横須賀・三浦版【10月10日(金)号】
同日に行われたジャズライブ。上地市長も出演した

田浦月見台住宅 「廃墟群」一転、注目エリア 店舗や民泊 約40のなりわい

 役割を終えた旧市営住宅に新たな活力を吹き込んで再生させる横須賀市田浦町の「田浦月見台住宅」のプロジェクトが本格始動した。横須賀市と不動産会社の(株)エンジョイワークス(鎌倉市)による官民連携事業。「仕事」と「生活」を同時に成立させる"なりわい住宅"のコンセプトを打ち出した新しいまちには、用意した47戸のうち42戸の入居契約があり、店舗や民泊施設として活用されている。

 同地では7月から順次店舗が開業しており、飲食店や古着店、占い処、金継ぎ店、焙煎工房を備えたコーヒーショップと多彩なジャンルが長屋形式で軒を連ねている。

 入居状況も多様だ。店舗営業のみから、店舗と住居併用の利用スタイルなどがある。開業までのプロセスを楽しみたい人のために自分たちで手を加えながら拠点を整備していくDIYプランなども用意されており、出店にとどまらずライフスタイルの選択肢として移住を決めた人もいるという。

 10月5日には大方の出店者が出揃い、「新しいまち」が本格的に動き出すことを記念したイベントが開かれた。セレモニーに上地克明市長が駆け付け、「自分が思い描いていた理想のまちが実現した」と喜びを伝え、天空の住居群を「横須賀のマチュピチュ」と表現した。ジャズライブにも飛び入り出演し、自慢の歌声を響かせた。

「なりわい住宅」のコンセプトの仕掛け人である(株)ブルースタジオの大島芳彦さんは、「自分の好きなことを表現しながらシェアする暮らしを楽しむような場所の創出が求められている」と話し、地方創生の取り組みとして田浦が全国的に注目を集めていることを伝えた。

 課題は平日と冬場の集客対策だ。山頂という場所柄アクセスの改善を図る必要もあり、「駅から気軽に立ち寄れる仕組みづくり」を求める声がエンジョイワークスの担当者から上がっていた。

チャレンジ楽しむ「手しごと弁当」

 田浦町在住の鎌苅直子さんは、長年の夢だった飲食店を月見台住宅でオープンした。

 グルテンフリー、添加物不使用調味料の弁当やケーキを提供するテイクアウト専門店の名称は「ALL GOOD(オールグッド)」。「なんとかなるさ」というポジティブなメッセージを込め、チャレンジを楽しんでいる。

 出店を決意した一番の理由は安価な賃料。「最小のリスクで挑める」と鎌苅さん。母親の介護もあり、すぐに駆け付けられる距離であることも好都合だった。小麦アレルギーに対応したオーストラリアのカフェでの勤務経験を生かし、新たな食のスタイルを提案していく。

 店内には電子レンジを置かず「蒸して出す」など徹底した健康志向。リユース容器の利用も推奨している。「自分の意に沿わないことはしない」という明確なポリシーの持ち主は、自分の理想とするスタイルをとことん追求する。

県内小中体育館空調設置率 全国平均を下回る 本紙調査 今年度末までに2割超に

 近年の猛暑日の増加による児童・生徒の活動環境の悪化、災害時の避難場所の機能強化の観点から急務となっている公立小中学校の体育館等の空調設置。本紙は設置状況について県内の各自治体にアンケート調査を実施した。今年度末までに設置率が21・9%になる見込みである一方で、依然として全国平均を下回ることが分かった。

 文科省では学校体育館の空調設置に国の支援制度を周知するなど導入を推進している。

 県内小中学校の普通教室の設置率が99・9%に対して、文科省が今年6月に発表した「公立学校の体育館等(小学校は体育館、中学校は体育館・武道場)における空調(冷房)設備の設置状況調査」(2025年5月1日時点)によると、体育館等の設置率は14・6%で全国平均の22・7%を下回っている。県内の自治体別に見ると、設置率100%は神奈川県を含む34自治体のうち綾瀬市、寒川町、大磯町、大井町。一方で0%が17自治体あり、27の自治体で50%を下回っている。

 アンケートによると、今年度中に空調設備の設置を行う(もしくは行った)と回答したのは12自治体で、来年度以降に設置を予定していると答えたのは16自治体。すでに設置完了の4自治体を除き、23の自治体で検討が進んでいる。「今のところ設置の予定はない」と答えた自治体でも、具体的な予定はないが、おおむね設置に向けて「検討している」と回答した。今年度末までに設置率が100%となるのは神奈川県、茅ヶ崎市、海老名市の見込み。

 また、設置予定がないと答えた自治体の中には、「気化式冷風機を導入して空調対策を行っている」と回答した自治体もあった。

横須賀ひと桁台、三浦はゼロ

 横須賀市では、これまでに大津中と浦賀中の武道場、市立養護学校の体育館に設置済み。来年度までに久里浜中と公郷中で設置が予定されており、これを合わせると設置率は5・8%になる見込み。市学校管理課によると、部活動で体育館の使用率が高い中学校を優先的に、避難所の機能として利用者の多い学校などを総合的に勘案し、順次設置を進めていくという。

 一方、三浦市では今年度までに設置率は0%。予算などの都合で来年度の設置も見通せない状況で、暑さが厳しかった今夏はスポットクーラーや扇風機により暑さ対策を実施したという。

 なお、アンケートは9月に神奈川県を含む県内34の市町村に送付。文科省の資料を示した上で、「今年度、来年度以降の空調設備の設置予定」などについて聞いた。

脚本家、放送作家、ライターとして気候変動や環境問題を提起する 小原 信治さん 横須賀市秋谷在住 56歳

”共育”が行動変容を生む

 ○…自身が脚本を手掛けた地球温暖化などを学べるショートアニメ『FUTURE KID TAKARA』が11月からNHK Eテレで放送される。「未来は君たちが変えていける」。子どもたちには、そんな前向きな思いを持ってほしいと願いを込めた作品だ。予断を許さない気候変動や農業が抱える課題に目を向け、種々のメディアで社会的課題を考えるきっかけを提供している。

 ○…大和市出身。大学時代、完全出来高制という甘言につられ飛び込んだ放送作家のアルバイトがキャリアの原点だ。自分の言葉で社会に何かを伝える。新聞記者を志していたこともあってか、肌に合った。卒業後は、テレビ番組・映画の制作会社に入社。番組の一環で全国の農家を取材すると、農業に携わる人や気候変動が与える影響、課題が見えてきた。少しでもこの現実を知ってほしい。消費者が知り、変われば最前線の環境は変わる。「消費型の生活」に疑問が生じたこともあり、秋谷に移り住んだ。

 ○…秋谷での営みは人生観を大きく変えた。自然に身を置き、作物を育て食す。密な地域の繋がり。ここには金銭では得られない幸せがあった。所帯も持った。すると夜遅くまで働く自分を見て娘は「もう寝な」と言ってくれる。親が子に教える「当たり前」を逆に子どもが気付かせてくれる。一方的に伝えるのでは、人の行動は変わらない。共に悩み考え、共に育つ”共育”が大切だと身に染みた。

 ○…「こうすればもっと得をする。楽しくなるよね」。メリットを伝え、自発的な行動を誘引する。環境問題に対してもそうだ。ただ危機感を煽るだけでは人は動かない。自身のライフスタイルや学び、発見や感動を面白く伝えることで、行動変容を促していく。

大滝町にあるさいか屋本館と南館

さいか屋にラウンドワン 2026年春、開業へ

 横須賀市大滝町にある百貨店「さいか屋横須賀ショッピングプラザ」の空きテナントにボウリングなどが楽しめる施設「ラウンドワン」が入居することが決まった。同百貨店を運営する(株)さいか屋が9月30日、(株)ラウンドワンジャパンと定期建物賃貸借契約を締結したと発表した。2026年春ごろの開業を目指している。

 発表によると、「ボウリング、アミューズメント等の複合型施設としての賃借」としており、ボウリング以外のカラオケや各種スポーツを楽しめる「スポッチャ」仕様の店舗となるかは調整中だという。

10年間の営業契約

 本館・北別館・南館の3棟からなるさいか屋。今回の契約は、全面積のうち約35%にあたる約6650平方メートルを、25年12月1日から35年11月30日までの10年間ラウンドワンに貸し出す。どの空き区画に入居するかや具体的な階層については明かされていない。

 さいか屋は21年に一時閉店。再開以降は縮小営業を続けてきたが、新店舗の開設やテナントの入れ替えなど、フロア構成の見直しで反転攻勢を仕掛けてきた。従来のメインターゲットであるシニア層の満足度を維持しつつ、幅広い世代の消費ニーズを捉えた店舗づくりを進めている。

ゼロ戦に搭乗していた若かりし頃の原田さん(左) ©宮尾哲雄

あの戦争と時代を問い直す 映画『原田要 平和への祈り』元ゼロ戦パイロットの生涯

 元ゼロ戦パイロットの故・原田要さんの波乱に満ちた生涯と人間像を描いたドキュメンタリー映画『原田要 平和への祈り 元ゼロ戦パイロットの100年』(2017年製作)の上映会が11月7日(金)、横須賀市文化会館大ホールで開かれる。主催は同作品を観る会(秋本由美子代表)。

 太平洋戦争中、日本海軍の主力戦闘機「ゼロ戦」に搭乗し、戦果を上げた原田さん。「殺さなければ殺される」─そんな極限状態をくぐり抜けてきた。戦後は幼児教育に情熱を注ぎ、戦争体験を後世に伝える活動に取り組むようになる。届けるメッセージは平和と命の尊さ。戦争体験者が少なくなる中、原田さんが亡くなる直前まで語り続けた戦争の実相を後世に残した作品。豊富な記録写真や軍事資料から”あの時代”を改めて問い直す。

 上映後には、同作品を手掛けた宮尾哲雄監督と満蒙開拓団の一員として海を渡った樋口達さん(横須賀市富士見町在住)のトークや平和の祈りをテーマにしたミニコンサートもある。

 午後1時開演。観賞券は一般1200円(前売り1000円)、学生500円、高校生以下無料。市文化会館ほかで販売。問い合わせは同会【携帯電話】090・4666・1146(秋本さん)。

アートバトルに意味深長な作品

 提示されたお題に対し、持ち時間5分の即興で作品を完成させるアートバトル「筆ロック」のFINAL大会が10月4日、横須賀美術館(鴨居)で開かれた。ジャンルの異なるアーティストらによる文字通りの異種格闘技戦。強烈な個性をぶつけあった。

 美術館の一角で複数のアーティストがキャンバスに絵を描き進めていくライブペイントも。小説『ガリヴァー旅行記』と観音崎とがつながるミステリーをモチーフにした作品もあった=写真。

ファミリーコンサート 音楽で心のバリアフリー レ・フレール斎藤さんの企画

 障がいの有無や年齢を問わず誰もが音楽に親しめるバリアフリーファミリーコンサート「小さき花の音楽会」が10月13日(祝)、ヨコスカ・ベイサイド・ポケットで開かれる。横須賀市久里浜出身で兄弟ピアノ連弾デュオ「レ・フレール」の斎藤守也さん=右下写真=の企画。隣に居合わせた人を気づかい、声を掛け合う温かな空間をつくり出す。NHK Eテレで活躍中のタニケンも出演。歌と一緒に体を揺らしたり、手拍子を打つなどして楽しむ。演奏曲は「小さき花の詩」「ディズニー・メドレー」ほか。

 斎藤さんは、同音楽会を2018年から全国で開いており、横須賀では3回目。息子に障がいがあり、通院時に演奏した経験がきっかけで、病院や施設での演奏を続けている。午後2時開演。高校生以上3500円、4歳〜中学生2000円。

 問い合わせは横須賀芸術劇場【電話】046・828・1602。

自民党総裁選 「再チャレンジを」  敗北の小泉氏にエール

 自民党の新総裁を決める選挙が10月4日に開かれ、2度目の挑戦となった衆議院神奈川11区の小泉進次郎農林水産相は、決戦投票で高市早苗氏に敗北を喫した。勝利を期待して横須賀市小川町の小泉事務所で待機していた後援会の幹部からは落胆する声が上がった。

 代表して記者団の取材に「進泉会」の鈴木孝博会長=写真=が応じ、「党員票で差がついてしまい厳しい結果となった。全国の党員から『まだ早い』とのメッセージだったと思う」と見解を述べた。選挙中に声高に主張した「党の立て直し」にも触れ、「まだ44歳。頑張って再チャレンジして欲しい」と小泉氏にエールを送った。

圓徳寺にお菓子を「盗み」に訪れた子どもら

「月からの使者」豊作呼ぶ お供え消えて縁起よし 十五夜に「お月見泥棒」

 夜の帳が降り、静まり返った三浦市の矢作地区。そこに響く子どもたちのにぎやかな声。「じゅーごやまーんじゅーけーらっせ(十五夜饅頭下さいな)」-。10月6日、中秋の名月だったこの日、十数人の子どもたちが、その体ほどある大きな袋を携え、各家や圓徳寺(初声町)を訪ね、次々とお菓子を"盗んで"いった。

 「日本版ハロウィーン」のようなこの風習は、十五夜に供えられた月見団子やお菓子を盗むことが許される「お月見泥棒」だ。そもそも十五夜の習わしは、中国から伝わり、平安時代には貴族の間で広がりを見せたとされる。江戸時代になると、庶民の間でも実りの象徴として流行。一年を通して最も美しいとされる満月を眺めながら、ススキや米で作った団子を月に見立てて供え、豊作を祈願するようになった。

 そして、お月見泥棒が誕生。かつて子どもは、「月からの使者」とみなされていた。その子どもたちに、来年の豊作を願う供えものを食べられることは縁起が良いと考えられており、むしろ多く盗まれるほど、その家や地域は豊作に恵まれるとされてきた。

 古来より伝わる習わしだが、今でも実施する地域は全国的にも少なくなった。矢作地区でも、人口減やコロナ禍の影響を受け縮小傾向にあるが、圓徳寺を中心に数世帯が協力し、形を残している。

 横須賀市でも各地で行われてきた。『新横須賀市史 別編民族』中の一節「十五夜の団子盗み」には久留和や長沢が登場。「大人は、子どもたちが縁側に手を延ばして盗るのを見て見ぬふりしていた」と記載されている。

デジタル庁の挑戦力説 元デジ相の牧島氏が講演

 衆議院議員で元デジタル大臣の牧島かれん氏=写真=が10月3日、出身地である横須賀で講演を行った。情報通信産業の開発拠点が集積するYRPのイベントの一環。政治の現場からひも解くデジタル政策の最前線をテーマにこれまでの経緯と未来を語った。安全保障の領域で重要性を増しているサイバーセキュリティー強化も訴えた。

 牧島氏はデジタル庁が、コロナ禍で露呈した行政の非効率性への国民の不満を背景に設立されたと説明。官僚と民間のエンジニアが融合した柔軟な組織であり、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を目指していると強調した。

 政策として、約1万個に及ぶアナログ規制の「デジタルチェック」を推進。目視や対面講習の義務をドローンやオンラインに置き換える規制改革がほぼ完了し、自治体ごとのシステムを標準化することで税金の効率的運用とサービスの質の向上を図っているとした。マイナンバーカードの活用も推奨。公金受取口座の登録は災害時などの給付金を迅速化し、マイナ保険証は、救急搬送時に医療情報を迅速に共有することで命を守ることができると述べた。

茅葺き屋根の純和風建築の万代会館。実業家の万代順四郎がトミ夫人の療養のために購入した

横須賀建築探偵団 文化財建築どう生かす 万代会館で意見交換会

 横須賀市重要文化財(2019年指定)の市立万代会館(津久井2の15の33)の活用を考える意見交換会が10月25日(土)、現地で開かれる。建築物を通して地域の歴史を学ぶ市民グループ「横須賀建築探偵団」の主催。

 同会館は雁行(がんこう)した茅葺き屋根が連なる数寄屋風の別荘建築。1928年頃に建てられ、帝国銀行頭取やソニー会長などを務めた財界人の万代順四郎氏が別邸として37年に取得した。78年に建物と敷地が市に寄贈され、その翌年から市民に開放されている。

 現在は耐震性に不安があるとして室内利用が中止され、庭園のみの開放となっている。こうした事情も踏まえ、文化財建築を維持保存していく意義などについて意見を交わす。

 午後1時から万代会館の建物見学と解説があり、川尻町内会館に場所を移して、他都市の活用事例などを学ぶ。

 参加費500円で事前申し込み制。希望者は同団の富澤さん【携帯電話】090・4016・2265。

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追浜・防災講演会 3・11の教訓をつなぐ 「釜石の奇跡」の裏側

 追浜地域運営協議会は11月1日(土)、「3・11の教訓を語り部から学ぶ『助けられる人から助ける人へ』」と題した防災講演会を開催する。会場は追浜コミュニティセンター北館3階。

 ”釜石の奇跡”の語り部として知られ、防災士資格を持つ糸日谷美奈子さんを講師に招く。

 発災時、糸日谷さんは、岩手県の釜石東中学校に勤務しており、その現場で、多くの子どもたちの命を守り抜いた。この経験から2019年に防災士資格を取得。「学ぶことで助かる命がある」との思いで当時の教訓を伝え、災害に備える重要性を各地で発信している。

「奇跡」と呼ばれる釜石の一連の出来事だが、糸日谷さんは凄惨な被災地の状況から、そう呼ばれることに違和感を覚えている。今回の講座では、奇跡と呼ばれる現場の裏にあった命を守る行動や決断、当時の状況を詳しく話す。

 時間は午後1時30分から3時。参加無料。定員先着200人。希望者は10月24日(金)までに代表者の住所・氏名・年齢・電話番号・参加者全員の氏名・年齢を記載のうえ【メール】opa-ci@city.yokosuka.kanagawa.jpもしくは同協議会【電話】046・865・1111に申し込む。

三浦海岸でぱん食い競争

 三浦市内のスポーツ・文化芸術の普及振興を目指す「MIULove」は10月19日(日)、三浦海岸でビーチスポーツ体験会を実施する。同日、三浦青年会議所の主催で開催される「オータムフェスin三浦海岸」の一環として行う。午前11時から午後8時。

 会場で500円を支払うと、ビーチ相撲やフレスコボールなどが体験できる。目玉は事前予約制の「ビーチぱん食い競争」。先着300人。同団体のHPから10月17日(金)までに申し込む。

夕日に染まる海と立石を描いた安田さん

海の絵画コンクール モチーフは大好きな夕焼け 横須賀市長賞に衣笠中の安田さん

 関東海自広報協会横須賀支部が主催する海の絵画コンクールの入賞者が決まり、10月2日に横須賀市内で表彰式が行われた。

「海の日」が施行された1996年に始まった市内の中学生を対象としたコンクール。海をテーマにした絵を描くことを通じ、自然を愛する心を養ってもらうことを狙いとして行われている。

 30回目の節目となった今回は、8つの中学校から102人が出品。記念艦「三笠」を描いた作品などもあり、審査委員長を務めた市教育委員会の黒澤正道さんは、「横須賀ならではの海の風景を描いた力作ぞろいだった。審査の時、各作品の前で足が止まり、心が動かされた」と授賞式で総評を述べた。

 最高位にあたる横須賀市長賞は安田伊織さん(衣笠中3年)が受賞。夕焼けに染まる相模湾に浮かぶ立石のシルエットを描いた。小学校から習い事としてアトリエに通い、中学では美術部に所属する安田さんは、「どんなに疲れている時でも、見るだけで元気になれる夕焼けを描きたかった。立石も入れることで、横須賀らしい夕方の景色にした」と作意を説明。同コンクールでの受賞は中学1年から3年連続となり、「最後に一番良い賞をとることができて、めっちゃうれしい。高校でも絵を続けたい」と喜んだ。

 今回の受賞作品は、10月20日(月)から24日(金)まで、市役所1階に展示される。

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按針セミナー 家康の外交どう支えた

 徳川家康の外交顧問を務め、横須賀市逸見に領地を与えられたイギリス人、三浦按針(ウィリアム・アダムス)を深く知る按針セミナーが11月9日(日)、西逸見町の生涯学習センター(まなびかん)大学習室で開かれる。横須賀市と三浦按針の会の共催。

 歴史研究家でYouTubeチャンネル「なるほど! 歴史ミステリー」を手掛けている市橋章男氏を講師に迎える。徳川家康研究家としても知られ、大河ドラマ『どうする家康』の脚本監修を務めた市橋氏が、家康の外交を支えた按針の功績をひも解く。

 午前10時開始。参加無料で先着180人。10月11日(土)から受付開始。参加者には按針冊子が手渡される。

 申し込みは横須賀市コールセンター【電話】046・822・4000。

毎回多くの見物客でにぎわう(写真は過去の開催時)

商店街を勇壮に練り歩く 三崎で神輿パレード

 三崎木遣りみこしパレードが10月12日(日)、三浦下町商店街で開催される。午後1時から4時30分、雨天決行(災害や天候次第で中止・中断の場合あり)。

 神輿を通じて地域の交流機会促進や伝統継承などを目的として企画されているもので、今年で4回目。日の出青年会や入舩青年会など、8基の神輿が日の出通りから三崎公園まで練り歩く。

 当日は多くの人出が見込まれることから、これを地域の商店の活性化につなげようと、今回から商店街内で完結するルートに変更。産直センター「うらり」の正面口前には屋台が出店される。

 会場では時間帯により交通規制(全面通行止め)あり。

海水浴場入場者数 公設化の三浦海岸イベント等で盛況

 三浦市で今夏開設された海水浴場の来場者数について、このほど集計がまとまった。

 市内で海水浴場として許可を取得しているのは、三浦海岸、荒井浜、和田の3カ所。三浦海岸海水浴場は今年から公設となり、市は賑わいを創出するために企画運営をラジオ局の(株)ニッポン放送へ委託。「MIURA FUN BEACH三浦海岸」と掲げて公開生放送を行ったほか、テレビ番組と連携して海の家も設置された。

 限定グッズが販売された影響などもあり、来場者数は海水浴場が設置された一昨年から約30%増の10万5802人を記録。荒井浜海水浴場では前年比約40%増の9960人、和田海水浴場は約9%減の2万9740人だった。

総務大臣から受賞した表彰状を手にする石渡さん

上町の石渡さん 行政と市民の橋渡しに従事 16年の活動で総務大臣表彰

 総務省は9月3日、都内で全国の行政相談員99人に対して総務大臣表彰を行った。神奈川県からは4人が選出され、横須賀市上町在住の石渡道夫さん(79)が受賞した。

 行政相談員とは、行政に対する苦情や意見、手続きに関する問い合わせなどを受け付けるボランティア。横須賀市では現在8人の相談員が交代制で活動しており、市役所内の市民相談室に設けられた窓口で任務にあたっている。

 横須賀市役所の職員だった石渡さんは、定年退職後の2009年、かつての部下だった市職員から行政相談員就任の依頼を受けた。

 「正直なところ、行政相談員が何なのかよく知らなかった」というが、その役割を調べると、現役時代の経験を生かして市民の役に立つことができるのではないかと実感。引き受けることに決め、以来16年間にわたり活動を続けてきたことで、今回の受賞に至った。「そんな大それた活動をしてきたつもりはないので、なぜ私が?という思いでした」

寄り添う気持ち忘れず

 総務大臣に委嘱される相談員は、国への提言や要望を受けることが本来の役割。しかし、実際には市民にとってより身近な県や市に対する内容がほとんどだという。石渡さんは、「行政に直接伝えることに抵抗がある人もいる中、行政相談員は相談者と同じ立場の市民。気軽に話しやすいという点が、最大の存在意義ではないか」と話す。

 相談内容は道路の穴の補修、成長して視界を遮る街路樹など、土木関係に関するものが多い。その一方、近所とのトラブルや相続に関することなどプライベートの相談もあるが、「人間は誰かに話を聞いてもらうことで心のモヤモヤが晴れることもある」と、常に相談者に寄り添って耳を傾けるのが石渡さんのモットー。だからこそ、介護や子育てで孤立感から虐待に至ったというニュースに心を傷める。

 「困ったことがあれば、一人で抱え込まずに市民相談室で話してもらえればきっと何とかなることを知ってほしい」と石渡さん。趣味のソフトボールで健康を保ち、80歳の定年まで任務を全うする覚悟だ。

船番所と船倉の模型(浦賀コミュニティセンター分館蔵)

三郎助を追う 〜もうひとりのラストサムライ〜 第15回 文・写真 藤野浩章

 中島父子をはじめ、浦賀奉行所が再三にわたって洋式軍艦の建造を求めていたのは、他でもなく今までの経験から異国船に対応するのには台場の大砲では心許(もと)ないと考えていたからだ。後に奉行所は「異国船の大砲は"活物(いきもの)"」「台場の大砲は"死物(しにもの)"」だから自由に動けて大砲が撃てる軍艦が必要、という上申書さえ送っている。

 しかし幕府はあくまでも陸上の台場で防衛をする方針だった。しかも、船を造るにも三本の帆柱がある船の建造を禁止する「三檣(さんしょう)禁止令」があるうえ、異国船と誤認される恐れがあるというのだ。

 それでも、現場を知り尽くす三郎助たちは粘り強かった。ついに老中・阿部正弘は奉行所に試作を許可する。帆柱を1本にした和洋折衷の小型船だったが、1849(嘉永2)年8月「蒼隼(そうしゅん)丸」が竣工する。費用は約二三三両。比較的安価な見積りだったことも決め手の一つだったようだ。そして翌年には試乗が行われ、なかなか良好な性能を見せた。

 ところが、なんとその試乗から約1カ月後、蒼隼丸は火災で全焼してしまう。奉行所の船倉から火が出たという説があるが、浦賀奉行所が総力を挙げて試作した純国産軍艦が活躍の暇もなく焼失するとは、悲劇としか言いようがない。三郎助は責任を問われて自宅謹慎となったというが、さぞかし落胆しただろう。

 しかし、それまでの浦賀奉行所の努力は思わぬ成果を生む。

 この後、とある人物の登場であっという間に船が復活することになる。そして、このアクシデントを通じて浦賀の造船ノウハウが格段にパワーアップするのだ。