横須賀・三浦版【9月26日(金)号】
都内で開いた20日の出馬会見。自身の政策を伝えた

自民党総裁選 小泉氏「党再生」強い決意

 新しい自民党総裁を決める選挙が9月22日に告示され、神奈川11区(横須賀市・三浦市)の小泉進次郎農林水産相が立候補した。20日に都内で出馬会見を開き、自民党の危機的状況を訴え、「国民の声に耳を傾け、時代の変化に対応してきた姿こそ自民党の真髄」と述べ、原点回帰を主張した。小泉氏のほかに、小林鷹之元経済安全保障担当相、茂木敏充前幹事長、林芳正官房長官、高市早苗前経済安保担当相の4人(届け出順)が名乗りを上げており、10月4日(土)の投開票に向けて論戦を繰り広げている。

 20日の会見で小泉氏は、辞任を表明した石破茂首相への敬意を表明しつつ、自身が挑んだ昨年の総裁選敗北を糧に、この1年間、農水相などの与えられた職務に全身全霊で取り組んできたことを伝えた。衆参両院で過半数を失った現状には強い危機感を表明。物価高、年金、医療、介護、治安、地方の活力の減退、農業の課題など「国民生活に密着した不安に自民党が向き合えていなかったことが敗因」と分析し、解党的な出直しが必要だと強く訴えた。

 主要政策では「経済最優先」を掲げ、物価高への対応を中心とした経済対策やガソリンの暫定税率の廃止に直ちに着手すると語り、国会運営や政党間の協議を丁寧に進める考えを述べた。賃金上昇については、2030年度までに平均賃金100万円増を掲げ、「年1%の実質賃金上昇を達成するための政策を総動員する」と説明。防災・治安対策では、石破首相の方針を引継ぎ、来年度に専任大臣のもとで防災庁を設立する。

 記者団からの質問にも答えた。米の減反政策を巡る批判に対しては、「米の増産に踏み切るために令和9年に向けた政策転換を進めている最中」と回答。日米地位協定の見直しには、自身の地元である横須賀を引き合いに、「地域社会と基地の間の課題解決に日米両国、時には自治体も交えて真摯な協議が行われている」と説明。地位協定の全面的な改定を前面に押し出す前に、日米間の具体的な課題解決に真摯に取り組むことが重要だとの考えを述べ、「戦後最も厳しい安全保障環境の中で、強固な日米同盟の姿を世界に示すことが最優先」と強調した。

 党改革では、野党時代の総裁だった谷垣禎一氏が、党内融和と国民の信頼回復に力を注いだことを紹介。これに倣って、自分の思いを抑え党内をまとめることに注力していく。賛成の立場を取る「選択的夫婦別姓」については、党内でも意見が分かれているため持論は封印するとした。

 小泉氏の総裁選への挑戦は2度目。13日に地元の支援者らを集めて開かれた会合の前に、電話で決意を伝えられたという上地克明横須賀市長は「順番を待つ時代ではない。時流に応じて飛び込むべき」とエールを送る。地元経済界のけん引役であるかながわ信用金庫の平松廣司会長は「自民党を変えるという強い意気込みを感じる。候補者の中で一番適任」とコメントしている。

大楠観光協会 伝えるは西地区の日常 地域ぐるみで広報誌創刊

 大楠観光協会は、大楠地域の自然環境や郷土史、イベント情報などを発信する広報誌「おおぐすの、」を創刊した。同協会を中心に地元住民や移住者のクリエイターらが協力して制作したもので、同地域へ各戸配布されている。第2刊は10月中を目途に配布が行われる見通しで、年2回の発行を目指している。

 冊子はA4判フルカラーで10数ページ。創刊号では大楠山の登山コース紹介や春の動植物一覧、地域に住まう「若者」と「大人」に焦点を当てたインタビュー記事など、きらりと光る地域情報をふんだんに詰め込んだ。制作にはプロカメラマンやデザイナーも参画。創作意欲を刺激する豊かな自然が残る秋谷など、西地区はクリエイターの移住や二拠点生活の場となるケースも多い。今回、冊子にはそうした移住者らも制作に協力しており、地元住民だけでなく、多角的な視点から地域を描いている。

 昨年4月から同協会の会長に就任した浄楽寺副住職の土川憲弥さんを中心に同誌の構想が始まった。「文化やイベントの情報を一手に集約して発信する媒体がなかった。また、制作を通して様々な団体と活動していくことで横のつながりを醸成し地域の持続性を図れたら」と狙いを話す。

 約6千部発行。西行政センターなどで受け取れる。今後は同協会HPなどにデータ版を掲示することも想定している。

地域の縁を結び直す 創刊記念イベントに50人

 「大楠の魅力、手に取ってみて」--。大楠観光協会がオリジナルの広報誌「おおぐすの、」を今春創刊した。9月20日には浄楽寺(横須賀市芦名)で創刊記念イベントが行われ、制作に携わった関係者から地元住民まで約50人が参加した。冒頭であいさつに立った土川憲弥会長は「多くの方にご協力いただき、創刊できた。友人やご家族と一緒に大楠の魅力を話す機会になれば」と話した。

 この日は「フィルム」で映写機を回し続けているボランティア団体「16ミリ試写室」による市制70周年の際に作られた横須賀の郷土や歴史を伝えるフィルムの上演や「西海岸もりあげ隊」の今昔写真展、「大楠野草部」は大楠地区の草花を使用したお茶をふるまうなど、交流を楽しんだ。

 創刊号発行後、手に取った読者から「もっと見たい」と要望があったことを踏まえ、4ページ増となる第2刊。大楠山のシンボルである「灯台のような建物」の秘密に迫った記事や、ひょうたん作りに勤しむ人への取材、大楠の温泉の歴史など盛りだくさんの内容だ。これらは企画立案から取材、レイアウト、ライティングまで一貫して、同協会や地域住民らが作り上げている。

 同協会では今後、広報誌での発信のほか、SNSでのイベント情報周知などと合わせて、広域に魅力を伝えていく。

Canvassadorとしてデジタルデザインの普及活動に励む 倉田 ともかさん 横須賀市久里浜在住 42歳

無から有を生む魅力

 ○…世界で2億4千万人が利用しているグラフィックデザインツール「Canva(キャンバ)」。チラシや広報物など、知識や経験がなくても簡単にデザインできるのが強みで、5年程前から周囲でも急速に広まっている実感があった。デザイナーを生業とする身にとっては脅威的存在。しかし、「この流れは変わらないだろう」と現実を見つめるや否や、3年前、Canvaの特徴でもあるデザインのテンプレート(ひな形)のクリエイターとして歩み始めた。

 ○…デザイナー歴22年。子どもの頃からものづくりが好きだったが、とりわけテレビゲームやパソコンの描画ツールを通じて知ったデジタルデザインにはまった。「塗りつぶし、コピー、反転など、ワンクリックで簡単にできることがおもしろくて」。デザイン専門学校で学び、卒業後は広島県アンテナショップの専属デザイナーを皮切りに、ウェブサイトや看板制作など多方面に活躍の場を広げてきた。タッチは「クライアントの希望に応じる」というが、ふんわりとした人柄がデザインににじみ出る。

 ○…「やっぱり何かを生み出すことが好きみたいで」。家族旅行の際には、旅程や持ち物などを掲載したしおり作りを楽しむ。時間に余裕ができたらやりたいことは、家庭菜園やDIY。自家用車をキャンプ仕様に改造することも夢だ。

 ○…国内に11人しかいないCanvassad(キャンバサダ)or(ー)に認定され、各地でCanvaを活用したデザインの指導にあたっている。参加者は自分でチラシを作りたい個人事業主やPTAの広報委員などで、毎回大盛況だ。自身がデザイナーとして大成することに興味はない。それよりも、誰かの人生に「無から有を生み出す楽しみ」を与えることが一番の喜びだ。

よこすかさかな祭り 海の恵みを存分に 保健福祉大のグルメメニューも

 横須賀が誇る豊かな海の資源を身近に感じてもらうイベント「第24回よこすかさかな祭り」が10月5日(日)、平成町の横須賀魚市場で開かれる。よこすかさかな祭り実行委員会の主催。

 地場産の新鮮な魚介類を「見て、食べて、学んで、遊んで、買って」もらうことをテーマに、マグロの踊る解体ショーや、せり販売、魚のさばき方教室など、子どもから大人まで楽しめる。

 今年で3年目となる横須賀魚市場と地元の神奈川県立保健福祉大学の食育サークル「シーラボ☆」とのコラボテーマは、「魚嫌いの子どもが手を伸ばしたくなるメニュー開発」。高級魚として知られる金目鯛をフライにして、オリジナルディップソースで食す贅沢極まりないメニューを考案。脂がのってふっくらとした食感の白身を「刻んだタコのタルタル」と「走水産のりとアボカドのミックス」という2種のソースで味わってもらう。「衣にのりを混ぜるなどして魚特有の匂いを抑え、スナック感覚で味わえるようにした」とメンバーの中川陽菜さん(3年)は話しており、ソースも20種の試作品の中から厳選した自慢の味だという。一皿500円で100食の限定販売。

 イベントの開催時間は午前7時から正午。

文化祭で参考書のリサイクル活動に取り組む宇多会長(左)と山本委員長

大津高校PTA 参考書再利用 学びのリレー 後輩にメッセージ添えて

 横須賀大津高校で開かれた文化祭で、校舎の一角にずらりと参考書が並べられた。なかには辞書や共通テストの予想問題集もあるが、これらはすべて希望する生徒に無料で配布するもの。同校PTA(宇多寛之会長)の「ステップアップ大津委員会」による取り組みだ。

 PTAとして「大津高の役に立とう」という大きなテーマのもと、メンバーで話し合いを重ねて活動内容を決める同委員会。昨年、物価高騰が続くなか、家計の負担を少しでも減らそうと参考書のリサイクルに着目した。「毎年内容が大きく変わるものでもないし、傷んで使えなくなるものでもない」と学校と協議を重ね、受験を終えて卒業を控える3年生の各教室にメンバーお手製の回収ボックスを設置することになった。

 「本当に集まるだろうか」。そんな不安をよそに、ボックスには200冊を超える参考書が入っていた。

 提供してくれた3年生への感謝を込め、汚れを落とすために中身を確認していると、『受験がんばってね』など、後輩に向けたメッセージが書き込まれたものも。「もちろん、そのまま残しました」と山本裕子委員長。重要事項のアンダーラインやメモ書きも、あえて消さなかった。

 4月、後輩への温かな気持ちが詰まった参考書が進路指導室前に並ぶと、その大半が瞬く間に新3年生の手にわたっていったという。

 今年度も継続している参考書リサイクルを含む同校のPTA活動は独自性などが評価され、令和7年度優良PTA神奈川県教育委員会表彰を受賞。宇多会長と山本委員長は「歴代役員の地道な活動のおかげ」と声をそろえ、今後も学校と生徒の橋渡し役として活動していくと思いを話した。

国スポ・障スポ 県代表の誇り胸に全国へ 出場選手が決意表明

 滋賀県で行われる第79回国民スポーツ大会(9月28日(日)〜)・第24回全国障害者スポーツ大会(10月25日(土)〜)「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ」の神奈川県代表に、横須賀市に関連する選手や監督ら36人が選ばれている=写真。横須賀市が9月16日に開いた壮行会で出場者らは飛躍を誓った。

 会では、競技ごとに出場者が登壇。「チームを勝利へ導くプレーを」「昨年の雪辱を晴らす」「1試合でも多く勝ち上がる」など思い思いの目標を語ると出席者から盛大な拍手が送られた。

 出席した上地克明横須賀市長は「昨今はすべての競技レベルが上がっている。その中でも諦めない気持ちは変わらず大切だと思う。応援してくれる人の気持ちを力に変えてぜひ頑張ってほしい」とエールを送った。

 三浦市からは5大会連続で代表入りしたギャンビル・ウイリアム海音(かいと)さん(立教大学)が成人男子エアライフル立射60発へ出場する。

横須賀ビール 「筆ロック」アーティストとコラボ ラベルで個性、味は王道

 横須賀生まれのクラフトビール「横須賀ビール」を製造販売している有限会社たのし屋本舗は、即興アートバトルの「筆ロック」とのコラボビールを限定販売した(各デザイン25本)。昨年の大会で入賞を果たした4人のアーティストが、横須賀ビールのコンセプトである「笑顔」を独自の解釈と画法で表現。写真右から、いけばな作家の久保島一智さん、書道アーティストの倭さん、デジタルイラストのmuxu(むう)さん、キャンバス刺繍のおおはましのぶさん各人の個性が際立つ、多様なデザインのビールが完成した。

 1本880円(税込)。横須賀市大滝町の横須賀ビール、同新港町のポートマーケットタップルームで扱っている。

神楽殿を舞台に音を奏でる(主催者提供)

境内にゴキゲンな音色 海南神社で音楽祭

 三浦市三崎の海南神社で9月28日(日)、奉納ライブイベント「開運なんでも三浦音楽祭」が開かれる。三浦ロカビリー倶楽部の主催。観覧無料。

 同神社の神楽殿を舞台に、高校生からカントリーバンドまで様々なジャンルの総勢13組が出演。初秋の三崎を軽快な音色で染める。移動販売車も出店し、飲食も楽しめる。時間は午前10時30分から午後5時。

 出演者は以下▼LTGG(カントリー)/小網代バンド/ありげーたー/ガレージバンド/キャメルクラッチ/山口憲一&ロカビリースペシャルズ/The Angels/ドラゴンブラッド/稲葉ナオキ&ZIII/斉藤竜明&装甲侍無頼鬼怨/トコナッツ/The Tsuji Zoo/朝本千可with縁側スタジオチーム

川村さんプロデュース お笑いステージ

 みうら観光大使を務めるお笑い芸人、たんぽぽ川村エミコさん=写真=がプロデュースするイベント「ホワイトハロウィン2025」が10月18日(土)、三浦市三崎のうらりマルシェで開かれる。

 お笑いモンスターズ爆笑ステージと題した企画には、ななめ45°、錦笑亭満堂、やしろ優ほかがネタを披露。川村さんも登場する。ハロウィンの仮装姿でステージをランウェイするコーナーも(1日券購入が参加条件)。午前11時から午後4時30分。チケットは前売り1日券3千円、子ども1千円。3歳以下無料。うらりマルシェのホームページ(https://www.umigyo.co.jp/)に詳細。
画像提供=横須賀市

ヘリ活用の遊覧飛行 空から眺める三浦半島 官民連携で事業化

 横須賀市と京浜急行電鉄、AirX、ユニマットプレシャスの民間事業者が連携してヘリコプターを活用した新たな観光事業に乗り出す=写真はイメージ。9月22日に4者の代表が同市役所で記者会見を開いて、発表した。

 風光明媚で知られる三浦半島の景観を空から眺める新コンテンツを用意して、インバウンドや富裕層を呼び込む。空の旅客サービスを展開しているAirXが、実際の運行を担当する。

 10月25日(土)・26日(日)に行われる遊覧飛行には、「千代ヶ崎砲台跡地・観音埼灯台」(10分/4万4千円)「三浦半島・城ヶ島」(15分/6万6千円)「鎌倉海岸線・江ノ島」(30分/13万2千円)の周遊コースがあり、浦賀でユニマットプレシャスが運営しているヨットハーバー隣接の敷地内にあるヘリポートが発着所となる(料金は一機当たり)。最大搭乗人数は3人。1日あたり20フライト程度となる。

 9月26日(金)午後2時からAirXの予約サイト(https://airx.co.jp/)で販売を開始する。これ以降は年4回の定期開催を予定。遊覧飛行だけでなく、首都圏からヘリコプターによる移動を含む体験型観光の開発や宿泊施設と連携したプランの造成も急ぐ。観光交通だけでなく、将来的な移動の手段としての可能性も追及する。

超人的なパフォーマンスを間近で

迫力満点のパルクール 体験会と実演

 「パルクール体験会&デモンストレーション」が10月4日(土)、いちごよこすかポートマーケット(横須賀市新港町6)で開催される。午後1時から4時30分。

 同競技は、「走る・跳ぶ・登る」といったフランス軍隊が身体能力を高めるために行うトレーニングを起源としたアーバンスポーツ。2028年のロサンゼルス五輪で正式種目化が期待されるなど注目が集まっている。

 体験会は午後1時から1時40分、2時から2時40分、デモンストレーションは1時45分と2時45分からでそれぞれ5分間。体験参加者から希望者を募って行うスピード大会(タイムレース)もあり、終了後に表彰式が行われる。

 参加無料。申し込みは当日会場にて。対象は小学生以上。雨天の場合、体験会は中止、デモンストレーションのみ館内で実施する。問い合わせは横須賀市企画課【電話】046・822・9820。

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在りし日の門奈さん(2007年)。当時の設計図をもとに作られた伏龍特攻隊員の縮尺像。現在は、横須賀市・自然人文博物館に保管されている

海底を歩く人間兵器 野比海岸で秘密訓練「伏龍特攻隊」

 第二次世界大戦末期に旧日本海軍が開発した水中特攻兵器「伏龍」の存在を伝える講演が9月21日、横須賀市自然・人文博物館であった。神奈川大学非文字資料研究センター客員研究員の坂井久能さんが横須賀にゆかりのある特攻の事例として紹介した。元特攻隊員の門奈鷹一郎さん(享年85)から聞き取った過酷な訓練の実態、兵器の欠陥、そして多くの隊員が訓練中に命を落とした悲劇の歴史が伝えられた。

人命軽視の水際作戦

「伏龍」は、潜水服を着た兵士が海底で待機して、竹棒の先に付いた15kgの機雷を上陸する敵の船底に突き立てて自爆する特攻兵器。生還を前提としない「決死」の作戦だった。

 隊員は、呼気を浄化して再利用する清浄缶を背負うことで、長時間海底に潜むことができるという画期的な仕組み。戦時中に数々の特攻作戦を生み出した黒島亀人少将が発案したものだった。集められた隊のメンバーは20歳に満たない少年兵で、門奈さんも当時16歳という若さだった。

 作戦に用いられた潜水服は久里浜にあった海軍工作学校(現在の市立横須賀総合高校)で作られ、実際の訓練は野比海岸で行われた。人が吐き出す二酸化炭素を苛性ソーダで吸収し、新鮮な空気を再度送り出す手法により、5時間の潜水が可能との触れ込みだったが、清浄缶は衝撃に弱く、破損すると海水が入り込み、高熱を発して隊員の命を奪う可能性があった。

 久里浜海岸から小船で出船し、訓練場所に向かう。腰に長さ30m弱の命綱を巻きつけて潜水し、その綱を引く回数を合図に船上と交信する。潜水具は70kg近くあり、海底では水圧も加わり、思うように動けない。「作戦では50m間隔で配置につくが、爆破によって周囲の隊員が死ぬことは実証済みだった」と坂井さん。その事実は隊員には一切伝えられなかったという。

 訓練中に最も多くの命が失われたのは、清浄缶の取り扱いに関する事故だった。鼻から吸って口で吐くという特殊な呼吸法を誤ると炭酸ガス中毒を引き起こした。死者数は判明していないが50人程といわれている。海岸に木を積み上げて死体を焼いたという証言もあるという。訓練の途中で終戦を迎えたため、作戦が実戦投入されることはなかったが、「実態について未だ調査・公表はなく、慰霊も行われていない」と坂井氏。国がその全体像を把握しようとしない現状を指摘した。

 坂井氏は「特攻は必ず死ぬ攻撃であり、世界史上でも類を見ない非人道的な作戦」と訴える。二度と悲劇が繰り返されないよう、後世に戦争の記憶を語り継ぐことの重要性を強調した。

市立総合医療センター 医師に聞く心臓血管の病 10月3日に公開講座

 横須賀市立総合医療センター(神明町1の8)で10月3日(金)、「下肢静脈瘤と心臓血管の病気・予防・手術治療」と題した市民公開講座を開く。

 講座には同センター心臓血管外科部長の安達晃一医師が登壇。むくみやこむら返りを引き起こす下肢静脈瘤と、脳梗塞や脳出血、心不全などがある心臓血管の病気について、予防や手術法などを幅広く解説する。また、参加者からの質問にも答える。

 同センターは今年3月に市立うわまち病院から移転。三浦半島で初となる救急患者搬送用の屋上ヘリポートを備える。6月には自治体立の病院で経営の健全性や地域医療の確保に重要な役割を果たしているとして「自治体立優良病院会長表彰」も受賞している。

 講座の会場は同院6階のリハビリテーションセンター。午後3時から4時。参加無料で事前予約不要。講座の詳細は同センターHPもしくは【電話】0570・032630。

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ビッドルのアメリカ船(弘化雑記/国立公文書館)

三郎助を追う 〜もうひとりのラストサムライ〜 第13回 文・写真 藤野浩章

「ご老体は、ビッドルの来航以来しきりに大型軍艦の建造を唱えているではないか」(第二章)あ



 ビッドル・ショックとも言える事態を経験して、幕府は手を拱(こまね)いていたわけではない。

 その指揮を執っていたのが、阿部正弘。天保の改革で知られる水野忠邦の失脚後、弱冠27歳で老中首座となった。幕府は、若きエースに未来を託したのだった。

 ビッドルが去った直後の1846(弘化(こうか)3)年8月、阿部は海防掛目付の松平近(ちか)韶(つぐ)に命じて浦賀周辺の防備を調査させた。後に三郎助と長崎で交わることになる木村芥舟(かいしゅう)(喜毅(よしたけ))によると、松平は相当なキレ者だったようで「僚輩を壓倒(あっとう)して気炎を逞(たくまし)うする」ような人物であったとか。何だか小栗忠順(ただまさ)を彷彿とさせるが、国の危機を前にして、幕府は従来の慣例にとらわれない積極的な人材登用をしていたように思われる。そこに三郎助は身を投じて行くのだ。

 さて、視察の後で松平は「日本の船大工だけで洋式軍艦の建造はできないか」と浦賀奉行所に問いかけた。これに対し、父・清司(きよし)らは「(オランダの力を借りず)日本人だけでは難しい」と上申書で回答している。仮にできたとしても、洋式軍艦を操船するのにもオランダ人がいないとできないというのだ。しかしその代わり"船上から大砲を撃てる大きさの和船を日本人の手で建造する"ことを提案している。

 冒頭のセリフのご老体とは父・清司のこと。この後も再三に渡って主張される国産大型軍艦の建造は、中島父子の切実な訴えだった。その思いは、松平を通じて阿部正弘を動かしていく。