横須賀・三浦版【9月5日(金)号】
営業最終日の根岸公園水泳プール。猛暑の影響で人出はまばら

横須賀市公園プール 老朽化で相次ぎ閉鎖 今夏で根岸公園も営業終了

 横須賀市で市民に長年親しまれてきた公園の屋外プールが次々と姿を消している。施設の老朽化や利用者数の減少などを理由に、市は段階的にプールを廃止する方針を固めており、2025年度は根岸公園水泳プールが8月31日の営業を最後に閉鎖された。長沢村岡公園水泳プールについても廃止が予定されているが、具体的な時期は未定。市は、馬堀海岸公園プールのみ存続させる考えだ。

 多くの施設が建設から40年以上を経過し、老朽化が深刻化していることが背景にある。安全な運営を続けるための維持管理費が増大し、市の財政を圧迫する一因となっている。少子化に伴う利用者数の減少も廃止の判断を後押している。

 2015年度に鴨居、16年度に平作、17年度には田の浦が廃止に。新型コロナによる休止期間を経て23年度は浦賀と久里浜、24年度は湘南鷹取と冨浦(長井)が営業を終えている。市は公園プールの閉鎖に伴う代替措置として、夏休み期間中に一部の市立小学校のプールを市民に無料で開放している。

 これに関して9月1日の市議会定例会で、日本共産党の井坂直議員が公園水泳プールと子どもの居場所について質問。安価で安全に過ごせる居場所の必要性を求めると、市側は「学校プールの開放で子どもたちが水に親しむ機会を確保している。閉鎖したプールの再開は安全面での課題が大きく困難」と答弁した。上地克明市長も「市の厳しい財政状況や気候変動(猛暑)といった大きな枠組で判断する必要がある」と述べ、プールの再開は考えていないという方針を崩さなかった。跡地の利用については、「市民の声を把握する努力を続ける」とした。
三浦海岸で壇上に上がったメンバーと下里さんら

三浦市のご当地グループ 歌に踊り、9人が魅力を発信

 三浦市を拠点に市の魅力発信などを行うご当地アーティストグループが始動した。市内在住の下里真里さんが手掛けているプロジェクト「MiU─La(ミューラ)」の一環で、オーディションを経た5歳から13歳までの9人が選ばれた。8月31日には三浦海岸の特設ステージでメンバーのお披露目が行われ、約200人の観衆の前で「三浦を世界に」「みんなを笑顔にしたい」とメンバーが抱負を語った。2026年夏頃の楽曲リリースに向け、稽古に励んでいくという。下里さんは「たくさんの人に素敵な市だと感じてもらい、遊びに来たり、移住したりと市を盛り上げるきっかけになれば」と話している。

オール三浦・横須賀

 メンバーに選出されたのは鈴木亜琉(ある)さん(13歳)、鈴木和花(のどか)さん(13歳)、山田結愛(ゆあ)さん(12歳)、滝口桜也(さくや)さん(12歳)、鈴木愛南さん(11歳)、鈴木凰晟(おうせい)さん(7歳)、滝口向日葵(ひまり)さん(7歳)、竹内翠杏(すず)さん(6歳)、大用詩大(うた)さん(5歳)の9人。全員が三浦、横須賀市出身の地元勢だ。

 メンバーは8月に行われたオーディションで選出。応募のあった5歳から40代までの約20人の中から書類選考の一次、対面形式の面接だった二次を通過し、晴れてグループの一員となった。インフルエンサーに憧れがあって応募したという最年長の鈴木亜琉さんは「メンバーはみんな明るくて三浦市のことが大好き。有名になって三浦の魅力を伝えていきたい」と意気込みはばっちりだ。

住みたいまちに

 プロジェクトをけん引する真里さんは横浜市出身で、長年アーティストのマネジメントやイベントの企画・運営に携わってきた経験を持つ。中でも、カリブ海諸国の音楽ジャンル「ソカ」のダンスやミュージシャンのプロデュース業を営んできた。4年前に三浦市へ移住し、人口減少や少子高齢化など、市の課題を解決する狙いもあって今回のプロジェクトを構想した。

市民とともに形作る

 メンバーは今後、下里さんによるレッスンのほか、コーチとしてチームに参加している市内在住の下里明美さん(78)の歌の指導を週に1度ほど受ける。「ダンス未経験者が多いので、この半年は基礎を磨いていく」と真里さん。また、月1回を目標にメンバー会議を開く。動画共有サイト「YouTube」に投稿する企画案を出すほか、市の課題解決に向けてできることなどをテーマに話し合うという。また、若い世代が地元に誇りを持ち、自らの力で三浦市の魅力を伝えられるよう地域貢献をテーマにした「探究型学習」も取り入れる。

 これらを通して、来夏の楽曲リリースを見据える。楽曲制作はAI技術を活用し、生成された大まかな音源を三浦市出身のクリエイターが細部を調整し、歌にするというユニークな取り組みも行っていく。

 グループ名は未定。スタジオや練習にかかる費用などの活動資金は市民からの寄付やライブ出演料などを充てる予定だ。「市民に応援してもらえるアーティストに育ってくれれば」と真里さん。詳細は「MiU-Laプロジェクト」で検索する。

「第一回 鴨居みなとまつり花火大会」で実行委員長を務める 斉藤 智一さん 横須賀市鴨居在住 49歳

見たことのない景色見せてやる

 ○…地域を思う気持ちを初秋の夜空にド派手に刻む。海と坂のまちである鴨居地区で初めて行われる住民主導の花火大会。少子高齢化で地域の灯が少しずつ消えゆく現状に危機感を抱いて立ち上がった。原動力は、ただ一つ。「このまちと人が好き」。その純粋な想いが、多くの賛同者を巻き込み、大きなうねりを生み出した。

 ○…鴨居で生まれ育った生粋の地元人。祖父の代は漁師の網元だったという家系に生まれ、幼い頃からこの町の潮風を受けて育った。「昔の鴨居は、町内同士のライバル意識が強くてね。喧嘩も多かった」。そう言って笑うが、ここ10年で状況は変わってきた。祭りをきっかけに若い世代が町内の垣根を越えて交流を始め、地域に新たな結束が芽生え始めている。花火はそれを、もっと大きなものにするための仕掛けだ。

 ○…その一方で、地域のイベントが人手不足などを理由に、次々と縮小・中止されていく現状もある。「観音崎のさくらまつりも子どもたちが楽しみにしていたワイワイフェスタもなくなった。寂しいじゃないですか」。そんな折、仲間内で温めていた「花火」というアイデア。現実の目標へと変わった。

 ○…実行委員長の肩書きを背負うが、「自分たちは黒子でいい。誰がやったかなんて分からなくて構わない」とキッパリ。集まった子どもたちが大人になった時に「自分たちのまちには、あの花火がある」と胸を張れるようなシンボルをつくりだすことが狙いだ。鴨居の夜空に打ち上がる一発一発の花火は、単なる光のショーではなく、自分たちの力で未来を明るく照らしていく、というメッセージ。地域を守り、盛り立てていく。そのバトンを次世代につないでいく。

食と文化の祭典 打ち上げ花火も 長井漁港会場に「Nフェス」

 風光明媚で農漁業が盛んな横須賀市長井の食と文化を発信する祭典「Nフェス」が9月13日(土)、長井漁港(長井5丁目)で開かれる。地域活性化と交流機会の創出を目的に、同地区の有志らでつくる実行委員会が2023年に初開催。今年で3回目を数える。

 地元漁師や農家による直売や屋台、キッチンカーの出店がある。サザエのつぼ焼き、焼きトウモロコシほか地元グルメを味わい尽くせる。ダンススクールのステージ発表、バンド演奏、伝統芸能、長井地区の園児による太鼓演奏なども。恒例の抽選会もある。

 今回は新たな試みとして花火の打ち上げ(午後8時頃から約10分間)を実施する。会場に駐車場がないため同実行委員会では、徒歩やバスでの来場を呼び掛けている。長井地区内を走る巡回サービス車を運行する(午後2時から9時)。正午から午後9時頃まで。雨天中止。詳細は「Nフェス2025」で検索。

アーティスト村 心の奥底ひもとく7作家 企画展9月15日まで

 多様な芸術家が集い、創作活動を通じて地域活性化をめざす横須賀市田浦泉町の「HIRAKU(アーティスト村)」で9月5日(金)きょうから「たにそこを叩く」と題した企画展が開催されている。火・水・木曜日を除く同月15日(月)までの会期中、5人のアーティストによる作品が展示され、オープンアトリエも同時開催される。

 出展作家は、ダンサー兼振付家で自由な動きで身体表現を行うコンテンポラリーダンスを軸に活動するasamicroさん、写真を用いた作品を制作する前谷開さん、前田梨那さん、身近な日用品を素材にする造形作家である丸山純子さん、「状態の記録や保存」をテーマにインスタレーションやドローイング作品を手掛ける水戸部春菜さんの5人。

 オープンアトリエは前田さんと水戸部さんのほか、銅版画を中心に幅広い創作活動を行う鈴木晴絵さん、土器作家の薬王寺太一さんの4人が実施する。工房の雰囲気や作品が生まれる背景、アーティストの考え方に触れられる。

 会期中は、各アーティストによるイベントも多数企画。6日(土)にはasamicroさんによるパフォーマンス「動かない身体、記憶の行方」が午後1時と午後6時から各30分ほど行われる。7日(日)と13日(土)は丸山さんの天ぷらパーティー「旬のものを揚げよう」が正午から午後2時まで催される。参加費500円。水戸部さんによる植物を使った染色実験ワークショップは6日と14日(日)に予定されている。午後2時から午後5時。参加費別途。手ぬぐいがなくなり次第終了。

 入場無料で事前申し込み不要。午前11時から午後8時まで開場している。公共交通機関での来場を呼びかけている。問い合わせは横須賀市まちなみ景観課【電話】046・822・9855。

デフ東京大会に出場する佐藤選手

きこえない世界を生きる デフ選手の佐藤さん講演

 聴覚障がい者が参加する世界規模のスポーツ競技大会「デフリンピック東京大会2025」(11月15日から26日)の陸上棒高跳びに日本代表として出場する佐藤湊(そう)選手の講演会が9月12日(金)、三浦市南下浦コミュニティセンターで開かれる。三浦市手話サークルともしび会の主催。

 佐藤選手は横須賀市池上出身。横須賀市立ろう学校に通っていた高校2年の夏から同競技を始め、豊富な練習量を武器に1年後には日本を代表するデフアスリートに。2013年のデフオリンピックソフィア大会では銀メダルに輝いている。

 午後6時45分から8時30分。参加無料。連絡先は【携帯電話】090・9157・2658(石井さん)。

横須賀市 出産・子育てに祝い金 市独自に10万円現金支給

 横須賀市の上地克明市長は8月29日、妊産婦の出産費用の負担軽減を図る目的で、「出産子育て応援祝い金事業」をスタートすると発表した。国の「妊婦支援給付金」10万円に、市独自で10万円を加算して現金で支給する。2025年10月1日から開始する。

 神奈川県の正常分娩の平均妊婦合計負担額は約66万5千円で、現状では出産育児一時金として国民健康保険加入者に50万円と国の妊婦支援給付金を合わせて妊婦1人あたり60万円が手当されている。市はこれに上乗せし、物価高騰などを背景に経済的な理由で、出産をためらう人や子育て費用に負担を感じている人の不安を取り除く。

 妊娠時と出産時の2回に分けて支給する。妊娠時の支給は県内初、10万円は県内市では最高額だという。今年度は対象者として約1千人の支給を見込んでいる。

 同祝い金制度は、上地市長が6月の市長選の公約に掲げていた施策。市民サービスの向上とともに、「産みたい、育てたい」という環境を用意することで子育て世代の移住・定住にもつなげる。

昭和の街でビアガーデン 若松マーケットで9月20日

 横須賀中央駅近くの昭和の風情が残る若松マーケットで9月20日(土)、「2025横須賀ビアガーデン」が開催される。時間は午後3時から9時。雨天荒天中止。

 昨年の開催時には市内外から約2千人が訪れるなど盛況だった企画。シンガーソングライターの椿優衣さんやアコーディオン弾きのMay Maeさんが流し演奏で盛り上げるほか、ファミリーでも楽しめるよう「お子様連れ専用スペース」が8時まで設けられる。

 詳細は公式ホームページwakamatsu-market.jp

ボランティア事始め 三浦社協の高歴者向け講座

 三浦市社会福祉協議会では、ボランティア活動に興味のある高齢者を対象にした講座「ニナイテカレッジ『今から始めるボランティア〜あなたのやりがいを探して〜』」を開催する。地域が抱える課題や活性化などに主体的に関与することで、健康増進と生きがいにつなげてもらう。

 同講座では、種々の活動に取り組む団体とメンバーが事例発表を行う。

 9月12日(金)は、ソーイング(縫製)ボランティア団体の三浦ソーイングオハナと朗読ボランティア。10月10日(金)は防災を楽しく学ぶイベントを開くデコボコドリームズ、ずし子ども0円食堂プロジェクトが登壇する。11月14日(金)はボランティアを求める人と参加を希望する人の交流会を開く。

 会場は三浦市民交流センターニナイテ(初声町下宮田5の16ベイシア2階)。時間は各日午後1時30分から3時。各日定員15人で日程ごとに申し込みを行う。参加無料。希望者は同協議会【電話】046・874・9882。

城ケ島灯台(提供:横須賀海上保安部)

城ケ島灯台 2代目再建から1世紀 9月20日に一般開放

 城ヶ島の西の高台に立つ島のシンボルでもある「城ケ島灯台」が9月20日(土)、横須賀海上保安部の主催で一般開放される。「城ヶ島すすきまつり」に合わせ実施するもので、普段は見られない灯台内部を見学することが出来る。

 標高約30mの崖上に立ち、相模湾を照らす日本で5番目に点灯した洋式灯台。1870年にフランス人技師ヴェルニーの設計により建てられたが、関東大震災の被害を受け、1925年に再建した。この時に現在の白色円筒形の姿になり、今年で再建から100年を数える。

 「高台からの眺望が素晴らしい場所です。皆様のご来場をお待ちしております」と主催者は来場を呼び掛けている。

 時間は午前10時から午後3時(最終受付は午後2時30分)。事前予約不要で参加無料。荒天中止。駐車場はないため、同保安部はバスなどの公共交通機関での来場を推奨している。問い合わせや詳細は同保安部交通課【電話】046・861・8374。

みうらガイド協会 三浦を歩き、伝える 案内人の養成講座

 三浦市域の自然や歴史、文化などの観光ガイドを行うボランティア団体「みうらガイド協会」は、ガイドを行う新規会員の募集を開始する。それに先立ち、活動の概要などを伝える基礎講習会の参加者を募集している。

 同会の活動状況や講習会の予定などの説明会を10月5日(日)に三浦市民交流センターニナイテ(ベイシア三浦店2階)で午前9時30分から正午まで行う。講習会は10月16日(木)、19日(日)、25日(土)、30日(木)の4日間で、時間や会場は説明会にて知らせる。

 主催者は「地域のために何かしてみたい人にはぜひ参加してほしい」と呼び掛けている。

 募集定員は10人程度。希望者は同協会HPの申込フォームから氏名・年齢・住所・電話番号・メールアドレスを記入し応募する。期限は9月30日(火)まで。問い合わせは【電話】046・888・0588。

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秋の田浦を散策しよう 再生した市営住宅巡り

 横須賀市の田浦月見台住宅やアーティスト村を散策する「秋の田浦地域里山歩きツアー」が10月11日(土)に開催される。午前10時から午後0時30分。雨天中止。参加費50円。

 市営住宅としての役目を終えた「旧田浦月見台住宅」を有効活用すべく、市は2023年に民官連携事業として鎌倉市の不動産会社エンジョイワークスを選定。職住一体型の「なりわい住宅」としてリノベーションが進められ、ものづくりに関連する業種にしぼって入居者を募り、7月に第1期の開業を迎えた。

 アーティスト村とは、田浦泉町の谷戸地域の「アート」をキーワードに特色化が図られるエリア。空き家問題の解消策として、改修した平屋建てに誘致した芸術家たちが創作活動のかたわらワークショップなども開き、地域交流の拠点にもなっている。今回のツアーでは、芸術家らと交流できる機会もある。

 対象は坂や階段の上り下りが可能な人。定員30人(応募多数時抽選)。申込は市コールセンター【電話】046・822・4000。

最初に手掛けたJR衣笠駅前の風景。横須賀をテーマにした連作のきっかけとなった

ジオラマ館 横須賀の日常 真空パック 消えゆく風景 ノスタルジーに浸る

 横須賀市佐野町在住、ジオラマ作家の野中直樹さんが手掛けた作品を常設展示する「ジオラマ館」が9月8日(月)、鉄道模型店「アーク」の隣にオープンする。

 飾られているのは、2016年から22年7月までタウンニュース横須賀版で連載していた「ジオラマミュージアム」の作品群。日常だからこそ記録や記憶に残りづらい「横須賀のまちの風景」の再現を試みたジオラマ全39タイトルが、「鉄路」「赤い電車」「海辺」「郷愁」などのテーマで区切られたコーナーに並ぶ。野中さんが感銘を受けた世界の絵画をテーマにしたものや、鉄道模型を実際に走らせるジオラマに苔テラリウムを取り入れた作業中の大作が民家を改修した空間に置かれている。

 作品は150分の1のスケールで製作され、細部までリアルに表現。駅構内の改札や自動販売機まで緻密に作り上げている。1970年代の馬堀海岸駅の階段風景やかつて久里浜火力発電所にあり、撤去された”おばけ煙突”などノスタルジーに浸れる作品もある。

 活動の集大成を発表する場としてだけでなく、「作品を通じて、地域文化の再認識や新たな観光客の来訪につなげたい」と野中さん。横須賀市民が訪れて、ほっこりとした気持ちになれる空間づくりもめざしている。

 開館時間は午前10時から午後5時30分。入館料は平日440円、土・日・祝日は660円。水曜休館。ホームページ(https://ark.nnwork.net/)に詳細。

昭和時代の木箱を挟んで幸保さん(右)と森さん

蔵から発見、昭和の商慣習 工場と店を往復「通い箱」

 蔵付商家を改装して自家製味噌の製造販売を行っている「天然石蔵醸造みそ工房 幸保六兵衛」(横須賀市東浦賀2の2の23)で、1960年代頃に使用されていたと思しき番重(ばんじゅう)と呼ばれる木箱が複数見つかった。店主の幸保節子さんが家屋と蔵の整理をしていた際に発見したという。

 1924年創業で100年企業の(株)法塔ベーカリー(久里浜8の30の1)が地域の個人店などに卸売をしていた際に、製造工場と契約店を行き来する”通い箱”として用いていたもの。「当時は市内で200超の小売店にあんパンをはじめとする菓子パンを納めていた。昭和の商慣習を伝える貴重な資料」と同社の森柾人社長。この時代のものは残っておらず、木箱の側面に彫られている屋号に歴史の重みを感じるという。

 幸保さんは今回をきっかけに店舗で木箱を用いて法塔ベーカリーのパンの販売を行う。森社長もここの味噌を用いた新商品の開発に着手する。木箱がつないだ縁で新しいビジネスが展開されようとしている。

チェルSeaみうら 遊びにおいでみうらっこ ボーネルンド遊具が登場

 三浦市南下浦町上宮田の複合拠点施設「チェルSeaみうら」で9月28日(日)、三浦市民を限定に親子で一緒に楽しめるイベント「あつまれみうらっこ2025」が開かれる。午前10時から午後4時。

 当日の目玉は、玩具の販売や室内遊び場などを手掛けるボーネルンドの遊具を楽しめる企画。対象者は6カ月から小学2年生までで、午前10時から45分ごとの時間制となっている。各回20人が定員。

 2階調理室で開かれる「親子クッキング」では、ピザ作り体験を実施。つくったあとは試食も楽しめる。3歳から年長児とその保護者が対象。参加費は1組300円で、各コースの定員は8組。エプロン、三角巾、ふきんを持参する。

 このほか、2階スタジオでは予約不要で利用できる「出張!みうらっこパーク」も設けられる。6カ月から3歳児を対象に、保育士が常駐する場所で親子が自由に遊ぶことができる。参加費は無料。午前10時から正午と午後1時30分から3時30分。

 事前予約は9月25日(木)までに三浦市子ども課【電話】046・882・1111(内線335)に申し込む。

日産追浜工場跡地 「IR候補地そぐわない」 上地市長、一部報道に見解

 2027年度末に車両生産中止が決定している日産自動車追浜工場。その跡地が「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の候補地に浮上している」とする一部の憶測報道について、上地克明市長は9月1日、「日産から報告を受けていない。近隣環境から追浜にはそぐわない」と意見を述べた。同日に開会した9月定例議会で、竹岡力議員の一般質問に答えた。

 経営再建を図っていた同社は今年7月15日、国内主力工場の一つであった同工場での車両生産を終了し、生産機能は九州に移管すると発表。工場の従業員約4千人の雇用や、部品供給を行っている地元企業も数多あるなど、地域住民の動揺や市内経済への打撃が懸念されていた。そうした中、8月29日には黒岩祐治神奈川県知事、山中竹春横浜市長、上地市長の連名による要望書を国に提出するなど、跡地活用についても注視される状況が続いていた。

 市内外問わず関心を集めている状況下、竹岡議員は「都市計画法上ホテルも商業施設も建てられない。誘致しないことを宣言してほしい」と上地市長に質問した。

歯と口の健康づくり 噛む・唾液力・災害時対応

 横須賀市は10月から3回の日程で実施する「歯と口の健康づくり講座」の講師として、NHKテレビ『チコちゃんに叱られる』『あさイチ』などに出演している神奈川歯科大学副学長の槻木恵一氏を迎える。

 日程と講座は以下の通り。10月1日(水)「かむ力を高めて脳も体も若返る」(9月1日から28日)、11月12日(水)「唾液力を高めてキレイと元気を手に入れる」(10月1日から11月5日)、12月10日(水)「口腔ケア力を高めて災害時にもお口の健康を守る」(11月1日から12月3日)※カッコ内は申し込み期間。

 会場は横須賀市西逸見町の生涯学習センター第2学習室。各回先着40人。申し込みは横須賀市コールセンター【電話】046・822・4000。

鴨居みなと花火大会 鴨居港海岸会場に

 横須賀市鴨居で9月6日(土)、地域で初となる「鴨居みなとまつり花火大会」が開かれる。有志で組織する同実行委員会=人物風土記で紹介=の主催。行政の補助金などに頼らず運営費用を寄付で捻出するなど、地域主導で準備を進めてきた。

 会場は鴨居港海岸で時間は午後6時30分から約40分間。小雨決行、荒天中止(9月7日(日)順延)。

 当日の会場には屋台やキッチンカーが出店。多彩なグルメメニューが楽しめる。時間は午後3時から8時まで。

浦賀湾を望む

三郎助を追う〜もうひとりのラストサムライ〜 第10回文・写真 藤野浩章

「合図の砲声じゃ。ビッドルの時もあったではないか」(第一章)



 本書には度々ビッドルの来航を回想するシーンが出てくるが、冒頭のセリフは後のペリー来航時に三郎助の父・清司(きよし)が発したもの。それだけ1846(弘化3)年閏(うるう)5月のビッドル来航は衝撃的だった。

 この時、すでに「異国船打払令」は無くなり、来航船には物資を与えて帰ってもらう「薪水(しんすい)給与令」に戻されていた。この転換には、1840年に勃発したアヘン戦争が影響していた。アジアの大国・清(しん)がイギリスに敗れ、香港を割譲する事態になったのだ。

 今後は商船や捕鯨船でなく"軍艦"を相手にする事になる。それは一歩間違えば戦争となり、外国の侵略を招きかねない。しかもイギリスは清と不平等条約も結んでいて、アメリカもそれに続いていた。清が、欧米列強の"草刈り場"になろうとしていたのだ。そんな中でビッドルは、清と同じような条約を日本と結ぼうと来日したのだった。そしてこの来航の情報は、事前にオランダから日本にもたらされていた。

 ついに、来る――

 幕府の緊張は、当時海防の強化のため三浦半島のほぼ全部を領地として守っていた川越(かわごえ)藩と、房総半島を担当していた忍(おし)藩に対して藩主自ら前線に出陣するように命じた事にも表れている。これは一九九年ぶりだとか。さらに江戸湾周辺の各藩にも命じ、地域住民も含めて数万人規模、最大級の大動員となる。

 その中で、各藩と連携しながら異国船と対峙(たいじ)したのはもちろん浦賀奉行所。この時25歳になっていた三郎助は、死を覚悟する。