横須賀・三浦版【2月14日(金)号】
解体工事が進む旧JVCケンウッド久里浜事業所跡地

久里浜に複合型商業施設 26年11月頃、開業へ

 横須賀市神明町にあるJVCケンウッド久里浜事業所跡地の一角(約3・7ha)に進出する大型商業施設について、スーパーマーケット・飲食店・ホームセンターの3棟から成る複合型商業施設の建設が計画されていることがこのほど分かった。昨年8月に同地を取得した不動産開発大手の(株)日本エスコン(東京都港区)が手掛け、2026年11月頃の開業を目指す。

 同地は京急久里浜駅から約1Kmに立地。周辺には、くりはま花の国や家電量販店、住宅地などがある。建築される予定の3棟は鉄骨造の1〜2階建て。延床面積はA棟約5657平方メートル、B棟約404平方メートル、C棟約9506平方メートル。敷地内には屋上・平置き合わせて740台ほどの駐車スペースも設ける予定という。

 同社の関連会社である(株)エスコンプロパティが「tonarie」の名称で大型商業施設を全国で運営しているが、今回の出店形態に関しては協議中。各棟のテナントに関しても検討段階だが、同社担当者は「横須賀らしさのある飲食店の出店を見込んでいる」としている。

都市機能が集約

 2023年にはサッカー・J1リーグ「横浜F・マリノス」の練習拠点が久里浜1丁目に誕生した。地域住民を呼びこむイベントなどが行われ、スポーツによるにぎわいを創出しつつある。京急久里浜駅前の再開発や今年3月には神明町に「市立総合医療センター」の開院を控えるなど、暮らしに身近な公共施設や都市機能の集約化が久里浜地区一帯で進んでいる。

 一方で大型商業施設の誕生に地元商店街からは、まち全体の活性化に理解を示しつつも中心市街地の空洞化などを懸念する声も挙がる。

 同施設は今後、建築確認申請などを済ませた後、今年の11月頃から着工していく見通しだ。

進水式で行われた餅まきの様子(=8日、三崎港)

三崎で11年ぶり進水式 第五君栄丸・宮川さん、志新た

 「マグロのまち」を支える三浦市・三崎港で8日、11年ぶりに進水式が行われた。新造船を建造したのは同市出身の宮川樹さん(33)。独り立ちしてから6年、全国の漁場を渡り歩き、念願だった最新式の船を手にした。漁師の高齢化が進み、担い手が不足する中、「腕1本で稼ぐことができるのが漁師の魅力。若い人をもっと増やして漁業を盛り上げたい」と意気込む。

 8日、三崎港の花暮岸壁で色とりどりの大漁旗で彩られた第五君栄丸がお目見えした。進水式には全国から宮川さんと関わりのある漁師が集まった。進水式の餅まきでは400人以上が集まり、関係者の一人は「こんなに盛大な進水式は数十年ぶりだ」と目を見開く。

 新造船は全長22m、重さ16t。宮城県南三陸町で建造し、進水式に合わせてこの日までに三崎に帰ってきた。6年前、独り立ちの際に購入した中古船は第五君栄丸の"先代"で、心機一転、新たな船出になる。宮川さんは「自分1人でここまで来たとは思わない。協力してくれる人やお世話になった人たちのおかげ」と万感の思いを込める。

 漁師一家で育った4代目。幼少から祖父や父が漁に出かける姿に憧れ、17歳で職業訓練校を卒業後、漁師の道に入った。

 静岡県伊東市でサバ漁船や地元のキンメダイ漁船に乗船して経験を重ね、全国的なマグロブランドで有名な青森県大間町でも腕を磨いた。

 この日、同町から祝いに訪れた第三十五大運丸船主の菊池武一さんは「年が若く、勉強家。マグロを探す感性もピカイチだ。この時代に最先端の船を新造できるのは本人の努力あってこそ」と宮川さんの漁師としての素質に太鼓判を押す。

 漁業が主力産業の一つの三浦でも漁業人口は右肩下がりで高齢化も顕著だ。若手の活躍に地元の期待も大きく、父の元彦さんは「これだけ祝ってもらえるのは幸せなこと」と目を細める。

 ひと昔前に比べれば、若手漁師も増えてきたが、もっと盛り上げていきたいと思いを強くする。新造船ではマグロやカツオ、キンメダイを狙っていく。

 「いずれ初競りのマグロ、『一番マグロ』を獲りたい」。大志を胸に、舵を取る。

2月16日に音楽イベント「YOKOSUKA90sナイト」を主催する 藤川 美帆さん 横須賀市小川町在住 48歳

母親だって好きを追求

 ○…ママたちを元気にして横須賀を盛り上げたい--。子育て世代の母親をメインターゲットにした音楽ライブを本町の横須賀かぼちゃ屋で開く。開演時間を夕方に、子連れでも足を運びやすいよう中学生以下を無料にした。自身もステージに上がり、パフォーマンスを披露することで「何歳になっても、母親になっても自分の好きなことをやっていい。それを伝えられたら」。

 ○…横須賀生まれ横須賀育ち。24歳で結婚し、子育てを経験。そこで感じたある種の”縛り”が活動の原点だ。子連れでも気軽に出かけられる場や施設の少なさ、それに加えて趣味に費やす時間も取れない。ならばと市内に子ども服屋を開店し、英会話教室やイベントも実施。現在は主に女性を対象にしたオンライン起業支援や自己肯定感を高めるセミナー開催などで子育て中の母親の居場所作りや経済力発展に向けたサポートをしている。

 ○…日本各地でこれまで音楽ライブを企画し、アイドル好きが高じて自身も「地下アイドル」として出演する日々を送る。子育て中のうっくつとした気分を抱える母親には、自らのポジティブなパワーを伝播させ、「楽しく生きる一歩を踏み出せるきっかけを与えられたら」と意気込む。

 ○…2023年には現在のパートナーである女性と京都府で結婚式イベントを開催。身体的な性別に関わらず好きなものは好きと言える。盛大にイベントを催すことで性的少数者の存在を世間に可視化し、「自分らしく生きる人が増えてほしい」と願いを込めた。2日後に控えるライブでも「楽しく生きる自分の姿」を見せる、そのスタンスは変わらない。「悩める人に動き出せる力を伝えて、横須賀が盛り上がる契機にしたい」

横須賀港新ふ頭整備 計画検討へ環境調査

 横須賀港の物流機能の再編・強化を図るため、横須賀市が新港地区で検討しているふ頭の整備事業を巡り、県が環境影響予測調査(環境アセスメント)の実施計画書を公開している。1月14日に市が県条例に基づいて提出したもので、市は調査結果を事業実施の可否判断に役立てる。

 計画は横須賀港の新港ふ頭の東側に延長290m、水深12mの岸壁を備えた17・2haの海面を埋め立て、新たな係留施設機能や物流機能を整備するもの。当初2025年度の着工を目指していたが、22年に必要な土砂が不足することが判明し延期していた。

 環境アセスは大気汚染、水質汚濁、騒音など11項目で実施。縦覧は3月3日までで、期間内は意見書を提出できる。詳しくは県ホームページへ。

シニア劇団「よっしゃ‼」 名作喜劇大胆アレンジ 演じるは『夏の夜の夢』

 60歳以上の男女で構成する横須賀シニア劇団「よっしゃ‼」=写真=の公演が2月22日(土)・23日(日)の両日、汐入駅前のヨコスカ・ベイサイド・ポケットで開かれる。

 9回目を数える今回の演目はシェイクスピア作の喜劇『夏の夜の夢』。格調高い芝居と思いきや、作・演出を手掛ける座長の横田和弘さんの手によってドタバタの要素をふんだんに盛り込んだ仕立てに。テーマは「恋愛」だが、和洋の壁も時代設定も軽々と飛び越えた奇想天外な展開に、「こんなシェイクスピア観たことない」の言葉が飛び出しそうだ。

 開演は両日ともに午後1時30分。鑑賞券は一般前売り2000円(2500円)、高校生以下1000円(1500円)※カッコ内は当日料金。申し込みは横須賀芸術劇場1Fチケットセンター窓口/電話予約【電話】046・823・9999

2区・二本木選手(左)からたすきを受け取る3区・濱口主将

渾身のたすきリレー かながわ駅伝 横須賀市5位

 市町村対抗のかながわ駅伝が9日、丹沢湖周回コース(7区間42・236Km)で行われ、横須賀市は2時間13分49秒の5位でゴールした。

 序盤、1区山内孝将選手(東京国際大)が区間8位、トップに26秒に迫る走りでペースを作ると、全日本中学校陸上競技選手権大会に出場経験がある2区二本木真輝選手(公郷中)が昨年に続き3区を走る主将の濱口直人選手(創価大)にたすきリレー。区間5位の力走で順位を4位に押し上げると、4区渡邉有翔選手(東京農業大)、5区村瀬音々羽選手(川崎市立橘高)が後続へつなぎ、初出場の6区村松駿平選手(法政第二高)からアンカーへ。同じく初出場の7区松村泰成選手(三浦学苑高)が力を振り絞り、5位でフィニッシュした。

 目標の3位には届かなかったものの、監督の加藤将さん(市陸上競技協会)は「各選手が力を出し切ってたすきをつないでくれた。大健闘だった」と選手らを称えた。

 大会は横浜市が3大会連続43回目の優勝を飾った。三浦市は出場を辞退した。

横須賀市 下水道約14Km自主点検実施

 横須賀市は5日、市内主要幹線道路に埋設されている下水道管路(口径1500mm以上)約14Kmの緊急点検を実施すると発表した。埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受けての対応で、2月14日まで実施する。

 対象は雨水管を除く国道2路線、県道2路線、市道12路線、計16路線の下水道管。職員が目視で点検し、異常が確認された箇所は下水道管路内でカメラなどを使い、詳細な調査を行う。

 事故を巡っては、国交省から流域下水道管理者である都道府県に緊急点検の実施を通達。市は対象外だったが自主的に点検を決めた。県は緊急点検の結果を県ホームページで公表している。

空間を大胆に使って作品を発表している大谷さん

ヨコスカアートセンター 段ボールの不思議世界

 ヨコスカアートセンター(横須賀市上町)が主催する「ヨコスカアートアワード2024」の受賞作品の展示が始まった。第一弾として「自由表現プラン」でグランプリを獲得した大谷理佳子さんによる「wave」と題したインスタレーション作品が飾られている。2月24日(月)まで。

 自身が手掛けた歌詞を記したガムテープを壁面に張り巡らせ、ファスナーで繋いだ段ボールの造形を"波"に見立てて飾り付けていくもの。オリジナル楽曲も鳴らして独自の世界観を打ち出している。作品は未完であり、公開制作の手法で仕上げていく。

 開館時間は午前10時30分から午後6時30分。観覧無料。問い合わせは同センター【電話】046・876・9272。

横須賀市消防局1階に設置されているAED

「AED」置き場所ご存知? 624カ所設置も認知不足課題

 心停止の人に電気ショックを与えて救命する「AED」(自動体外式除細動器)。一般の人が使えるようになって20年余りが経過したが、台数は全国約70万台と普及が進む一方で使用率は4%台と伸び悩む。心停止時の救命率(生存率)は電気ショックが1分遅れるごとに約10%ずつ低下するといわれ、設置場所や使用方法の周知は命を守るために欠かせない。横須賀・三浦両市の現状はどうか。偶然、救命現場に居合わせた記者が調べた。

 仕事の帰路、車を運転していると前方の路上に倒れている女性の姿が目に飛び込んできた。車を降り、女性へ呼び掛けるも応答はなく、どう対処すればよいのか頭が働かず一瞬立ち尽くした。緊急通報した直後、偶然通りかかった医療従事者が心肺蘇生を行い、女性は一命を取り留めたが、記者はAEDをなかなか発見できず、見つけたのは救急隊到着後だった。

 そもそもAEDとは、心臓のけいれんなどで血流を流す機能を失った心臓に電気ショックを与え正常なリズムに戻す装置のことを指す。総務省消防庁が取りまとめた「令和6年版 救急・救助の現況」によると、2023年に一般市民が居合わせた心原性心肺機能停止の傷病者に心肺蘇生が行われたのは1万6927人(14・8%)で、AEDが使用されたのは1407人(54・2%)だった(カッコ内は1カ月後の生存率)。AEDの使用による一時救命処置の必要性の高さが伺える結果で、横須賀市消防局救急課の伊藤哲也さんは「電気ショックの要否は機械が自動で判断してくれるため、失敗を恐れず使用をためらわないで」と呼び掛ける。

 では、横須賀・三浦でAEDはどこに設置されているのか。一覧できるのが各市の「わが街ガイド」だ。同サイトでは設置場所、使用可能な時間、機器の提供のほか、迅速な応急手当が出来る職員が在籍している「よこすか・みうらAEDステーション」の検索などが可能。2月7日現在、両市では学校や行政センター、商業施設など計624の施設に設置されている。

 またAEDや救急隊到着までに出来ることについて、伊藤さんは「路上などでは、まず自身の安全を確保した上で声を掛け、肩を叩くなどの刺激で反応の有無を確かめる。この時、目や指先だけの微かな動きは『反応なし』と捉えてすぐに119番通報を」と初期対応での心掛けを話す。

 救命のプロが到着するまでの数分間は数十分にも感じるほど長く、いつ遭遇するとも限らない。まずはAED設置場所を漠然とでも頭に入れておくこと、救命講習への参加などから始めることが大切な人の命を救うことにもつながるかもしれない。

測定器を使用した模擬汚染検査の様子

久里浜で原子力防災訓練 ウラン粉末の飛散を想定

 核燃料の製造施設での事故を想定した原子力防災訓練が2月6日、久里浜で行われ、付近の内川町内会、久里浜工業団地部会などから市民約40人、原子力規制庁や横須賀市などが参加した。

 訓練の内容は、内川にある原子力関連施設「グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン(GNF-J)」で火災が発生し、ウラン粉末の一部が飛散するケースを想定。JR久里浜駅沿いの電車公園から応急避難所に見立てた内川町内会で屋内退避を実施した。

 同館到着後は、市職員指導の下、屋内退避時はマスクやハンカチを口で覆う、肌の露出を極力避けるなど手順を確認。サーベイメータ(測定器)を使用した模擬汚染検査も行われた。汚染が確認された際はその箇所に触れないように服を裏返し、袋に密閉する事が重要だと市職員が参加者に説明した。

 内川町内会の小関和雄会長(80)は「避難のイメージがつき、勉強になった。今回の内容を町内住民へ周知をしていきたい」と話した。

 訓練は、同施設で事故発生時に屋内退避指示が出るGNF-Jから半径500m圏内にある6つの町内会の持ち回りで年に一度実施されている。

作品を前にトロフィーを手にする稲葉さん

ヨコスカ調理製菓専門学校 創作料理で成果披露 生徒作品44点を展示

 ヨコスカ調理製菓専門学校(横須賀市汐入町)は2月11日、料理と製菓の作品などを展示する「第47回敷島祭」を開催した。同校生徒によるオリジナル料理製菓作品の展示や、手作りクッキーの販売、調理技術実演のほか、食に関する研究発表などが行われた。

最高賞「お菓子の国」

 オリジナル製菓調理作品で、最高賞の学長賞は稲葉祐真さん(普通科高校コース3年)の作品「夢物語〜Sweet Land〜」が受賞した。幼い頃の「お菓子の国に住みたい」という夢からパティシエを志しているという稲葉さん。中心のケーキを城に見立て、砂糖でかたどったユニコーンなどで周囲をカラフルに彩った。卒業後は海上自衛隊の料理部門に配属される予定で「将来は海外で修業し、栄養士の従姉妹と一緒に店を持てたら」と展望を語った。

 今回出品したのは、調理師上級専科と調理師専科1年生、普通科高校コース3年生。日本料理、西洋料理、中国料理、製菓のジャンルから44作品が展示された。

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上地市長(右から2番目)を表敬訪問した(右から)佐藤、森安、石井選手

全国4強、市長に報告 東海大相模サッカー部3選手

 第103回全国高校サッカー選手権(12月28日〜1月13日)に初出場で4強入りした東海大相模高校サッカー部の3選手が10日、上地克明市長を表敬訪問した。

 佐藤碧(あおい)(3年)=常葉=、森安南翔(みなと)(同)=神明=、石井龍翔(りゅうと)(2年)=浦賀=の3選手(=カッコ内は出身中学)は同大会にスターティングメンバ―として出場。佐藤選手と森安選手は攻守を支えるサイドバック、石井選手は守りの要となるセンターバックとして4強入りを果たしたチームの躍進を支えた。

 この日は、市サッカー協会や中学時代の指導者、保護者らと表敬訪問。トーナメント戦の結果を報告すると、上地市長は「素晴らしい結果。横須賀出身の突き抜けたスターになってほしい」とエールを贈った。

 佐藤選手は「全国4強は今後の自信になる」、森安選手は「大勢がいる緊張感の中でプレーできた」と振り返り、石井選手は「先輩を超えられるようにがんばりたい」と今後の活躍を誓った。

「パティスリー羽田」の製菓を販売する児童ら

夏島小6年が露店市 地元の“推し店”教えます

 夏島小学校の6年生は6日、地元店の魅力を紹介する露店市を追浜駅前で開催した。菓子店や飲食店、美容室、青果店など、追浜銀座通り商店会9事業者の商品の販売や店を紹介するブースを設置。販売や商品説明、販促ポップの制作、売り上げ管理などを児童が担当した。

 取り組みは同校の総合学習の一環。商店街への親近感を育むことで、児童自身が地域の担い手であると自覚することを目指した。昨年11月に各店主へインタビュー、12月と1月には職場体験を実施した。

 追浜本町のレストラン「ブルーバード」の店主・大熊敦さんは「働く大人のリアルを見せたかった」と、料理の味を支える素材へのこだわりや、広告費用など販売にかかるコストについても丁寧に説明。「収益を出すにはどうすればよいか」。児童らは露店市に先駆けて商品の販促チラシを配布したほか、校内放送でも商品の予約を呼びかけ、当日は用意した弁当70個を完売させた。参加した森斗真さんは「実際にモノを売ることで、お金を稼ぐことの大変さが身に染みてわかった」と達成感をあらわにした。

 学習を取りまとめた安井望教諭は「人と人との関係が希薄になりつつある現代に、相手のことを知る喜びを感じ、社会で生き抜く力を身につけてほしい」と学習の意図を話した。

愛用のペニー・ファージングとポーズを取る門脇さん

空き家再生 利活用で価値創造 三浦市三崎町 レトロな建物に一目惚れ サイクリストのオアシス開設

 三浦半島の突端、三崎の下町商店街に昨年1月、24時間利用できる自転車乗り専用のクラブハウス「ヴェロ・スタシオン 三浦」がオープンした。コンセプトは「サイクリストが集うオアシス」。遠方からロードバイクを駆って城ヶ島などを訪れた人が気軽に立ち寄って休憩したり、愛車のメンテナンスをしたりする自由な空間を提供している。

 開設したのは葉山町でビンテージ自転車の専門店「葉山自轉車(じてんしゃ)市場」を営む門脇大作さん。かつてはロードレーサーとして活動していた時期もあり、その手のタイプを扱っていたが、速さや軽さばかりを追い求める世間の風潮に疑問を感じるようになり、「ずっと連れ添える自転車の販売に切り替えた」。同時に街の雰囲気とも融合した店舗づくりを考えるようになり、惹きつけられたのが昭和の時代を真空パックしたようなこの商店街。物件を探しはじめたところ、理想とするレトロな建物に出会った。

 クラブハウスをオープンする1年前まで寿司店だったここは、不動産店から大正〜昭和初期につくられたものだと聞かされており、当時の外観や内装を上手に残しながら、「半分外注、半分DIY」で完成させた。こだわったのは正面の入口。門脇さんの愛車であるペニー・ファージング(前輪と後輪の直径が大きく異なる旧式自転車)を置いたときに様になるよう、古い扉を持ち込んでリメイク。2階の窓柵もアンティークなものを探し出して取り付けた。

 下町商店街はシャッター通りになりつつあるが、「新しい空気を持ち込みたい」と気を吐く門脇さん。昨年末には城ヶ島公園を会場にして、ミニベロと呼ばれる折りたたみ自転車の愛好家を集めたファンイベントを開くなど、多様な自転車の楽しみ方を提案しながら地域活性や観光振興につなげていく方策を探り始めている。

 目下の課題はクラブハウスの収益化。サイクリストに三崎での過ごし方をセットにして発信することで利用者を増やしていく考えだ。

万が一の備え心構え新たに 工事業協会が抱負

 建設業などを営む20社が構成する三浦半島建物改修工事業協会(横須賀市森崎)は6日、若松町のセントラルホテルで新年の例会を開いた。

 同会は岡田成煥(せいかん)会長(富士防)=写真=の発案で2020年6月に発足。これまで横須賀、三浦、逗子、葉山の3市1町と地震や風水害の際に防災拠点となる建物改修応急措置に関する防災協定を締結している。

 この日は会員企業や来賓など約40人が参加。あいさつに立った岡田氏は「発足から5年。我々の職種を生かし、万が一に備えた万全の体制を整えたい」と述べ、災害時の建物補修などの対応を担う協会の意義を強調した。来賓に訪れた上地克明市長は「三浦半島の自治体は運命共同体。災害時の協力体制はありがたい」と謝辞を述べた。

挨拶から学ぶイタリア語講座

 イタリア語を初歩から学ぶ教養講座が、横須賀市西逸見町の生涯学習センターまなびかんで開かれる。挨拶や日常表現を通してイタリア語の音楽的美しさやラテン文化に触れる。4月12日開講、来年2月までの通年展開(約35回/8月休講)。毎週土曜日の午前10時から11時50分。年会費2万円。テキスト(「本気で学ぶイタリア語」2530円)は各自購入。定員30人。申し込みは横須賀でイタリア語を学ぶ会【携帯電話】080・4122・1219(田中さん)

若手経営者「徳の会」米400kgを寄付

 若手経営者らでつくる「横須賀徳の会」が2月6日、横須賀市を通じて市内の児童養護施設と子ども食堂に米400kgの寄付を行った=写真。

 同会は子どもたちの健全育成に寄与することを目的に、森田勝城さんと樋口祐介さんが1月に発足。約40人の会員で慈善ゴルフコンペを開き、35万円の寄付を集めて米を購入した。会員には、幼少期に空腹を我慢して過ごした経験を持つ人もあり「助けが必要な子どもに救いの手を」と行動に移した。今後も支援活動を継続していくという。

栗本鋤雲像(東善寺)

OGURIをあるく 〜小栗上野介をめぐる旅〜第34回 横浜編【1】文・写真 藤野浩章

「ではその補強策、次なる手を考えまする」(第四章)



 栗本瀬兵衛(せへえ)(鋤雲(じょうん))は小栗の5歳年上で、将軍や大名に仕える医師の家に生まれた。全然違う畑だが、幼い頃2人は昌平黌(しょうへいこう)で出会っている。さらに、以前紹介した儒学者、安積艮斎(あさかごんさい)の私塾・見山(けんざん)楼でも共に学んでいたというから、当時先進的な考え方も備わっていたのだろう。しかも「幕府医官の身で外国の文物に興味を持ったのが上司の忌諱(きい)に触れ、箱館(はこだて)奉行所勤務を命ぜられて六年」という記述が物語っているように、何やら小栗とは似たもの同士という雰囲気。それゆえ「忠順(ただまさ)にとっては心を許せる数少ない友」だった。

 さて、箱館に瀬兵衛がいたことは造船所にとって非常に大きかった。当時、メルメ・デ・カションというフランス人に日本語を教え、その代わりに彼から仏語を習っていたのだが、その男は後にフランス公使レオン・ロッシュの通訳官となり、日本へ舞い戻って来た。その縁で、栗本はロッシュとも親しく交際していたのだ。

 この奇跡とも言える繋がりに小栗が加わった時は、まさに重大な決断の直前だった。造船所の技術顧問をオランダに打診したところ、幕府の不安定さを懸念し「今後も我が国へ発注する方が早く合理的な策ではないか」という。オランダは、すでに政権の崩壊を確信しているのだ。たとえ現実的な案であっても、小栗には到底受け入れられるものではなかった。

 冒頭のセリフは、苦境の際の"切り札"とも言える男の顔を思い浮かべてのものだったはずだ。横浜へ向かった彼を、盟友、栗本が待っていた。