平塚・大磯・二宮・中井版【11月21日(金)号】
児童が植樹する様子

谷戸川渓谷をきれいにする会 植樹で「山再生」へ 国府小児童らと実施

 不法投棄や倒竹により汚染された谷戸川の清掃などを続けてきた「谷戸川渓谷をきれいにする会」が11月7日、国府小学校5年生の児童と共に植樹活動を行った。同会の南雲朋美さんは、「8年活動を続けてきて、今ではごみが捨てられることはほとんどない。今後は新しいフェーズとして、山を元気にする活動にシフトしていきたい」と話す。

 谷戸川渓谷をきれいにする会は、2016年11月に発足。大磯の生沢駐在所から、自動車1台がやっと通れる山間道を黒岩方面に進み、人家が途切れた先にある沢の周辺を活動場所としている。当初は自動車のドアやタイヤ、小型バイクなどの不法投棄物が散乱し、朽木や倒竹が積み重なり沢床に降りることもままならなかったが、清掃を続けることで澄んだ水の流れを間近で楽しめるようになった。

 今回の植樹体験は3回に分けて実施。同会は谷戸川の気候風土に応じて育つ植物「潜在自然植生」を調査し、ケヤキやイロハモミジ、スダジイ、シロダモなどの広葉樹を植えた。苗は進和学園から寄贈されたもので、30〜50年で40メートルほどに育つという。

 児童らは当日、乱立する竹の切り出しを行った後、苗木の植樹を体験。南雲さんは「植樹すると、自分が植えた木がどのくらい育ったか気になるもの。地元の子どもたちが、自分たちが暮らす町の身近な自然に目を向けるきっかけになればうれしい」と話していた。

 谷戸川渓谷をきれいにする会は月2回ほど活動中。詳細は同会HP。

平塚警察署管内 特殊詐欺被害3億円超 オートバイ、自転車盗も増加

 平塚署管内の刑法犯の認知件数が増加している。今年1月から11月9日までに認知した特殊詐欺の被害総額が3億円を超え、すでに昨年1年間の総額を超過していることが同署への取材で分かった。オートバイ盗、自転車盗も増加傾向にあり、同署は「被害防止の対策を」と呼び掛けている。※数値は暫定値

多くは「オレオレ型」

 11月9日時点までの被害総額は約3億200万円。被害件数は46件で、前年同期比18件増となっている。同署の職員は「県下でもワースト10位内が近い状況になっている」と頭を抱える。

 同署によると、手口の多くは「オレオレ型」が占めているという。詳しい手口は、警察官などをかたる人物から電話で「口座が犯罪に使われ、捜査対象になっている」と言われ、LINEへ誘導。LINE上のテレビ通話で偽の制服を着用した人物が、偽物の警察手帳や逮捕状を見せて信じ込ませ、言葉巧みに口座に振り込ませるという。

 同署は「海外からの電話(+から始まる国際電話番号)は詐欺だと警戒を」と呼び掛け、「警察は業務でLINEを使うことは無いので、『LINEに誘導してきたら詐欺』と思い出して。困ったら警察署へ相談を」と訴えた。

 特殊詐欺分類外のSNS型投資詐欺、ロマンス詐欺も増加傾向で、昨年は2件だったが今年は11月9日までで8件。被害総額は約1億5千万円。

前年同期比増の盗難数

 同署管内では、自転車盗は518件(前年同期比91件増)、オートバイ盗は119件(同37件増)。自転車盗、オートバイ盗ともに「昨年の年間被害件数をすでに超過している」という。

 オートバイ盗の盗難場所は駐輪場、路上、商業施設など。盗難後に解体され部品として売買されることも多いという。

 自転車は平塚駅前の駐輪場や商業施設のほか、自宅敷地内も盗難場所に。同署は「盗難自転車は無施錠が7〜8割といわれるので、対策はとにかく鍵をかけること」と念を押した。

湘南工芸家協会の会長を務める 芝山 明子さん 平塚市出身 54歳

工芸で会に恩返し

 ○…陶器や漆、硝子、籐などの工芸美術を集めた展示会が50回の節目を迎える。44年間会長を務めた亡き父の功績を背負い、会長就任2年目。「父から受け継ぐものが大きすぎて一度は断ろうと思った。それでも父の功績を教えてくれて、慕ってくれた人たちのために頑張ろうと思った。恩返しをできたら」と、力強い眼差しを向ける。

 ○…平塚で生まれ育った。大学では「過去の文化や作品を掘り下げることが自分に向いている」と学芸員を志し学んだ。その経験を生かし、横浜そごう美術館に勤務。周囲の勧めもあり、38歳の時に陶芸家である父に弟子入りし、本格的に制作活動を開始した。「なかなか褒めない父だった」というが、思い切って自分の個性を出した作品に挑戦すると「いいな」とぽつり。褒めてくれた瞬間は、今でも鮮明に覚えているという。2024年には日展にも入選を果たし、「人生最大の喜び」と顔をほころばせる。

 ○…みなとみらいまで見えるというほど見晴らしが良く、豊かな緑に囲まれた実家の庭で摘んだ花を、自作や父の陶芸作品に生けるのが趣味。「土を触っていると心が安らぐ」と、自然の中で穏やかな生活を送る。陶芸を続けられるのは「常に理解し、支えてくれる家族のおかげ」と感謝を口にする。

 ○…﹁今後は展示会を発表の場としてだけでなく、作品に触れたり、体験できるようにしたい。美術をより身近に感じられるよう、地域に文化を還元できれば﹂と、活動の幅を広げていく。長年にわたり同会を支えてくれた会員への感謝の思いも熱く、「50周年という大きな節目は、これまで尽力してくれた会員の皆様のおかげ。展示会が感謝を伝える場にもなれたら嬉しい」と意欲を示した。
クリスマスリースのイメージ

邸園の恵でリース作り 参加者を募集

 明治記念大磯邸園(大磯町東小磯295ほか)で11月30日(日)、邸園内の松ぼっくりを使った「クリスマスリースづくり教室」が旧大隈邸の大広間で行われる。午後1時30分〜2時30分。定員先着10人で要事前申込。参加無料。

 また、11月29日(土)〜12月7日(日)には旧大隈邸内で、夏休みに子どもを対象に実施したうちわづくりの作品をポスターにして展示している。

 申し込み、問い合わせは明治記念大磯邸園【電話】0463・61・0101。
書道パフォーマンス

平塚の重機 一堂に会す 建設フェスに42社

 初開催となる「湘南ひらつか建設フェスタ2025」が11月15日、ジ アウトレット湘南平塚で行われた。主催は(一社)平塚建設業協会。

 地域の建設業の役割を広く理解してもらうとともに、次世代を担う若者や子どもたちに建設業の魅力を発信することを目的に、建設機械の乗車体験や展示、作業体験などが実施された。

 当日は、同会の会員企業42社から80人以上の会員がイベントスタッフとして参加。重機オペレーターのKaoriさんは、ユンボのバケットに取り付けた筆で、依頼された名前を数分で書き上げる書道パフォーマンスを行った。

 三浦市から8歳の娘と6歳の息子とイベントに訪れていた丸山瞳さんは「横須賀で同じようなイベントがあって楽しかったので、買い物のついでに立ち寄った」と楽しんでいた。

 同施設の淺原和仁ゼネラルマネージャーは「建設業の方にこの場所を選んでもらえて光栄」と喜び、同会の浅沼平会長は「多くの人が来てくれて驚いた。また開催したい」と話した。
金田盆踊り愛好会のステージ

中央公民館フェス 43回の歴史に幕 文化活動の拠点として貢献

 長年、平塚市民の文化活動の拠点であった平塚市中央公民館。来年10月1日から休館することに伴い11月8日と9日、同所では最後となる43回目の「公民館フェスティバル」が行われた。

 同フェスは、市内の26公民館で活動する団体が、日頃の練習の成果を発表する場として活用されてきた。地区単位の「公民館まつり」と異なり、市内全域から団体が集まるのが特徴だ。今年は17団体が作品展示、117組1359人が芸能発表で参加した。

 第1回からマジックを披露してきた「平塚奇術クラブ」の原みなこ会長(82)は、同フェスでの最後のステージを前に「今は、発表の場を求めて場所を探しているところ」と胸の内を語る。

 同館は、市民の芸術文化振興と交流の場として1982年に開館。2012年度の耐震診断では、耐震基準に満たなかった。22年度の劣化度調査では、バリアフリーや老朽化を含め「改修費用に50億円以上必要」との結果になった。

 これを受け、市は「施設全体が老朽化しており、耐震化対策を施していない現施設では、市民の安全性を確保することができない」と判断し、休館を決めた。休館期間は未定で、「今後のあり方を検討していく」としている。

 同館に登録する364団体(11月17日時点)のため、来年4月から対象区域の要件を満たさない団体でも、いずれかの公民館を利用できるよう、運用が一部変更されるという。
講師を務める高岡里衣氏=提供写真

中井町人権講演会 ヤングケアラーに寄り添う

 人権講演会「ヤングケアラーが抱える葛藤〜『ありのまま』に寄り添うために〜」が12月6日(土)、中井町農村環境改善センター(比奈窪56)で開催される。中井町と中井町教育委員会主催。午後1時30分(開場1時15分)〜3時。入場無料。

 ヤングケアラーとは家事や家族の介護などを日常的に行っている子どもや若者のこと。講演会では元ヤングケアラーの高岡里衣氏が自身の経験をもとに講演を行う。

 申込不要。(問)町教育委員会生涯学習課【電話】0465・81・3907

収穫祭できらりと交流 相州平塚七夕太鼓も披露

 金目の自然・文化・歴史・農産業の魅力を発信するイベント「第17回金目収穫祭」が11月3日に金目親水公園で開かれ、約800人が来場し賑わいを見せた。

 今年は初めて、子ども自立生活支援センター「きらり」の子どもたち8人が、平塚北ロータリークラブ(山田裕会長)のメンバーと共に子どもスタッフとして参加。同クラブのブースを手伝ったほか、揃いの法被を着て相州平塚七夕太鼓を披露した=写真。山田会長は「七夕太鼓が上手で驚いた。いきいきとした子どもたちの表情が印象的だった」と感想を話した。

 主催の金目エコミュージアム・米村康信会長は「きらりの子どもたちは金目地区の一員。新しい取り組みでしたが、交流できてよかった」と意義を感じていた。
過去の展示作品=提供写真

工芸作品50点ずらり 市民プラザで展示会

 湘南工芸家協会(芝山明子会長=人物風土記で紹介)の第50回記念公募展が11月21日(金)から25日(火)まで、ひらつか市民プラザで開催される。午前10時から午後5時(最終日は3時まで)。

 平塚市内外の約30人で構成される同会は1975年に発足し、毎年展示会を開催し、今年50周年を迎えた。

 記念回では陶器や漆、七宝、鎌倉彫、バティック、硝子、籐、染織などの会員作品と公募作品が約50点並ぶ。

 25日午後1時30分からは入賞者の表彰式が行われ、午後2時からは入賞作品の講評や制作者の話が聞けるギャラリートークが開催される。神奈川県、平塚市、平塚市教育委員会後援。

 芝山さんは「50年続いた会です、これからも湘南に新しい芸術の風を吹かせて参りますので、是非お気軽にお運びください」と呼びかけている。

(問)同会事務局【電話】0467・46・1132
感謝状を持つ福井さん

タクシー運転手詐欺防ぐ 二宮町在住 福井さん

 二宮町在住の福井正惠さん(65)が9月15日、高齢男性に対する特殊詐欺を未然に防いだ。

 神奈中タクシー株式会社二宮営業所で働く福井さんは、中井町久所で慌てた様子の男性客を乗せた。「二宮の横浜銀行窓口へ行きたい」と告げられたが、祝日で銀行窓口は休業していることを指摘。「午後3時までに200万から300万円を引き出したい」や「息子は会議中で動けないため、他の人がお金を受け取りに来る」と言う男性の話を、福井さんは不審に思った。

 福井さんは男性の電話を借り、男性の娘を通じて息子に連絡すると「(金銭の工面といった)依頼をしていない」と返答があった。

 詐欺であることを確信した福井さんは、男性を説得。最寄りの駐在所へ向かい、警察官に事情を説明して詐欺を防いだ。

 福井さんは11月13日、同営業所で松田警察署から感謝状が贈られた。「男性が完全に信じていて驚いたけど、防ぐことができて良かった」と安堵の表情を見せた。

 今年二宮町に引っ越してきたばかりの福井さん。詐欺の現場に立ち会ったことは初めてだという。「今後もお客様の顔をしっかりと見て、様子が変だったら声をかけていきたい」と話した。
前回の会場の様子

サンサンマルシェ ジ アウトレットに40店 24日 菓子や雑貨など

 青空マーケット「SunSunマルシェ」が11月24日(月)午前10時〜午後3時、ジ アウトレット湘南平塚で開催される。

 菓子や地元作家の手作り雑貨、アクセサリー、観葉植物、ペットグッズなどを販売するブースをはじめ、キッチンカーなどが40店以上並ぶ。

 毎月第2日曜日に湘南海岸公園で開かれているイベントが出張開催。出店者一覧は、同マルシェHPに掲載されている。
<PR>
【LINE読者限定プレゼント】
【LINE読者限定プレゼント】
毎月15名様に抽選で『Amazonギフト券1,000円分』をプレゼント!ギフト券以外のプレゼントもあるかも!是非チェックしてみてください。 (続きを読む)

二宮の魅力を観て歩く 11月22日 吾妻山や川勾神社など

 二宮町の魅力スポットを巡る観光ウォーキングイベント「にのみや アート&さんぽ道」が、11月22日(土)に開催される。雨天時は翌23日(日)に延期。(一社)湘南にのみや観光協会と産業能率大学情報マネジメント学部 中川ゼミ主催。

 イベントは午前10時二宮駅北口に集合して吾妻山に登り、山頂から眺める相模湾、富士山、丹沢山系の絶景を楽しむ。また世界で活躍するアーティスト・ミヤザキケンスケ氏の作品をはじめ、街中に点在する壁画アートや浅間神社、川勾神社などの神社仏閣を巡る。

 さらに「HAL BAL」や「生竜」、「ブーランジェリーヤマシタ」など地元で評判の人気レストランの味を堪能できるグルメ体験も用意されている。

 参加者には「特製御朱印アート」がプレゼントされる。参加費はランチ代込みで1人1500円。先着50人。参加希望者は湘南二宮町観光ナビのHP内の専用応募フォームより申し込む。

 問い合わせは同協会【電話】0463・73・1208。

大磯の「とれたて」ずらり 11月22日 JA湘南大磯支店でふれあい農産物まつり

 大磯の大玉柿やみかん、手造りこんにゃくなどが販売される「2025大磯ふれあい農産物まつり〜育てよう 地域と農業の共生〜」が11月22日(土)、JA湘南大磯支店で開催される。午前10時〜正午。小雨決行。先着100人にはプレゼントあり。

 農産物品評会の一般公開(午前8時30分〜、磯っ子直売所)も行われる。午前10時30分からは品評会出品物の即売会も予定。

 問い合わせは大磯ふれあい農産物まつり実行委員会事務局/JA湘南大磯支店【電話】0463・71・2511または大磯町産業観光課【電話】0463・61・4100。

チケットプレゼント クリスマス室内楽を堪能 12月6日 ひらしんホール

 ひらしん平塚文化芸術ホールで12月6日(土)、音楽アンバサダーの加藤昌則さんが誘う「小粋な音楽人へ室内楽」が開催される。午後2時30分開場、3時開演。この公演チケットを本紙読者2組4人にプレゼント。

 クリスマスの定番曲「くるみ割り人形」や「動物の謝肉祭 第13曲『白鳥』」など、本格仕様の室内楽が楽しめるクリスマスコンサートとなっている。ピアノ・お話を務める加藤さんをはじめ、バイオリン・川田知子さん、チェロ・佐藤晴真さん、ビオラ・瀧本麻衣子さんのほか、オーディションで選ばれた若手演奏家も出演する。

 チケット希望者はメールの件名を「小粋な音楽人へチケットプレゼント」とし氏名、〒住所、年齢、【電話】を明記し【メール】hiratsuka@townnews.jpへ。11月27日(木)締切。(問)同ホール【電話】0463・79・9907

写真でたどる中村哲医師の功績 11月29日・30日 大磯駅前のギャラリーえんで

 2019年12月、アフガニスタンジャララバード市で活動現場に向かう途中現地スタッフと共に凶弾に倒れた医師、故・中村哲さん(享年73歳)の功績をたどる写真展が11月29日(土)と30日(日)に行われる。時間は 29日が午後1時から5時、30日が午前 10時から午後4時。会場は大磯駅前の湘南ギャラリーえん。入場は無料。さざれ石学生ボランティアの主催、ペシャワール会の協力。

 中村さんは1984年にパキスタンのペシャワールに医師として赴任し、ハンセン病診療やアフガニスタン難民医療に従事した。

 2000年にアフガニスタンを襲った大干ばつをきっかけに、現地の人々の健康と産業を守るため、医療活動だけでなく水源確保に奔走。約1600本の飲料用井戸と 13本の灌漑用井戸を掘削し、38カ所の伝統的な地下水路の復旧、用水路の建設に尽力した。この活動により、砂漠化した農地を復活させた。

 問い合わせは同ギャラリー【電話】0463・62・1888。
撮影:市原利夫さん

フォト四季が作品展 11月18日〜24日平塚市美術館で

 市内を中心に活動している写真クラブ「フォト四季」が、平塚市美術館市民アートギャラリーで11月18日(火)〜24日(月)、「2025フォト四季写真展」を開催する。午前9時30分〜午後4時50分(初日は午後1時から、最終日は午後4時まで)。 同クラブ会員の作品約60点が展示される。

 問い合わせは同クラブ加藤清信さん【携帯電話】090・6659・8057。

【寄稿】心を一つに! みんなでつなぐ元町の伝統 二宮町町制施行90周年記念の神輿パレードで「元町・富士見が丘」に密着 タウンニュース市民ライター「相模国神社祭礼・添田悟郎」

 現在の二宮町は、江戸時代に「一色村」・「中里村」・「二ノ宮村」・「山西村」・「川勾村」の5つの村に分かれていたものが、明治22年(1889年)4月に合併して「吾妻村」となり、昭和10年(1935年)11月3日に「二宮町」と改められたものである。二宮町では町制が施行されてから10年ごとに記念行事が行われ、今年はちょうど90周年にあたる。私は7月19日と20日に行われた元町(富士見が丘一丁目・二丁目・三丁目と松根を含む)に鎮座する八坂神社の祭礼を取材させていただいた関係で、11月3日の二宮町町制施行90周年記念で行われた神輿パレードにおいて、元町と富士見が丘に密着取材を依頼した。

「相模国神社祭礼」は神奈川県内(旧相模国)の神社の祭礼を中心に紹介するウェブサイトで、神社祭礼の活性化を主な目的とし、文献調査と実際の祭礼の取材を行っている。

復活! 明治5年(1872年)再興の周助神輿

 本来、元町では町制施行記念の神輿パレードに八坂神社神輿を出していたが、90周年では山西から譲り受けた素木神輿(塗りのない神輿)を担ぐことになった。この神輿は山西の宮大工であった周助(しゅうすけ)によって建造され、昭和60年(1985年)頃まで山西の八坂神社の祭礼で担がれていたもので、今回のパレードのために修復された。今までは鳳凰(大鳥)にある刻印から明治4年(1871年)に建造されたと考えられていたが、今回の修復で明治5年(1872年)に杉崎周助政康によって再興された墨書が発見され、再興の意味が既存の神輿を修復したのか、あるいは新規で建造し直したものかは定かでないが、いずれにしても歴史的に価値のある神輿である。

 山西ではこの周助神輿の老朽化に伴い新しく神輿を建造したことから、周助神輿はしばらくの間眠っていたが、山西からこの神輿を廃棄するという話が出たことから、「元町神輿保存会(元神会)」が同会の神輿として譲り受けた。周助神輿は傷みが激しかったため、茅ヶ崎市にある神輿提灯工房の「神輿康」で、元の状態をできるだけ残す方向で必要最小限の修復を行い、今回の神輿パレードで復活する運びとなった。

 パレードに参加する神輿は、中里の明星神社神輿、通り三町の八坂神社神輿、山西の八坂神社神輿、飛龍会神輿(川勾神社)を加えた計5基で、他の4基の神輿が塗りやきらびやかな飾り金物で鮮やかに化粧されている中、歴史の重みをまとった重厚感のある元町の周助神輿は、十分すぎるほどの存在感で神輿パレードに花を添えたのである。

我らの祭りを! 元町の八坂神社祭礼

 元町には山西から譲り受けた元神会所有の周助神輿の他に、元町に鎮座する八坂神社の宮神輿であるもう一基の周助神輿を所有しているが、この神輿には壮絶な歴史がある。

 かつての二ノ宮村は現在の通り三町である「上町」・「中町」・「下町」と、今回取材をした「元町(入会/入合)」の四部落で構成され、通り三町の地区内(二宮下向浜86番地)に鎮座していた八坂神社(現在は社地が消滅)の祭礼では、この神社で所有していた1基の神輿を四部落が時間を決めて順番に担いでいた。しかしながら、祭りの日程や巡行経路などを巡って部落間での争いが絶えず、四部落での渡御はとかく紛争に終わり、円満な祭典執行は悩みの種であった。そこで、元町は川勾神社に懇願へ回り、明治3年(1870年)に元町へ新たに八坂神社と、杉崎周助政康の父である政貴によって建造された神輿が祀られ、これにより、元町単独としての祭礼が執り行われるようになったのである。

 これで紛争の問題は解決されたと思われたが、元町と通り三町の祭礼日が同じであったため、以降も紛争が絶えることはなかった。明治40年(1907年)の祭礼では通り三町と元町の神輿が現在の中南信用金庫の辺りで遭遇し、大喧嘩の末に通り三町の神輿が田んぼの中に落とされたという言い伝えも残されている。このような状況から、元町と通り三町の区長や宮世話人が話し合い、明治43年(1910年)に元町の祭礼日をずらすことで、ようやくこの紛争に終止符が打たれたのである。もちろん、現在は通り三町と元町は良好な関係が築かれており、神輿パレードでは双方の神輿が共に二宮駅からラディアンを練り歩く。

 元町に囃子の響きを! 大山囃子の伝承者 守泉長次

 元町には祭り囃子(ばやし)を演奏する団体として「元町北祭囃子保存会(以下、元北)」と「元町南囃子連(以下、元南)」、そして「富士見が丘二丁目祭囃子保存会(以下、富士見二)」の3つの囃子連があり、3団体共に90周年の神輿パレードに参加した。元北は元町の八坂神社の祭礼と同様にトラックの移動屋台で、元南は手押し型の簡易的な移動屋台で参加し、二宮町の他の囃子団体である「中里祭囃子保存会」、「中町囃子保存会」、「釜野太鼓連」、「川勾祭囃子保存会」の4基の屋台と共に神輿行列に加わった。また、富士見二は「梅沢はやし保存会」と共に居囃子(出発・到着地点のみ)での参加となり、神輿パレードでは合計8つの囃子団体が二宮町の伝統芸能を披露した。次に、元町の祭り囃子の歴史について紹介する。

 元北は昭和54年(1979年)に、富士見二は昭和60年(1985年)に発足し、共に中里祭囃子保存会から大山囃子を伝承している。なお、元南の囃子がいつ頃から始まったか記録は無いが、3団体の中では最も歴史が古いと言われ、元北および富士見二とは曲調が若干違うだけで、同じ大山囃子系統に分類される。

 この様に元町の囃子は比較的近年に誕生しているが、この立役者の一人が守泉長次氏である。守泉氏は中里の生まれで、「中里祭囃子」が昭和50年(1975年)に二宮町の重要無形民俗文化財に指定された時の中心的なメンバーであり、二宮町の大山囃子を語る上では欠かせない重要な人物である。この守泉氏の住まいが元町北にあった関係で、元町北祭囃子保存会の初代会長を5年務め、その後は相談役も務めた。守泉氏は中里祭囃子保存会の一員として元北だけでなく、富士見二にも大山囃子を伝承した。また、元町南は途中で笛の伝承が途絶えてしまったため、近年に中里の笛を習っている。

 中里に伝わる祭り囃子は江戸時代の文化文政期(1804年〜1830年)の頃に、現在の平塚市金目から伝承されたという言い伝えがあり、二宮町の大山囃子の源流となる囃子である。守泉氏は地元の二宮町以外にも平塚市の須賀などに大山囃子を伝承し、特に篠笛の名手であったため、笛の伝承にも大きく貢献している。奇しくもこの記事を執筆している伊勢原市民の私は、中里祭囃子が重要無形民俗文化財に登録された年に生まれ、更に今から約30年前に守泉氏から笛を習っており、二宮町は私にとって非常に思い入れの強い地である。残念ながら、守泉氏は平成13年(2001年)に他界しているが、守泉氏が元町に残した祭り囃子は今でも大切に受け継がれ、特に近年の元町の祭り囃子の盛り上がりには目を見張るものがある。

取材を終えて

 今回の取材を通じて、二宮町では各地区に鎮座している神社の祭礼のほか、毎年10月に開催される町内の囃子団体などが集結する「二宮町民俗芸能のつどい」、そして10年毎に開催される神輿パレードなど、地元の伝統行事および伝統芸能の継承に力を注いでいる町であることを改めて感じた。また、元町の八坂神社の祭礼は、先人達の並々ならぬ苦労と努力によって作り上げられてきたものであり、現在では、この史実を知る方は非常に少ないと思われるが、元町地区の皆様の祭礼に対する熱意からは、先人達から受け継がれてきた祭りへの強い思いが伝わって来るのである。

 近年の少子高齢化や祭礼に対する価値観の変化から、祭礼の運営は非常に厳しい状況にあり、元町地区も決して例外ではない。しかしながら、元町では多くの住民の献身的な協力により、現在でも非常に盛大な祭礼を継続しており、特に、富士見が丘二丁目祭囃子保存会と元町北祭囃子保存会においては、この逆境を跳ねのけるかのような発展ぶりが見られ、祭礼の活性化にとって非常にお手本になる取り組みを行っている。

 最後に、二宮町にお住まいで、神輿や祭り囃子、神社や町内会の運営など、興味がある方がいれば是非、地元の関係団体にお声がけを頂き、地域の活性化の為に協力して頂けますと幸いです。きっとどの団体も温かく迎えてくれると思います。

 今後もこの素晴らしい二宮町の伝統行事および伝統芸能が、後世に末永く引き継がれて行くことを祈願致します。

タウンニュース市民ライターとは

 「タウンニュース市民ライター」とは、(株)タウンニュースが認定する、地域の市民ライターです。市民の視点で地域の魅力を再発見し、情報を発信してもらいます。