多摩区・麻生区版【6月13日(金)号】
北部市場再整備の提案イメージ

川崎市北部市場 再整備に大和ハウスら16社 約604億円で落札

 川崎市は5月30日、入札公告していた「川崎市中央卸売市場北部市場機能更新事業」の落札者を、大和ハウス工業を代表とする企業グループに決定したと発表した。落札価格は約604億6630万円。2037年3月までに市場機能の完成を目指し、設計・建設が進められる。

 1982年に開場した北部市場は、長年にわたり食品流通拠点としての役割を担ってきた。

 しかし、施設の老朽化や社会経済環境の変化に対応するため、市は機能強化の必要性を検討。23年11月に「川崎市中央卸売市場北部市場機能更新に係る基本計画(案)」を策定し、パブリックコメントを経て2024年3月に基本計画を正式に決定した。

 再整備事業は、民間の資金やノウハウを活用するPFI方式を採用。同年9月から総合評価一般競争入札で事業者の募集を開始し、2つのグループが参加していた。

 落札した大和ハウス工業の企業グループには、東急や東急モールズデベロップメント、織戸組、富士通などの企業が名を連ねる。市は今年12月の市議会での議決を経て、本契約を締結する予定。37年3月までを設計・建設期間とし、現在の市場営業を継続しながら段階的に建て替えを進めるローリング方式で実施される。

食の先進モデルに

 同グループが提案するコンセプトは「Kawasaki FOOD DESTINATION」。市場流通と一般食品流通を一体化させた施設「ONEいちば」と、食の魅力を発信する賑わい施設「フードパーク」を整備し、卸売市場の先進モデルを目指す。

 現在の水産棟の場所に建設予定の「ONEいちば」は、市場としては日本初となる免震構造を採用し、災害時にも安定した食品供給を可能にする。卸売市場機能に加え加工・配送・流通を共同化する食品流通施設を配置。デジタルやロボット技術による効率化も図る。

 一方、現在の青果棟の場所に建設される「フードパーク」は、「食を楽しみ、こだわり、関わる拠点」として、エンターテインメント性を取り入れたマルシェやフードホールを設置。隣接する菅生緑地と連動した「谷戸ガーデン」なども提案されており、市民が集うにぎわいの創出が期待される。

 市の担当者は「再整備を通じて食品流通の機能強化を図り、市民に親しまれる市場を目指したい」と話した。

平本氏(左)の説明を聞く光山区の議員ら

新百合ヶ丘まちづくり 韓国から視察団 都市景観などに関心寄せ

 韓国・光州(グァジュ)市光山(グァンサン)区議会は6月9日、新百合ヶ丘駅(麻生区)周辺の都市開発状況の視察に訪れた。一般財団法人川崎新都心街づくり財団や、市まちづくり局の担当者が、住民主体のまちづくりや、緑を取り入れた都市景観の形成について説明。光山区議会の議員ら14人が熱心に耳を傾ける姿が見られた。

 光山区は、朝鮮半島南西部に位置する光州広域市内の5つの自治区の一つ。航空、鉄道、陸上交通が発達した交通拠点で、都市部と農村部が共存する街並みが特徴とされている。同区には歴史的な保存地域が多く存在していることから規制が多く、都市開発に遅れが生じ、人口流出が問題になっているという。

 同区議会は、問題解決を図るため、日本の都市開発の政策状況などを視察することに。歴史的な街並みや緑を残しながらも、新たなまちづくりを展開している麻生区に親和性を感じ、新百合ヶ丘駅周辺の開発事業に深く携わる同財団宛てに訪問を打診した。

 同財団の担当者は、「海外はもちろん、国内の事例を含めても視察を受け入れるのはおそらく初めて」と話す。連絡を受け、麻生区役所の企画課に相談。川崎市まちづくり局の協力も得て、実現した。

質問飛び交い

 当日は、区議会の議員や事務局員ら11人、区役所職員2人、通訳担当1人が韓国から来日。同財団が運営するしんゆり交流空間リリオスに集まった。

 互いにあいさつをした後は、同財団の特別顧問・平本一雄氏が登壇した。麻生区の歴史にふれながら、新百合ヶ丘駅周辺の都市開発の特徴、住民が主体となった活動について説明。市担当者は市の都市景観形成の方針や、まちづくりのテーマにそった建築物デザインなどについて紹介した。

 議員らは注意深く耳を傾け、「区画整理を進める上で住民と衝突した際の対応」「財団の立場」などについての質問を投げかけた。同財団の担当者は「国民性の違いや法律の違いなどから、理解するのが難しそうな話が多かったが、とても熱心に聞いてくれた。今後同じような事案があれば、できる範囲で対応できれば」と話した。

40回目を迎える麻生音楽祭の実行委員長を務める 池上 裕子さん 麻生区王禅寺西在住 63歳

つないできた思い、次代へ

 ○…出演者と観客合わせて約7千人が楽しむイベントに成長した音楽祭。40回目の開催に向け、約1年前から準備を進めてきた。「さまざまな人たちが、今までつないできた音楽祭。協力してくれる人が本当に多い」と感謝の言葉を口にする。6日間にわたり、それぞれの部門が創意工夫を凝らしながら、節目を祝う。「音楽を気軽に楽しんでもらう機会になれば。出演者だけではなく、聴きに来てくださる方々も。みんなが主役で創り上げたい」と本番に向け思いを語る。

 ○…小学生の時、テレビで見たフルート奏者。「音の美しさに魅了された」。西生田中学時代はレッスンに通い、練習に明け暮れた。「食事と入浴時以外は練習していたわ」と当時を懐かしむ。桐朋女子高校の音楽科に進んだ。難しい楽譜があると「何としても表現したい」。その思いが強い原動力だった。

 ○…1983年、市民オーケストラ・麻生フィルハーモニー管弦楽団の結成時に入団。音楽大学を卒業し、中学校の音楽教員になった頃。記念すべき1回目の麻生音楽祭では、出演者として、フルートを仲間と奏でた。「まさか、将来、実行委員長をしているなんてね」と笑う。「仲間と一緒に、音楽をする。楽しかったな」と振り返る。

 ○…麻生フィルで出会った夫と結婚後は名古屋へ。子育てをしながら、各地でコンサートを開く。見知らぬ地でも、音楽で多くの人たちとつながった。40代に入り、再び麻生区へ。楽団に復帰後、誘いを受け音楽祭の実行委員となった。「地元の人に来てほしい」。そんな思いで、広報を続けた。37回目からは長として旗を振ってきた。「多くの人に足を運んでもらい、50回、100回へ。次代につないでいく」と力強く話した。

親子でリアル防災体験 7月19日 岡上分館で

 麻生市民館岡上分館で7月19日(土)、「リアルな体験から学ぶ 親子防災講座」が開催される。無料。午後6時から8時。

 避難所に見立てた同館で、避難生活の状況を再現する。暗闇体験や、非常用トイレの設置、使用方法などを学んでいく。

 7月12日(土)午後3時から5時に行われる事前学習会に各家庭1人は必ず参加が必要。災害時の現状を知り、備えの取り組みを各自共有する。翌週の体験に向け、持ち物や心構えを確認していく。

 同館担当者は「体験して分かることが多い。防災を親子で考えるきっかけになれば」と話す。

 小学生とその保護者対象。申し込み受付は6月18日(水)午前9時から同館の窓口か電話で。先着12組。(問)同館【電話】044・988・0268(午前8時30分から午後9時)

青山暁子会長

柿生中央商店会 麻生区 新会長に青山氏

 柿生中央商店会(麻生区)の会長にこのほど、青山ダンスクラフト代表の青山暁子氏(60)が就任した。

 柿生駅周辺の商業者で構成され、会員数は54。毎年10月に「禅寺丸柿まつり」を開催しているほか、昨年初企画した「柿生みんなの夏祭り」を今年も実施する。青山会長は「イベントなどで活気と笑顔あふれるまちにしていきたい」と話した。

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本紙のインタビューにそれぞれ応える原議長(左)と堀添副議長

川崎市議会 新議長に原典之氏 副議長・堀添氏と「開かれた議会に」

 川崎市議会は「令和7年第2回定例議会」を6月2日に開き、新議長に自民党の原典之氏(中原区・4期)、副議長にみらい川崎の堀添健氏(高津区・5期)を選出した。慣例により、任期は2年。本紙は、原氏、堀添氏にそれぞれ今後の抱負や課題などを聞いた。

次の100年に向けて

 原氏は、議長就任にあたり「市制101年目、第45代の議長ということで、これまで44人しか経験したことがなく、その職責の重さを痛感している。与えられた職責を全うしていきたい」と決意を語る。

 昨年市制100周年を迎えた川崎市。議会としての100周年の振り返りと課題について「日々議会改革に取り組んでいる中、『開かれた議会』として録画や生中継など広く発信している。それを市民にどうキャッチしてもらうか。ラジオやSNSなどを含めて広報面で発信の仕方を変えていきたい」と話す。

 二元代表制を担う立場として力を入れたいことについて「議会の役目の一つに行政のチェックがある。行政の取り組みや職員の不祥事、情報漏洩などチェック機能の役割を果たしていきたい」と強調。今後の議会運営については「2016年に川崎市は『イクボス宣言』を行っている。議会、議長としてもワークライフバランスを大事にしていきたい。『ふれあいなくして街の発展なし』の思いを込め、次の川崎市の100年に向けて、市民に身近な議会、開かれた議会にしていきたい」と抱負を述べた。

積極的な議会活動を

 副議長に就任した堀添氏は「川崎市の意思決定機関である市議会の副議長に就任し、大変光栄であるとともに、改めて職責の重さを痛感し、身の引き締まる思い」と心境を語る。議会の課題について「人口も155万人を超え、都道府県と同等の規模になっており、各行政区も中核市並に成長してきた。行政区ごとに市民の生活環境や課題も異なってきている中、議会としても行政区を単位とした活動を強化していくことの必要性が高まっている」と話す。

 また、「公正・公平な議会運営に努めるとともに、多様な市民の声を踏まえ、熟議を通じて丁寧に合意形成をはかっていくことが重要」とし、「市民の負託に応えるとともに、開かれた場での議論によって議会の透明性を確保するために、議会として積極的に活動することが求められていると思うので、そのようなかじを取っていきたい」と今後の議会運営について意気込みを語った。

 なお、議長選では、有効投票数57のうち、自民の推薦を受けた原氏が49票を獲得し、共産推薦の宗田裕之氏は8票だった。副議長選では、有効投票数60票のうち、みらい推薦の堀添氏が52票を集め、共産推薦の市古次郎氏は8票だった。

川崎市が補正予算案 マイナカード交付拡充へ

 川崎市は、2025年度の一般会計を43億9084万4000円増額する6月補正予算案を、6月2日に開会した市議会第2回定例会に提出した。国の制度に基づいて実施するマイナンバーカード交付体制の拡充や介護人材確保に向けた事業費などを計上。補正項目は7つで、補正総額のうち、約41億7000万円は国からの財源を活用する。

 急増するマイナンバーカードの更新に対応するため、約21億8300万円を計上。現在、川崎市役所北庁舎(旧第4庁舎)にあるマイナンバーカードセンターを武蔵小杉駅周辺に移設し、2023年末に終了した交付窓口を再開させる。加えて、サテライトの交付窓口を川崎駅、溝の口駅、宮前平駅、新百合ヶ丘駅の周辺に設置。人員配備にも約7100万円を計上し、交付体制の充実を図る。市では、いずれの窓口も10月の開設を見込んでいる。

生活支援に18億円

 価格が高騰する電力・ガス・食料品などの支援給付金事業費として、17億9846万円を計上。昨年度、定額減税補足給付金(不足額給付)の支給額に不足が生じた人に対し不足額を給付する。

 生活保護実施事業費には3457万9000円をあて、国の調査項目の変更などにかかるシステムを改修する。

 福祉人材確保支援事業費として8522万3000円を計上。訪問介護などのサービスを提供する事業所に対し、研修体制の構築や、経営状況の改善などの支援を行う。

 運転手不足の影響などによるバス減便などの交通課題対策として、自動運転バスの実装を進めるため、地域公共交通事業費には一般財源5900万円を含めて1億2000万円を充当。今まで使用していた中型バスに加えて、大型バスによる実証実験も実施する。

一般財源は2億円超

 補正額のうち約2億1000万円が一般財源で、市の貯金に当たる財政調整基金から繰り入れる。全額を一般財源で負担するのは次の2項目。

 公設民営障害者施設運営費には4429万円を充当。麻生区五力田にある障害者支援施設「柿生学園」の指定管理者が2026年度から変更されるのに伴い、業務の引き継ぎのための経費を盛り込んだ。

 川崎市内の民有地に設置されている貯水槽を地権者の求めに応じて撤去する費用として、5328万3000円を計上する。この撤去により、市内の民有地にある貯水槽は全部で85カ所となる。

 補正後の一般会計の総額は8990億909万9000円。

 補正予算案は、総務常任委員会に付託されて審議され、6月19日に開かれる市議会本会議で議決される。

夏の恒例ボウリング大会 7月5日

 川崎市ボウリング協会麻生支部主催の夏季ボウリング大会が7月5日(土)、午後3時からコパボウル永山(小田急永山駅徒歩1分)で開かれる。

 対象は麻生区在住か在勤の人。ヨーロピアン方式でマイボールの部とハウスボールの部。参加費3500円。貸靴別途350円。

 申込み・問い合わせは同支部【FAX】044・966・3639か、ショートメールで【携帯電話】090・6008・1561。締切6月26日(木)。

アンバサダーと佐藤区長(後列中央)

多摩区PRアンバサダー 8組が決定 SNS活用し魅力を発信

 多摩区の魅力をインスタグラムなどのSNSを使って発信する「多摩区PRアンバサダー」8組が決定した。

 発信を通じて、交流人口の増加や地域の活性化につなげようと、2023年度にスタート。3回目となった今年度は24組の応募があったという。アンバサダーは、26年3月末までの期間、自身のインスタグラムに「#多摩区PRアンバサダー」「#ピクニックタウン多摩区」のハッシュタグを付け、区の魅力を投稿する。また投稿サイト「note」での記事投稿、秋に開催されるイベントへの参加なども予定。

 多摩区は6月6日、多摩区役所で任命式を行い、佐藤直樹多摩区長が任命状を手渡した。グルメ情報を中心に地域の魅力を発信する夫婦「にしにし家」は「グルメのみならず、イベント情報なども発信して、まちと人の接点を増やすきっかけ作りができれば」と意気込みを語った。生田緑地などでシャボン玉で地域交流を図る「シャボン玉オヤジ」は「初めての挑戦。『映える力』を使いながら、PRをしていきたい」と笑顔を見せた。佐藤区長は「発信力のある方々。全世界に区の魅力を発信してもらいたい」と期待を寄せた。

アジサイの道を下草刈り

 長尾の里あじさい保存会や長尾町会環境美化部、有志ら33人が6月7日、アジサイの名所として知られる多摩区長尾の妙楽寺へ続く坂道、通称「あじさいロード」の下草刈りを行った=写真。

 同保存会の井田光政会長は「沿道が、皆さまをお迎えするきれいな環境に整った。(6月15日に同寺で行われる)あじさいまつりには、見事な花が咲き誇ると思う」と話した。

神奈川県議会 所属委員会決まる

 神奈川県議会の常任委員会、特別委員会、議会運営委員会(議運)などの所属議員が決定した。多摩区と麻生区の選出議員の所属は以下。

※敬称略、カッコ内は所属会派。会派の所属人数順に紹介。◎は委員長、○は副委員長。

【多摩区】

▽土井隆典(自民党)防災警察常任委員会、共生社会特別委員会、神奈川県国土利用計画審議会委員

▽青山圭一(立憲民主党・かながわクラブ)総務政策常任委員会、神奈川県内広域水道企業団議会議員、予算委員会

【麻生区】

▽小林武史(自民党)建設・企業常任委員会、共生社会特別委員会、議運、神奈川県准看護師試験委員会委員、予算委員会

▽石川裕憲(かながわ未来)総務政策常任委員会、議運○、神奈川県観光審議会委員

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恩廻公園調節池を学ぶ トンネル見学 自由研究に

 麻生区の地球温暖化防止活動推進員が集まるCCあさおは8月1日(金)、恩廻公園調節池(麻生区下麻生他)の見学会と講義を開く。事前申込制。

 同調節池は暴れ川と呼ばれた鶴見川の洪水から地域を守るため2003年に完成。地下トンネルは長さ600m、高さ16m、25mプール330杯相当を貯水するという。

 川崎治水センター・省エネグループの担当者を講師に調節池を見学。地球温暖化を考える講義も。定員30人で小学4年生以上、保護者同伴可、参加費100円。定員多数は抽選。希望者は子ども名・保護者名・小学校・学年・〒・住所・電話番号・メールアドレスを記し7月18日(金)までに辻村さん【メール】itujimura@jcom.home.ne.jp。(問)麻生区企画課【電話】044・965・5112

風船を飛ばす手順を示す小川さん

戦後80年 戦禍の記憶【5】 宮前区在住 小川辰夫さん(97) 「風船爆弾で勝てるわけねえ」 「唯一の兵器」に祝杯も

 志願して旧日本陸軍の秘密戦研究施設「登戸研究所」で働いた。当時まだ16歳。働き始めの仕事は旋盤工だったが、ある時から同世代の少年たちと特別なミッションを任された。「風船爆弾」の試験飛行だった。

 「体が丈夫なやつ6人が千葉の一宮海岸に集められてね。でっかい風船を砂浜まで運んで、膨らませて。そいつをアメリカまで飛ばすんだって言われてね」

 化学兵器や偽札などと同様、風船爆弾は、登戸研究所で研究開発された日本陸軍の秘密兵器だった。「兵器」と言っても、和紙にコンニャクを塗り付けて仕立てた直径約10mの風船に、爆弾を仕込んだものだ。1944年11月から45年4月まで、計9300発をアメリカに向けて飛ばしたと言われている。

 小川さんたちは、その巨大風船が太平洋を渡りアメリカに到達するのかどうかを調べる「試験チーム」だった。車で運ばれてくる風船を数人がかりで砂浜まで運び、ボンベを使って膨らませ、はしごに乗って穴がないかどうかを点検。「穴一つ見つけるとサツマイモ1本もらえたよ。あれは愉快だったな」。1日に飛ばした風船は4個から5個程度。風船はぐんぐん高度を上げ、太平洋へと向かっていった。

 風船がアメリカに到着したことが確認されると、軍の幹部が海岸の街にやってきた。旅館の一室で幹部は言った。「風船爆弾は、わが国がアメリカを攻撃できる唯一の兵器だ」。大人たちは祝杯を挙げたが、「こんなもんで勝てるわけがねえ」と思ったという。「それから終戦まで、あっという間だったな」

 終戦の1週間ほど前、研究所では「証拠隠滅命令」を受けて大忙しだった。作業に追われながら「日本は負けたんだな」と確信したという。

 敗戦の年の12月、フィリピンなど熾烈(しれつ)な戦地を転戦した小川家の長男が復員した。やせ細り、ひどい身なりで自宅に現れた時、家族も「どこの乞食だ」と気付かないほどの形相だった。当時の兄の姿を思うたび、「涙が出るんだよ」と言葉を詰まらせる。「兄貴は戦争のことをほとんど話さなかった。戦争なんて、二度とやっちゃいけねえよ」

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今年で戦後80年。体験者が年々減少し、戦争の記憶が風化しつつある。当事者の記憶を後世に残すとともに平和の意義について考える。不定期で連載。

JAセレサと川崎信金 新人ら協力して田植え 国際協同組合年にあわせ

 国連の定める「国際協同組合年」を記念し、JAセレサ川崎と川崎信用金庫は6月9日、新人職員らによる合同田植えイベントを麻生区黒川地区で実施した。

 今年は国連がSDGsに貢献する協同組合の振興を目的に定めた「国際協同組合年」にあたる。これを機に、JAセレサ川崎と川崎信用金庫は連携強化を目的に、双方の幹部職員や新人職員ら計約100人が協力し、JA青壮年部柿生支部が委託管理する水田で、神奈川県推奨米「はるみ」の田植えを実施した。

 新人職員らは靴下を着用のうえ水田に入り、一列に並んで苗を1本1本、手植えしていった。水田に入るのが初めての職員が多く、泥の感触に歓声を上げたり、足をとられて転んだりしながら、JA側のサポートを得ながら丁寧に植えていった。

 市内在住で田植えは初体験という川崎信用金庫の女性新人職員(22)は、「田んぼが思ったより深くて、何度か転びそうになった。自分が植えたコメを食べてみたい」と満面の笑みだった。

 JAの梶稔組合長や川崎信用金庫の堤和也理事長も、列の真ん中で若者と共に田植えを楽しんだ。堤理事長とって小学校以来の田植え体験だったといい、「とっても楽しかった」とにっこり。「しかしコメ作りの大変さはこの後。若い職員がコメ作りの大変さを知る貴重な体験をさせてもらえた」と語り、梶組合長も、「米作りは大変手間がかかるもの。そのことを学んでいただけたと思う」と満足げだった。

左から落合さん、早田さん、濱田さん

大和市の早田茂さん 「国際化学五輪」に出場 KISTEC職員が支援

 神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)の溝の口支所(高津区)にある光触媒ミュージアムに刺激を受けた高校生が、7月にドバイで開催される「国際化学オリンピック」に日本代表として出場する。高校生の背中を押して学びを支えたのは、KISTECの研究員たちだった。

 「国際化学オリンピック」に出場するのは、大和市在住で三田国際科学学園高等学校(東京都世田谷区)の高校3年生、早田茂さん(17)だ。全国の高校生が化学の実力を競う「化学グランプリ」で優秀な成績を収め、「オリンピック」の日本代表の一人として選抜された。

 早田さんが「オリンピック」に挑戦しようと決意したのは、2023年12月のことだった。ある日の放課後、「リンモリブデン酸アンモニウム」について調べるため、東急溝の口駅で途中下車し、かながわサイエンスパーク(KSP、高津区)内にある県立川崎図書館を訪れた。この時、KSP内の「光触媒ミュージアム」(藤嶋昭館長)にも立ち寄ったが休館日だった。「光触媒の『ミュージアム』に、何があるんだろう?」。化学の知識が豊富で探究心旺盛な早田さんは、日を改めることにした。

 早田さんはミュージアムを再訪すると展示を丹念に見ながら、空気清浄機や生活用品など、光触媒が幅広い用途に製品化されていることに驚き、そばにいたスタッフを質問攻めに。その様子を見たKISTEC研究員、濱田健吾さんが、早田さんに「挑戦してみては」と手渡したのが、「オリンピック」の選考を兼ねる「化学グランプリ」の要項だった。

 その帰り道には心を決めたという。「自分の実力を試したいと思った」

方向性を軌道修正

 早田さんは昨夏の「化学グランプリ」に挑戦。日ごろの学習の成果を存分に発揮し、「オリンピック」の代表選抜に進んだ。しかし選抜試験の過去の問題は非公開のため、勉強方法に迷ったという。そこで濱田さんにメールで相談を寄せ、濱田さんは上司の落合剛さんと情報を集め、「応用力が問われるはず。暗記ではなく応用を意識して」とアドバイスした。以後もたびたび二人から助言を得たといい、早田さんは「勉強の方向性を軌道修正してくれた」と感謝を述べる。

 今年3月、早田さんがKISTECを訪ねてきた。満面の笑みで「オリンピック」代表に決まったことを報告。二人も大いに喜び、祝福した。

 将来は、「光触媒」を発見したミュージアムの藤嶋館長のように、「自分の研究が新しい分野を生み出せるような研究者になりたい」という早田さん。まずは決戦の地・ドバイで、金メダル獲得を目指している。

川崎市役所

4月から警報発令中 水ぼうそうが市内で流行 市「手洗いなど徹底を」

 川崎市内で水痘(水ぼうそう)が流行している。患者の発生状況が警報基準値を超えたため、市は4月30日に水痘に関する「流行発生警報」を発令したが、以後も患者数は「警報レベル」で推移している。厚生労働省が2018年に水痘の警報基準を引き下げて以後、警報発令は初めて。

 市は週に一度、複数の小児科定点医療機関から感染症の発生状況の報告を受け、週ごとの患者数の平均値から流行状況を評価している。市内の水痘の患者数は今年3月から増え始め、4月下旬に急増。第17週(4月21日〜4月27日)にはこの平均値が「3・67人」となり、警報基準値の「2・0人」を超えたことから、「流行発生警報」を発令していた。

 5月半ばに「2・0人」を下回ったものの再び患者数が増え、直近の第22週(5月26日〜6月1日)も「2・08人」と、例年より高いレベルで推移している。

 水痘はウイルスによる感染症で、空気、飛まつ、接触などで感染する。定期予防接種の対象疾病でもあり、生後12カ月から36カ月までに2回の予防接種を受ける必要がある。市の担当者は「手洗いやうがいを徹底し、症状が出たら医療機関にかかってほしい」と注意を呼びかけている。

特典のオリジナルトートバッグ

GO!GO!!フロンターレ

中元に特別なギフトを

 サッカーJ1・川崎フロンターレは、オフィシャルパートナーのサントリーと、オリジナルの中元向けキャンペーンを実施している。

 「ザ・プレミアム・モルツ」と「ザ・プレミアム・モルツ〈ジャパニーズエール〉香るエール」のギフトセットが登場。限定30セットには、同クラブのロゴなどが入ったオリジナルトートバッグが付いてくる嬉しい特典も。

 また、商品はオリジナルの包装紙でラッピング。お酒好きのファンには、たまらない一品だ。自宅で試合観戦をする際のお供にしよう。

 ほかにも、夏のギフトにぴったりなビールやウイスキーを多数用意。今春に限定発売された「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム リミテッドエディション#18」など、特別な一杯が入ったセットも選択することができる。

 同クラブ担当者は「日頃の感謝を込めて、大切な人への贈り物にぜひご検討ください」と呼び掛けている。詳細・購入は同クラブウェブサイトから販売サイトにアクセス。送料無料。

画像はいずれも川崎フロンターレ