中原区版【5月23日(金)号】
地図を広げて確認する仲田さん親子

下小田中仲田さん親子 井田堀、埋没箇所を調査 二ヶ領延長から250年

 徳川家康の江戸への入府から工事が始まり、1611年に完成した二ヶ領用水。その93年後に用水を延長した井田堀が今年で250年になることに合わせ、下小田中の会社員・仲田正美さん(48)と正樹さん(西中原中3年)親子が、埋没している支流の一部を調査した。

 二ヶ領用水は川崎市内のほぼ全域を流れる、総延長32Kmの神奈川県下で最も古い人工用水。多摩川の水を田畑に利用するため堤防を築き、農業用水として建設された。

 歴史研究が趣味の仲田さんが二ヶ領用水の支流である井田堀に関心を持ったきっかけは、昨年秋に参加した地域の歴史を巡る散策ツアー。案内役が川崎地名研究会の会長で、二ヶ領用水に関する本の著者である菊地恒雄氏だった。「説明の中で、菊地さんから当時の井田村の井田三舞耕地まで用水を延長してから2025年で250年になると聞いたんです」。後日、中原図書館で『新編武蔵風土記稿』などの資料をあさった。調べていると、井田堀は下小田中の上東・下東から井田三舞町に至る井田堀本流と分水路のほか、西中原中の東側を南下し、井田杉山町へ至る小田中堀などの流路があることが記録に残っていた。

 しかし、現在はその流路のほぼすべては暗渠(あんきょ)とし、埋設されている状態。調べを進め、「暗渠となった井田堀の中で、唯一コンクリート暗渠に埋まらず痕跡をとどめている井田堀分水路の存在を知った」。所有者の許可を得て息子の正樹さんと調査すると、流路の幅は約50cmで分水路の一部にトタンが利用されていたことを発見。また、掘り出した土に混じる泥岩から貝化石が見つかるなど、古い地層のものであることもわかったという。

 区内を流れる二ヶ領用水の支流には四ケ村堀などいくつもの流路があり、分水路も多数あるが、ほとんどが埋もれている状態だ。仲田さんは「今回調査した箇所も、埋もれてしまうことになると思う。貴重な調査結果が、いつか歴史を振り返ったときに役に立てば」と思いを込める。

「警察以外」も環境整備を DV問題の専門家に聞く

 川崎区で起きた女性遺棄事件では、被害女性が川崎臨港署(川崎区)にたびたび相談していたことが分かっているが、ストーカーやDV問題の専門家は、「警察以外」の相談先の重要性を指摘する。市内の相談・支援体制は万全だろうか。

 DV被害者などを支援する民間団体の全国組織、NPO法人「全国女性シェルターネット」(本部・東京都)の共同代表・北仲千里さんは、今回の事件の教訓として、「ストーカー規制法の範囲で動く警察の対応能力にも限りがある。被害当事者が適切な相談先につながれる環境整備の重要性を、改めて感じた」と語る。

 「配偶者暴力防止法(DV防止法)」は、配偶者や同棲しているパートナーからの暴力に関する相談や保護などの体制を整備することで、被害者の安全確保を目指している。

 今回の事件は捜査中のため不明な点が多いが、北仲さんの経験上、交際相手を「犯罪者」にするための刑事手続きを自己決定できる当事者は、「決して多くない」という。そのため相談先を警察に限定せず、DV問題を専門とする支援者から客観的な助言を得たり、一時保護施設への避難を勧められたりすることで、「命を守る選択肢がぐっと広がる」と北仲さんは語る。

民間の対応能力

 川崎市では電話相談窓口「川崎市DV相談支援センター」で、配偶者や同棲中のパートナーからの暴力行為に関する相談を受け付けている。相談者が希望する場合、神奈川県と連携のうえ女性相談支援センターや民間施設での一時保護も可能だが、保護中は安全確保のため携帯電話が利用できず職場にも行けなくなるなど制限が多く、一時保護に至らないケースも多いという。実際、2023年度は878件の相談があり、一時保護の件数は32件だった。

 一方で、北仲さんは「神奈川特有の課題」も指摘する。県全体で「DV問題に関する民間の対応能力が弱まりつつある」というのだ。

 DV被害の支援現場では、緊急性が高いと判断される場合に被害者のもとに駆け付け、そのまま保護する場面もあり、多くの都道府県で民間団体も対応している。ところが相談から保護判断までの一連の対応を行政に一本化した「神奈川方式」の導入以後、民間が対応する機会が減少した。「神奈川では、警察の担当窓口すら知らない団体も少なくない」と北仲さん。「DV被害で最悪の事態を防ぐためには、官民の分け隔てなく、迅速かつ柔軟に対応できる支援者育成が必要だと思う」と話している。

クラウドファンディングを活用して市内の子ども食堂に米を寄贈した 斎藤 愛桜(あいら)さん 中原区内在住 18歳

社会福祉充実へ勉強励む

 ○...高校3年生だった昨年、子ども食堂に米を寄贈するため、被災地の復興支援を視野に入れたクラウドファンディング(CF)を立ち上げた。NPO法人かわさきこども食堂ネットワークの助力から川崎フロンターレ、岩手県陸前高田市と支援の輪が広がり、集まった資金で200kgの米を購入。区内8カ所と陸前高田市の子ども食堂に寄贈した。「こんなに大きなプロジェクトになると思っていなかった。少しでも子ども食堂の助けになれて良かった」と笑顔で振り返る。

 ○...幼い頃から子どもが好きで、保育士や幼稚園の先生に憧れていた。小学生の時に子ども食堂のことを知り、関心を持った。高校の探求学習の授業で子ども食堂を調べ、食材や人材が不足していることを知った。「まずはやってみよう」。その思いでCFに挑戦。途中で資金が思うように集まらず、不安に思うこともあった。それでも周りの支援が大きな力に。「思いに賛同してくれた方々のおかげで実現できた。自分の気持ち、やりたいことをうまく伝えられたことが成功につながった」と、今回学んだことを挙げる。

 ○...現在は大学で社会福祉士、精神保健福祉士の資格取得を目指し、勉強に励む。福祉が進み、国民の幸福度が高い東欧への留学も視野に入れる。行政で子育て支援に携わることが目標だ。そして、起業し子ども食堂を運営していくことを夢見る。「子育てがしやすい国にしていきたい。その一端を担えれば」

 ○...趣味はアイドルの推し活。アルバイトで資金を貯め、勉強の合間に地方遠征に行くことも。「力をもらえるんです」と照れ笑い。今後は、子ども食堂のボランティア活動に参加する予定だ。持ち前の行動力で夢の実現に向け、歩み続ける。

(左から)宮下選手、沖本区長、奥選手

中原区役所 富士通RW(レッドウェーブ)連覇で駅彩る 南武線武蔵小杉駅で

 中原区役所は、女子プロバスケットボールWリーグを2年連続で制した富士通レッドウェーブを祝し、JR南武線武蔵小杉駅の改札前連絡通路を装飾した。設置には、奥伊吹選手と宮下希保選手が駆けつけ、サインで彩った。

 Wリーグ2024─25シーズンで2年連続3度目の優勝を果たした富士通レッドウェーブを祝う装飾を目にした奥選手は「たくさんの人が見るところに飾ってもらえてうれしい」と声を弾ませた。宮下選手は今後地域活動を積極的に行っていくとし「地域の方に知ってもらい、お互いに応援される関係になれたら」と期待を込めた。沖本里恵区長は「かわさきスポーツパートナーである富士通レッドウェーブの優勝をうれしく思う。みんないい笑顔」と装飾写真に視線を移した。今後について「勝ち抜くのは大変なことだと思うが、来シーズンも勝ち抜いてほしい」と力を込めた。駅装飾の期間は6月13日(金)まで。

観客をとりこにした3人の演奏

サンフォニックス ピアノトリオの音色響く ショールームで無料公演

 音楽事業を手掛ける(株)サンフォニックス(宮内)のピアノショールーム「ハーモニア」で5月18日、ヴァイオリン、ピアノ、チェロのピアノトリオによる無料コンサートが開かれた。

 ショールーム開店時から続く公演で、今回が27回目の開催。抽選で選ばれた観客約60人が、国内外で活躍する吉村しげこ氏のヴァイオリン、中山博之氏のピアノ、磯野正明氏のチェロによる美しい音色に聞き入った。ピアノは同社が2019年に導入したスタインウェイピアノを使用。前半はチャイコフスキーのピアノ三重奏曲イ短調作品50『偉大なる芸術家の思い出に』の大曲を披露し、休憩を挟んだ後半は出演者のトークを交えながらショパンの『ノクターン第2番作品9-2』など耳馴染みのある曲を演奏し、アンコールにも応えた。世田谷区から友人と来た60代女性は「休日の午後のひとときを、優雅な音楽で楽しめた」と話し、夫婦で来場した宮内の60代男性は「抽選に当たってよかった。今度はジャズの演奏も聞いてみたい」と笑顔を見せた。

 三浦傳代表は「これからも『音楽のまち・かわさき』にふさわしく、地域の音楽文化の振興に貢献していきたい」と思いを込めた。

催し物広場に設置されたバスケットゴール

とどろきパーク 等々力にバスケゴール 市民要望に応え 利益還元

 川崎市の指定を受けて、指定管理者として等々力緑地の再編整備と管理運営を行う川崎とどろきパーク(株)は先月、同緑地催し物広場にジュニア用のバスケットゴール1基を設置した。

 川崎市は現在、「等々力緑地再編整備・運営等事業」に取り組んでおり、同社が2023年4月から30年間の管理運営を担う。同事業では、管理運営に際し、生まれた利益の一部を等々力緑地の魅力向上に寄与、還元すること(プロフィットシェアリング)が条件に含まれている。その第1弾として、今回設置したのがジュニア用の移動式バスケットゴールだ。

 川崎市によると、市民からの声を市政に反映するために実施している「市長への手紙」で、バスケットゴールの設置に関する要望が多く寄せられているという。

 市は、「公園等における若者文化施策」等と連携した施設整備による公園の魅力向上に向けて、市内各区の公園でバスケットゴール設置の実証実験を進めており、中原区内ではまだ実施していなかった。

 設置した同社の担当者は「皆さまの日々のご利用により、この度バスケットゴールを設置することができた。ぜひ多くの方にご利用いただければうれしい」と話している。

 なお、バスケットゴールの利用は、午前9時から午後5時まで。同広場でのイベント開催時には、利用ができなくなる場合もあり。

女性監督による「汚点」

無声映画 伴奏付き上映 5月25日 ゆめホールで

 ゆめホールシネマ倶楽部が主催するピアノ伴奏付き無声映画の上映会が5月25日(日)、かわさきゆめホール(下沼部1880)で行われる。

 上映作品は午前10時から無声映画時代には珍しかった女性監督ロイス・ウェバーの作品『汚点』(1921年)。戦前映画の自主上映会「活動倶楽部」の代表・宮下啓子さんが語りを務める。午後2時からはチャップリンに認められたというジョセフ・フォン・スタンバーグ監督の『紐育の波止場』(1928年)を日本語字幕で上映する。ピアノの伴奏は、サイレント映画ピアニストとして活躍する柳下美恵さん。上映後には主催者と出演者を交えたアフタートークも。同倶楽部の柳沢芳信さんは「いずれも1回だけの上映。貴重な機会です」と呼び掛ける。入れ替え制で一般前売り1000円(当日1500円)、障がい者500円、大学生以下200円。(問)同ホール【電話】044・433・3003

上野毛から二子まで歩く

 中原区スポーツ推進委員会が主催する恒例の「中原歩こう会」が6月8日(日)に開催される。参加無料。

 今回のコースは、東急大井町線上野毛駅から二子玉川駅まで。午前8時に上野毛駅に集合。玉川中町公園で休憩して、二子玉川駅までの道のりを歩く。現地解散。

 申込み不要。開催の可否は当日、午前7時に中原区のウェブサイトで告知。問い合わせは、中原区地域振興課【電話】044・744・3323。

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区内の被害状況を紹介

中原の空襲被害知る 展示に多くの来場者

 川崎中原の空襲・戦災を記録する会(中島邦雄会長)が主催する「中原空襲展」が5月16日から21日まで中原市民館1階ギャラリーで開催された。期間中、多くの人が会場を訪れた。

 1945年4月15日に見舞われ、多くの罹災(りさい)者を出した川崎大空襲から80年が経過。同展は、その戦禍の記憶を問い続けるため、毎年開催されている。

 14回目を迎えた今回、会場には中原区内で焼夷(しょうい)弾が落ちた場所や火災の発生場所を同会が聞き取り調査して作成した地図などを展示。疎開先の大山での1日の生活などが描かれた絵や、焼夷弾の模型、実物の破片なども展示され、同会メンバーの説明に来場者は聞き入った。

 会場を訪れた女性は「中原にもこういう時代があったことを知ることができた。資料を子どもに見せたい」と感想を語った。中島会長は「昭和20年がどういう年だったか。中原区も空襲を受けて終戦を迎えた。あの頃、国民が受けた苦しみがあって80年が経つ。その原点を振り返り、今ある生活、平和を大切にしてほしい」と話した。
図鑑を手にする書店販売員=北野書店

人体の驚き、数字で 北野書店が図鑑出版

 「骨の数は約200」「一生の呼吸数は6〜7億回」「血管の長さは地球2周以上」など、人体にまつわるものを数字で表した『からだのびっくり!数の図鑑』が北野書店(幸区)から出版された。

 体の働きのすごさや驚きを感じ、科学を身近に感じてもらうことが目的。2023年に出版した『地球のびっくり!数の図鑑』の続編で川崎市名誉市民で中原区内の東京理科大学栄誉教授・藤嶋昭さんが監修する。

 A5判、95ページで骨と筋肉、消化器、呼吸器、循環器など全7章で構成。各項目には、体にまつわる数字とともに、その働きを解説し、イラストがあしらわれている。北野嘉信社長は「子どもでも読める一冊。人体のすごさを感じてもらえれば」と語る。1800円税別。北野書店(JR鹿島田駅前)などで販売している。

▲伊藤さん宅の庭に建つ米蔵を改装し、古い写真や農具などを展示

井田中ノ町伊藤さん 地域の思い出、後世に残す 自宅の蔵に記録を収集

 昭和30年代の古いモノクロ写真には、未舗装の尻手黒川道路と市バスの井田営業所が写る――。井田中ノ町の伊藤稔さん(80)が自宅の蔵を改装し、写真や古道具などをコレクションしている。

 「昭和の時代に急速に街が発展し、昔の面影がなくなってしまった。もっとこの地域のことを知ってもらうために、思い出の品を残していきたいと考え、収集を始めました」と伊藤さん。コロナ禍に余裕ができた時間を利用し、先祖や家族が残した昔の写真をはじめ、火鉢、きね、穀物の選別やちり取りのように利用した竹で編んだ民具「箕(み)」など、実際に使われ蔵の中に眠っていた道具を整理することにしたという。

 終点だった昭和32年の未舗装の井田バス停、尻手黒川道路から井田病院に上がっていく入口のところに工事用のトロッコのレールが残る昭和30年の風景、市の名所だった井田堤の桜を楽しむ人々の写真などが壁一面に飾られている。「ずいぶん昔のように感じるが、わずか70年ほど前のこと。誰かが残していかなければ、このままでは忘れられてしまうという危機感を感じている」。蔵の中には、まだまだたくさんの「昭和のお宝」が眠る。

 コレクションは一般に公開はしていないが、残していくことで後世に伝えていきたいと伊藤さんは願う。

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あいさつする長加部理事長

あやめ会 「家族会の役割大きく」 通常総会で決意述べる

 NPO法人川崎市精神保健福祉家族会連合会あやめ会(長加部賢一理事長)の通常総会が5月13日、エポックなかはらで行われた。

 1部の式典には来賓や関係者ら52人が参加。長加部理事長は「精神疾患はいつ誰がなってもおかしくないもの。低年齢化や複雑化、多様化が進み、家族会の役割は大きくなっている。当事者を抱える家族を支えられるよう全力を尽くしたい」とあいさつした。

 2部の議事報告の後に行われた記念講演には、NPO法人ホッとスペース中原の福正大輔氏が登壇。約100人の出席者を前に「経験専門家と専門職の私から、いま振り返り家族に伝えたいこと」をテーマに話した。

写真の説明をする小野さん

新丸子小野さん 地元の歴史、写真と語る 昭和知るため来訪者多数

 「みんな、店に昔のことを聞きに来るんだよ」。そう話すのは、昭和10年から新丸子のイダイモールに店を構えるバーバーショップ小野の小野基一さんだ。

 小野さんの店には、創業当時や戦前の商店街、戦中、戦後の街中の写真などが多数保存されている。どれも先代である父親が趣味で撮ったもの。「店に暗室があってね。よくそこで父が現像していました」。紙焼きのモノクロ写真の数々を見ながら「これは店ができたばかりの頃。これはその当時の航空写真。周りに何もないでしょう。日医大があるのはわかるよね」と一枚一枚丁寧に解説してくれる。

 小野さんは昭和20年4月1日生まれ。同15日には親に連れられて実家に帰ってきたと思った矢先、川崎大空襲に見舞われた。多摩川河川敷に避難し、翌朝帰ってきたら何も残ってなかったという。焼け野原になった新丸子周辺、戦後の丸子多摩川花火大会など、写真を振り返りながら「子どものころ、多摩川でよく遊んでいて、それが楽しかった」と懐かしむ。

 小杉周辺で進む再開発。高層マンションが建ち並ぶようになり、街を取り巻く状況も一変。昭和から続く店も減ってきている。「仲間も少なくなり寂しいけど、変わっていくのは仕方がない。だから皆さんが昔を知りたいと訪ねてくるので写真を置いているんです」と笑顔で話す。昭和と共に歩んできた商人は、時代の語り部でもある。

万博テストランの様子=ちとせグループ提供

ちとせ研究所 万博で「藻」の技術披露 日本館ファームエリア監修

 現在開催中の大阪・関西万博で、藻類などの研究開発を行う(株)ちとせ研究所(本社・宮前区野川本町)が、日本館ファームエリアの技術監修を行っている。メイン展示に協力するほか、連携企業と共に藻類による循環型社会の未来像を描いた展示も公開している。

 前身のネオ・モルガン研究所は2002年に設立。08年に「千年(ちとせ)」の交差点近くに本社を移し、「千年先まで続く豊かな世界の実現に貢献」すべく社名を「ちとせ」とした。グループメンバーは約400人。約15年前から藻類の可能性に着目し、国内外複数の拠点で研究開発を展開。20年には国の採択を受け、マレーシアで世界最大級(5ha)の藻類生産の実証実験を行い、現在は100haの新施設建設に取り組む。

現地で培養

 同社はこうした実績が評価され、万博で技術監修を担うことになった。日本館は「循環」がテーマ。3つのエリアのうち、ファームエリアは「藻類」が主役だ。メイン展示では、チューブの中に本物を入れて「いのちみなぎる藻のカーテン」を表現した。藻類のリアリティーにこだわり、現地でも光エネルギーを効率的に利用し、少量の水で育てられる独自装置「フォトバイオリアクター」を用いて培養。現地責任者の松崎巧実さんは「準備を始めた3月は寒暖差が激しかったので、藻類の培養に苦労した。展示に合わせて藻類の種類を変えている」と話す。期間中は、社員3人体制で運用に携わるという。

 また、ファクトリーエリアでは、ちとせグループが主導し、他企業などと協働して藻類産業を構築するプロジェクト「MATSURI」の展示も実施している。藻類は光合成を通じて太陽エネルギーを効率的に蓄え、多様な有機物を生み出すという。展示では、燃料や食品、化粧品などさまざまな素材への応用のヒントを示している。

 広報担当者は「『藻類の可能性が爆発的に広まったのは万博からだった』と語られる日が待ち遠しい」と期待を寄せている。

いのちの電話 収益を活動費に 6月1日 チャリティー寄席

 社会福祉法人川崎いのちの電話主催のチャリティー寄席「柳家三三独演会」が6月1日(日)、エポックなかはら(川崎市総合福祉センター)で開催される。午後1時30分開演(開場0時30分)。

 三三さんのほか、鈴々舎美馬さん、柳家ひろ馬さん、桂小すみさん(俗曲)、森本規子さん(三味線)が出演する。チケットは郵便振込、チケットぴあ(Pコード530693)で販売中。木戸銭は、3500円(当日4000円)で全席自由となる。

 自殺予防の電話相談を担う同法人は、365日24時間休みなく悩める相談者からの電話を受け続けている。イベントの収益は活動にあてられる。

 問い合わせは、同事務局【電話】044・722・7121(平日午前10時から午後5時まで)。

DV問題の専門家に聞く 「警察以外」も環境整備を

 川崎区で起きた女性遺棄事件では、被害女性が川崎臨港署(川崎区)にたびたび相談していたことが分かっているが、ストーカーやDV問題の専門家は、「警察以外」の相談先の重要性を指摘する。市内の相談・支援体制は万全だろうか。

適切な相談先に

 DV被害者などを支援する民間団体の全国組織、NPO法人「全国女性シェルターネット」(本部・東京都)の共同代表・北仲千里さんは、今回の事件の教訓として、「ストーカー規制法の範囲で動く警察の対応能力にも限りがある。被害当事者が適切な相談先につながれる環境整備の重要性を、改めて感じた」と語る。

 「配偶者暴力防止法(DV防止法)」は、配偶者や同棲しているパートナーからの暴力に関する相談や保護などの体制を整備することで、被害者の安全確保を目指している。

 今回の事件は捜査中のため不明な点が多いが、北仲さんの経験上、交際相手を「犯罪者」にするための刑事手続きを自己決定できる当事者は、「決して多くない」という。そのため相談先を警察に限定せず、DV問題を専門とする支援者から客観的な助言を得たり、一時保護施設への避難を勧められたりすることで、「命を守る選択肢がぐっと広がる」と北仲さんは語る。

民間の対応能力

 川崎市では電話相談窓口「川崎市DV相談支援センター」で、配偶者や同棲中のパートナーからの暴力行為に関する相談を受け付けている。相談者が希望する場合、神奈川県と連携のうえ女性相談支援センターや民間施設での一時保護も可能だが、保護中は安全確保のため携帯電話が利用できず職場にも行けなくなるなど制限が多く、一時保護に至らないケースも多いという。実際、2023年度は878件の相談があり、一時保護の件数は32件だった。

 一方で、北仲さんは「神奈川特有の課題」も指摘する。県全体で「DV問題に関する民間の対応能力が弱まりつつある」というのだ。

 DV被害の支援現場では、緊急性が高いと判断される場合に被害者のもとに駆け付け、そのまま保護する場面もあり、多くの都道府県で民間団体も対応している。ところが相談から保護判断までの一連の対応を行政に一本化した「神奈川方式」の導入以後、民間が対応する機会が減少した。「神奈川では、警察の担当窓口すら知らない団体も少なくない」と北仲さん。「DV被害で最悪の事態を防ぐためには、官民の分け隔てなく、迅速かつ柔軟に対応できる支援者育成が必要だと思う」と話している。

(上)白米が並ぶ小島米店。中央が小島さん(下)小島米店のカラの玄米容器

止まらないコメ価格高騰 市内の消費者を直撃 米穀店主「問題は夏」

 コメ価格の高騰が止まらない。コメの調達に奔走する米穀店や、米を探して複数のスーパーを「はしご」する消費者もいる。市内の影響を取材した。

 5月16日の朝、小島米店(多摩区)の店頭には5kg入りの白米5種類がびっしり並んでいた。数日前まで数袋だったが、卸売業者から2日前に入荷し、前日夕方に並べたばかりという。

 同店では創業時からこだわりの玄米をその場で精米して販売してきたが、コメ価格高騰の影響で玄米が手に入りにくいため、卸売業者から白米を仕入れ始めた。平時なら複数の銘柄を取り揃えているという玄米の容器は、カラのものもある。

 代表取締役の小島晃さん(71)は、「こんなことは初めてだが、お客さんも困り果てている。『スーパーを何軒回ってもコメがない』と、初めてうちに来る人もいる」。実際、取材中も続々と来客があった。

 女性の常連客は白米が並ぶ棚を見るなり「いっぱいある!」と声を上げ、5kgを一袋買い求めた。さらに「来週分を1袋、キープで」。2人の娘が食欲旺盛のため、月に2回は同店でコメを購入するといい、「見通しが立つことはありがたい」と話していた。

 各地の生産者からもコメを仕入れている小島さんは「そもそも国の生産調整の失敗だ」と憤る。「生産量が増えなくては解決しない。問題はコメが切れる夏。去年はパニックだった」

増える善意の支援

 市立小中学校の給食については、コメを含む物価高騰の傾向を見越して2025年度から価格改定したため、市の担当者は「今のところ問題ない」と説明する。

 市内の子ども食堂等約75カ所が参加するNPO法人「かわさきこども食堂ネットワーク」の佐藤由加里理事長は、「物価高騰の報道があると善意の支援も増える傾向がある。参加団体から『寄付があり助かった』という声も聞かれ、ありがたい」。同ネットワークでは昨年度に寄付されたコメ計1・4tを、公平に配布してきた。「今後もネットワークに届く寄付は、寄付者の意向を確認しながら公平に配布していく」と話している。

川崎市役所

治療後の生活支援 川崎市 アピアランスケア助成 がん以外の疾病も

 川崎市は6月から、がんなど病気の治療の過程で生じた外見の変化に対する「アピアランスケア」への助成金交付を開始する。がん以外の病気にも適用する。

 アピアランス(外見)ケアは、抗がん剤治療の副作用でおきる脱毛や、乳がんの手術による乳房の切除など、がん治療等に伴う外見の変化に対する医療者のケアとして、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)の外見関連患者支援チーム(現・アピアランス支援センター)が取り組み始めた患者サポート。

 ウィッグや胸部補整具のほか、化粧品など日用品での生活支援、皮膚科や形成外科との連携など、各地で様々な支援が広がっている。

 6月から市が始める助成の対象は、がん治療中またはがん治療を経験した人か、健康保険の保険給付対象となる傷病や先天的な疾患の治療をした人で、いずれも申請時点で川崎市に住民登録があり、治療による外見の変化を補う装具類を購入、またはレンタルした人。今年4月1日以降に購入またはレンタルした【1】ウィッグやウィッグ着用時のネット、【2】胸部の補整下着やエピテーゼ(人工乳房)などに対し、3万円を上限に助成する。

 申請者が18歳以上の場合は【1】【2】について各1回ずつ助成するが、18歳未満の場合は【1】【2】とも18歳に達するまで年度ごとに助成を受けられる。がん以外の傷病や疾患の場合、アピアランスケアの必要性を証明する医師の「意見書」が申請時に必要となる。

 神奈川県の概算では、市内には約9千人のがん患者がいるとみられる。市の担当者は「がんは治る病気になりつつあり、回復して社会生活に戻る方々が増えている。先行自治体の動向も踏まえて導入した」としている。

 問い合わせは市地域包括ケア推進室専門支援担当【電話】044・200・3801。

niko and...とのコラボグッズのメインビジュアル

GO!GO!!フロンターレ

niko and...(ニコ アンド)とコラボグッズ販売

 サッカーJ1・川崎フロンターレは、ファッションからインテリアまで幅広く扱うniko and...と、コラボグッズを販売している。

 同グッズはniko and...のデザイナーが実際にフロンターレの試合を観戦し、サポーターの熱気やスタジアムの空気感から着想を得て、デザインを手がけたもの。試合の興奮や一体感を感じられるグッズがそろった。

 Tシャツには、表にさりげなくクラブロゴを配置し、袖に同クラブが掲げる「12の価値観(12VALUES)」をプリント。日常でもスタジアムでも着られるデザインだ。カラーはブラックとオフホワイトの2色、サイズはS〜Lまでを用意している。

 ほかにもトートバッグやタオルマフラー、キーホルダーなど全9種。オフィシャルショップ「アズーロ・ネロ」や同ウェブショップ、U等々力のスタジアム売店で購入可能。詳細・問い合わせは同ショップ【電話】044・767・6111。

画像はいずれも川崎フロンターレ