紹介する。

 参加費無料。申込み不要、直接会場へ。問い合わせは同館の小林さん【携帯電話】080・5513・5154。

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思いのこもった作品に囲まれる笠原さん

二刀流自分らしく表現 笠原さん、個展振り返り

 麻生区高石在住の書家・笠原秋水さん(88)の米寿を記念した個展「書と教育 二刀流展〜こころを言葉に ことばを書に」が5月14日から18日まで新百合トウェンティワンホールで開かれた。

 会場には68年にわたり笠原さんが取り組んできた書と教育の軌跡を辿る作品や資料の数々が並び、訪れる人々が熱心に見つめる姿があった。

 笠原さんは「これ以上ないというぐらい自分らしさが表現できた。自分の歴史の一つの区切りができたことは満足」と話した。今後も主宰する秋水書道会の書展などを続けていくという。

古民家散策と藍染め体験 多摩区観光協会ツアー

 多摩区観光協会は6月5日(木)、ウオーキングツアー「思いっきり民家園を楽しもう!伝統工芸館で藍染め体験」を開催する。参加者を募集中。

 1967年に開園した古民家の野外博物館「川崎市立日本民家園」(多摩区枡形)を見学。西門に併設されている伝統工芸館で藍染めの体験を通して、日本古来の美しい「藍色」を愛でる。

 午前9時30分に小田急線向ヶ丘遊園駅南口改札前集合。生田緑地内にある日本民家園を見学し、昼食後に伝統工芸館で藍染め体験。午後3時30分頃に解散の予定。

 定員20人、申込み先着順。参加費1500円(保険代含む)。荒天中止。昼食持参。

 申込みは同協会事務局(多摩区地域振興課)を訪れるか、【電話】044・935・3132、【FAX】044・935・3391。詳細・問い合わせは事務局。

多摩川の会 三沢川を歩く

 多摩川と周辺の環境を考える多摩区の会(多摩川の会)は5月31日(土)、見学会「三沢川上流部を歩く」を開催する。

 午前9時50分、京王線稲城駅改札口に集合。三沢川に沿って若葉台駅まで約4Kmを歩く。正午解散予定。参加費500円。申込みはショートメールで森勢さん【携帯電話】090・3142・1757。5月28日(水)必着。

 同会は多摩川とその周辺の環境や防災への関心と理解を深め広めることを目的に活動している。

万博テストランの様子=ちとせグループ提供

宮前区の企業 万博で「藻」の技術披露

 現在開催中の大阪・関西万博で、藻類などの研究開発を行う(株)ちとせ研究所(本社・宮前区野川本町)が、日本館ファームエリアの技術監修を行っている。メイン展示に協力するほか、連携企業と共に藻類による循環型社会の未来像を描いた展示も公開している。

 前身のネオ・モルガン研究所は2002年に設立。08年に「千年(ちとせ)」の交差点近くに本社を移し、「千年先まで続く豊かな世界の実現に貢献」すべく社名を「ちとせ」とした。グループメンバーは約400人。約15年前から藻類の可能性に着目し国内外複数の拠点で研究開発を展開。20年には国の採択を受けマレーシアで世界最大級(5ha)の藻類生産の実証実験を行い、現在は100haの新施設建設に取り組む。

現地で培養

 同社はこうした実績が評価され、万博で技術監修を担うことになった。日本館は「循環」がテーマ。3つのエリアのうち、ファームエリアは「藻類」が主役だ。メイン展示では、チューブの中に本物を入れて「いのちみなぎる藻のカーテン」を表現した。藻類のリアリティーにこだわり、現地でも光エネルギーを効率的に利用し、少量の水で育てられる独自装置「フォトバイオリアクター」を用いて培養。現地責任者の松崎巧実さんは「準備を始めた3月は寒暖差が激しかったので、藻類の培養に苦労した。展示に合わせて藻類の種類を変えている」と話す。期間中は、社員3人体制で運用に携わるという。

 また、ファクトリーエリアでは、ちとせグループが主導し、他企業などと協働して藻類産業を構築するプロジェクト「MATSURI」の展示も実施している。藻類は光合成を通じて太陽エネルギーを効率的に蓄え、多様な有機物を生み出すという。展示では、燃料や食品、化粧品などさまざまな素材への応用のヒントを示している。広報担当者は「『藻類の可能性が爆発的に広まったのは万博からだった』と語られる日が待ち遠しい」と期待を寄せている。

いのちの電話 収益を活動費に 6月1日 チャリティー寄席

 社会福祉法人川崎いのちの電話主催のチャリティー寄席「柳家三三独演会」が6月1日(日)、エポックなかはら(川崎市総合福祉センター)で開催される。午後1時30分開演(開場0時30分)。

 三三さんのほか、鈴々舎美馬さん、柳家ひろ馬さん、桂小すみさん(俗曲)、森本規子さん(三味線)が出演する。チケットは郵便振込、チケットぴあ(Pコード530693)で販売中。木戸銭は、3500円(当日4000円)で全席自由となる。

 自殺予防の電話相談を担う同法人は、365日24時間休みなく悩める相談者からの電話を受け続けている。イベントの収益は活動にあてられる。

 問い合わせは、同事務局【電話】044・722・7121(平日午前10時から午後5時まで)。

DV問題の専門家に聞く 「警察以外」も環境整備を

 川崎区で起きた女性遺棄事件では、被害女性が川崎臨港署(川崎区)にたびたび相談していたことが分かっているが、ストーカーやDV問題の専門家は、「警察以外」の相談先の重要性を指摘する。市内の相談・支援体制は万全だろうか。

適切な相談先に

 DV被害者などを支援する民間団体の全国組織、NPO法人「全国女性シェルターネット」(本部・東京都)の共同代表・北仲千里さんは、今回の事件の教訓として、「ストーカー規制法の範囲で動く警察の対応能力にも限りがある。被害当事者が適切な相談先につながれる環境整備の重要性を、改めて感じた」と語る。

 「配偶者暴力防止法(DV防止法)」は、配偶者や同棲しているパートナーからの暴力に関する相談や保護などの体制を整備することで、被害者の安全確保を目指している。

 今回の事件は捜査中のため不明な点が多いが、北仲さんの経験上、交際相手を「犯罪者」にするための刑事手続きを自己決定できる当事者は、「決して多くない」という。そのため相談先を警察に限定せず、DV問題を専門とする支援者から客観的な助言を得たり、一時保護施設への避難を勧められたりすることで、「命を守る選択肢がぐっと広がる」と北仲さんは語る。

民間の対応能力

 川崎市では電話相談窓口「川崎市DV相談支援センター」で、配偶者や同棲中のパートナーからの暴力行為に関する相談を受け付けている。相談者が希望する場合、神奈川県と連携のうえ女性相談支援センターや民間施設での一時保護も可能だが、保護中は安全確保のため携帯電話が利用できず職場にも行けなくなるなど制限が多く、一時保護に至らないケースも多いという。実際、2023年度は878件の相談があり、一時保護の件数は32件だった。

 一方で、北仲さんは「神奈川特有の課題」も指摘する。県全体で「DV問題に関する民間の対応能力が弱まりつつある」というのだ。

 DV被害の支援現場では、緊急性が高いと判断される場合に被害者のもとに駆け付け、そのまま保護する場面もあり、多くの都道府県で民間団体も対応している。ところが相談から保護判断までの一連の対応を行政に一本化した「神奈川方式」の導入以後、民間が対応する機会が減少した。「神奈川では、警察の担当窓口すら知らない団体も少なくない」と北仲さん。「DV被害で最悪の事態を防ぐためには、官民の分け隔てなく、迅速かつ柔軟に対応できる支援者育成が必要だと思う」と話している。

(上)白米が並ぶ小島米店。中央が小島さん(下)小島米店のカラの玄米容器

止まらないコメ価格高騰 市内の消費者を直撃 米穀店主「問題は夏」

 コメ価格の高騰が止まらない。コメの調達に奔走する米穀店や、米を探して複数のスーパーを「はしご」する消費者もいる。市内の影響を取材した。

 5月16日の朝、小島米店(多摩区)の店頭には5kg入りの白米5種類がびっしり並んでいた。数日前まで数袋だったが、卸売業者から2日前に入荷し、前日夕方に並べたばかりという。

 同店では創業時からこだわりの玄米をその場で精米して販売してきたが、コメ価格高騰の影響で玄米が手に入りにくいため、卸売業者から白米を仕入れ始めた。平時なら複数の銘柄を取り揃えているという玄米の容器は、カラのものもある。

 代表取締役の小島晃さん(71)は、「こんなことは初めてだが、お客さんも困り果てている。『スーパーを何軒回ってもコメがない』と、初めてうちに来る人もいる」。実際、取材中も続々と来客があった。

 女性の常連客は白米が並ぶ棚を見るなり「いっぱいある!」と声を上げ、5kgを一袋買い求めた。さらに「来週分を1袋、キープで」。2人の娘が食欲旺盛のため、月に2回は同店でコメを購入するといい、「見通しが立つことはありがたい」と話していた。

 各地の生産者からもコメを仕入れている小島さんは「そもそも国の生産調整の失敗だ」と憤る。「生産量が増えなくては解決しない。問題はコメが切れる夏。去年はパニックだった」

増える善意の支援

 市立小中学校の給食については、コメを含む物価高騰の傾向を見越して2025年度から価格改定したため、市の担当者は「今のところ問題ない」と説明する。

 市内の子ども食堂等約75カ所が参加するNPO法人「かわさきこども食堂ネットワーク」の佐藤由加里理事長は、「物価高騰の報道があると善意の支援も増える傾向がある。参加団体から『寄付があり助かった』という声も聞かれ、ありがたい」。同ネットワークでは昨年度に寄付されたコメ計1・4tを、公平に配布してきた。「今後もネットワークに届く寄付は、寄付者の意向を確認しながら公平に配布していく」と話している。

川崎市役所

治療後の生活支援 川崎市 アピアランスケア助成 がん以外の疾病も

 川崎市は6月から、がんなど病気の治療の過程で生じた外見の変化に対する「アピアランスケア」への助成金交付を開始する。がん以外の病気にも適用する。

 アピアランス(外見)ケアは、抗がん剤治療の副作用でおきる脱毛や、乳がんの手術による乳房の切除など、がん治療等に伴う外見の変化に対する医療者のケアとして、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)の外見関連患者支援チーム(現・アピアランス支援センター)が取り組み始めた患者サポート。

 ウィッグや胸部補整具のほか、化粧品など日用品での生活支援、皮膚科や形成外科との連携など、各地で様々な支援が広がっている。

 6月から市が始める助成の対象は、がん治療中またはがん治療を経験した人か、健康保険の保険給付対象となる傷病や先天的な疾患の治療をした人で、いずれも申請時点で川崎市に住民登録があり、治療による外見の変化を補う装具類を購入、またはレンタルした人。今年4月1日以降に購入またはレンタルした【1】ウィッグやウィッグ着用時のネット、【2】胸部の補整下着やエピテーゼ(人工乳房)などに対し、3万円を上限に助成する。

 申請者が18歳以上の場合は【1】【2】について各1回ずつ助成するが、18歳未満の場合は【1】【2】とも18歳に達するまで年度ごとに助成を受けられる。がん以外の傷病や疾患の場合、アピアランスケアの必要性を証明する医師の「意見書」が申請時に必要となる。

 神奈川県の概算では、市内には約9千人のがん患者がいるとみられる。市の担当者は「がんは治る病気になりつつあり、回復して社会生活に戻る方々が増えている。先行自治体の動向も踏まえて導入した」としている。

 問い合わせは市地域包括ケア推進室専門支援担当【電話】044・200・3801。

「高齢者福祉のしおり」

区民記者が走る! vol.47 2025年 May 「人生100年、知りましょう、こんなことを」

 麻生区は長寿日本一ということで、いろいろな支援が。そのなかで意外と知られていないのが「高齢者見守りネットワーク」。自分で相談できない・家族がいないなどの高齢者を、宅配弁当・新聞販売店など28の事業者の協力で異常を発見し、関係団体が連携・協力して支援するもので、昨年は13件の見守り事例があった。

 そして川崎市でも高齢者に役立つ情報を発信している。特に「高齢者福祉のしおり」は内容も充実し参考になるのに、あまり知られていない。そこで麻生市民館の自主企画事業として「高齢者が楽しく暮らすために〜プロがあなたの心配事に応えます」プロジェクトが、9月開講の準備を進めている。

 元気なうちに、新しい情報に触れ、不安や恐れのない、自分らしい豊かな人生を満喫したいものです。

区民記者とは?

地域活動が盛んな麻生区で活動する団体にスポットライトをあてるために、麻生市民交流館やまゆりを運営する認定NPO法人あさお市民活動サポートセンターが中心となって、文章を書くことが好きな区民で活動しています。

niko and...とのコラボグッズのメインビジュアル

GO!GO!!フロンターレ

niko and...(ニコ アンド)とコラボグッズ販売

 サッカーJ1・川崎フロンターレは、ファッションからインテリアまで幅広く扱うniko and...と、コラボグッズを販売している。

 同グッズはniko and...のデザイナーが実際にフロンターレの試合を観戦し、サポーターの熱気やスタジアムの空気感から着想を得て、デザインを手がけたもの。試合の興奮や一体感を感じられるグッズがそろった。

 Tシャツには、表にさりげなくクラブロゴを配置し、袖に同クラブが掲げる「12の価値観(12VALUES)」をプリント。日常でもスタジアムでも着られるデザインだ。カラーはブラックとオフホワイトの2色、サイズはS〜Lまでを用意している。

 ほかにもトートバッグやタオルマフラー、キーホルダーなど全9種。オフィシャルショップ「アズーロ・ネロ」や同ウェブショップ、U等々力のスタジアム売店で購入可能。詳細・問い合わせは同ショップ【電話】044・767・6111。

画像はいずれも川崎フロンターレ